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BUCK-TICK

BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<後編>

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BUCK-TICKにどハマりした話の後編です。前編はこちら。今回のお題は「各作品のレビュー」と「ぼくのかんがえたさいきょうのBUCK-TICKセットリスト」です。


-CONTENTS-
■自分にとっての「それまでのBUCK-TICK」
■どハマりしたきっかけ
■これまでに聴いた作品
■BUCK-TICKの魅力とは
■各作品のレビュー
■ぼくのかんがえたさいきょうのBUCK-TICKセットリスト





■各作品のレビュー

『HURRY UP MODE (1990MIX) 』 (1990)
B-T HURRY UP

1. PROLOGUE
2. PLASTIC SYNDROME TYPE II
3. HURRY UP MODE
4. TELEPHONE MURDER
5. FLY HIGH
6. ONE NIGHT BALLET
7. MOONLIGHT
8. FOR DANGEROUS KIDS
9. ROMANESQUE
10. SECRET REACTION
11. STAY GOLD
12. MOONLIGHT (unreleased version)
13. THEME OF B-T


この「1990MIX」では収録曲の追加や新しいミックスが施されているが、元は87年にインディーズで制作された実質のファースト・アルバム。BOØWYやUP-BEAT、ZIGGY、JUN SKY WALKER(S)といった当時のバンド・ブームのさなか、ビート・ロックの流れを汲み、そこに初期のチェッカーズのような歌謡ロックなノリも加わった作品。

現在のB-Tの魅力のひとつにもなっている「重さ」のようなものはなく、ギターの音はペニャペニャしていかにも「エレキ」といった趣だし、あっちゃん(櫻井敦司)の声も細くて高め。演奏はお世辞にも巧いとは言えないし、アレンジや音作りの面でも一本調子なところはある。が、ソングライティングのセンスに関してはこの頃から一級品で、「FLY HIGH」や「ONE NIGHT BALLET」、「MOONLIGHT」に顕著なように、一発で口ずさめるようなキャッチーさも備わっている。



『SEXUAL×××××!』 (1987)
B-T SEXUAL

1. EMPTY GIRL
2. FUTURE FOR FUTURE
3. DREAM OR TRUTH
4. DO THE "I LOVE YOU"
5. ILLUSION
6. SEXUAL×××××!
7. SISSY BOY
8. MIS-CAST
9. HYPER LOVE
10. MY EYES & YOUR EYES


歌謡チックな要素はやや後退しつつ、メロディアスでアップテンポな傾向が強まったことでより一層ビート・ロック感を強めた作品。その後の進化へと繋がる片鱗のような「MIS-CAST」や「HYPER LOVE」といったダークで妖艶な曲も目立ち始める一方、突き抜けたポップ感を放つ「ILLUSION」や「SISSY BOY」などはアイドル・バンドっぽい雰囲気も。前作よりも音質が良くなったことでリズム隊がタイトに聞こえ、演奏クオリティが格段にアップしたように感じられる。



『ROMANESQUE』 (1988)
B-T ROMANESQUE

1. MISTY ZONE
2. ROMANESQUE
3. AUTOMATIC BLUE
4. HEARTS
5. ROMANESQUE (SENSUAL PLEASURES MIX)


ボーナストラック含む5曲入りのミニアルバムで、作品全体ではリマスターされていない唯一のオリジナル作。インディーズ時代の楽曲の再録となった表題曲は「どうにもならない~」という歌詞がどうしても山本リンダを思い出してしまうが、実際あっちゃんにとっての初めてのライブ体験はデパートの屋上で観た山本リンダらしい。まだまだ当時の日本のバンド・ブームの影響を感じさせる部分が多く、「AUTOMATIC-BLUE」はどことなくジュンスカっぽくもある。



『SEVENTH HEAVEN』 (1988)
B-T SEVENTH HEAVEN

1. FRAGILE ARTICLE
2. …IN HEAVEN…
3. CAPSULE TEARS -PLASTIC SYNDROME III-
4. CASTLE IN THE AIR
5. ORIENTAL LOVE STORY
6. PHYSICAL NEUROSE
7. DESPERATE GIRL
8. VICTIMS OF LOVE
9. MEMORIES…
10. SEVENTH HEAVEN


ビート・ロックからポスト・パンクへの橋渡し的作品で、「かわいいB-T」最後の作品。なんでも、1日1曲を書いたとか、どんな曲か知らないままドラムをレコーディングしたとか、立たせた髪を洗う暇がなかったとか面白エピソード満載なほどに多忙を極める中で制作されたらしい。言われてみれば確かに、新しい試みはいくつか見られるもののそれを十分に練るだけの時間がなく、技術力がアイデアに追い付けていないような部分も感じられる。

しかしそんな状態でもここまでクオリティの高い作品が作れるのはすごいし、特に次作に繋がる「CASTLE IN THE AIR」と「VICTIMS OF LOVE」は非常にかっこいい。デビューからこんなにハイペースでのリリースを要求されたのも、レコード会社にとってB-Tは絶対に売れるという確信があったからだろう。

ちなみに、1曲目「FRAGILE ARTICLE」と「BABEL」(36thシングル)を並べて聴くと、最強レベルの振れ幅の躁鬱状態を味わうことができる。とても同じバンドとは思えない…。



