玩具で遊べる場所

「船底に穴を開けたから、ここから出入りできるよ。」

「凛ちゃ～ん！！アリガトサンキュゥ！！」
「マキシマ！そんなトコロに立っていないで早く来い！！」

「バカな！地球のウルトラ戦士はテンペラー星人に倒されたはずではなかったのか？」



「はいはい！
そうやって地球のネットワークのガセネタを信じて侵略にやって来たのはアンタで５人目だからね！」

「形式文句だから一応言うけど、抵抗はやめて速やかに武装解除してよ。」

「ええい！うるさい！」



「だからぁ！」



「警告を無視し続けると罪が加算されるって！」



「おまえから片付けてやる」



「もう！」

『オカベさん！そっちはどう？』

『人質は複数の部屋に分けられていて、各ドアの鍵が熱線で溶接されている！

今、鍵をレーザーで壊しながら救出作業をしているが、負傷者も何人か居る様だ。』

『予想外に手間取ってるってワケね』

『隊長たちには到着したら先にこっちの支援をしてもらうように要請した。』

『分かった。絶対にそっちには手を出させないから。』




「ハッ！」

「ぐっぐううう…」

「んぬぅぅぅぅ」

「てやああっ！！」


「！」

「てぃやああああっ！」

「いい加減に･･･

おとなしくしてよ！」

「グワアアアア」


『強過ぎていないよね…』


「！？」

「ワアアアアアア」



「ああもうっ！」

「な･･･何故だ！何故オレに止めを刺さなかったんだ！？」

「フン！」



「地球に侵略行為を行った異星人の処罰は、重大な被害や犠牲者が出ていない限りは
銀河連邦警察に委ねるのが原則になっているから、

私の役目はアンタを拘束して宇宙警備隊に引き渡すだけ。」

『こちらホーク３号のキリユウだ。間もなく到着する。
オカベ隊員らが支援を求めている。
俺達も救出作業に向かう。』

『うん、分かった』

「銀河連邦警察？そんなところへ行ったら、死刑も同然じゃないか！」

「無駄な抵抗をしなければ、酌量の余地くらい有るでしょ。」

「捕まってたまるかよ！！」

「これくらいは黙っておいてあげるから。

その両腕を早く上げて！！」

「・・・」


「うわっ！？」

「ワハハハハ！驚いたか。」

「･･･ッ！こんなコトしても無駄だってのが分からないの？」

「無駄だと思うなら、腕ずくで捕まえてみろ。」

「そうするからね！」

「さあ～かかって来な。」



「！？」

「？」

「ワハハハ。どうしたんだい？
自分で仰け反って無様にひっくり返ったのに、何が起きたか分からない顔をしているな？」

「わ･･･私が自分で？そんなはず…？

ひあっ！」

「うああ？」

「どうしたどうした？捕まえてみろよ」

『ど…どうなって…！！
…重力制御器官が異常…！？
うあぁ！』

「うぐぁっ！！」

「うううッ･･･」
『違う…外から…持ち上げられて離れる感覚…
何？これ…サイコキネシス？…

…まさか、コイツが？』

「教えてやろう。
おまえに浴びせたのは、我がゴドラ星が誇る反重力光線だ。
我々はこれを使って重力を意のままに操れるのだ」

「重力制御ってワケ･･･それなら･･･」

「どうにかなるかい？」

「え…うわわっ！？」

「うあ…こんなもの…あ？あれっ？…え！？
ウ…ウソ！こんな…」

「どうして？制御しているのに！？」

「ぐぁっ！」

「うッ…　あはぁ…」

「どうした？ウルトラ戦士はフツーに重力制御できるんだろう？」

『そんな…コイツの重力制御の方が･･･強いってワケ？』

「そらよっ！」
「うわああっ！！」

「あうぐっ！」

「ひあっ！」

「うあああっ！」

「隊長！！シブリンが！！」
「イノガシラ！要人の救助が最優先だ！」

「うああっ！！」

「…その為に彼女は、ああしてゴドラ星人の注意を自分に向けさせているんだ。」

「ぐうっ！！」

「あはぁっ！！」
『念力じゃないのなら、制御装置があるはず…それを壊せば…』

「！？うあっ…」
「さあ！回転数40ｋrpmのスーパー・トルネード・インフェルノをくらえ！！」

「ひいッ！！･･･い…！いやああああああああああ・・・・・・」



「う･･･」

「ホゥ…40ｋrpmを耐えた上に動けるとは、さすがウルトラ戦士の身体は格段に頑丈だな。
銀河連邦警察の連中は、20ｋrpmで関節が全て抜けて全身バラバラになっちまったからなぁ。」

