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「スーパーリアルな革命」~「京都芸術」に関連したKyoto家Galleryを巡って~

 「京都芸術」に関連した「3日間限定」のレアイベントとして、その意味も分からず立ち寄った「Kyoto家Gallery」本部会場。後で聞けば、twitter(ツイッター)上で、「京都の『自宅』が同時多発的に『ギャラリー』と化す3日間!」というつぶやきが30人以上にリツイート(RT)されていたというイベントは、若い世代の直面している現実に根ざした、「革命的」なイベントだった。家ギャラリーポスター1

前日に参加した「アーティストが制作の現場に求めるものとは?」というトークイベントに感化され、ならばそこでテーマとされたスタジオを一つでも多く巡ってみようと出掛けた中、偶然立ち寄った「Kyoto家Gallery」本部会場。「芸大生が住む自宅がギャラリー化する」という言葉だけを頼りに、大音量でロックが流れる一軒家に、「近所迷惑だろうな」と思いながら入った空間はアート版「トキワ荘」のような世界だった。

昭和臭が漂う玄関に飾られた平面作品。乱雑に靴が並んだ玄関で靴を脱ぎ、最初に入った部屋が音楽の発生源。そこにいた2人の芸大生は室内右手の壁全面を使ったライブペインティングをしながら「ゆっくりしていって下さい」と言うが、大音量の6畳ほどの部屋で一体どのようにして「ゆっくり」すればいいのか分からず、早々と退散する。家ギャラリー2

「何かがおかしい」と思いながら、その先の部屋を訪ねてみれば、次は比較的まともな人が対応してくれて、「隣の音、近所迷惑じゃないですか?」と聞くと、「基本、住人は芸大生なんで」という答えに、「そういうレベルの話でもなさそうだが…」と思いながら一応納得して室内を見る。室内は茶系統で統一されており、作品も展示してあるのだが、部屋にある細々としたものの方に興味が向かい、作品の印象はあまり覚えてない。

しかし、前日のイベントでの、「アーティストにとってスタジオも一つの作品だ」という意見を鵜呑みにすれば、学生たちの生活臭あふれるこの空間も彼らの作品といえなくもない。次に見た畳敷きの部屋をなんとかホワイトキューブ化しようとした努力は買いたい「ホワイティーな部屋」や、「共同台所につき気持ち良く料理作りを♪」と書かれた台所を通って向かった2階の2つの部屋は日ごろ見れないものを見れたというお宅訪問的面白さがあった。

一軒家内を一通り見終わり、帰ろうとした中で知った本部会場はあくまで家ギャラリーの一つでしかなく、他にも9軒の芸大生の自宅が「ギャラリー」になっているという情報。早速、詳細の書かれた地図を貰い、近所のごくありふれた5階建てマンションの一室を訪れてみると、そこも3人の学生の作品が展示された「ギャラリー」となっており、そこの住人の歴史上の人物をキャラクター化した箱作品は雑貨的なアートとしての面白みがあった。家ギャラリー3

その住人に薦められた向かった修学院駅近くの3件目の「ギャラリー」は自宅でありながらも、光の射す3つの部屋にバランス良く作品が配置された、最もアートと室内が融合した空間だった。あまりの居心地の良さにお茶まで出してもらい、この企画の詳細について尋ねていると、今回の企画を立案したという代表者がやって来た。精華大学2回生で、まだ19歳というその学生は、この企画の趣旨について驚くほど流暢に話し始めた。

全10会場、31名が出展した今回のイベントは、「アート系の学生でこれまで創るだけで留まっていた人間が、発展途上段階でも作品を展示しようとする時、アートイベントや貸しギャラリーにお金を払って出す以外に方法がなかった。けれど、自分の家を開放して、同時多発的に『ギャラリー』にするイベントをやれば、お金をかけずに作品を展示でき、出展者と来場者もより密にコミュニケーションできるのでは」という趣旨で開催したという。家ギャラリー4

その結果、張り紙を見た近所の人が「ギャラリー」を訪れ、作品に対する素朴な疑問を投げかけたり、イベントの趣旨に共鳴した近くの大学の卒業生が次は自分も参加したいと名乗りを上げたりと新たな交流の場としての機能を果たした。そして彼らの目標とする、「大学では出会えない人たちが出会って新しいものが生まれていくことで、京都の色んなシーンを盛り上げていきたい」という理想への一歩を踏み出すことができた。

ゆくゆくは京都大学や立命館といったアート系以外の大学の自宅をも巻き込んだイベントにすることや、多くの地域に「家ギャラリー」というフォーマットが波及することで、アートに興味を持つ人やアートを身近に感じる人が全国に増えていくことも考えているという活動は、一見穏健なもののように見える。しかしそこには、剥き出しのリアルによって新たな生き方を示するという「破滅ラウンジ」的な考え方があるように思えなくもなかった。はめつら!

彼らの自宅という「ギャラリー」を、そして彼らの作品を見てきた中で、最も強く感じたことは、これまでの古い価値観に囚われることのない、ある意味軽率で思い切りの良い新たな試みへの挑戦の姿勢だった。そしてそれは、なぜ今現代美術やアートの世界から特異な熱量が生み出され、その熱に自分までもが感化され、それを必死に追い続けているのかという疑問に対する明確な答えとなりうるものだった。

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Togetter - 東浩紀、破滅ラウンジを語る

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメール[email protected]
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