『TABOO』 (1989)
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1. ICONOCLASM
2. TOKYO
3. SEX FOR YOU
4. EMBRYO
5. "J"
6. FEAST OF DEMORALIZATION
7. ANGELIC CONVERSATION
8. SILENT NIGHT
9. TABOO (Interlude melody taken from "TABOO" by Lecuona Margarita)
10. JUST ONE MORE KISS


ポスト・パンクに舵を切り、大成長を遂げたアルバム。現在までで唯一の海外レコーディングで音もかっこよく、何よりまず、現在でもライブで演奏される頻度が高い1曲目「ICONOCLASM」は前作の1曲目とは全く異なるベクトルで、当時のファンを驚かせたことだろう。

尖りまくったパンキッシュなアルバムだが、初のオリコン1位を獲得。前作の「CASTLE IN THE AIR」で手応えを感じたのか、ヴォーカルが全体的に低音重視で表現力が増したし、エフェクター関連機材もいろいろ揃えたようでギターの音もより多彩に。リズム面では単調なビート・ロックはほぼなくなり、四つ打ちの「ICONOCLASM」、ラテンなリズムの「SEX FOR YOU」、イントロがジャズ風の「”J”」、ドラムレスのアコースティック曲「SILENT NIGHT」などヴァラエティ豊かになったことで、バンドとしての成熟を強く感じさせる。レコ大で新人賞を獲得したメジャーデビュー・シングル「JUST ONE MORE KISS」(「重低音がバクチクする。」のキャッチコピーでおなじみ、ビクターのCDラジカセのタイアップ)も収録され、名実ともにブレイク作と言える。



『惡の華』 (1990)
『惡の華 (2015年ミックス版) 』 (2015)

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1. NATIONAL MEDIA BOYS
2. 幻の都
3. LOVE ME
4. PLEASURE LAND
5. MISTY BLUE
6. DIZZY MOON
7. SABBAT
8. THE WORLD IS YOURS
9. 惡の華
10. KISS ME GOOD-BYE


前作でのブレイクを受け、このまま爆竹、もとい破竹の勢いで突き進むかと思いきや、そうはいかなかった。ここでバンドは半年間の活動休止(謹慎)となる。今の時代だったら二度と復帰できないほどネットで叩かれたかもしれないが、ブレイク直後の活動休止はむしろファンの渇望に繋がり、復帰シングル「惡の華」と本作でともにオリコン1位という、さらなる大ブレイクを果たすこととなった。何より、『TABOO』で得たファンの期待に十分に応える、いや期待以上の出来となったのは間違いない。

どこかマウリッツ・エッシャーの絵にも通じるモノクロームのジャケットは、「幻の都」や「MISTY BLUE」、「SABBAT」といった楽曲が醸し出す妖しいイメージにぴったり。変拍子を用い、ヒトラー支配下のドイツによるプロパガンダを歌った「NATIONAL MEDIA BOYS」、ほとんどシューゲイザーな「PLEASURE LAND」、ギターシンセのフレーズが哀愁を誘う「KISS ME GOOD-BYE」など、前作以上にヴァラエティに富んだ楽曲が並んだ傑作。

音に関しては断然2015年ミックス版の方が良い。単純に音質が良いというだけでなく、オリジナルでは埋もれていた細かな音がクリアに聞こえることでより重層的になり、バンドがさりげなく詰め込んだ豊富なアイデアを余すところなく堪能できる。



『狂った太陽』(1991)
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1. スピード
2. MACHINE
3. MY FUNNY VALENTINE
4. 変身[REBORN]
5. エンジェルフィッシュ
6. JUPITER
7. さくら
8. Brain,Whisper,Head,Hate is noise
9. MAD
10. 地下室のメロディー
11. 太陽ニ殺サレタ


まさかMy Bloody Valentine『Loveless』やPrimal Screm『Screamadelica』、Massive Attack『Blue Lines』など数多くの名盤が誕生した91年に、日本からもそれに並ぶ名盤が誕生していたとは。しかもシングル「スピード」をリアルタイムで聴いていたにもかかわらず、このアルバムに出会えなかったなんて。B-Tの全アルバムを聴いたうえで、やっぱりこれが一番好き。

前年に母を亡くしたあっちゃんの悲しみややるせなさ、懺悔、自責の念といった行き場のない思いが溢れ出ていて、曲自体はポップで美しいのにとても悲哀に満ちている。特に「さくら」と「太陽ニ殺サレタ」の歌詞には母の死がストレートに反映されており、聴いていると胸が締め付けられそうになる。歌声もところどころかすれ気味にシャウトする箇所があり、非常にエモーショナルだ。

今井寿のギタープレイにも注目したい。オクスリに頼らずとも「変身 [REBORN]」の痙攣するギターソロを生み出すあたり、やはり天才肌の人だ。タイトルからはフランツ・カフカの「変身」を連想してしまうが、まさに人間が毒虫に変わる瞬間というのはあのギターソロのような音がするのかもしれない。



『殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits』 (1992)
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1. ICONOCLASM
2. 惡の華
3. DO THE "I LOVE YOU"
4. VICTIMS OF LOVE
5. M・A・D
6. ORIENTAL LOVE STORY
7. スピード
8. LOVE ME
9. JUPITER
10. ...IN HEAVEN...
11. MOON LIGHT
12. JUST ONE MORE KISS
13. TABOO (Interlude melody taken from "TABOO" by Lecuona Margarita)
14. HYPER LOVE