「…ぁ…あふぁンっ…な…何？銀…？
あぃッ！…痛ッ･･･あっハァッ…」

『マズイ…全身の筋も関節も…ズタズタで…立てない…
今度食らったら、本当にバラバラにされちゃう…。

キリユウ隊長…まだかな？』

「うあぁっ！？」

「どこまで耐えられるか試してみようか」

「やめてよ！目が回ってクラクラしているんだから！！」

「60ｋrpm？それとも一気に100ｋrpmにするか？」

「い…いい加減にしないと…許さないから…」

「おまえはオレにとどめは刺せないんだろ？
宇宙警備隊に告げ口するつもりなんだろうが、ここでお前の口を封じて逃げてしまえば済むことだ。

原則を守ったばかりにこんな目に遭うんだ。自業自得だろう？」

「げ…原則は…あくまでも原則だからね…

…私は役人じゃないから…
アンタみたいなヤツラを相手に、原則を遵守して、やられてばっかりの損な役目を請け負うつもりなんて…無いから…。

だから･･･これ以上・・・！

な…！ちょっと！」

「じゃあ今度は落下テストだ。」

「ふざけないで！下ろしてよ！！」

「ちょっ…どこまで…」

「ちょっ…

ちょっとアンタ！！」


『今･･･1000…いや…2000メートル…
落下中はアイツの制御はかからない。
重力制御をして落下速度を削りながら、ギリギリの高さで見極めて、最大まで反発させれば･･･』
「！？

