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凄い絵本2 『リサかぜをひく』

 おしゃれな絵と楽しい文章が魅力の『リサとガスパール』シリーズの中でも、こどもの頃に戻ったような気持ちになれる作品。リサの気持ちに寄り添えるこの作品は何回読んでも楽しめる。
リサかぜをひく
子供の頃、かせをひいた時、世界がいつもとは違って見えて、病院に行ったり、両親がいつもより優しかったりする。そんな変化をセンスの良い絵と文章で読ませていく。

おしゃれなパリの街並みを見ていても楽しいし、白くてふわふわしたリサが熱を出して甘えている姿もかわいい。もしこどもの頃にこんな本を読んでいたら、もっとセンス良く、外国にも開けたこどもになれただろうにと思えるほど。

 3歳の姪にこの本をプレゼントした2年後、姪から「『リサかぜをひく』ありがと」と急に言われたことがある。嬉しくなって返事をすると姪は少し古くなったその本を手に妹のところへ去っていった。

『リサとガスパール』オフィシャルサイト
ウィキペィア 『リサとガスパール』
アマゾン 『リサかぜをひく』

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凄い児童書3 土方正志著『ユージン・スミス―楽園へのあゆみ』

 ベートーベンやマザー・テレサほど有名な偉人ではないけれど、写真表現という手段を通じて生きることや正しい社会のあり方を真摯に問い続けた写真家の伝記。
 ユージン スミス
新装版が出版された直後、偶然手にした時には、この写真家の名前さえ知らなかった。ただ何気なくめくったページに書かれた著者の言葉に、写真家に対する深い敬意のようなものが感じられ、それで読んでみることにしたのだった。

正直、ほとんど期待していなかっただけに、これほど心を揺さぶられることになるとは思ってもいなかった。特に写真家の写真に対する妥協を許さない姿勢や、精神的、肉体的な傷を負いながらも、あくまで個人という視点に立って人々の写真を撮り続けた姿には胸を打たれる。

そして伝記は彼の晩年の仕事である、彼と日本との深い関わりから生み出された水俣病についての写真を取り上げる。そこには社会や組織から踏みにじられた人々に寄り添い、なお懸命に生き続ける彼らの姿に崇高さを見出した写真家の様子が描かれている。

この伝記を読み終えた後、今から30年以上も昔に写真家が発表した水俣の写真を見て思ったことがある。それはどんなに技術が発達しても、一枚の写真でしか伝えられないことが確かにあるということだ。

ユージン・スミスの代表作4点
ウィキペディア ユージン・スミス
アマゾン 『ユージン・スミス―楽園へのあゆみ』

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凄い絵本1 家族とは何かを教えてくれるジーン・ジオン『どろんこハリー』

 たとえば家族や友人に小さな子供がいて、何かプレゼントを贈ろうとする時、真っ先に思い浮かぶのがこの絵本。実際にプレゼントした子供たちに話を聞いても、実に評判がいいのがこの本の特徴である。 
どろんこハリー
白い体に黒いぶちを持つ飼い犬のハリー。そのハリーが嫌いなお風呂を逃れるために家を逃げ出し、様々な場所を歩き回り、最後には自分の居場所を再確認する物語。

新約聖書の「放蕩息子の帰還」を子供向けにしたようなこの物語。子供たちは好奇心旺盛で、どろんこになって遊び回るハリーに気持ちを同化させ、絵本の世界を旅することができる。

家を逃げ出したハリーはどろんこになっって遊び回った後、何か物足りなさを感じる。そこで気づくのは、自分も一員であった家族のことや、逃げ出してきたはずの我が家のことだった。

そしてハリーの我が家への帰還。真っ黒によごれ、以前の姿ではなくなってしまったハリーは果たして家へ帰れるのか。そんなシンプルな物語が愛らしい絵柄と共に進展していく。

この物語はハリーという存在を通して、子供たちに家族の大切さを教えてくれる。それは子供たちにとって必要不可欠なものであり、いつも自分を安心させてくれる特別な場所なのだ。

アマゾン 『どろんこハリー』 (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

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凄い児童書2 言葉の力が実感できる『ホメーロスのイーリアス物語』

 一時期、ギリシャ物にはまっていた時に読んだ本。トロイア戦争を戦った戦士たちの息遣いや感情の動きが迫るように伝わる作品。
イーリアス
「トロイの木馬」やシュリーマンの遺跡発掘で知られる叙事詩『イーリアス』。そこに描かれた物語は、神話の域を出ないのか、また史実が大きく反映したものなのかは明らかでない。

紀元前8世紀の吟遊詩人・ホメーロスが最終的にまとめとされるこの叙事詩を、児童向けに読み易くしたのがこの作品。しかし、そこに描かれた戦いに翻弄される人々の悲しみは人の心を打たずにいられない。

敵、味方という視点を越え、死にゆく者たちの悲しみを。そして残された者たちの悲痛さを見事に描き出したギリシャ最高の叙事詩の世界を、まずはこの本で体験して欲しい。

ウィキペディア イーリアス
アマゾン 『ホメーロスのイーリアス物語』

テーマ : 児童文学・童話・絵本 - ジャンル : 小説・文学

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凄い児童書1 気高く生きる大切さ・バーネット著『リトルプリンセス』

 以前、同じ出版社から出ていた『秘密の花園』を読んでその凄さにとても驚かされたので、今回は同じ作者が書いたこの本を手にしてみました。
リトルプリンセス正直、あまり期待していなかっただけに、自分がこれほどこの物語に感情移入してしまったことに驚きました。

ある出来事をきっかけに、苦しい境遇に立たされる少女の物語。しかし、彼女は逆境に挫けることなく、自分自身の中に小さなともし火をかかげて暗闇の中を歩き続けるのでした。

いつの時代にも、また誰にでも苦しい境遇に立たされることはあると思うのです。そしてそんな暗闇の中で、行き場のない孤独感や絶望感を感じてしまうことも。

この物語はそんな逆境の中で、重圧に押しつぶされることなく、気高く生きることの大切さを教えてくれる。そしてそれが、逆境を抜け出す最善の道であることも。

今から百年前、この物語を創り出した作者の思いは良質な物語として現代の子供たちにも届く力をもっている。またその思いは子供だけでなく、以前は子供だったものたちの元にも届く力を持っている。

アマゾン 『リトルプリンセス』(小公女セアラ)

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プロフィール

阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメール[email protected]
またはお問合せtwitterまで。

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