『惡の華』そして『狂った太陽』で名実ともに急成長を遂げ、「あの時はこうだったけど、今ならこんなこともできるよ?」的な自信と野心に満ちたセルフカバー・アルバム。タイトルの通りベスト盤ではないが、レコード会社的にはオリコン1位を連発するほどに大ブレイクした彼らのベスト盤をこのタイミングで出したかったのだろう。原曲にアレンジを加え今のB-Tを見せたいバンド側と、ヒット・シングルが聴きたい新規ファンのためにシングルに忠実なバージョンを収録したいレコード会社の間で大きな軋轢が生まれたことは想像に難くない。

セルフカバーというと大抵は原曲を超えられない(大概、余計なものを加えてしまうか、魅力だった「アラ」の部分までクリンナップしてしまうか)ことも多いが、このアルバムはほぼ全ての曲が原曲を上回る出来に仕上がっている。それは単純に音が良くなったということだけではなく、「もしかしてこの曲はもともとこのようなアレンジとして生まれる運命だったのでは?」と思えるほどのしっくり感がある。

中でも最も素晴らしいと思うのは、原曲を激しく解体した「M・A・D」だ。ある意味原曲の良さが全く失われている曲でもあるのだけど、完全に別モノにすることで楽曲の魅力のベクトルさえも全く別にしてしまっている。清々しいまでの狂いっぷり・壊れっぷりは爽快ですらあるし、2010年代にOneohtrix Point Neverが成し遂げたことを、実は92年に日本のバンドがやっていた。これは驚嘆すべき事実なのでは。


▲Oneohtrix Point Never「Sticky Drama」ミュージック・ビデオ



『darker than darkness -style 93-』 (1993)
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1. キラメキの中で...
2. Deep Slow
3. 誘惑
4. 青の世界
5. 神風
6. ZERO
7. ドレス
8. LION
9. Madman Blues -ミナシ児ノ憂鬱-
10. die
93. D・T・D


『殺シノ調べ』でこれまでの活動に一区切りつけ、さらなる高みを目指す。現在に至るB-Tの進化の姿勢が確立された作品と言える全93曲収録のアルバム(11曲目~92曲目はブランク)。

1曲目の「キラメキの中で…」はPublic Image Ltd.的な重いベースラインのダブ・ナンバー。この曲をライブで演奏する際は今井寿がチャイコフスキーの「白鳥の湖」のフレーズを引用するのがお決まりだが、PILの「Death Disco (Swan Lake)」も同様に「白鳥の湖」を引用しているのでそういった繋がりもあるのかも。古いジャズのレコードのような「誘惑」、レッチリっぽいファンク・ロック「ZERO」、パンキッシュな「Madman Blues -ミナシ児ノ憂鬱-」など、センスが狂いそうで暴れそうな曲が大半を占めるなか、B-T史上No.1と言えるほど耽美で妖艶な「ドレス」の存在がこのアルバムをさらに特別なものにしている。

また、
「デカダンスを知らないニヒリスト達が味わう最上級の退屈はグルメな舌が溶けてしまいそうだ」
「アンティーク・ショップで手にいれたアカシック・レコードに因ると1999年にはどうやら神風が吹いたらしい それはたぶん神様の気紛れか 超一流のハッカーの仕業だ」 (「神風」)

に代表される、「今井節」としか言いようのない詞のセンスもずば抜けて良い。常人はシラフじゃ絶対こんなの作れないでしょ…。


▲Public Image Ltd.「Death Disco (Swan Lake)」



『Six/Nine』 (1995)
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1. Loop
2. love letter
3. 君のヴァニラ
4. 鼓動
5. 限りなく鼠
6. 楽園(祈り 希い)
7. 細い線
8. Somewhere Nowhere
9. 相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり
10. デタラメ野郎
11. 密室
12. Kick(大地を蹴る男)
13. 愛しのロック・スター
14. 唄
15. 見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ
16. Loop MARK II


現時点で最後のオリコン1位獲得となった問題作。これまでミーハー心で追っかけていた比較的ライトなファンは「なんじゃこれ、ぶっ飛びすぎててついていけねえ…」と離れただろうし、すでにB-Tの神髄の部分に惹かれていたファンは悶絶し、一生ついていくことを決めたことだろう。陳腐な言葉で言うなら「病んでる」アルバム。ちなみにタイトルは中国思想の「陰陽」が元になっており、6と9の形状から輪廻を表していると思われる。

まるで自殺志願者がふらふら彷徨いながらうわ言でもつぶやいているかのようなポエトリー・リーディング曲「Loop」からしてただならぬ雰囲気をまとっているが、2曲目以降は『TABOO』~『darker than darkness -style 93-』で培われ完成を見たポスト・パンク・サウンドをあっさり放棄、代わりに獰猛なグランジ~オルタナ寄りのヘヴィーな音に舵を切っている。生と死、エロスとタナトス、宗教戦争、その他世の中に溢れた嘘や誤魔化しに対する怒りなどが混然一体となったカオスな作品。思うに、世に言う「名盤」とは2種類あって、全曲シングルカットできそうなクオリティの高い曲ばかり収められているものと、賛否両論を巻き起こすような問題作ではあるが表現力豊かで実験精神に富んだものとがある。本作は完全に後者のタイプの、紛れもない名盤だ。特にレゲエとシューゲイザーという、一見最悪の食い合わせのように思える要素を見事に融合させた「密室」は珠玉の名曲。

