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Albums of the Month

Albums of the Month (2023年1月)

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ワシは暇だからノーベル賞を考えておった

2023年になり、早くも1ヶ月が経とうとしている。今年もたくさんの面白い音楽と出会えたらいいなと思ってます。


ところでどうやって面白い音楽と出会っていくか?ということだけど、特定のシーン(インディー系とかクラブ・ミュージック系とか)にフォーカスした音楽メディアは今年も一切見ずにやっていこうと。すでに5年くらいそうしてきて、それ以前の、音楽メディアからの情報中心でディグしていた頃よりも自分の趣味嗜好がはっきりした気がするし、よりニュートラルな視点で柔軟にいろんなものが聴けるようになったと思う。ここ数年の傾向で言えば、私がこれまで聴いてきた範疇から微妙に逸脱した音楽──例えばV系だったり、ボカロPやVtuberといったネット界隈の音楽など──を聴く方が好奇心や探求心をそそられるし、より大きな驚きや新鮮さを味わうことができる。なので2023年もそんな感じでやっていくつもりだ。


では2023年最初のAlbum of the Month、今月聴いた作品まとめ。邦楽のみで、1月ということもあって例年通り少なめ。






まずは新譜から。


なきごと / NAKIGOTO, (2023)
★★★★☆
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2人組ガールズ・ロック・バンドのデビュー・アルバム。2枚組で全22曲と気合いが入っていて、これまでのシングルやミニアルバムからも多数収録されている。基本はポップなんだけど随所にオルタナ精神が見え隠れしているところがグッド。

なきごと - "Summer麺"




Subway Daydream / RIDE (2023)
★★★★★
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大阪の4人組バンドの1stフル・アルバム。CINRAでの彼らのインタビュー記事を読む限り(冒頭の文と矛盾してるように見えるかもなので一応弁明しておくと、ディグった後にそのアーティストの情報を音楽メディアから得ようとすることはある)、マイブラ、Dinosaur Jr.、スマパン、スピッツなどが主な影響源として挙げられているが、個人的にはオルタナ、ネオアコ、シューゲイザー的な要素よりも「そこはかとないジュディマリ臭」を強く感じた。ソフトに歌う部分の声質だったり要所要所の節回し、フレーズがなんとなくそれっぽく、各曲の歌詞には随所に「レディオ」やら「スター」やら「ステレオ」みたいなジュディマリっぽいワードも。そもそもバンド名に「Daydream」って入ってるし(これはたまたまか)。


ただ上記のインタビュー上ではジュディマリの名が出ておらず、「親はジュディマリ世代だろうし絶対影響受けてそうなのに…」と思っていたのだが、YouTube上でこんなものを発見できた。

JUDY AND MARY - 小さな頃から (Cover by Subway Daydream)

ほら!ジュディマリカバーしてるじゃん!!俺大正解!!!


…そんな話はさておき、本当に良い曲を書くバンドだ。この辺はスピッツ譲りなんだろうか。どの曲も素晴らしいソングライティングなんだけど、中でも「The Wagon」の切なくも甘酸っぱいメロディがたまらない。

Subway Daydream - "The Wagon"



アッパーな「Radio Star」もめちゃくちゃ良い曲だから貼っておこう。

Subway Daydream - "Radio Star"



▼すごくどうでもいい話、0:50のカットが水曜日のカンパネラの「エジソン」っぽくないですか
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続いて旧譜。

Subway Daydream / BORN (2021)
★★★★☆
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そのSubway Daydreamの2021年の6曲入りEPも合わせて購入。「Canna」はモロにマイブラっぽいシューゲイザーなサウンドだけど、日本語詞によるヴォーカルもクリアに聞こえるので「J-POP×ガチのシューゲイザー」のバランス感が結構新鮮。AIRの「Hair Do」よりもかなりJ-POP的。


こうやってEPとアルバムを合わせて聴くと、初期はインディーっぽさや洋楽っぽさを前面に押し出していたが、現在はよりJ-POP的なスタンスにシフトしているように思われる。それでいいと思うぞ。

Subway Daydream - "Canna"




ぷにぷに電機 / 創業 (2022)
★★★★★
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数年に一度、年が明けて早々に「これあと数週間早く聴けてたら年間ベスト上位に入れてたのに…」ということがある。三浦透子『ASTERISK』(2020年リリース)なんかがまさにそれで、実際2021年1月のAlbums of the Monthでは「去年のうちに聴いていたら年間ベスト・アルバムのTOP5には入ったかも」とか書いてるし。


で、2022年はこれがまさにそう。アルバムが出ていることは去年のうちから知っていただけに、余計に惜しかった。ゆる~い雰囲気の名前からは想像つかないような、しっとりとしたアルトな歌声はとても知的でクールでセクシーだ。R&B、シティ・ポップ、ガラージュといった多彩な各楽曲のいずれにも相性抜群の声だと思う。


そんな声を活かすべく、本作ではKan Sano、Mikeneko Homeless、PARKGOLFなど様々なトラックメイカーが楽曲提供しているが、中でも80KIDZとコラボしたレゲトン・ビートのエレクトロ・チューン「Night Session」がめちゃくちゃかっこいい。失礼ながら80KIDZは久々にその名を目にしたのだが、2000年代後半に「トーキョー・エレクトロ」のシーンにハマっていた自分にとっては思い出深い名である。また、関ジャムでもAwitch「GILA GILA」や今市隆二「辛」などでたびたびChaki Zuluのクレジットも目にするし、シーン終焉後にその担い手たちが音楽性を進化(深化)させ、より洗練された音で活躍しているさまを見るのはとても嬉しいしワクワクする。

