乙女はお姉さまに恋してる(妄想版第2期) 第4話「縁と奇跡と約束と」
瑞穂「おはようございます。紫苑さん。土曜日のご都合の方は如何でしたか?」
紫苑(笑顔で)「如何も何も、天地がひっくり返っても参加すると申し上げたではありませんか。」
瑞穂「ええ、その・・・それはそうですが・・・」(苦笑)
美智子「土曜日に何かあるんですか?瑞穂さん。」
瑞穂「おはようございます。美智子さん、圭さん。
実は、私の実家でメイドをしている者が、
寮母さんの代行で来てくれることになったので、
寮生のみんなで歓迎会を開いてはどうかということになりまして。」
実は、私の実家でメイドをしている者が、
寮母さんの代行で来てくれることになったので、
寮生のみんなで歓迎会を開いてはどうかということになりまして。」
美智子「え?でも、紫苑様は・・・」
紫苑「私は寮生の方々と一緒に、
夏休みやお正月に大変お世話になりましたので、そのお礼を込めて・・・。」
瑞穂「美智子さんたちもいかがですか?
歓迎会といっても、ホームパーティーみたいなものですから。」
夏休みやお正月に大変お世話になりましたので、そのお礼を込めて・・・。」
瑞穂「美智子さんたちもいかがですか?
歓迎会といっても、ホームパーティーみたいなものですから。」
美智子「楽しそうですね。圭さん、どうします?」
圭「パーティーというものには、あまり興味がありませんので、私は遠慮させて頂きます。」
美智子「う~ん、もう・・・。それで、会場はどちらなんですか?」
瑞穂「ええ、学生寮の前です。」
圭「・・・学生寮・・・。」
Aパートその1
まりや「で?主役がここに居ないってのはどーゆーことなのよ。」
瑞穂「あはは・・・その・・・なんとなく・・・こうなる予感はしていたのですけれどね・・・。」
楓(回想)『瑞穂様のご学友が一堂に会される一大イベントに、
メイドの私が何もしないで座っているなど、クビになったも同然。
そのような屈辱には耐えかねますわ。』
楓(回想)『瑞穂様のご学友が一堂に会される一大イベントに、
メイドの私が何もしないで座っているなど、クビになったも同然。
そのような屈辱には耐えかねますわ。』
まりや「ま、楓さんらしいって言えば楓さんらしいわね。どうする?」
瑞穂「ホームパーティーに変更して始めましょうか。」(苦笑)
奏「奏、紫苑お姉さまを呼んでくるのですよ~」
瑞穂「奏ちゃん、ちょっと待っててあげて。
今はきっと、楓さんとお話をしているでしょうから・・・。」
今はきっと、楓さんとお話をしているでしょうから・・・。」
(楓、パーティーの料理の支度をしている。紫苑は手伝いながら、ふと、楓の表情を眺める)
紫苑「・・・」
楓「・・・?どうかなさいましたか?十条様。」
紫苑「ええ・・・楓さん、とても嬉しそうですね。」
楓「そうですか?こうして十条様とお会いできたからですわ。」
紫苑「それはありがとうございます・・・。
ですが、私にはそれとは別に、なにか、とても良いことがあったような・・・
以前お会いした時に比べて明るくなられたような気がします。
ですが、私にはそれとは別に、なにか、とても良いことがあったような・・・
以前お会いした時に比べて明るくなられたような気がします。
例えるなら・・・そうですね、
長年の胸の痞えが取れたような清々しい気持ち、みたいなものを感じるんです。」
楓(唖然とした後、ため息を漏らす)「本当に・・・十条様の前では隠し事が出来ませんわね。」
長年の胸の痞えが取れたような清々しい気持ち、みたいなものを感じるんです。」
楓(唖然とした後、ため息を漏らす)「本当に・・・十条様の前では隠し事が出来ませんわね。」
紫苑「まあ・・・それでは・・・」
楓「はい・・・。実は先日、中学時代の先輩と再会しまして。
その方には、当時、ちょっとしたことで辛く当たってしまい、
一言謝りたかったのですが・・・訳あってそれっきり会えなくなってしまいました。
一言謝りたかったのですが・・・訳あってそれっきり会えなくなってしまいました。
もう・・・会う事は無いと思っていましたから・・・。
こんな形で再会できるなんて・・・
ああ・・・奇跡って本当にあるものなのだと、神様に感謝しているしだいですわ。」
紫苑「楓さん、思わぬ人との再会というものは、案外、
色々なめぐり合わせを重ねるうちに、必然的に起こるものですよ。」
色々なめぐり合わせを重ねるうちに、必然的に起こるものですよ。」
楓「・・・確かに、・・・めぐり合わせといえるかもしれませんね。
でも・・・。
・・・十条様は、あまり奇跡などは信じたりはなさらない方なのですか?」
でも・・・。
・・・十条様は、あまり奇跡などは信じたりはなさらない方なのですか?」
紫苑「どちらかといえば・・・信じないというよりは、
奇跡や偶然と言う言葉に期待するより、現実にある今を大切にしたい・・・。
現実主義というほどではないのですが、そう思うことのほうが多いですね。
・・・もし・・・この世に本当に奇跡と言うものがあるのでしたら・・・。(少し表情が暗くなる)
奇跡や偶然と言う言葉に期待するより、現実にある今を大切にしたい・・・。
現実主義というほどではないのですが、そう思うことのほうが多いですね。
・・・もし・・・この世に本当に奇跡と言うものがあるのでしたら・・・。(少し表情が暗くなる)
・・・あ・・・ごめんなさい。私ったらつい・・・
あまり他の人には言わないようにしているのですが・・・。
気を悪くなさらないでください。」
あまり他の人には言わないようにしているのですが・・・。
気を悪くなさらないでください。」
楓「いえ・・・。
ところで十条様。私、以前からお伺いしようと思っていたのですが。」
ところで十条様。私、以前からお伺いしようと思っていたのですが。」
紫苑「・・・なんでしょう。」
楓「十条様のその、超能力ですわ。瑞穂様の件といい、今日の私といい、
1度や2度お会いしただけで、その人の内面まで見抜いてしまうなどということは、
洞察力が優れているというだけでは説明が付かない様に思いまして。」
1度や2度お会いしただけで、その人の内面まで見抜いてしまうなどということは、
洞察力が優れているというだけでは説明が付かない様に思いまして。」
紫苑「楓さん・・・。その前に、一つだけ、お約束して頂けませんか?」
楓「・・・約束?」