「Kick (大地を蹴る男)」とグラム・ロック風の「愛しのロック・スター」は、本作の中では比較的ポップでライトに感じられるが、その歌詞に込められたメッセージは痛烈。「道化師 歌え歌えこれが運命」「道化者は楽じゃない 道化者はごめんだ」──このアルバムはビデオコンサートの為に収録曲全てのミュージック・ビデオが制作されているのだけど、「愛しのロック・スター」のビデオでは過去の自分たちのMVが挿入される中でそんな内容が歌われている。「今までは道化を演じてました。ミュージシャンとはそういう運命なのかもしれないけど、もうイヤになったのでこれからは好きにやらせてもらいます」という宣言ともとれるが、その後長きにわたって彼らは、世間に媚びずに独自の道を突き進んでいくことになる。



『COSMOS』 (1996)
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1. Maria
2. キャンディ
3. チョコレート
4. SANE
5. Tight Rope
6. idol
7. Living on the Net
8. Foolish
9. IN
10. Ash-ra
11. COSMOS


『Six/Nine』のヤミ(=闇、病み)からどこをどうしたら1年でこうも変われるのか。メロディはこれまで以上にキャッチーに、だけど同時に非常にノイジーな作品。シングルVer.よりもノイズ増し増しな「キャンディ」は、その甘いメロディや印象的なリフも相まってまるでMy Bloody ValentineやThe Jesus and Mary Chainのようだ。「チョコレート」や「Ash-Ra」があまりにキャッチーなためついつい見落とされがちだが、「Tightrope」や「idol」、そして後にリアレンジされ大化けした「SANE」も負けず劣らずキャッチー。Cocteau Twinsを彷彿させる揺らめきと癒しのミディアム・ナンバー「COSMOS」で終わるところも最高。


▲「キャンディ」ミュージック・ビデオ


▲The Jesus And Mary Chain「Never Understand」ミュージック・ビデオ。ちなみに収録アルバムは『Psychocandy』で、キャンディ繋がり



『SEXY STREAM LINER』 (1997)
BUCK-TICK SEXY STREAM LINER

1. タナトス
2. SEXY STREAM LINER
3. ヒロイン -angel dust mix-
4. 無知の涙
5. リザードスキンの少女
6. 螺旋 虫
7. 蝶蝶
8. 囁き
9. 迦陵頻伽 Kalavinka
10. MY FUCKIN' VALENTINE
11. Schiz・o幻想
12. キミガシン..ダラ


この頃になるとB-Tファンの多くは「今度はどんな変化で我々を驚かせてくれるんだろう?」という思いで新作を待つようになっていたことだろう。確かに97年と言えば、ブレイクビーツやドラムンベース全盛の時代だった。しかしまさかB-Tがここまでそういった音に接近するとは誰も予想できなかったのでは。

とは言うものの、実は明確にドラムンベースと呼べるのはタイトル曲「SEXY STREAM LINER」くらいだし、あとはところどころにその片鱗が感じられる程度で、完全にB-T独自のオリジナルな音を鳴らしている。邦楽ロックシーンにおいて、B-Tが他の追従を許さない孤高のバンドとしての地位を確固たるものにしたのはこの辺りからだろう。

ほぼすべてのドラムが打ち込みによるものらしいが、打ち込みとバンド・サウンドを同期させるのはその後のB-Tにとって非常に重要な要素となっているし、ビクターからマーキュリーに移籍して初の、そしてマーキュリーからリリースされた唯一のアルバムとなり、『TABOO』『Six/Nine』に次ぐターニングポイント作と言える。

…それにしてもやはり、「MY FUCKIN' VALENTINE」の歌詞「RISE ABOVE YOURSELF」は「ライザップは痩せ~る」にしか聞こえない…。



『ONE LIFE,ONE DEATH』 (2000)
BUCK-TICK ONE LIFE_ONE DEATH

1. Baby, I want you.
2. CHECK UP
3. GLAMOROUS -FLUXUS-
4. 細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
5. カイン
6. Death wish
7. 女神
8. サファイア
9. RHAPSODY
10. FLAME


レコード会社の再移籍があったためか、オリジナル・アルバムとしてはキャリア史上最も長いインターバルとなった作品。『Six/Nine』と同様に死生観がテーマになっているけど、あちらが「どこか遠いところ(黄泉の国)へ逝ってしまいたい、人は輪廻転生するのだから」的な諦念や厭世を感じさせるのに対し、こちらは「生あるものは皆死ぬ、命は短いのだから人生を謳歌しよう」的なポジティブさを感じる。

ラルクで言うところの「Caress of Venus」のような立ち位置のライブ映えするダンス・ナンバー「Baby, I want you.」、高揚感を持ったメロディ展開が秀逸な「GLAMOROUS -FLUXUS-」、破滅的で倒錯した愛を歌う「女神」と「サファイア」、エモーショナルな「FLAME」など全体的に儚さと快楽が交差するような曲が多い。



『極東 I LOVE YOU』 (2002)
B-T 極東 I LOVE YOU

1. 疾風のブレードランナー
2. 21st Cherry Boy
3. WARP DAY
4. 謝肉祭-カーニバル-
5. TRIGGER
6. Long Distance Call
7. 極東より愛を込めて
8. GHOST
9. Brilliant
10. 王国 Kingdom come-moon rise-
11. Continue