ぷにぷに電機×80KIDZ - "Night Session"







■フジロックとサマソニ
フジロックは早割の抽選が始まり、そして今年も外れた。サマソニはヘッドライナーはじめいくつかのアクトが発表された。最近個人的に突然のBlur再評価の波が来てて、発表の2日前もちょうどヘビロテしてたんだよね。今活動してるのかどうかも知らんかったからちょっとびっくりした。去年2日間行って月曜日仕事したらめちゃくちゃ疲れたので今年は1日だけにしようかな。



■フォトハイとP!ATDの解散
2022年の年間ベスト・アルバムにランクインしたバンドが、新年早々2組も解散してしまった。最近はバンドというよりソロ・プロジェクトと化していたPanic! At The Discoは、間もなく子供が生まれるため「家族に集中しエネルギーを注ぎたい」とのこと。昨年リリースの『Viva Las Vengeance』は個人的には『Pretty. Odd.』以来14年ぶりとなる購入で、QueenやElvis Costelloへのオマージュに溢れた素晴らしいポップ・センスを発揮していただけに残念ではあるけど、幸せな家庭を築いていってほしい。


そしてFor Tracy Hydeは、ラブリーサマーちゃんがヴォーカルだった『In Fear Of Love』の頃から好きだっただけに寂しさはある。青春小説のような歌詞、甘美なメロディー、ノスタルジックなサウンドスケープと、フォトハイはまさに青春みたいなバンドだった。本人たちによる解散コメントでも触れられているが、彼らは確かに長く続けるようなタイプのバンドではない思う。残念ではあるけど、フォトハイがフォトハイであるためには今がそのタイミングだったのだろう。


「青春」や「若者」という言葉が似合うからこそ、向こう見ずな実験精神も持ち合わせていたと思う。「さらばアトランティス惑星」「ビー玉は星の味」「アフターダーク」「Just for a Night」「ラブイズブルー」「Chewing Gum USA」など、リリースごとにいくつかの曲で驚きと新鮮さを与えてくれるバンドだった。これからは個々の活動で、フォトハイでできなかったこともどんどんやっていってほしいと思う。



■チェンソーマン
TVアニメ『チェンソーマン』の第一期(第二期もあるよね?)が放送終了した。2年ほど前にアニメ化決定が報じられた頃からずっと楽しみにしていたけど、実は原作漫画は読んだことがなく、『鬼滅の刃』同様にネタバレ回避のため読まないようにしてきた。アニメ版は正直、第一話の時点ではそこまでハマれなかったのだが、第二話以降で早川アキやコベニちゃんといった個性豊かなキャラが登場するにつれグイグイ引き込まれ、最終的にはめちゃくちゃハマった。特にパワーちゃん、ブッ飛んでてかわいすぎる。


アニメ「チェンソーマン」と言えば、毎回ED曲が異なる点もユニークだ。Vaundy、PEOPLE 1、女王蜂といったロック/ポップ系と、Eve、Kanaria、syudouなどボカロP界隈のハイブリッドな人選による一癖ある楽曲たちは、各話エピソードにマッチした世界観を持つ曲調とED映像により、どれも聴き応えがあった。中でもお気に入りはTOOBOEの「錠剤」。これはもうパワーちゃんのPVだろ…(本編ではこんな姿は見られないけど)。

『チェンソーマン』第4話ノンクレジットエンディング / CHAINSAW MAN #4 Ending│TOOBOE 「錠剤」


余談ながら、anoの「ちゅ、多様性」はSpotifyでEXPLICITマークが付いている。Get onて言ってるだけなんですけど?



■米津玄師「KICK BACK」の話
2022年 年間ベスト・ソング[番外編]」にもラインクインしたチェンソーマンOP曲、米津玄師「KICK BACK」の話。関ジャムで蔦谷好位置氏が「イントロがRadioheadの『Paranoid Android』とほぼ一緒」と言っていて、一瞬「ん?」と思ったのだがあらためて聴いてみると確かに似ている。これだけなら、たまたま似ちゃっただけでしょという話なんだけど。チェンソーマンが1997年頃の設定であること、モーニング娘。「そうだ! We're ALIVE」がサンプリングされていること、ビートがドラムンベースであることはすでに知っていたが、モー娘。のデビューとドラムンベースの全盛期(※)が1997年だったことを踏まえると、同年にリリースされた「Paranoid Android」の件もとても偶然とは思えない。
※Roni Size&Reprazent『NewForm』、Photek『Modus Operandi』、Squarepusher『Hard Normal Daddy』といった名盤がリリースされている

『チェンソーマン』ノンクレジットオープニング / CHAINSAW MAN Opening│米津玄師 「KICK BACK」




■水星の魔女
こちらも1月に第一期の最終回を迎えたが……。衝撃展開だったな。いや、ガンダムシリーズなので「Cパートで起こったこと」自体は驚くようなことでもないのだが、これまでの流れから考えるとかなり衝撃度の高い展開だったと思う。とはいえ、これによって4月から放送される第二期が俄然楽しみになった。



■映画
今月は『それでもボクはやってない』『ティファニーで朝食を』『ベルファスト』『アド・アストラ』の4作品を観た。『アド・アストラ』は私の大好きな宇宙SFモノだけど、とにかく映像が綺麗で本物の海王星を見ているような気分になるほどだった。次々と緊張感のある展開が起こるスペクタクル大作的な面もあるけど、『2001年宇宙の旅』を連想させるような重厚で静謐なシーンも多いのがツボで、そういった無言・無音のシーンを彩るMax Richterの劇伴も良かった。






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