紫苑「これからは、私のことを名前で呼んで頂きたいのです。
折角こうして親しくなっても、なんだか堅苦しくて・・・。」
折角こうして親しくなっても、なんだか堅苦しくて・・・。」
楓「そんな・・・十条様。メイドの分際でそのようなことは・・・。」
紫苑「ですから、こうして、二人の時だけで構いませんから。」
楓「ですが・・・。」
紫苑「瑞穂さんには秘密にしますから。・・・ね?」
楓「あ・・・(軽くため息)はい・・・分かりました。
はぁ・・・なんだか“二人だけの秘密”を盾に、
弱みを握られてしまったようですわ。」
弱みを握られてしまったようですわ。」
紫苑「ウフフ…。では楓さんも、
私が困るような秘密の約束をしてみては如何ですか?」
私が困るような秘密の約束をしてみては如何ですか?」
楓(上目遣いで)「急に言われましても・・・
(ため息)・・・しばらく考えさせてくださいな。」
(ため息)・・・しばらく考えさせてくださいな。」
紫苑「ええ・・・。」
美智子(今頃かと苦笑しながら)「瑞穂さん・・・実は、さっきからずっと居ないんですよ。」
瑞穂「え・・・そ・・・そうでした?はは・・・」
(その様子を角からこっそり見守る瑞穂、まりや、美智子、奏、由佳里)
美智子「圭さん、多分、ずっとあのお部屋の前に立ったままなんですよ。」
美智子「圭さん、多分、ずっとあのお部屋の前に立ったままなんですよ。」
瑞穂「一体何をしているんでしょう・・・」
『やっぱり・・・一子ちゃんのことが分かるのかなぁ・・・。』
瑞穂の回想
一子「いーです いーでーす 皆さんだけでパーティー うらやましいでーす
一子も出たいでーす。」
『やっぱり・・・一子ちゃんのことが分かるのかなぁ・・・。』
瑞穂の回想
一子「いーです いーでーす 皆さんだけでパーティー うらやましいでーす
一子も出たいでーす。」
瑞穂「楓さんの歓迎会だからね・・・。それに紫苑さんや他の皆も来るから、
さすがに・・・ね。」
さすがに・・・ね。」
一子「わかってますよぉ・・・でもぉ・・・お正月も私独りで寮でお留守番でしたし・・・
う~~ん・・・ 出たい 出たい 出たい~!!!」
う~~ん・・・ 出たい 出たい 出たい~!!!」
瑞穂「そ・・・その代わり、日曜日には
一子ちゃんが私にして欲しい事を1日だけ、なんでも聞いてあげるから。」
一子ちゃんが私にして欲しい事を1日だけ、なんでも聞いてあげるから。」
一子「本当・・・ですか?」
瑞穂「ええ。約束します。」
一子「約束ですよぉ~」
回想終了
回想終了
圭「・・・。」
一同(瑞穂、まりや、美智子、由佳里、奏)「・・・。」
圭(ドアに向かって)「こんにちは」
一同「!?」
一子「何なんですかぁ~?あの人~。私の事が分かるんでしょうかぁ~。
はっ!もしやゴーストバスターズかエクソシスト はたまた陰陽師か退魔士では?
だとしたら一子の大ピンチです 消されてしまいます そんなのゴメンですぅ~。」
(天井をすり抜けて屋根の上に)
はっ!もしやゴーストバスターズかエクソシスト はたまた陰陽師か退魔士では?
だとしたら一子の大ピンチです 消されてしまいます そんなのゴメンですぅ~。」
(天井をすり抜けて屋根の上に)
圭(上を向く)「あ・・・」
一同「あ?」
圭(一同の方を見て)「・・・。」
一同「あ・・・」
圭「皆さん・・・。重要な報告があります。」
瑞穂「・・・。」『正直に話した方がいいのかなあ・・・』
まりや「・・・。」『なんとか話を逸らせられないかしら・・・』
圭「皆さんは・・・、霊魂というものを信じますか?」
まりや(キュピーン)「な~るほど!怪談ですか。
少々季節外れですが、面白い趣向ですわねぇ。」
少々季節外れですが、面白い趣向ですわねぇ。」
瑞穂「ま・・・まりや?」
由佳里「か!・・・怪談~!!!」
由佳里「か!・・・怪談~!!!」
圭「いや・・・怪談・・・という訳ではないのですが・・・」(困り顔)
まりや「圭さん。もしよろしければ、その怪談で
一つ勝負しませんか?」
一つ勝負しませんか?」
圭「突然で困りましたね・・・。
勝負と言うなら・・・勝者の賞品はなんでしょうか?」
勝負と言うなら・・・勝者の賞品はなんでしょうか?」
まりや「あ~・・・いや・・・え~っと・・・
映画のペアチケットなんかどうでしょう・・・。」
映画のペアチケットなんかどうでしょう・・・。」
圭「ペアチケット・・・まあ・・・いいでしょう。
私も怪談は嫌いではありませんから・・・
(目がキラーン)
受けて立ちましょう。」
私も怪談は嫌いではありませんから・・・
(目がキラーン)
受けて立ちましょう。」
瑞穂「あは・・・はは・・・」
(隣で由佳里がガクガクブルブル)
(隣で由佳里がガクガクブルブル)
紫苑「私、病気で入退院を繰り返していましたから、
色々な病気の方や、その家族のやりとりを見ているうちに、
その人が隠そうとしていることや、悩んでいることが
雰囲気から滲み出てしまうのを感じ取ってしまえるようになったんです。」
色々な病気の方や、その家族のやりとりを見ているうちに、
その人が隠そうとしていることや、悩んでいることが
雰囲気から滲み出てしまうのを感じ取ってしまえるようになったんです。」
楓「・・・紫苑様、その、ご病気と言うのは・・・」
圭「それは、10年前の夏休みのある日のことだった・・・。
モノローグ風に
心霊現象に興味を持った、小学3年生の少年は、
雑誌に心霊スポットとして紹介された学校へと、
1人で早朝から何本もの電車を乗り継いでいった。
蝉の激しい鳴き声
明治時代の半ばに建てられた伝統のあるその学校は、
その歴史に伴って、数々の心霊現象の噂がささやかれるようになっていた。
モノローグ風に
心霊現象に興味を持った、小学3年生の少年は、
雑誌に心霊スポットとして紹介された学校へと、
1人で早朝から何本もの電車を乗り継いでいった。
蝉の激しい鳴き声
明治時代の半ばに建てられた伝統のあるその学校は、
その歴史に伴って、数々の心霊現象の噂がささやかれるようになっていた。
学校は部活動もまばらで人気も少なく、忍び込むには絶好の日でもあった。
しかし・・・。
(校舎内をうろつく少年)
『なんにも無いじゃない・・・』
しかし・・・。
(校舎内をうろつく少年)
『なんにも無いじゃない・・・』
所詮、小学生の興味本位。
いくら校舎をくまなく回ろうと、
