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凄い京都23 児玉ギャラリー『田中秀和「連続の要因」』

 分かりにくい絵画の代名詞とも言える抽象画やアクション・ペインテング。古い価値観からの開放をもたらしたことは高く評価されるが、その分だけ現代美術を複雑にしたようにも思える。そんな技法に、思索と時間的概念を取り入れ、新たな挑戦を行っているのが田中秀和。今回の「連続の要因」展では勢いと色彩と抑制の3つが画面上でせめぎ合い、新たな可能性を感じさせる。
田中秀和展大学でデザインを専攻していた田中が抽象画を選んだのは、描く対象よりも、描く中から生まれてくる形やリズムに興味を覚えたからだという。以来、過去の記憶の断片や以前の作品から抽出した線を用い、即興的でありながら、思索的抑制を利かせた作品を作ってきた。

「連続の要因」と名づけられた今回の個展では、大画面を用いたことで力強いリズムが生まれ、その結果、色彩や抑制にも抜けるような広がりがもたらされた。制作中は時間の概念を作品に込めようと試行錯誤を繰り返したが、一本の線にも時間が表現されていることに気づくと、それまでの迷が吹っ切れ、制作に打ち込めたという。

展示作品の中でもスキージというへらを使い、シンプルな色彩で伸びやかに描いた作品に優れたバランス感覚が見受けられた。偶発的な要素や勢いも取り入れた、意識と偶然性とのせめぎあいが魅力なだけに、全てが期待どうりとはいかないが、だからこそそこには大きな可能性が感じられる。

児玉ギャラリーウェブサイト

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テーマ : アート - ジャンル : 学問・文化・芸術

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Tag : 現代美術ギャラリー

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
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