個人的にどことなくスマパンの95年作『Mellon Collie & the Infinite Sadness』っぽいと感じている作品。「極東より愛を込めて」や「TRIGGER」のような激しい曲もあれば、「WARP DAY」「Brilliant」のようにアコギの音色がきれいな曲、「謝肉祭-カーニバル-」のような妖艶な曲、「王国 Kingdom come -moon rise-」のシューゲイズ、「21st Cherry Boy」のような直球のポップ・ロックもあり、ヴァラエティに富んではいるが散漫にならず、全体的にメランコリックにまとめられている。随所に反戦のメッセージが感じられるのは、リリース前年に起こった9.11に関連してだろうか。特攻隊の少年兵による母親への別れの挨拶を綴ったかのような「Long Distance Call」は、B-T史上1、2位を争うであろう"重い"曲。



『Mona Lisa OVERDRIVE』 (2003)
B-TMona Lisa OVERDRIVE

1. ナカユビ
2. BUSTER
3. 残骸 -Shape2-
4. LIMBO
5. Mona Lisa
6. GIRL -Shape2-
7. Sid Vicious ON THE BEACH
8. BLACK CHERRY
9. 原罪
10. MONSTER
11. 愛ノ歌
12. Continuous


前作と対になる作品で、それぞれの冒頭曲と最終曲が関連している構成がユニーク。全体的にメランコリックだった前作に対し、こちらはアグレッシヴな曲が多い。「ナカユビ」なんてTHE MAD CAPSULE MARKETSかAtari Teenage Riotかみたいなテンションだし、「Mona Lisa」は2003年という時代を反映してかLinkin Parkのようなミクスチャー・ロック。「残骸 -Shape2-」や「原罪」も超ヘヴィーで、あっちゃんのヴォーカルの気迫が凄まじい。今井寿がメインヴォーカルを務めた「Sid Vicious ON THE BEACH」をはじめ、彼のヴォーカルや作詞の割合がだいぶ増え、B-T史上最も今井色が強い作品と言えるかも。



『十三階は月光』 (2005)
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1. ENTER CLOWN
2. 降臨
3. 道化師A
4. Cabaret
5. 異人の夜
6. CLOWN LOVES Señorita
7. Goblin
8. ALIVE
9. 月蝕
10. Lullaby II
11. DOLL
12. Passion
13. 13秒
14. ROMANCE -Incubo-
15. seraphim
16. 夢魔 -The Nightmare
17. DIABOLO -Lucifer-
18. WHO'S CLOWN?


「ゴシック」をテーマにしたコンセプト作。個人的にコンセプチュアルなアルバムが好きで、暗い曲が好きで、ピアノや管弦楽器などいろんな音が鳴っている音楽が好きなので、このアルバムはまさにどストライク。『狂った太陽』と並んで最もお気に入りの作品となっている。打ち込みはあまり使われていない代わりに、ティンパニやストリングス、ピアノ、チェレスタ、トランペットといったクラシカルな音がふんだんに使われ、ゴシックなムードを最大限に引き立てている。

オープニングとエンディングで主題となる同じメロディを奏でるなどストーリー性が感じられるが、ミュージカルというよりは見世物小屋といった雰囲気で、映画『Dr.パルナサスの鏡』のヴィジュアルが随所で想起される。メロディは「暗い」どころかオドロオドロしくもあり、ピエロやら人形やらゴブリンやら「13」などとやたらB級ホラーをイメージさせるワードが並んでいて非常に統一感がある。よって全18曲という、B-T史上最大曲数ながら冗長さはなく、捨て曲も一切なし。ちなみに13曲目に「13秒」という13秒間の無音の曲が入っているが、それすらも必要不可欠だ(「Passion」が終わり「ROMANCE -Incubo-」が始まるまでの余韻としてちょうどいい長さ)。

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▲『Dr.パルナサスの鏡』のワンシーン



『天使のリボルバー』 (2007)
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1. Mr.Darkness & Mrs.Moonlight
2. RENDEZVOUS 〜ランデヴー〜
3. モンタージュ
4. リリィ
5. La vie en Rose〜ラヴィアン・ローズ〜
6. CREAM SODA
7. RAIN
8. BEAST
9. 絶界
10. Snow white
11. スパイダー
12. Alice in Wonder Underground
13. REVOLVER


前作同様、打ち込みはあまり使われていないが、ゴシックなムードは晴れてこれまで以上にポップなロックンロール(今井さんが言うところの「ロケン」)作品。ギター主体のバンド・サウンドではあるけどシンプルというわけではなく、「Mr.Darkness & Mrs.Moonlight」や「La vie en Rose〜ラヴィアン・ローズ〜」、「CREAM SODA」のようにグラマラスで豪奢な曲がバンドの新機軸としてアクセントになっている。一方で「RENDEZVOUS 〜ランデヴー〜」や「リリィ」は王道ポップ路線で、ある意味B-Tっぽくない。他にも哀愁漂うスパニッシュ風ジプシー・パンクの「絶界」、これまた哀愁たっぷりのバラード「Snow white」、メルヘンチックな「Alice in wonder Underground」などとにかくヴァラエティに飛んでいて濃厚な作品。



『memento mori』 (2009)
bt memento mori

1. 真っ赤な夜-Bloody-
2. Les Enfants Terribles
3. GALAXY
4. アンブレラ
5. 勝手にしやがれ
6. Coyote
7. Message
8. Memento mori
9. Jonathan Jet-Coaster
10. スズメバチ
11. Lullaby-III
12. MOTEL 13
13. セレナーデ -愛しのアンブレラ-Sweety-
14. 天使は誰だ
15. HEAVEN