霊などに出会えるはずも無い・・・。
いくら校舎をくまなく回ろうと、
霊などに出会えるはずも無い・・・。
やがて飽きが差した彼は、家に帰ることにした。
今なら夕飯には間に合う・・・。
帰りの事を考えていなかった彼は、霊よりも親の雷が怖くなってきた。
今なら夕飯には間に合う・・・。
帰りの事を考えていなかった彼は、霊よりも親の雷が怖くなってきた。
雑誌の記事など、ネッシーやUFOと同じようにデタラメなのだ
・・・と、ぼやきながら正門に差し掛かった時・・・
・・・と、ぼやきながら正門に差し掛かった時・・・
『・・・?・・・』
校舎から離れた左手方向の古い建物に目が止まった。
人のいる気配が全く感じられない木造二階建てのそれは、旧校舎のようだった。
少年は、まるで吸い寄せられるようにその建物に入って行き、
気が付くと、部屋の一室に立っていた。
窓や机のある、至って普通の部屋。
にも拘らず、外の騒がしい蝉の音すら聞こえないその部屋は、
全ての音声が遮断された、まるで防音室に入ったような、異様な空間だった。
小さな耳鳴りに違和感を感じた。
全ての音声が遮断された、まるで防音室に入ったような、異様な空間だった。
小さな耳鳴りに違和感を感じた。
『なにか・・・なにかが・・・居る』
すると、急に目まいに襲われ、彼は慌てて窓際の机に手を着いた。
『ど・・・どうしちゃったんだろう・・・』
息苦しさを感じた次の瞬間、少年は視界に飛び込んできたものに戦慄を覚えた。
それは、窓の向こうから見える礼拝堂の屋根の十字架だった。
まるでこの建物を監視するように位置する礼拝堂の存在が、
少年は、自分が危険な場所に足を踏み入れたことを直感させた。
少年は、自分が危険な場所に足を踏み入れたことを直感させた。
『ここは・・・きっと・・・悪霊を封印した場所なんだ・・・』
『うわああああ!!』
悲鳴を上げ、逃げようとするが、足がもつれ、その場で倒れてしまった。
急激に全身を悪寒が走り、呼吸も困難になってゆく。
急激に全身を悪寒が走り、呼吸も困難になってゆく。
『あうっ・・・あう・・・た・・・たす・・・』
助けを呼ぶ声を出すことも出来ず、手足もしびれて思うように動かない。
『あ・・・あ・・・・・・・』
やがて、少年の意識は薄れ、命の火は・・・消えていった・・・。」
Aパートその2
モノローグ終了
一同「・・・・・・・」
(瑞穂とまりや、息を呑む
由佳里、ガクガクブルブル
奏、ワクワクニコニコ
美智子、ニッコリ)
(瑞穂とまりや、息を呑む
由佳里、ガクガクブルブル
奏、ワクワクニコニコ
美智子、ニッコリ)
圭「呪いの旧校舎・・・じ・えーんど・・・」
まりや「あーっ!!だめだー!勝負になんないわ~!!」
美智子「まあ・・・圭さんに怪談で勝負を挑むのは難しいと思いますよ。」
瑞穂「さすが圭さんですね。お化けや幽霊を出さない怪談を即興で作るなんて。」
まりや「ふーんだ!どうせ私の怪談はオバケばかりですよーだ!」
圭「いえ、まだ未完成で、色々と突っ込まれそうな部分があるのですが・・・
そんなに喜ばれてしまうと、かえって恥ずかしいですね。」
そんなに喜ばれてしまうと、かえって恥ずかしいですね。」
まりや「突っ込みどころ?そうですわね、圭さんのそのドス暗ぁ~い声が突っ込みどころですわ。
もうちょっと可愛らしく語っていただけませんかしら?」
もうちょっと可愛らしく語っていただけませんかしら?」
瑞穂「まりや・・・可愛く語る怪談って一体・・・。
それにしても、苦しんでいるところなど、
本当に死んでしまうんじゃないかと、
正直ハラハラしてしまいましたよ。」
それにしても、苦しんでいるところなど、
本当に死んでしまうんじゃないかと、
正直ハラハラしてしまいましたよ。」
圭「フ・・・。人々を恐怖のどん底に突き落とす演技無くして
怪談など語れませんよ。」(ニヤリ)
怪談など語れませんよ。」(ニヤリ)
まりや「く・・・くやしい~・・・。」
由佳里「・・・その呪いって・・・作り話なんですよ・・・ね・・・」
まりや「主人公が死んでるんだから、こんなの作り話に決まってるじゃない。」
圭「フ・・・さあ、どうでしょう。
奏、あなたなら、この呪いをどう捉える?」
奏、あなたなら、この呪いをどう捉える?」
奏「はいなのです。それは呪いではないのですよ。」
一同(瑞穂、まりや、由佳里)「え?」
奏「真夏の昼、誰も居ない密閉された部屋、
そこで起こるめまいや頭痛などの感覚異常となれば、
自ずと答えは出てくるのですよ。」
そこで起こるめまいや頭痛などの感覚異常となれば、
自ずと答えは出てくるのですよ。」
まりや「そうか!熱中症ね!」
奏「その通りなのですよ。
毎年その時期になると新聞紙上を賑わしている典型的な事故なのですよ。」
毎年その時期になると新聞紙上を賑わしている典型的な事故なのですよ。」
圭「ま・・・そんなところですね。」
瑞穂「新聞記事からこんな怪談を思い付くなんて。
圭さんは想像力がとても豊かなんですね。」
圭さんは想像力がとても豊かなんですね。」
圭「お褒め頂いて申し訳ありませんが、この怪談は、
想像でもなければ記事の引用でもありません。
実体験に若干の脚色を施しただけです。」
想像でもなければ記事の引用でもありません。
実体験に若干の脚色を施しただけです。」
瑞穂「実体験って・・・ええ!?まさか・・・」
圭「はい。何を隠そう、真夏の空き部屋に忍び込み、
熱中症で倒れて三途の川を渡りかけた子供は、
この私なのです。」
熱中症で倒れて三途の川を渡りかけた子供は、
この私なのです。」
まりや「ええっ!?でも、お話の主人公は男の子じゃあ・・・」
圭「自分を物語の主人公にする場合、故意に自分であることを隠すために、
年齢や性別を変えることはしばしば使われる手法ですよ。
ま、当時は髪も短く服もTシャツにジーンズでしたから、
実際に男の子に間違われてばかりいましたが。」
年齢や性別を変えることはしばしば使われる手法ですよ。
ま、当時は髪も短く服もTシャツにジーンズでしたから、
実際に男の子に間違われてばかりいましたが。」
瑞穂「あ・・・はは・・・」
圭「ちなみに、忍び込んだその部屋が・・・先ほど私が立っていたあの部屋。」(指を差す)
一同(瑞穂、まりや、由佳里)「エ゛エ゛~っ!!」
瑞穂『それって、つまり、幽霊ってのは一子ちゃんのことで・・・え?・・・違う違う!
