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ウルトラシブリン その20 「ミクロの決死戦」

(省略した部分から)ここまでのあらすじ
プロデューサーが出先で倒れ緊急入院。過労と思われた容体は、数日を経ても一向に回復しない。
精密検査の結果、胃と大腸に末期の癌が確認された。
更に、伝染性の高い感染症を複数併発していて、処置の施しようがなく、数日ももたない命と宣告された。
悲しみに暮れる少女達は、隔離病棟の外から、ただ祈ることしか出来ないでいた。

『確かに、祈って治る病気じゃない。でも、私になら・・・』

彼女は、まだ経験した事が無い、自身をミクロ化する能力を使って、プロデューサーの体内に巣食う病巣に挑んだ。

「バ・・・バクテリオファージ?」

「人間ドモハ、ソウ呼ンデイルガ、私ノ名ハ、きんぐばいらす。うぃるすノ帝王ダ。」

「自称帝王に、ロクなの居ないんだけど…。
そんなあんたが、何でこんな事を?」

「コノ人間ハ、免疫力ガ低下シテイテ、私ノ実験ニ、最適ノ環境ダッタ」

「実験?」

「癌細胞ヲ改造シテ、うぃるすノ製造ぷらんとニシテミタ」

「うげ…」
「コノ人間ニ棲ム全テノ細菌トうぃるすハ、私ガ支配シテイル。」

「じゃあ、先ずはあんたを倒せば良いって訳ね。」
「オット、人間ノ体内デ光線ヲ使ッテモ大丈夫ナノカナ?」
「!!」

「!?」

「うわっ!!
ヘリコ…バクター?」

「ハッハッハッ・・・思ワヌ獲物ガカカッタナ」

「獲物って…私を捕らえてどうしようって訳?」

「きみノDNAヲ頂クノサ。」
「・・・な・・・」

「私ノ活動可能ノ環境下デハ、うるとら戦士ノDNAヲ採取スル事が困難ナノデネ。」

「コレデ、カツテ、うるとら戦士共ヲ窮地に陥レタ、伝説ノ兵団ヲ作リ出ス事ガ出来ソウダ」

『こいつ…私の故郷の仲間の事を知ってる?
…まずい、絶対に盗られるわけにはいかない!』
「くッ…」
『皮膚組織、硬化!』


「え?・・・・・・!?」

「痛ッ…」
『ウソ…硬化している三層の皮膚を…簡単に貫いた?どうして?』

「残念ダネェ。分子分解シナガラ穴ヲ開ケル、私ノすぱいくニ、貫ケナイ物質ハ無イヨ。」

「マシテヤ、今ノきみハ、全テノ細胞ヲ極限マデ縮小シテイルダロウカラ、皮膚細胞ノ変換操作マデ行ウ事ハ困難ジャナイノカナ?」

「え?」

「うああぁ・・・」

「DNA採取完了・・・
アトハきみニ消エテモラウダケダ。」

「!?はうぁっ!」

「うぁっ! ああーッ」

「はあっ…!?
うぁ…と…溶け…溶けてく…あぐぅぅ…」

「うあああーッ」

「うぁっ…はぁっ…ああーッ」
「完全ニ溶ケルマデ、アト、1、2分ダナ」

「きみノ最期ヲ見届ケタイトコロダガ、動ケナイ今ノ内ニ撤収サセテモラウヨ。」

「サヨウナラ」
「ま・・・待っ…」
「アハハハハハ」

「う・・・ぐ・・・」

「あ・・・」




続く

ウルトラシブリン その21 「ミクロの決死戦」

「アトハオマエ達ノ好キニシロ」

「待ってよ!!」

「!?」

「・・・・・・」

『臓器の修復は後回しにしたけど…
でも…どう戦う? 光線が使えないんじゃ、あいつを倒すどころか…』

「・・・何トモ・・・無イノカ?」

「ハァ? 何とも無い訳がないでしょ!
お腹を刺されてズキズキ痛くて堪んないわよ!」


「バカナ!アラユル細菌ノ細胞ヲ溶カス溶解液ダゾ。跡形モ無ク溶ケル筈ダ。」

「この通り、溶けてなんかいない。私をあんたのような雑菌なんかと一緒にしないでよ!!」

『!?…雑菌…そうだ!』

「アイツカラヤッテシマエ!」

「逃がすか!!」


「ウギャ」

「捕まえた」
「ヒ」

「さあて・・・」
「マ・・・待テ  人間ノ体内デ光線ハ…」

「使えるわよ」

「ほら」
「??」

「うっかりしていたわ…。あんた達はウィルスや細菌なんだから、光線の波長を変えて、人体に影響しない殺菌光線にすれば良かったんだ…。

出力が抑えられるから、エネルギーの消耗も少ないし。

だけど・・・」

あんたは殺菌光線では済まさないから・・・ね。」
「ヒィィ」


※キングバイラスの哀れな末路は一層凄惨な為、画像は自粛します。

ウルトラシブリン その22 「ミクロの決死戦」

VS 癌細胞



「てえぃッ!!」

VS ヘリコバクター(ピロリ菌)