冒頭の「真っ赤な夜 -Bloody-」からフルスロットルで、前作と路線的には近い感じのロケン・アルバム。とはいえやはりB-Tは一筋縄ではいかない。前作の最終曲「REVOLVER」はジュリー(88年の映画「リボルバー」で主演を務めている)へのオマージュだったのか?と思うほどジュリーっぽい「アンブレラ」や、そのまんまなタイトル「勝手にしやがれ」があったりして、メンバーのジュリー好きが随所に感じられる。

荒野で焚火しながら弾き語りしている光景が浮かぶ「Coyote」、なぜか沖縄音階の「Memento mori」、初期のかわいい曲代表「DREAM OR TRUTH」(『SEXUAL XXXXX!』収録)に匹敵するほどのかわいらしさのある「セレナーデ -愛しのアンブレラ -Sweety-」など前作に続いてゴッタ煮感が強いが、「Jonathan Jet-Coaster」や「スズメバチ」、「天使は誰だ」などライブで盛り上がること必至の曲が多数収録された"ライブ映えアルバム"でもある。



『RAZZLE DAZZLE』 (2010)
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1. RAZZLE DAZZLE FRAGILE
2. RAZZLE DAZZLE
3. 狂気のデッドヒート
4. 独壇場Beauty -R.I.P.-
5. 羽虫のように
6. 妖月 -ようげつの宴-
7. BOLERO
8. Django!!! -眩惑のジャンゴ-
9. 錯乱Baby
10. PIXY
11. くちづけ -SERIAL THRILL KISSER-
12. 月下麗人
13. 夢幻
14. TANGO Swanka
15. Solaris


この10年ほどの集大成的アルバム。エレクトロニックでダンサブルな曲(しかもこれまでのような力強いダンス・ロックではなく、あえてチープにしたようなチョイダサ加減が絶妙)、ゴシックな曲、ラテンぽい曲、ライトな感触のポップ・ロック、ロックンロールなど雑多ではあるが、その後のB-Tの方向性を決定づけた曲と言えそうな「くちづけ」や「月下麗人」もあり、2010年代に向けた新たなB-Tの幕開けを感じさせる作品。



『夢見る宇宙』 (2012)
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1. エリーゼのために -ROCK for Elise-
2. CLIMAX TOGETHER
3. LADY SKELETON
4. 人魚 -mermaid-
5. 夢路
6. ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-
7. 禁じられた遊び -ADULT CHILDREN-
8. 夜想
9. INTER RAPTOR
10. MISS TAKE -I'm not miss take-
11. 夢見る宇宙 -cosmix-


グスタフ・クリムトの絵画「金魚」を用いた初回盤ジャケット、湖に浮かぶ船と夜空に水槽が重なった幻想的な通常盤ジャケットともに、タイトル通りの甘美で神秘的なイメージに包まれたドリーミーな作品。実はハマって最初の頃は「重くない曲」「死の匂いがしない曲」はそこまで好きではなかったのだけど、グラマラス・ロックンロールな「CLIMAX TOGETHER」をきっかけに軽快なポップ曲も好きになった。

1曲目に相応しく勢いがあり、ギター・リフとドラムのユニゾンがかっこいい「エリーゼのために -ROCK for Elise-」、思いっきり「ザ・夏!」という、これまでのB-Tにはなかったチャラさがある「人魚 -mermaid-」、Radioheadの「No Surprises」や「Let Down」にも通じる儚さがある「夢路」、シューゲイズ風のギターと爽快なメロディが高揚感を生む「夢見る宇宙 -cosmix-」など佳曲多し。


▲Radiohead「No Surprises」ミュージック・ビデオ



『或いはアナーキー』 (2014)
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1. DADA DISCO -GJTHBKHTD-
2. 宇宙サーカス
3. masQue
4. Devil'N Angel
5. ボードレールで眠れない
6. メランコリア
7. PHANTOM VOLTAIRE
8. SURVIVAL DANCE
9. サタン
10. NOT FOUND
11. 世界は闇で満ちている
12. ONCE UPON A TIME
13. 無題
14. 形而上 流星 -metaform-


前衛芸術をテーマにしたアルバム。初めて1曲目「DADA DISCO -GJTHBKHTD-」を聴いたときはなんじゃこりゃ??状態だったが、すでに「もうB-Tが何をやってもB-Tにしかならない(誉め言葉)」という境地に達しているのだなと実感。前半は打ち込みを用いた曲やダークで妖艶な感じ、中盤には「SURVIVAL DANCE」のようにラテンの陽性な変化球があり、終盤には「世界は闇で満ちている」「ONCE UPON A TIME」というめちゃくちゃポップな曲が続く…と思いきや、気持ちが穏やかになってきたところで「無題」が地の底まで突き落とすという、鬼畜ドSな構成がニクイ。『極東 I LOVE YOU』のところで「Long Distance Call」はB-T史上1、2位を争う重い曲と書いたが、そのもう一曲こそがこの曲。ライブではさらにエモくダウナーだったりする。