ただの熱中症なんだから、呪いじゃなくって・・・えええ?』
まりや『う~ん・・・せっかく話を逸らしたと思ったのにぃ・・・まったく・・・。』
由佳里『い・・・一子ちゃんがそんな・・・悪霊だなんて・・・。』
ただの熱中症なんだから、呪いじゃなくって・・・えええ?』
まりや『う~ん・・・せっかく話を逸らしたと思ったのにぃ・・・まったく・・・。』
由佳里『い・・・一子ちゃんがそんな・・・悪霊だなんて・・・。』
圭「皆さん、なかなかいい驚きっぷりで。」
まりや「で・・・でもっ・・・物語では死んじゃってるのに、どうして助かったの?」
圭「はい、残念ながら、実は私もよく覚えていないのです。
なんとなく、抱きかかえられたときの香りとか・・・ダメですね。
この怪談が未完成なのも、その為なのです。
なんとなく、抱きかかえられたときの香りとか・・・ダメですね。
この怪談が未完成なのも、その為なのです。
圭の回想
気が付くと、私はベッドの上で寝かされていました。
そこは、この学校の医務室でした。
気が付くと、私はベッドの上で寝かされていました。
そこは、この学校の医務室でした。
医務室の先生の話によると、あの部屋は昔、
事故があって人が亡くなったために
ずっと空き部屋になっていたのだそうです。
事故があって人が亡くなったために
ずっと空き部屋になっていたのだそうです。
毎月命日に、その部屋に供養に来られる遺族の方が、
たまたまその日、忘れ物を取りに来て、倒れていた私を見つけ、
医務室まで運んでくれたらしいのです。」
圭の回想終了
たまたまその日、忘れ物を取りに来て、倒れていた私を見つけ、
医務室まで運んでくれたらしいのです。」
圭の回想終了
瑞穂「たまたまって・・・それじゃあ」
圭「はい、もし、その人が来ていなければ、
本当に私は死んでいたかもしれませんね。
奇跡と言うべきかなんと言うか・・・。
本当に私は死んでいたかもしれませんね。
奇跡と言うべきかなんと言うか・・・。
ま・・・これが悪霊の呪いかどうかについては・・・・・・」
由佳里「そんな!!その幽霊が悪霊なんてことは・・・絶対にないと思います!」
まりや「由佳里・・・」
瑞穂「由佳里ちゃん・・・」
圭「・・・・・・」
由佳里「きっと幽霊は・・・寂しくて人を呼び寄せたんだと思います!
呪いなんかじゃ・・・呪いなんかじゃ・・・」(ベソをかく)
呪いなんかじゃ・・・呪いなんかじゃ・・・」(ベソをかく)
圭「由佳里さん・・・。
あの部屋の幽霊を、良いものか、悪いものかを判断する必要があるのなら、
私は迷わず、良い幽霊だと判断しますよ。」
あの部屋の幽霊を、良いものか、悪いものかを判断する必要があるのなら、
私は迷わず、良い幽霊だと判断しますよ。」
由佳里「・・・え?」
圭「考えてもみて下さい。
命日に遺族が訪れるとすれば、普通はお墓ですよね。
あのような空き部屋にわざわざ出向くということは、
あの部屋が遺族にとっても思い出深い大切なものであると同時に、
その霊が生前からとても愛されていたと言うことになると思います。
そんな霊が悪霊であると思いますか?」
一同「・・・」
命日に遺族が訪れるとすれば、普通はお墓ですよね。
あのような空き部屋にわざわざ出向くということは、
あの部屋が遺族にとっても思い出深い大切なものであると同時に、
その霊が生前からとても愛されていたと言うことになると思います。
そんな霊が悪霊であると思いますか?」
一同「・・・」
圭「遺族が忘れ物を取り来て私を見つけたという偶然にしましても、
むしろ、倒れた私を助けるために、
霊が遺族の人を呼び寄せたのだと・・・私は思いますが。
むしろ、倒れた私を助けるために、
霊が遺族の人を呼び寄せたのだと・・・私は思いますが。
・・・いかがだと思われますか?瑞穂さん。」
瑞穂「・・・圭さん・・・。由佳里ちゃん、
私は圭さんの言うとおりだと思うのだけど、どうかしら?」
私は圭さんの言うとおりだと思うのだけど、どうかしら?」
由佳里「は・・・はいっ・・・そ・・・そうですよね。
ごめんなさい・・・。」(笑みがこぼれる)
ごめんなさい・・・。」(笑みがこぼれる)
圭「・・・みなさん。そもそも怪談というものは、宗教に関心の無い者や、
神仏を蔑ろにする者に警鐘を鳴らす為に作られたものなのです。
神仏を蔑ろにする者に警鐘を鳴らす為に作られたものなのです。
それが娯楽の一つになってしまって、
本質が失われつつあるのが、私は残念でなりません。」
本質が失われつつあるのが、私は残念でなりません。」
瑞穂「本質・・・」
圭「亡くなった者への敬愛の念を大切にするということですよ。」
一同(感銘しきった表情)「・・・・・・・。」
(圭、一同を見渡す)
圭「・・・さて、奏!」
圭「・・・さて、奏!」
奏「はいなのです!」
圭「皆さんの食いつきは良好でしたから、
今回の怪談を編集して“聖應伝説・Xファイル・ば~い演劇部”に追加しておくように。」
今回の怪談を編集して“聖應伝説・Xファイル・ば~い演劇部”に追加しておくように。」
奏「了解しましたなのですよ~。」
まりや「せ・・・聖應伝説?」
瑞穂「え!?え・・・Xファイル?」
奏「学院内で起こった全ての噂を記録した、演劇部の極秘ファイルなのですよ。」
圭「こら奏、余計な事は言わなくて良い」
まりや「じ・・・じゃあ、今のや前から伝わっている噂ってのは・・・」
圭「さあ・・・ご想像にお任せします。」
一同唖然「あ・・・・・・。」
美智子「ウフッ。皆さん、完全に圭さんのペースに嵌められてしまいましたね。」
一同唖然「・・・・・・。」
楓「あら、皆様、どうなさったのですか?」
Bパート その1
由佳里・奏「うっわあ~!!」
「紫苑様~!!」
「紫苑様~!!」
まりや「あら・・・まあ・・・」
楓「十条様がどうしても着てみたいと仰るので・・・。」
紫苑「私はただ・・・素敵なメイド服ですね、と申し上げただけなんですが・・・。」
瑞穂「でも、その服、どうされたのです?」
楓「以前、私用に何色か仕立てて頂いたものなのですが、
その中でずっと仕舞ったままでいたものです。
サイズも十条様に丁度で、良かったですわ。」
その中でずっと仕舞ったままでいたものです。
サイズも十条様に丁度で、良かったですわ。」
奏「なんだか楓さんが二人になったような気がするのですよ。」
まりや「う~ん・・・でも・・・、
なーんか・・・、もの足りない気がするのよねぇ・・・。」
なーんか・・・、もの足りない気がするのよねぇ・・・。」
紫苑「あら・・・まりやさんもそう思われましたか。
私も・・・せっかく素敵な服を着させて頂いたのに・・・なんだか申し訳なくて。」
私も・・・せっかく素敵な服を着させて頂いたのに・・・なんだか申し訳なくて。」
由佳里「そうですか~?とっても素敵ですのに~。ねぇ奏ちゃん。」
奏「はいなのです。とっても素敵なのですよ。」
まりや「やーっぱ物足りない!
