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「0000(オーフォー)とはアート界の Perfume(パフューム)かもしれない」~12月28日の「0000とは何か?」Ustを観て~

 先日、村上隆さんがtwitter上で取り上げていた「道夏大陸 Perfume 編 1/2 ~20分でわかるPerfume」という動画を見て以来、妙に親しみを持つようになってしまったPerfume。そんな彼女たちと、2010年の、日本のアートシーンで最も目立ったアートグループ「0000」の、一体どこに共通点があるのかといえば、ジャンルを越えた訴求力。今回のUst(ユースト)を観るまではもう一つ明確でなかった0000の魅力をPerfumeを例にして解説したい。0000画像2

一応、公共広告機構のCMで使われていた『ポリリズム』ぐらいは知っていたが、特別興味を持っていなかったPerfume。それが今回、「道夏大陸 Perfume 編 1/2 ~20分でわかるPerfume」という動画を観て、彼女たちの独自性が、アイドルというジャンル出身でありながら、現在はそのジャンル外にも多くのファンを獲得していることだと理解できた。サウンドプロデューサーの中田ヤスタカさんという方の作り出す、テクノポップとしての完成度の高さがその大きな要因なのだが、それと同じことが0000にも言えるのではないか。

日本のアートというこれまで一定人口にしか波及していなかったジャンルの中で、アートフェアフリーや2010円展など圧倒的なコストパフォーマンスによって、これまでアートに興味の薄かった層にまでアートを広めようとしていることは、Perfumeが音楽で行ってきた多ジャンルのファンを獲得する活動とかなりの共通するのではないか。関西でこの半年、彼らの動きを見てきた者として、デパートで開催された2010円展や、彼らのギャラリーに来た人々は、ファッションやオタク、ネットやストリート系の人々など、これまで美術館やギャラリーに足を運んだことのないような人々まで含まれていた。Perfume画像1

もちろん現在のPerfumeのような圧倒的な知名度や、過去の長い試行錯誤の繰り返しはまだ0000にはない。しかし、今回のUstで谷口創さんが言った、「日本のアートの産業レベルでの脆弱性」といった問題や、上海で作家として活動してきたNam HyoJun(ナム ヒョジュン)さんが「個人の危機感」として語った、「日本で食べていくとして月20万、年間240万で、ギャラリーと売り上げを半切するとして480万。2年に1回の個展でその2倍の売るなんて無理だって実感ある」という言葉は彼らなりの切実さを伴ったものであり、それは同時に日本でアートに関わる人全ての問題だと思う。

そんな「自分たちのアートができなくなる」という危機感の中、彼らが4日間、寝泊りを共にして話し合い、「個人の力ではどうしようもない」という結論に達し、話し合いの熱量からグループ結成に至ったことは、最近、若いアーティストたちがゆるやかにつながるグループを作ったり、共同アトリエを運営していたりする流れに共通するものがある。そこには、ゼロ年代後半から生まれた流れである、「サバイブ感」(とりあえず生き延びること)を具体化したものとして理解できる部分もあるが、彼らは互いの長所を活かし、グループであることのメリットを最大限に引き出している点も、Perfume的と言えなくもない。2010円展チラシ2

メキシコで生まれ、親がアーテストだったことから、外国語でのコミュニケーション能力や西洋のアート事情に詳しい緑川雄太郎さん、ファッションから文学、サブカルチャーに至るまで、文化全般へのアクセス能力を持つ谷口創さん、共に在日というマイノリティーに所属し、作家として中国マーケットでの作品制作経験を持つNam HyoJunさんとKim okko(キム オッコ)さんの4人で結成された0000。彼らの最大の持ち味は、それぞれの属性に基づいた多角的な視点から意見を出し合い、そこで生まれたアイデアを迅速に具現化できる実行力にある。

一部では、彼らのアイドル的な路線や、ギャラリストの枠からはみ出した活動に、否定的な意見を述べる人もいるが、アートの枠外に向かって、その「ポピュラー化」を目指している彼らとしては、より多くの人に訴えることのできる可能性を捨ててまで、その枠内に留まることにどれだけ意味があるだろう。彼らの本質は、「いろんな人にアートを観て欲しい」というアート関係者なら特に反対する理由もないものだから、小さな違いを非難するのではなく、少しでもマーケットや観客を増やそうとしている彼らの活動を静観するなり、協力するなりできないものか。京都芸術画像1

最後にUstの後半で話された、彼らの今後の方向性について思うこと。日本の音楽業界のヒットメーカーの幾人かが、これまで世界の音楽シーンへの参入を狙いことごとく跳ね返されてきたことと、最近の韓国文化が巧みにアジアのマーケットの中に食い込んで成功していることは、国家戦略や国内マーケットの規模という以上に、これからの日本アートの動きにとっても示唆多きことのように思う。その点では、メンバーの2人が韓国や中国との深い関わりを持つ0000にとって、アジアへのパワーシフトが起きていく今後、「世界で戦えるような作家を輩出していく」ための大きなアドバンテージになるのだと思う。

0000 Galleryのウェブサイト
0000artsのtwitter
ウィキペディア Perfume(パフューム)
ウィキペディア 中田ヤスタカ
YouTube 道夏大陸 Perfume 編 1/2 ~20分でわかるPerfumeの動画
途中から異様に熱い過去の話になるNamHyoJunさんのトゥギャッター
アマゾン 『結成10周年、 メジャーデビュー5周年記念! Perfume LIVE @東京ドーム 「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」』【通常盤】 [DVD]

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
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