『アトム 未来派 No.9』 (2016)
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1. cum uh sol nu -フラスコの別種-
2. PINOA ICCHIO -躍るアトム-
3. DEVIL'S WINGS
4. El Dorado
5. 美 NEO Universe
6. BOY septem peccata mortalia
7. 樹海
8. THE SEASIDE STORY
9. FUTURE SONG -未来が通る-
10. 曼珠沙華 manjusaka
11. Cuba Libre
12. 愛の葬列
13. NEW WORLD -beginning-


『十三階は月光』とはまた違ったベクトルで「重さ」と「暗さ」が前面に出ており、そこにエレクトロニックでダンサブルな要素と哀愁メロディも加わった、B-Tの神髄とも言える作品。「樹海」「曼珠沙華 manjusaka」「愛の葬列」といったタイトルだけ見ても"死"をイメージさせるものが多いが、「PINOA ICCHIO -躍るアトム-」「DEVIL'S WINGS」「BOY septem peccata mortalia」「FUTURE SONG -未来が通る-」などアップテンポな曲が多いのでオドロオドロしさはなく、むしろ美空ひばり(「THE SEASIDE STORY」は「真赤な太陽」感がある)や山口百恵(※)を想起させるような歌謡曲っぽさがあったりフラメンコっぽかったりと哀愁に満ちている。そんなムードのなか、ラスト「NEW WORLD -beginning-」ではモヤが晴れ、希望の光が差し込むようにして終わる構成が素晴らしい。次のトリビュート・アルバムでは「愛の葬列」を中森明菜に歌ってもらいたいな…。
※本作には「美 NEO Universe」「曼珠沙華 manjusaka」があるが、山口百恵には「美・サイレント」や「曼珠沙華」(こちらの読みは「まんじゅしゃか」)という曲がある



『No.0』 (2018)
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1. 零式13型「愛」
2. 美醜LOVE
3. GUSTAVE
4. Moon さよならを教えて
5. 薔薇色十字団 - Rosen Kreuzer -
6. サロメ - femme fatale -
7. Ophelia
8. 光の帝国
9. ノスタルジア - ヰタ メカニカリス -
10. IGNITER
11. BABEL
12. ゲルニカの夜
13. 胎内回帰


前作の延長線上ではあるけど、さらに前へ前へと進化した現時点での最新作。ダークネスとヘヴィネスの極致とも言える「BABEL」は「魔王降臨」なんて言われてしまうほど圧巻の気迫に満ちたサウンドとヴォーカル。足がタコで腕は蛇という猫の絵本「ギュスターヴくん」をモチーフにし、サビで「Cat Cat CatCat…」と連呼する「GUSTAVE」はSkrillexを思わせるブロステップのビートをイントロに導入、「薔薇色十字団 - Rosen Kreuzer -」ではPOLYSICSのハヤシが参加するなどエレクトロニックな音作りにもより一層力を入れている。

中世~近代ヨーロッパ的なモチーフが全体的に散りばめられており、例えば反戦メッセージが込められた「ゲルニカの夜」は、ピカソがスペインのゲルニカで起きた惨劇を描いた絵画「ゲルニカ」がモチーフになっているし、「Ophelia」はシェイクスピアの戯曲「ハムレット」の登場人物の名だし、「光の帝国」は20世紀を代表するベルギーの画家ルネ・マグリットの一連の作品群だし、「BABEL」といえばブリューゲルが描いた絵画で有名な塔の名で、「サロメ」はイギリスの作家オスカー・ワイルドの戯曲の作品名だ。関連するワードも歌詞に散りばめられているため、本作を聴くと(漠然としたイメージではあるが)中世や近代の洋書に描かれた挿絵のような光景が自然と浮かんでくる。視覚的イメージを刺激する作品は名盤の証。


▲「BABEL」ミュージック・ビデオ



『Symphonic Buck-Tick in Berlin』 (1990)
Symphonic B-T in Berlin

1. Maboroshi no Miyako
2. Just One More Kiss
3. silent Night
4. Hyper Love
5. aku no hana
6. ...in Heaven...
7. illusion
8. Love Me
9. Kiss Me Good-Bye


今井寿が選曲だけ行い、ベルリン室内管弦楽団が演奏したオーケストラ・アレンジ盤。おそらくB-T関連作品の中でも最もマニアックな部類だと思う。オーケストラ映えしそうなメロディアスな楽曲を中心にセレクトされ、複数のアレンジャーが数曲ずつ編曲を手掛けており、基本的には原曲のメロディを活かしたシンフォニックな仕上がりになっているが、クセ者は1、4、9曲目を手掛けた上野耕路氏(音楽ユニット「ゲルニカ」のメンバーとしても知られる)だ。かなり前衛的なアレンジが加えられているため、トラックリストを見ずに曲だけ聴いたところ最後まで何の曲かわからなかった…。「幻の都」だけは辛うじてわかったが、あとの2曲はかなり難解なアレンジになっている。



『シェイプレス』 (1994)
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1. "Jupiter (Silver Moon mix)" remixed by Peter Smith and Jon Tye (MLO Production)
2. "D・T・D (Air Liquide mix)" remixed by Ingmar Koch
3. "In the Glitter PT 1 (Glitter mix)" remixed by Dominic Woosey (Neutron 9000)
4. "Brain, Whisper, Head, Hate is Noise" remixed by Richard Kirk (Cabaret Voltaire)
5. "Iconoclasm (Don't X Ray Da DAT mix)" remixed by Autechre
6. "In the Glitter PT 2 (Aphex mix)" remixed by Aphex Twin
7. "Killing (Urb mix)" remixed by Jon Tye (MLO Production)
8. "Evil Flowers (Neutron 9000 mix)" remixed by Dominic Woosey (Neutron 9000)
9. "Dress (Spicelab mix)" remixed by Oliver Lieb
10. "Hyper Love (Hardfloor remix)" remixed by Hardfloor