そーよねー・・・み・ず・ほ・ちゃーん。」
そーよねー・・・み・ず・ほ・ちゃーん。」
瑞穂「え?そんなことは・・・。
とても素敵ですよ。紫苑さん。」
とても素敵ですよ。紫苑さん。」
紫苑「ウフフ・・・」
楓(ニッコリと)「ウフッ」
二人「ウッフフフフ・・・」
瑞穂「?」(妙な気配に気付くと、全員の視線が自分に集中している)
まりや「フッフ~ン・・・」(ニヤリ)
瑞穂「ああっ!? ちょっ・・・まっ・・・む・・・無理ですよ!
第一、楓さんと私とでは服のサイズが違いますし・・・。」
第一、楓さんと私とでは服のサイズが違いますし・・・。」
楓「あら・・・。お言葉ですが瑞穂お嬢様。
つまりそれは私が太っていると・・・そう仰りたいのですね。」
つまりそれは私が太っていると・・・そう仰りたいのですね。」
瑞穂「え・・・いや・・・そんなつもりでは・・・」
楓「確かに私は、お嬢様と比べれば、
お肉の量が、か・な・り・多いのは否定いたしませんが・・・。
なにも・・・皆様の前でご指摘なさらなくても・・・私・・・私・・・・・・。」(声を震わせて泣くフリ)
お肉の量が、か・な・り・多いのは否定いたしませんが・・・。
なにも・・・皆様の前でご指摘なさらなくても・・・私・・・私・・・・・・。」(声を震わせて泣くフリ)
紫苑「まあ・・・楓さん・・・お気の毒に・・・。
・・・ということは、楓さんのサイズにピッタリ合う私も、
太っているということになりますわね・・・。瑞穂さん。」(冷ややかな視線)
・・・ということは、楓さんのサイズにピッタリ合う私も、
太っているということになりますわね・・・。瑞穂さん。」(冷ややかな視線)
瑞穂「いや・・・そうではなく・・・私が痩せすぎているという意味で・・・その・・・」
まりや「あーっ!瑞穂ちゃん、ひっどーい!
そんなの二人が太っているって遠まわしに言っているだけじゃないの!!」
そんなの二人が太っているって遠まわしに言っているだけじゃないの!!」
瑞穂「だ・・・だから・・・あ~ん!!紫苑さ~ん!楓さ~ん!」
二人「ウッフフフフ」
楓「ウフッ。ご安心ください。こんなこともあろうかと・・・
この通り!瑞穂お嬢様のサイズに仕立て直した服をご用意してまいりましたわ。」
瑞穂「な゛!!・・・・・・」
まりや「やっりーぃ!!さっすが楓さん!!」
圭「・・・GJ・・・」
瑞穂「はぁ・・・・・・」『結局・・・こうなる運命なのね・・・』
まりや「さーって!んじゃ瑞穂ちゃーん。着替えてきましょうねー。」
瑞穂「あ~ん・・・も~う!まりやぁ~」
(寮の中に連れ込む)
(一同笑う)
瑞穂「あ~ん・・・も~う!まりやぁ~」
(寮の中に連れ込む)
(一同笑う)
紫苑「楓さん・・・」(ニコッ)
楓「十条様・・・(ニコッ)
作戦、成功ですわね。」
作戦、成功ですわね。」
紫苑「まりやさんの機転も予想通りでしたし。」
美智子「皆さん、素晴らしいチームワークですね・・・。」(苦笑)
まりや「おっ待たせ~!さあ瑞穂ちゃん、出てらっしゃ~い!」
由佳里「お花のアップリケが、とっても可愛らしいです~。」
まりや「なんかミスマッチな気がするんだけど、
瑞穂ちゃんが着ると、どうしてこうもしっくりしちゃうのかしら。」
瑞穂ちゃんが着ると、どうしてこうもしっくりしちゃうのかしら。」
奏「まさしく、お姉さま専用メイド服なのですよ。」
楓「では、瑞穂お嬢様もメイドとして、ひと働きして頂けますか?」
瑞穂「・・・はい・・・」(ションボリ)
(パーティー再開)
美智子「瑞穂さんは本当に何を着ても似合いますね。」
圭「・・・」
美智子「もう・・・パーティーなんですから、もうちょっとニッコリしなさいよぉ~」
圭「・・・」(口元だけ笑顔にしようとするが片側が痙攣する)
美智子「はぁ・・・さっきまでのあの生き生きした表情は何処へ行ったのかしら・・・?」
(楓が二人に近寄ってきた)
(楓が二人に近寄ってきた)
楓「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
私、宮小路家でメイドをさせて頂いております、織倉楓と申します。
諸事情で、この聖應女学院学生寮の寮母を代行させて頂くことになりました。
短い間ではありますが、宜しくお願い致します。」
私、宮小路家でメイドをさせて頂いております、織倉楓と申します。
諸事情で、この聖應女学院学生寮の寮母を代行させて頂くことになりました。
短い間ではありますが、宜しくお願い致します。」
美智子「高根美智子です。こちらこそ、宜しくお願い致します。」(握手)
圭「・・・小鳥遊圭です。・・・宜しく・・・」
楓「宜しくお願い致します。」(握手)
圭「?・・・・・・ぁ」
楓「何か御用がありましたら、何なりとお申し付けください。ではまた。」
圭「・・・・・・」
美智子「?圭さん?」
圭「・・・・・・」
美智子「圭さん・・・年上の趣味も有ったんですか?」
