文化ブログ
阿部和璧(あべかへき)が世の中の良いもの、凄いものを紹介する。
凄い京都23 児玉ギャラリー『田中秀和「連続の要因」』
大学でデザインを専攻していた田中が抽象画を選んだのは、描く対象よりも、描く中から生まれてくる形やリズムに興味を覚えたからだという。以来、過去の記憶の断片や以前の作品から抽出した線を用い、即興的でありながら、思索的抑制を利かせた作品を作ってきた。
「連続の要因」と名づけられた今回の個展では、大画面を用いたことで力強いリズムが生まれ、その結果、色彩や抑制にも抜けるような広がりがもたらされた。制作中は時間の概念を作品に込めようと試行錯誤を繰り返したが、一本の線にも時間が表現されていることに気づくと、それまでの迷が吹っ切れ、制作に打ち込めたという。
展示作品の中でもスキージというへらを使い、シンプルな色彩で伸びやかに描いた作品に優れたバランス感覚が見受けられた。偶発的な要素や勢いも取り入れた、意識と偶然性とのせめぎあいが魅力なだけに、全てが期待どうりとはいかないが、だからこそそこには大きな可能性が感じられる。
児玉ギャラリーウェブサイト
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