向きが？
ちょっ…
やめてよ！こんな体勢で落ちたら、本当にバラバラになっちゃうでしょ！！」


「重力制御を逆転させて落下速度を増してやるからな。」

「ハァ？何で加速させるワケ？」

「本当は成層圏辺りからやりたいんだが、的に狙いが定めにくいからだ。その距離の不足分を足すんだよ」

「ワケ分かんない！！それに的って…何なのさ！」

「丁度今、おまえの真下にある防衛軍の戦艦だ。」

「ウ･･･ウソでしょ？」

「戦艦を操っておまえにぶつけてやる事も考えていたんだが、
こうした方が面白いだろう？」

「そんな･･･！？」

『キリユウ隊長！

…隊長？

…応答して！！

･･･ウッ･･･

…なに？妨害電波？

…！重力制御の発信電波が！！』

ま･･･待っ…！！」





つづく

「なんて頑丈なヤツだ」

「おら・・・」

「ん？関節がクタクタだ。」

「中身がグシャグシャで、立とうにも立てないか」

「む？反重力光線の効果が落ちているな…あの爆発でだいぶ吹飛んだか。」

「ようし、それじゃあ、浴びせ直して体がバラバラになるまで試してみようか…」

「おら、どうした？　さっきから反応が無いなぁ…んん～･･･？

コイツ･･･死んでるのか？

そうか…死んだか…
てことは…だなぁ。

誰も倒せなかったウルトラ戦士を、オレが倒したって事だな！？
そうだよな！オラ！答えろよ！！出来んだろ？ざまあみろ！！

ヘッ…へへヘッ…　　ん？…まてよ…フリーズモードで意識を遮断しているだけかもしれないぞ。
そうだ…　　それなら。」



「外は収まった様だな。ワタベ！大丈夫か」

「はい…イテテ…
ヘッドスライディングなんて何年振りやら。」

「ホーク３号のコンテナがシェルター代わりに成ったな。
これが無かったらどうなっていたか･･･。」

「隊長～！もう良いっしょ？凛ちゃんの様子を確認に行かせてくださいよぉ～」

「自分たちの盾になってあんなに痛め付けられて･･･
早く自分達が無事だって事を知らせてあげないと…。」

「まあ待て。その役目はワタベにやってもらう。
俺たちはまず負傷者の体調確認と応急処置。それが済んだら
イノガシラは３号の点検、マキシマはポインターの点検だ。」

「隊長～！！」







「ワタベ！」

「隊長！」

「ケガ人の応急手当は済んだが、妨害電波で基地とも連絡が取れない。
シブリンの様子はどうだ？」

「はい、あれを…」

「シブリン！？
全身･･･何だあの色は。
ゴドラ星人はどうした？」

「ええ、様子が怪しいので接近は避け、ここで監視を始めて10分。
ああして彼女が立っているだけです。
ゴドラ星人の姿は･･･！

居ました！彼女の足元です！」

「人間サイズになっていたのか。それにしても・・・
ワタベ･･･お前にはどう見える？」

「自分には、ゴドラ星人とシブリンが仲良くしているようには見えませんが、
客観的にはそう見えたとしても、自分は断じて認めません。

彼女は…、自分達を守る為に、ゴドラ星人と戦って…」

「･･･ああ･･･。

ホーク３号の官能通信機にも応答しない。
彼女の意識が途絶えているとすれば、催眠波か何かで操られて…
っ！？ああっ倒れる！」　

「浮いて？」　

「動きが不自然だな。催眠術の類いじゃ無さそうだな。」

「あっ！あれですよ！彼女の全身の色。
護衛艦のように赤いガスを浴びさせられて、身体の自由が奪われているんではないでしょうか」

「ゴドラ星人自身が･･･シブリンを操縦している？
あのガスは、ただ浮かせるだけじゃないのか…」

「ん？何を・・・！？」







「うわあああっ！！」




「こちら宇宙ステーションＶ-５！　地上から高熱源体の射出を観測！

熱源の先端はおよそ７万キロメートルまで達したところで減衰し、消滅。」

「な…なんですかあの光線…」

「俺にも…分からん…」


『あれだけの光線を彼女が出せるなんて聞いていないぞ。』



「おいおい…コイツ…こんなにスゲェ光線が撃てるのか…
ゴドラ星の破壊砲でもこれだけの出力は出ないぞ。」

「…だが、今はオレの…へヘッ…

オレ様の武器ってワケだ。ヘッヘッヘッ…

腕を動かすテストをしていて、思わぬものを手に入れたぞ」

「スゲェなぁ・・・
こうして見ると、頼もしいじゃねぇか。」

「さっきの威力を見て地球人どもも震え上がっただろうな。
良いデモンストレーションになったぜ。

適当に動かして都市や基地を破壊させようと思っていたが、
この武器を使って脅した方が断然楽だぜ。」


「さあ、まずは見せしめに地球防衛軍の基地を木っ端微塵にしてやる。」




つづく

「隊長はタケウチキャップの指示に従えって言っていたが、流石にこれは不安だなあ。」

「あの人は『一か八かの賭けですが』と言っている割に、確たる根拠を持っているからその点は安心だ。
それにあの光線が発射されたら、基地どころか世界中が吹き飛んでしまうんだ。