圭「いや・・・そんなんじゃ・・・ない」
美智子「視線が楓さんをロックオンしていませんか?」
圭「いや・・・そんなんじゃ・・・ない」
『あの香り・・・確か・・・』
「・・・そうか・・・
(瑞穂の部屋を見上げる)
・・・会わせてくれたんだね?・・・。」
(瑞穂の部屋を見上げる)
・・・会わせてくれたんだね?・・・。」
美智子「・・・圭さん?」
(圭、おもむろに楓の方に向かう。)
美智子「ちょっ・・・ちょっと、圭さん!」
紫苑「奏ちゃ~ん!!」(奏に襲い掛かる)
奏「はやややや~!」(ギュー)
瑞穂「あはは・・・」
(皆パーティーを楽しむ)
(圭が楓に何か話しかけている)
(圭が楓に何か話しかけている)
(下校する貴子と君枝)
貴子「ごめんなさいね君枝さん。せっかくの休みだというのに・・・」
君枝「会長お独りで仕事をされていて、またもしものことがあったら・・・。」
貴子「ウフッ・・・そうですわね。お陰でお昼の明るいうちに仕事を済ますことが出来ました。
感謝しますわ。」
感謝しますわ。」
君枝「いえ・・・そんな・・・。」
二人「・・・?」(賑やかな声に気が付く)
貴子「何かしら」
君枝「学生寮の方からのようですね・・・」
(二人、歩きながら)
君枝「そういえば、一昨日、数名の生徒から
休日登校と私服着用の許可申請が提出されていましたが・・・あ・・・。」
(二人、歩きながら)
君枝「そういえば、一昨日、数名の生徒から
休日登校と私服着用の許可申請が提出されていましたが・・・あ・・・。」
(寮のパーティー会場が目に入る)
貴子「・・・!お・・・お姉さま!?」
(パーティーの様子、主に瑞穂にしばらく見惚れる)
『お姉さま・・・なんて可愛らしいお姿・・・』
貴子「・・・!お・・・お姉さま!?」
(パーティーの様子、主に瑞穂にしばらく見惚れる)
『お姉さま・・・なんて可愛らしいお姿・・・』
君枝「?会長?」
貴子「!!な・・・なんでもありませんわ!」
あっ!貴子さーん!!君枝さーん!!」(呼びかける)
貴子「!!」
(うろたえる貴子、瑞穂に向かって丁寧にお辞儀をする君枝)
(うろたえる貴子、瑞穂に向かって丁寧にお辞儀をする君枝)
貴子「・・・フン」(プイッと帰路を目指す)
君枝「あっ・・・会長・・・」(後に続く)
まりや「だーから放っときなさいって言ってるじゃないの。」
瑞穂「でも・・・。」
君枝「会長・・・お姉さまと何かあったのですか?」
貴子「何でもありませんわ。」
君枝「ですが・・・」
貴子「何でもありませんと!・・・?」
(行く先に人の気配、楓が立っている)
(楓、貴子たちに深くお辞儀をする)
(行く先に人の気配、楓が立っている)
(楓、貴子たちに深くお辞儀をする)
楓「私、宮小路家でメイドをさせて頂いております、織倉楓と申します。
いつも瑞穂お嬢様がお世話になっております。
諸事情でしばらくの間、この聖應女学院学生寮の寮母を代行させて頂くことになりました。
以後、お見知りおきを。」
いつも瑞穂お嬢様がお世話になっております。
諸事情でしばらくの間、この聖應女学院学生寮の寮母を代行させて頂くことになりました。
以後、お見知りおきを。」
貴子「わ・・・私は・・・」
楓「はい、聖應女学院生徒会会長の厳島貴子様・・・でございますね。」(笑顔)
貴子「は・・・はい・・・?」
楓「そしてそちらの方が、同じく生徒会会計の菅原君枝様。
お二方のことは、常々瑞穂お嬢様から伺っております。」
お二方のことは、常々瑞穂お嬢様から伺っております。」
貴子と君枝「え・・・?」
楓「厳島様はとても公明正大で、常に生徒の総意を尊重される、
民主主義の鏡のようなお方。」
民主主義の鏡のようなお方。」
貴子「は・・・はあ・・・」(顔を赤らめる)
楓「菅原様は規律正しく、常に細やかな配慮を欠かさないお方で、
厳島様にとっても、聖應女学院の生徒会にとっても欠かせない存在だと。
このように伺っております。」
厳島様にとっても、聖應女学院の生徒会にとっても欠かせない存在だと。
このように伺っております。」
君枝「お・・・お姉さまが・・・」(顔を赤らめる)
楓「そのような素晴らしいお二方に、
私も、是非お目にかかりたいとかねがね思っておりました。
こうしてお会い出来たのも、きっと何かの縁と思い、
メイドの分際で無礼ではありますが、お呼び止めしたしだいですが・・・
ご都合の方はよろしかったでしょうか?」
君枝「会長・・・」
私も、是非お目にかかりたいとかねがね思っておりました。
こうしてお会い出来たのも、きっと何かの縁と思い、
メイドの分際で無礼ではありますが、お呼び止めしたしだいですが・・・
ご都合の方はよろしかったでしょうか?」
君枝「会長・・・」
貴子「お・・・お褒めに預かり・・・大変・・・恐縮に存じます。
・・・そうですか・・・お姉さまが・・・そのような・・・。(笑みがこぼれる)
君枝さん、今日は私の迎えの車で、家まで送って差し上げますから、
