photo by Karly Hartzman
「笑わないでほしい、僕の言ったことの半分だけがジョークだから」
リード・シングルだった「Joker Lips」でそう歌っているように、ノース・カロライナ州アッシュヴィルのバンドWednesdayのギタリストでもある
MJ Lendermanは、Anti-移籍第1弾スタジオ・アルバムとなる『Manning Fireworks』で過去の作品に顕著だったバスケットボールやプロレスについてのジョークを控え、(“ジョン・トラボルタの禿げ頭”に気を逸らしながらも)幼い頃に目指していたという聖職者への疑念や、自身の失恋について切実に歌っている。
レコーディングは前作同様地元のスタジオDrop of Sunで行われてはいるものの、アップライト・ベースやフィドルを導入し洗練されたカントリー・サウンドからはローファイさは薄れ、過去にコンピレーションに提供した楽曲を再録した「You Don't Know The Shape」ではクラリネットを使い、レーベルメイトのAndy Shaufを思わせるアレンジに生まれ変わっているのも印象的だ。
2022年の前作『Boat Songs』が絶賛され、一躍新世代のギター・ヒーローと持て囃されるようになったLendermanだが、新作のラストの「Bark At The Moon」ではそんな彼がビデオ・ゲームの『Guitar Hero』でOzzy Osborneの曲を演奏しながら恋人に
「ニューヨークに行かないで、君の服の着こなしが変わってしまうから」と懇願し、数分間に及ぶドローン・サウンドで締めくくられる。その最後の瞬間からは、悲惨な状況ほど笑い話にしてしまいがちな彼の、言葉にならない叫びが聞こえてくるようだ。
今回のインタビューは新作のリリースが発表される前、今年3月のWednesdayの来日公演時に行われたものだが、そんな彼の愛すべきキャラクターは伝わってくるのではないかと思う。先日公開された『Gurdian』の
インタビューでは
「誰かの最低の瞬間を観察すると、ある真実が浮かび上がってくる」と語っていたが、『Manning Fireworks』で描かれているのも誰かの最低の瞬間であり、紛れもない真実だ。