VS ノロウィルス

VS 大腸菌

VS エボラウィルス

「ぐっ…このっ!!」

「ハァ…  ハァ… 除去… 完了…  

どうにか… 帰るまではエネルギーは…もちそう…かな…。

予想外に手間取った…。雑菌なのに、腹部を狙って来たり、戦略的に私に襲いかかって来るみたいだった…。

!?

フォーラーネグレリア?」

「ケケケケケ」

「あいつが司令塔に成っていたってワケね。
あいつは絶対に倒さないと…」

「ケケケケケ」

「チッ…飛びながらでは、出力が出ない上に、狙いが定まらない!

止まって撃ったら、出力を上げないと、届かないし…。

でも、迷っている余裕だって無いじゃない!!



ハァッ… ハァッ…
大腸まで行って…逆戻りコース…。小腸の、どの辺かな…

このサイズじゃ、片道ですら地球2周分相当なのに・・・!?

あぐっ!!」

「ケケケケケ」
「ま…まだ隠れていたの?

逃がさない!!

うあっ!!

し…出力が!!

もうっ!! 当たってよ!!

あうッ!

ハァッ… ハァッ…
か…完全に…嵌められた…

もう…飛ぶ力が…残ってない…。




続く

ウルトラシブリン その23 「ミクロの決死戦」

「凛ちゃん!!大丈夫ですか?凛ちゃん!」

「凛ちゃん!起きて下さい!」

「ん…?あれ?・・・ここは?」


「カフェの向かい側ですよ!事務所を飛び出して、何処へ行ったのか心配で、探していたんですよ。
そしたら、ここで…」

「・・・事務所を?・・・あぁ・・・」

「祈って治るんなら、お百度だって何だってやるよ!!」


『そうだ…事務所を飛び出して・・・無我夢中で走って…それから…あれ?』

「凄く疲れた顔をしてます。一体、どうしたんですか?」

「ん…ちょっと…」
  『…どうしたんだろう… 何をしていたのか…思い出せない。』

「まさか・・・本当に、お百度さんをしていたのですか?」

「え?お百度・・・あ…そ… う・・・うん…」
『・・・って、やっていないのに、ナニ頷いてんの!』

「ほ…本当…ですか?」

「あ・・・!」
『バレバレじゃないの!』

「本当に…本当に、お百度さんを…していたのですか?」

「あ・・・あの・・・」
『こんな時に嘘なんて…最低っ!』

「…凛ちゃん…」

「!卯月…ごめん…今の・・・」

「凛ちゃん!!すごいですッ !! 凛ちゃん!!本当に、すごいですッ!!」

「・・・・・・え?」

「プロデューサーさん、意識が戻って、病気も治って、退院できるんですって!!」

「は?… 退院…って、そんな・・・冗談よしてよ。 
末期の癌…だよ。 風邪みたいに治るワケないでしょ?」

「嘘じゃありません。今さっきも・・・」

「おっ 居た居た しぶりん発見~
  お~い! しぶり~ん」

「あ、未央、あのさ・・・」

「ほいっ」

「え?」

「プロデューサーとのホットラインが繋がっておりま~す。」

「あ、プロデューサー?」


「ああ…、渋谷さん、御心配をおかけして、申し訳ありませんでした。」

「今、卯月から聞いたんだけど」

「はい、明日、精密検査を受けて、癌の転位や、検出された感染症の発症が無ければ、3日後に退院可能だろう…と。」

「な…それじゃあ、まだ治ったって確証は無いってことじゃないのさ」

「医師からは、そう診断されましたが、私は、明日にでも退院できると程度だと確信しています。

「・・・不治の病と診断された患者本人が、何を根拠にしたら、そんな確信が出来るわけ?
もしダメだったら、みんなをぬか喜びさせた事になるでしょ?」

「それは、大丈夫です。なにしろ、勇者が、私を病魔から救ってくれたので。」

「・・・・・・・は?

