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0000(オーフォー)の現在(いま)~0000が関連した3つの「京都芸術」イベントを観て~

 先日、twitter(ツイッター)上での村上隆さんとの「失敗問題」について3時間に渡るやり取りを行った0000(オーフォー)。その論議の行方は別にして、では0000(オーフォー)は一体何をやっているのかという点については明確になってない点が多い。先月行われていたアートバトルロワイヤル(ART BATTLE ROYALE・ABR)後半戦では、カオスラウンジのキュレーター・黒瀬陽平さんから、展示室の壁を白く塗っただけの作品を、「手を離すのが早すぎる」と言われた彼らが、現在、京都で何をやっているかを探ってみた。¥2010展写真1

「失敗問題」論議の発端ともなった「¥2010 exhibition-Summer」のツイット。そのイベントのオープニングセールが京都市内の同時代ギャラリーで開催されるということで足を運んだ。今年5月に開催されたアートフェア京都の入場料2000円に10円足しただけの値段で作品が購入できる2010年のイベント。そのアイデアが好評だったため、今回は彼らが主催者に名を連ねる「京都芸術」内のイベントとして第2弾を開催。

三条寺町を西に50メートルほど行った1928ビルという京都市有形文化財に指定されたビルの1階にある「同時代ギャラリー」は、京都では最も有名なギャラリーの一つ。そんなキャラリーと今年京都に来たばかりの0000が一体どのようにしてつながりを持ったのかなど、開催前から興味があったこのイベント。オープン時間に5分ほど遅れて会場入りしてみると、20畳ほどの広さの会場には、500点以上の作品と、それを買いに来た多くの若者で溢れていた。1928ビル

5月の第1弾では2つの作品を購入し、以来作品購入を始める切っ掛けとなったイベントなだけに、まずは「ガチ」な購入のための品定めを始めた。個人的には先日参加したコミックマーケット(コミケ)以上の熱量で作品を観ていると、観ている傍から作品が売れていく。前回は大きくすぐ目を引く絵を購入し、知り合いから「観て飽きの来ない作品の良さもある」という指摘を受けていただけに、今回は地味でも隠れた面白みのある作品を探す。

作者名やタイトルさえついていないこの「即売会」(購入者は作品をそのまま持ち帰る)は、購入を希望する者にとって頼れるのは自分の目以外何もない。2010円という超驚異的な安さでありながら、そこにはいくら額縁や材料費がそれ以上のものであっても、「いらないものはいらない」という購入側の非情な判断が働く。同時に幾つかの作品には確実に2010円以上の価値を持つものが存在し、もしかすると奈良美智さん級に大化けする作家がいないとも言えない。2010展写真2

そんな宝探し状態の会場には、普通のギャラリー展示には無い、デパートの婦人服売り場のバーゲン会場のような先を争う切迫感が漂っていた。そんな切迫感の中でも熟考しつつ選んだ作品は、キタゴウユキノさんという作家の黒く塗られたボードに双子の少女が描かれたシュール・レアリズム的作品と、カオスラウンジやwassyoi(ワッショイ)出展作家で、甘い子供の絵でありながらもクールさと詩情を感じさせるうえだはるき(うえはる)さんの作品。共にサイズは縦横20センチ以下の小品だが、そのどちらにも視線を逸らさせない凝縮感があるように思えた。

このようなイベントで「良作」が安く購入ができたことに満足を覚えながら、その会場から徒歩3分ほど南に下った場所にある「0000Shop(オーフォーショップ)」を尋ねてみた。はらドーナツという店の横にある階段を上ったところにあるその店は、まだオープンから10日しか経っていない新規店舗。真新しい室内は白い壁と、床から突き出たような幾つもの柱があり、そこに作品が掛けられている。0000ショップ

彼らのギャラリーと同じく、こじんまりとした空間だが、そこに高密度で作品を並べることで凝縮感が生じ、絵画だけでない、写真やアーティストブックなども置かれた空間は、今彼らの周辺にどんな作家がいるのか、彼らがどんな傾向の作品を好んでいるのかが感じられて面白かった。個人的には人物イラストに、水玉を書き込んだ民族系というか、アフリカ風の雰囲気を醸し出すミッシェルさんという方の作品に興味を持ったが、購入の心づもりがなかったため店を出た。

現在、0000がやっている3つの活動の内、個人的に一番面白く感じたのが彼らの本拠地である0000Gallery(オーフォーギャラリー)のAntenna(アンテナ)個展「無無無」。2つインスタレーション(場所や空間を作品として体験させるもの)がメインの展示と聞いて、良質なインスタレーション作品に出会えることがかなり難しいという体験に根ざした固定観念を持っていだだけに、全く期待していなかった。しかし、1階、2階の部屋全体を使った作品は、夜の誰もいないギャラリーという状況も相まって妖しい雰囲気に満ちていた。個展「無無無」

1階の「日出ヅル富士ノ神札念来迎図」では、アンテナのオリジナルキャラクターで、ジャパンをハッピーにするという「ジャッピー」の頭が、「壱万ヤマト」という架空のお札の散乱した場所に並べられた作品で、その安物でメッキに満ちた祭壇的空間は、昭和の赤線のような照明の助けを借り、独自の世界を生み出していた。また2階の「現世マツリ」という作品は、100円ショップで買い集めてきたであろうジャンク製品の集合体が作り出す、「現世の虚し過ぎるマツリ感」が出ていて良かった。

終了時間の20時を少し過ぎた時間にギャラリーを後にし、夜の道を自宅へ向けて帰りながら思ったことは、「現世」を生きる若者たちのリアリティーは圧倒的に貧しくジャンク的で、しかしだからこそ、自分の身の丈に合った切実な表現を可能にし、ある部類の作家たちは感覚的にも研ぎ澄まされているということだった。そしてそんな新しい世代のアーティストたちを積極的に紹介し、何とかこの2010年のアートムーブメントを動かそうとしている0000の活動は積極的支持に値するものだと思った。

村上隆さんとOOOOの「失敗問題」に関する議論
村上隆さんのtwitter
0000artsのtwitter
¥2010 exhibition -Summer- @同時代ギャラリーのページ
同時代ギャラリー ウェブサイト
ウィキペディア 1928ビル
ウィキペディア 奈良美智
キタゴウユキノさんのウェブサイト
ウィキペディア シュルレアリスム
うえだはるきさんのウェブサイト
うえはる(うえだはるき)さんのtwitter
ウィキペディア インスタレーション
ウィキペディア 赤線

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現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
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