もう時間だ！突っ込め！」


「地球人どもの回答はそれか。
望み通り基地もろとも吹き飛ばしてやる！撃て！！」

「・・・？」

「おい？どうした？」

「ん？光線が出ない？本当に出せないのか？」


「ようし、ゴドラ星人に威嚇射撃だ！」


　「おわあ！！」　

「一体どうしたんだ？何故撃たねェんだ！」


「撃たないんじゃなくて、撃てないんだよ！」

「誰だ！？」

「いつも節約して撃っているのに、
さっきのデカイやつ１発で、エネルギーはスッカラカンに成っちまったんだ。」

「何だと？」

「･･･多分な。」

「ふざけるな！」

「おっと！マキシマ！行ったぞ！」


「シブリンの動きが無い。
タケウチキャップの言っていた通り、隊長たちがゴドラ星人の注意を引いてくれているみたいだ。

イノさん！気付け薬スタンバイ！」

「スタンバイ完了！」

「よっし、命中！」


「クリスタル反応あり！ 急いで着陸して待機だ！」

「よくも凛ちゃんを！！」

「うおおっ！」

「う･･･あ･･･あれ･･･？」

「！？うあっ！うああああああぁっ！！」


「うあっ…痛ッつうううう…」

『･･･なんで･･･こんなに痛い…
…そうだ…

アイツに…落とされて…

！？…た…隊長たちは…？』


『シブリンさん！シブリンさん！聞こえますか？』

「キャップ！？
キャップ！！隊長が！！
キリュウ隊長達が！！」

『全員無事です！それよりも…』

「何だ？やっぱり生きていやがったのか！
こうなりゃ、こいつを使って、この街も基地もぶっ壊してやる！」

「うああっ！？
か･･･身体が勝手に？･･･」


『シブリンさん？』


「ぐッ！痛っ！！ああッ！！」
『なんで？まだ身体の修復が出来ていないの？』


『シブリンさん！意識が戻ったことを、ゴドラ星人に悟れない様にしてください。

貴女の体はゴドラ星人に操られています。エネルギーがチャージされた今、光線を使われたら…シブリンさん！』


「！キャップ･･･それ早く言ってよ･･･ぐぅぅ…」

「意識が戻ったって事は、エネルギーも回復しているのか？
試してみるか。」


「や…やめ…て！！」


「隊長！いい加減、威嚇射撃もツラいっすよ！」


「駄目だ！
銀河連邦警察からの許可が無い限りは、威嚇に徹するんだ！

それに、俺たちの相手をしている間、ヤツはシブリンを操れない様だ。
とにかく適当に打ちまくってでもヤツの気をそらせるんだ」

「…テキトウでいいんスね？」


「これ！どうすればいいのさ！！」


『シブリンさん！貴女の身体を覆っている物質は、
砂粒サイズまで小型化された反重力ユニットです。

強力な電波を使って、それらの回路を動かしていると思われます。対処法は、お分かり頂けますよね？』

「･･･分かるけど･･･全身が締め付けられて･･･苦しい･･･」


「ええい！早く撃て！！」


「う･･･痛ッ･･･や･･･やだァ･･･」


「うらうらぁ！！」
「バカめ！どこ向けて撃ってやがる!」

「！締め付けが？」


「てえぃっ！やあああああああ～！！」



「ぐわァああああ！！なんだ！？
う･･･腕が焼ける～！！」

「うあっ！？脚が！立てない？」

「あぐっ！！」


「ぐうう･･･やべえ･･･反重力光線が･･･」

「そうなっては、もう大人しく降伏するしかないな。」


「へっ！･･･するかよ！」

「うわあ！！」

「マキシマ！退避だ！」

「ここに長居は無用だな」

「あううっ…全身が･･･痛い･･･」

「ダメっ…体が･･･全然動かせない･･･」

「ちぃっ！おまえのせいで！」

「うあっ！」

「ぐはあっ！！」

「へっ！全身クタクタでまともに動かせないだろ。」
「うぐぅっ！！」

「ああっ！！」


「散々蹴飛ばしてくれた借りぐらい返さないとなぁ！！」

「この野郎！！」


「うおおっ！？

あ…当てやがった？」


「ゴドラ星人！
おまえは銀河連邦警察隊員、
および一般市民を殺害した凶悪犯として宇宙警備隊から手配されている。
これ以上の抵抗はやめるんだ！！」


「殺害･･･って、まさかその人たち･･･さっき言ってた･･･」

「･･･」

「鬱陶しい！」

「うわーっ！！」

「ああっ！！」


「コイツはおまえには通じないんだよな。
まぁ、そこでおとなしく寝ていな。」


「今日のところは引き上げるが、
この次は先ずおまえをバラバラにしてやるからな！」

「せいぜい楽しみに待っていな！」

「くうっ」

「絶対、逃がさない･･･」

「関節が潰れていたって…腕だけならテレキネシスで…」

「んぬううう～」

「回復のエネルギーを…全部…」

「トリニティ…スラッシュ…」

「アイツに目がけて…」

「行けェッ！」


「アタック！！」　　


「ぐえっ？」




「･･･はァ･･･はぁ･･･」

「覚醒モード･･･ロック･･･」


つづく

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ジャンル : 趣味・実用

「う･･･う～ん･･･」


「あ！？」


「！隊長！！ワタベさんたちは？」

「ホーク１号を不時着させて、ワタベもイノガシラもピンピンしてる。
心配ない。」

「はぁ･･･良かった･･･」

「それより君の身体の方が心配だ。
発見した時には、糸の切れた操り人形みたいに手足が変な方向に曲がって倒れていたんだぞ。

タケやんからは必ず俺一人で君を探して収容するようにと言われていたが･･･
確かに、あんな姿をマキシマが見たら発狂するだろうな。」

「･･･ゴメン･･･」

「…いや…別に、責めるつもりで言っているんじゃないんだがなぁ…。
君のお陰で要人らも救えた訳だし、被害も最小限に防ぐことが…

･･･

さっき…宇宙警備隊からも事件解決の礼が入った。

タケやんが報告するまで、犯人の特定に至っていなかったんだそうだ。
何しろ生存者が一人もいなくて、事件現場は酷い有様だったらしい。
被害者は全員、おそらくあの高速回転でやられたんだろう。
さすがの君ですら、そんな状態にされるくらいだ･･･って…！？

お？･･･お！おい！もう立てるのか？」

「うん。怪我の回復力は、この姿の方が早いくらいだから。」

「そう･･･みたいに見えるが･･･
ここに安静にさせてからまだ５分も経っていないんだぞ。

ステージで踊るにしたって、技を繰り出すにしたって、
脚を傷めていたらどうにもならんのだ。
もう少し安静にしていた方が良い。」

「大丈夫、見てて。」

「・・・」

「フンッ！」

「ハッ！！」

「たアッ！！」

「てゃアッ！！」




「ハッ！！」

「･･･ね？」

「あ･･･ああ･･･分かった分かった。」

「…もう･･･隊長がそんな不信感ありありじゃ、
マキシマさん達に説得力が得られないよ。」

「そうは言うがな、みんな君の事が･･･」

「ん～･･･、分かった。
みんなには･･･」

「･･･これでよし」

「な･･･なあシブリン。」

「ん？」

「それ、俺にも送ってくれないか。」

「あれ？送ったよ」

「いや、着信無いぞ」

「･･･！」

「ゴメン･･･隊長の奥さんに送っちゃった･･･。」

「！何ぃーッ！？」


おしまい

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