ゆう・・・しゃ・・・?」

「はい、勇者です。」

「ちょっ…、あのさ…プロデューサーまで妙な冗談よしてよ。」

「ええ…。フフッ…もちろん、夢で見た出来事なのですが。」

「からかうのもいい加減にして!…って言うか、卯月達にもそんな冗談を言ったの?」

「いいえ、ですので、渋谷さんにだけは、どうしても話しておきたくて・・・。
恐縮ですが、病人のわがままと思って、聞いて頂けませんか?」

「ん・・・別に、構わないけど・・・。」

「私は病に冒されて衰弱し、身動き一つとれない状態でした。
そんな私の命を奪おうと、死神のような恐ろしい魔物たちが近付いてきました。

もうダメか・・・そう諦めかけた時、魔物たちの前に勇者が立ち塞がりました。

勇者は私を守る為、襲いかかる魔物たちを退治して行きました。
しかし、いくら退治しても魔物は次々と現れます。何十…何百と…。

そのうち彼女は、深手を負い、幾度と倒れますが、不屈の闘志で立ち上がって・・・・」

「・・・!」

『・・・そうだ、思い出した。
私は、プロデューサーの病気の原因を突き止めて、直す事が出来るかもしれないと思って、体を縮小して、プロデューサーの体内に…

バクテリオファージや癌細胞を退治して…

あとは…あ…あれ?…でも…エネルギーを使い果たして、動くことも出来ず、出られなくなったはず・・・

なのに、どうやって…

あ?・・・ああ…』

『ここは大腸に近いのか、食道に近いのか・・・位置を掴もうにも、GPSにリンクする出力が出ない。

仮に位置を特定出来ても、それだけで力を消耗してしまう。

…この壁を真っ直ぐ突き破って行くのが、一番の近道。

けど・・・ここは、人間の体の中。出来るわけがない。

そもそも、そんな力も残っていないし…。

完全に八方ふさがり・・・か・・・

・・・

・・・卯月・・・未央・・・プロデューサー・・・

・・・!!


・・・なんて、感傷に浸っている場合じゃないでしょ!

ここから出られないとイロイロとマズイじゃないの!

何か・・・方法を・・・。

一瞬で外に…一瞬で・・・

・・・一瞬・・・

・・・できる…かな・・・

理論も分からないし、どうやって・・・

・・・
・・・初めて光線を出した時みたいに・・・

自分の位置と移動場所だけを意識して…

生命維持エネルギーも、何もかも…‘意識’に集中させてみる・・・。

む・・・ンッ・・・

・・・』


「・・・渋谷さん?  渋谷さん?」


「!?…あ・・・ゴメン・・・」

「とても…、お疲れのようですね。」

「うん…、プロデューサーが心配で、一睡も出来なかったからね・・・フフッ。」

「重ね重ね、申し訳ありませんでした。
・・・でも、そうして無事に外へ出る事が出来て、安心しました。」


「・・・・・・え?」


「最後に一言…

命懸けで私の命を救って頂いた事、本当に感謝しております。」

「・・・ぁ・・・」

「どうかゆっくり、休んでください。
・・・それでは、失礼致します。」

「・・・」


「しぶりん~どうだった?」

「…うん、元気そうだった。病気だったのがウソみたい。」

「何はともあれ、万事めでたしめでたし。
退院の前祝に今から3人で何か食べに行こー!!」

「そうですね!!」

「…うん…
!・・・あ・・・」

「!?しぶりん!」

「凛ちゃん!? 」

「ん…大丈夫・・・プロデューサーの無事が分かったら、急に気が抜けて…」

「…あと、ゴメン、今の話、ちょっとパス。なんか凄く…眠くて…」


「そ・・・そだね。抜け駆けしないでやっぱ全員で退院祝い…だよね。」

「とにかく!事務所で一休みしましょう。」

「スゴイ…1,2,3,グゥ・・・だよ。」

「よっぽど疲れたんですね。お家の方に連絡しておきます。」

「お百度参りの効果、恐るべし。」


『二人ともゴメン。本当は…今何か食べたら、お腹の中が大変な事になるから…。』



おしまい
プロフィール

ガルダンガンガル

Author:ガルダンガンガル
歳を重ねる毎に忘れてしまう幼少のころに手にした、あるいは目にした、おもちゃ(プラモもオマケも“おもちゃ”に含む)に関する記憶を残しておく事から始めたブログも、気が付けば干支が一回り。
今では可動フィギュアに魅せられてイロイロ改造を施してイロイロポーズを取らせたり、二次創作をしてみたり。

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