お付き合いしていただけますか?」
・・・そうですか・・・お姉さまが・・・そのような・・・。(笑みがこぼれる)
君枝さん、今日は私の迎えの車で、家まで送って差し上げますから、
お付き合いしていただけますか?」
君枝「え!?私もですか・・・。」
貴子(小声でやや強い口調で)「誘いを受けているのは、私とあなたの二人ですのよ。
私やお姉さまの使いの者に恥をかかせるおつもりですか?」
私やお姉さまの使いの者に恥をかかせるおつもりですか?」
君枝「いえ・・・そんなつもりでは・・・」
貴子(やさしい口調で)「・・・君枝さん、あなたも一度、
間近でお姉さまの人柄に触れてみると宜しいですわ。」
間近でお姉さまの人柄に触れてみると宜しいですわ。」
君枝「会長・・・はい、分かりました。」(戸惑い気味ながらも笑みがこぼれる)
貴子(楓に)「・・・では、ご好意、ありがたくお受けいたしますわ。」
楓「ありがとうございます。では、こちらへ・・・。」
(楓、二人を案内しながら瑞穂に向かってウインクをする)
まりや「はぁ~・・・さすがねぇ楓さん。貴子の弱点をアッサリ突いちゃったみたい。」
圭「所詮、大人と子供・・・」
瑞穂「楓さん・・・。」(笑みがこぼれる)
Bパートその2
(パーティーを楽しんでいる)
瑞穂「もうそろそろ・・・着替えてもいいかしら」
まりや「あ~ん!ダメダメ!今日は1日ずっとこれ着てるの!」
瑞穂「え~っ!でも~」
まりや「ダーメ!楓さん達を太ってるだなんて傷つけたバツよ!」
楓「瑞穂お嬢様!」
瑞穂「はいっ?」 (楓、瑞穂を凝視している)
楓「よろしく、お願いいたしますね。」
楓「よろしく、お願いいたしますね。」
瑞穂「・・・分かりました」『とほほ・・・』
まりや 「瑞穂ちゃん!」(瑞穂に何か耳打ち)
瑞穂「あ・・・」(何かに気が付く)
奏「ぷは~~」(紫苑から開放される)
(瑞穂たちの楽しむ姿)
(それを見つめる楓、やがて何かを思い出したように涙ぐみ、慌てて寮の中に駆け込む。)
紫苑「?・・・楓さん?」
(紫苑、楓を気にかけ後に続く。)
紫苑「楓さん・・・。」
楓「紫苑様・・・。友人として、一つだけお約束して頂きたい事があります。」
紫苑「約束?・・・え・・・ええ・・・。」
楓「瑞穂様を・・・。
瑞穂様を悲しませることだけは、
決してなさらないと、・・・約束してください。」紫苑「!・・・楓・・・さん・・・。」
楓「私が望むことは・・・唯一、
瑞穂様が幸せになって頂くことだけです。
ですから・・・」
瑞穂様が幸せになって頂くことだけです。
ですから・・・」
紫苑「楓さん・・・ずるいですわ。そのような約束事をこんな風にされたのでは・・・
受け入れるしかないではありませんか・・・。」
受け入れるしかないではありませんか・・・。」
楓「はい・・・私・・・ずるい女ですから・・・。」
紫苑「・・・分かりました。
・・・でも、瑞穂さんを・・・困らせることは、しても構わないですよね?」
楓「・・・それは(笑みをこぼす)・・・もちろん・・・フフッ」
瑞穂「今日はありがとうございました貴子さん、君枝さん。」
貴子「いいえ、お姉さまのお心遣いに気付かず、
つまらぬ事で腹を立ててしまい、申し訳ありませんでした。」
瑞穂「私の方こそ、はっきり態度を示さなかった為に
貴子さんにご心配をかけてしまいました。本当にごめんなさい。」
つまらぬ事で腹を立ててしまい、申し訳ありませんでした。」
瑞穂「私の方こそ、はっきり態度を示さなかった為に
貴子さんにご心配をかけてしまいました。本当にごめんなさい。」
貴子「お姉さま・・・。で・・・では、約束してくださいますか?」
瑞穂「約束?」
貴子「ええ。今後、お姉さまに何か困ったことが起きたら、
必ず私に打ち明けてくださると。
私、もうお姉さまが辛そうにしている姿を見るに忍びませんから。」
必ず私に打ち明けてくださると。
私、もうお姉さまが辛そうにしている姿を見るに忍びませんから。」
瑞穂「貴子さん・・・(息を漏らす)分かりました。約束します。」
貴子「いいですわね。君枝さんも今のお姉さまの言葉、聞きましたわね?」
君枝「あ・・・はい。確かに。」(笑顔)
貴子「で~は、お姉さま、ごきげんよう。」
瑞穂「はは・・・ごきげんよう。貴子さん、君枝さん。」
君枝「ごきげんよう、お姉さま。」
(二人、厳島のリムジンに乗り込む。リムジン、出発する)
瑞穂「はあ・・・」(ため息)
まりや「どーしたのっ?瑞穂ちゃん。」
瑞穂「大変な約束をしちゃったなあ・・・って、
私って、すぐ顔に出てしまうから・・・。」
瑞穂「大変な約束をしちゃったなあ・・・って、
私って、すぐ顔に出てしまうから・・・。」
まりや「いーんじゃないの?とりあえず、バレンタインデーは安泰ってことで。」
瑞穂「ちょっ・・・まりや・・・!」
楓「まあ・・・お嬢様と厳島様とは、そのようなご関係だったのですか?
