Albums of the Month |
先月の記事で「5月は15枚くらい新譜が届く」と書いたけど、コロナの影響で輸入盤の仕入れもうまくいってないのかIceageやThe Armedなど一部は5月中に届かず。発売の1ヶ月前から予約注文しているのに在庫切れと言われてもなあ…。
そんな中でも今月は新譜を10枚聴くことができたし、先日読んだ"ヴィジュアル系の教科書"こと『すべての道はV系に通ず。』に触発されて購入したV系バンドの旧譜など、わりと充実していたと思う。というわけで今月の初聴き音源まとめ。
フリートーク |
先日買った本。
市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず。』
(シンコーミュージック 2018年初版)
ここ数年、私にとってヴィジュアル系(以下V系)は密かなブームとなっている。すでに30年以上の歴史を持ち、その中で複雑に枝分かれし現在ではさまざまなカルチャーと結びついたV系の世界は、これまで表面的にしか触れてこなかった私にとって大変刺激的で興味深く、知的探求心をそそるものだ。
TBS系『マツコの知らない世界』にて4月6日にオンエアされた「ヴィジュアル系バンドの世界」もかなり興味深く、楽しめる内容だった。番組では90年代V系シーンを中心に振り返りつつ、かつて一大ムーヴメントとなったシーンのその後──偏見や差別といった受難の時代を経て、アンダーグラウンド中心に進化を続け、現在ますますカオスで面白いことになっている──といったV系30年史的な内容だったが、番組視聴後にもっとV系についていろいろ知りたいと思いネット検索する中で出会ったのが、番組にも登場しV系の魅力や歴史について語っていた元自衛官のライター・藤谷千明さんと、音楽評論家の市川哲史さんによる対談形式のこの本である。
本の中では、V系30年史をその勃興からヤンキー文化→オタク文化への変遷、ビジネス・マネジメント面、プロデューサー、コミュニティツールの変遷(文通→チャット→SNS)、再結成ブームなどさまざまな角度からディープに分析・考察した超濃密な内容になっており、帯に書いてある通りまさに「ヴィジュアル系の教科書」だ。とは言ってもお固い内容ではなく、むしろ軽妙(市川さんに至っては「度が過ぎた悪フザケ」といった方が近い)なトークを交えた、非常に読みやすいテキストになっている。
私はV系に対し、これまで特に深い思い入れがあったわけではない。藤谷さんと同世代である私はV系が一大ブームとなった90年代中盤~後半に中高生時代を過ごしたので、ラジオやカラオケで必然的にV系の音楽に触れてきたが、あくまで小室系やビーイング系などと並んで「好きな音楽カテゴリのひとつ」でしかなかった。やがて嗜好の変化やブーム終焉も相俟って永らくV系とは距離を置いてきた(後述)が、20年以上の時を経てV系にハマるというのは何とも不思議な因果だ。
『マツコの知らない世界』を観たり、『すべての道はV系に通ず。』を読む中で「あの頃は確かにそうだったな」「いや、自分はこうじゃなかった」などいろんな「V系体験」を思い出したのだが、そのうちこんな疑問が浮かんだ。
自分はいつから「V系」をカテゴリとして意識し始めたのだろう?
自分はいつ、どういう理由でV系から距離を置くようになったのだろう?
今回の記事ではそんな疑問について、実体験を振り返りつつ考えていきたいと思う。
市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず。』
(シンコーミュージック 2018年初版)
ここ数年、私にとってヴィジュアル系(以下V系)は密かなブームとなっている。すでに30年以上の歴史を持ち、その中で複雑に枝分かれし現在ではさまざまなカルチャーと結びついたV系の世界は、これまで表面的にしか触れてこなかった私にとって大変刺激的で興味深く、知的探求心をそそるものだ。
TBS系『マツコの知らない世界』にて4月6日にオンエアされた「ヴィジュアル系バンドの世界」もかなり興味深く、楽しめる内容だった。番組では90年代V系シーンを中心に振り返りつつ、かつて一大ムーヴメントとなったシーンのその後──偏見や差別といった受難の時代を経て、アンダーグラウンド中心に進化を続け、現在ますますカオスで面白いことになっている──といったV系30年史的な内容だったが、番組視聴後にもっとV系についていろいろ知りたいと思いネット検索する中で出会ったのが、番組にも登場しV系の魅力や歴史について語っていた元自衛官のライター・藤谷千明さんと、音楽評論家の市川哲史さんによる対談形式のこの本である。
本の中では、V系30年史をその勃興からヤンキー文化→オタク文化への変遷、ビジネス・マネジメント面、プロデューサー、コミュニティツールの変遷(文通→チャット→SNS)、再結成ブームなどさまざまな角度からディープに分析・考察した超濃密な内容になっており、帯に書いてある通りまさに「ヴィジュアル系の教科書」だ。とは言ってもお固い内容ではなく、むしろ軽妙(市川さんに至っては「度が過ぎた悪フザケ」といった方が近い)なトークを交えた、非常に読みやすいテキストになっている。
私はV系に対し、これまで特に深い思い入れがあったわけではない。藤谷さんと同世代である私はV系が一大ブームとなった90年代中盤~後半に中高生時代を過ごしたので、ラジオやカラオケで必然的にV系の音楽に触れてきたが、あくまで小室系やビーイング系などと並んで「好きな音楽カテゴリのひとつ」でしかなかった。やがて嗜好の変化やブーム終焉も相俟って永らくV系とは距離を置いてきた(後述)が、20年以上の時を経てV系にハマるというのは何とも不思議な因果だ。
『マツコの知らない世界』を観たり、『すべての道はV系に通ず。』を読む中で「あの頃は確かにそうだったな」「いや、自分はこうじゃなかった」などいろんな「V系体験」を思い出したのだが、そのうちこんな疑問が浮かんだ。
自分はいつから「V系」をカテゴリとして意識し始めたのだろう?
自分はいつ、どういう理由でV系から距離を置くようになったのだろう?
今回の記事ではそんな疑問について、実体験を振り返りつつ考えていきたいと思う。
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