私、初耳でしたわ。仰って頂ければ、もう少し気をお利かせしましたのに・・・。」
私、初耳でしたわ。仰って頂ければ、もう少し気をお利かせしましたのに・・・。」
瑞穂「もう!まりや!これ以上話をややこしくしないで!」
まりや「ひや~瑞穂ちゃん怖ぁ~い(逃げ出す)
あっ・・・と、それでは皆さま、ごきげんよう」
あっ・・・と、それでは皆さま、ごきげんよう」
紫苑、美智子、楓「ウフフ」
紫苑「ごきげんよう、まりやさん。」
美智子「ごきげんよう。」
紫苑「ごきげんよう、まりやさん。」
美智子「ごきげんよう。」
紫苑「では瑞穂さん、楓さん、ごきげんよう」
美智子「ごきげんよう」
美智子「ごきげんよう」
瑞穂「ごきげんよう、紫苑さん、美智子さん」
(楓はお辞儀)
(紫苑、美智子、タクシーに乗り込む)
(楓はお辞儀)
(紫苑、美智子、タクシーに乗り込む)
圭「今日は・・・とても意義のある一日でした。
瑞穂さん・・・ありがとう。
そしてあなたに出会えたことを、改めて神に感謝します。」
瑞穂さん・・・ありがとう。
そしてあなたに出会えたことを、改めて神に感謝します。」
瑞穂「圭さん・・・なにもそんな大げさに言わなくても・・・」
圭「いえ、今日ほど神に感謝したいと思ったことはありません。
やはりこれは、奇跡というほかはありませんから。」
やはりこれは、奇跡というほかはありませんから。」
瑞穂「そうですか・・・。私も、圭さんが経験した奇跡を信じていますよ。」
圭「ありがとう・・・では、ごきげんよう。」
瑞穂「ごきげんよう、圭さん。」
(圭もタクシーに乗り込み出発。見送る瑞穂と楓)
瑞穂「圭さん・・・どうしたんだろう。
・・・あ・・・そういえば、さっき、楓さんと何か話していましたよね。」
・・・あ・・・そういえば、さっき、楓さんと何か話していましたよね。」
楓「え?・・・ええ・・・男装がとてもお上手なのですねとか、そのようなことを少々。」
瑞穂「え?ど・・・どうしてですか?」
楓「決まっているではありませんか。
ここに女装がとてもお上手な男性が居るのですから、
その相対するものに興味が湧くのは当然のことですわ。」
ここに女装がとてもお上手な男性が居るのですから、
その相対するものに興味が湧くのは当然のことですわ。」
瑞穂「もう・・・楓さん・・・。」
楓「ウフフ。ところで瑞穂様。
瑞穂様は“奇跡”というものを、御信じになられますか?」
瑞穂様は“奇跡”というものを、御信じになられますか?」
瑞穂「どうしたんですか?楓さんまで。」
楓「先ほど御二方が、奇跡について熱く語られていたようなので、少し気になったまでですよ。」
瑞穂「・・・うん、そうだね・・・。僕は信じているよ。
こうして素敵なみんなとめぐり会えた事も奇跡だと僕は思っている。
だからこそ、みんなのことを大切にしたいんだ。」
こうして素敵なみんなとめぐり会えた事も奇跡だと僕は思っている。
だからこそ、みんなのことを大切にしたいんだ。」
楓「それを聞いて安心しましたわ。瑞穂様。」
瑞穂「安心?」
楓「さて・・・。無理強いをさせて大変ご無礼致しました。
どうぞお着替えになってください。」
瑞穂「あ・・・これ。うん・・・もうちょっと待ってて。」
楓「さて・・・。無理強いをさせて大変ご無礼致しました。
どうぞお着替えになってください。」
瑞穂「あ・・・これ。うん・・・もうちょっと待ってて。」
楓「瑞穂様・・・まさか、クセになってしまわれたのでは・・・。」
瑞穂「はは・・・いや・・・そんなんじゃなくて・・・後で持って行くから。」
(寮に駆け足で戻る)
(寮に駆け足で戻る)
楓「・・・かしこまりました。」
瑞穂(部屋に入る)「一子ちゃん、今日はごめんなさいね。」
(あぐらに腕組み後ろ向き)
一子「ふーんです。ホントのホントに今日は散々な一日でしたよ。
皆さんは楓さんのおいしい手料理を 食べ放題 飲み放題 鯨飲馬食の賑やかパーティーを満喫しているのに 私の方は怪しげなゴーストバスターズ風エクソシストまがいで陰陽師もどきの人に付きまとわれて絶体絶命危機一髪の とってもとってもとってもこわーい思いをしていたのですから これほど世の中の不平等を痛感したことはありませんよー。
お陰でこの後瑞穂お姉さまにどんなお願い事をしようかと考える余裕は全く全然これーっぽっちもありませんでしたよーだ!
全くホントにプンスカプンスカプンプンプーンですよ~。」
一子「ふーんです。ホントのホントに今日は散々な一日でしたよ。
皆さんは楓さんのおいしい手料理を 食べ放題 飲み放題 鯨飲馬食の賑やかパーティーを満喫しているのに 私の方は怪しげなゴーストバスターズ風エクソシストまがいで陰陽師もどきの人に付きまとわれて絶体絶命危機一髪の とってもとってもとってもこわーい思いをしていたのですから これほど世の中の不平等を痛感したことはありませんよー。
お陰でこの後瑞穂お姉さまにどんなお願い事をしようかと考える余裕は全く全然これーっぽっちもありませんでしたよーだ!
全くホントにプンスカプンスカプンプンプーンですよ~。」
瑞穂「あ・・・そんなに拗ねないで。ね。こっちを向いて。」
一子「こんなんじゃ一日限定のお願い事では・・・!?」(瑞穂の姿を見て驚く)
瑞穂「どうかしら?この服、楓さんに・・・?」
一子「うっ・・・うっ・・・うわあああん!お姉さま~!!」(瑞穂に抱きつく)
瑞穂「い・・・一子ちゃん、何もそんなに泣かなくたって・・・?」
(一子のヘアピンの飾りが目に止まる)
「一子ちゃん・・・もしかしたら、この服は・・・」『この・・・飾りって・・・』
(アップリケがフラッシュバックする)瑞穂「確かに、ずいぶん着込んだ感じがしたのだけれど・・・。」
一子「私に手料理を披露して下さる時は、いつもその服をお召しになっていました。(笑顔)
(幸穂が料理をする回想)
肉じゃがにカレーライス、豆大福・・・あ~思い出すだけで・・・」(ジュルリ)
(幸穂が料理をする回想)
肉じゃがにカレーライス、豆大福・・・あ~思い出すだけで・・・」(ジュルリ)
瑞穂「そうだったの・・・。
楓さんも人が悪いなぁ・・・母様のだって言ってくれれば良かったのに・・・。」
楓さんも人が悪いなぁ・・・母様のだって言ってくれれば良かったのに・・・。」
一子「それは・・・きっと、楓さんの心遣いだと思います。
皆さんの居るところで、幸穂お姉さまのことを思い出させないようにって・・・。」
皆さんの居るところで、幸穂お姉さまのことを思い出させないようにって・・・。」
瑞穂「・・・一子ちゃん・・・。そうね。
お陰で私は散々だったけれどね・・・ウフフフ。
そうだ。私、明日も一日、この格好で過ごすことにするわ。」
お陰で私は散々だったけれどね・・・ウフフフ。
そうだ。私、明日も一日、この格好で過ごすことにするわ。」
一子「ええ~!!い・・・いいんですかぁ~?」
瑞穂「ええ、今日の一子ちゃんへのせめてものお詫びよ。」(ニコッ)
一子「うわあ~い!嬉しいですぅ~!!」(抱き付く)
瑞穂「ウッフフフ」