テクノ系の錚々たるメンツがリミキサーとして名を連ねたリミックス盤。「日本のロック・バンドのリミックス・アルバム」と聞くと、普通は歌メロをそのまま活かして四つ打ちのダンサブルなアレンジを施したようなものが想像されるが、それに近いリミックスをしているのはOliver Liebとアシッド・ハウスの重鎮Hardfloorのみ。そもそもAutechreやAphex Twinが原曲の歌メロを活かしたリミックスなんてするわけがない(そんなことされたら彼らに依頼した意味が全くなくなるって話ではある)し、リミキサー陣は普段から歌モノをメインに作っている人たちではないので当然と言えば当然。Aphex Twinはもともと「良い曲には自分が手を加える必要はないから、クソみたいな曲しかリミックスのオファーは受けない」みたいなことを言う人ではあるのだけど、今回は「In the Glitter PT 2」、つまりは「キラメキの中で…」のリミックスのはずなのにその曲のフレーズは一切使わず、『殺シノ調ベ』Ver.の「Iconoclasm」のギターが入る直前のビートだけを素材として使う(※実際はどうだかわからないけど、そう聞こえる)というトンデモなジョークをブチかましている。ちなみにリミックスのギャラは結構破格だったようで、Autechreに至っては当時ミュージシャン業があまりに儲からないのでミュージシャンを辞めて定職に就こうと思っていた時にB-Tからリミックスのオファーがあり、それがきっかけで音楽の道を続ける決心をしたとか。当時のビクターはかなり潤沢な予算をB-Tに充てていたことがわかる。

「JUPITER」はあの美しいコーラスを使いSeefeelを思わせるアンビエント・エレクトロニカに、「キラメキの中で…」はダビーなベースラインを使いトリップ・ホップに仕上げるなど、各リミキサーが自分の音楽性に呼応する部分をしっかり素材として抜き取ってうまく調理しており、またアルバムとしてもアンビエント/エレクトロニカ/IDM系で統一されているので非常に統一感がある。写真集、というよりはアートブックも付属しており、トルコの異国情緒溢れる風景がコラージュされているが、本アルバムをBGMにアートブックを眺めるだけでもほどよいトリップ感を味わうことができる。今までB-Tをよく知らなかった人がB-Tを聴くキッカケとしても、実は結構最適な作品かもしれない。



『BT』 (1999)
BUCK-TICK BT

DISC-1
1. SEXUAL×××××!
2. HYPER LOVE
3. ROMANESQUE
4. ...IN HEAVEN...
5. JUST ONE MORE KISS
6. TO SEARCH
7. ICONOCLASM
8. 悪の華
9. UNDER THE MOON LIGHT
10. LOVE ME
11. スピード
12. ナルシス
13. 太陽ニ殺サレタ
14. M・A・D
15. ANGELIC CONVERSATION
16. JUPITER
17. さくら

DISC-2
1. ドレス
2. 六月の沖縄
3. キラメキの中で…
4. die
5. D・T・D
6. 唄
7. 君へ
8. 愛しのロック・スター
9. 鼓動
10. 楽園
11. 見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ
12. 君のヴァニラ
13. キャンディ
14. チョコレート
15. Ash-ra
16. COSMOS


初期の、所謂シングル集。しかしB-Tはアルバム収録時にアレンジを大幅に変えてくることもあるので、そのシングルVer.やカップリング曲を網羅するのに必携な一枚。

インディーズ時代にリリースされた曲(後にメジャーデビュー・シングルのカップリング曲となる)「TO SEARCH」はBLANKEY JET CITYみたいなヤンキー感のあるパンク曲でかっこいいし、「UNDER THE MOON LIGHT」や「ナルシス」もアルバム未収録とするにはもったいない曲だ。グランジィなアレンジの「楽園」もアルバムVer.とはまた違う良さがあり、シングルVer.の「見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ」は歌詞がアルバムと大幅に変わっているうえに冒頭に「どうしたんだこの世は どうしたんだ人間は どうしたんだ俺は 神と悪魔が歌い踊る」というセリフが加えられていて、焦燥や混乱といった感情がさらに増大している。また、シングルVer.ということでオンエア向けにしたのかフィードバック・ノイズ控えめの「キャンディ」に物足りなさを感じることによって、ノイズまみれのアルバムVer.がより一層かっこよく思えたり、という成果もあった。


▲「見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ」ミュージック・ビデオ



『97BT99』 (2000)
BUCK-TICK 97BT99

DISC-1
1. ヒロイン
2. 螺旋 虫 -tapeworm mix-
3. タナトス
4. SEXY STREAM LINER
5. ヒロイン -angel dust mix-
6. 無知の涙
7. リザードスキンの少女
8. 螺旋 虫
9. 蝶蝶
10. 囁き
11. 迦陵頻伽 Kalavinka
12. MY FUCKIN' VALENTINE
13. Schiz・o 幻想

DISC-2
1. 囁き-single mix- remixed: HIRUMA SATOSHI
2. タナトス-the japanic pig mix- remixed: RAYMOND WATTS (PIG)
3. MY FUCKIN' VALENTINE -enemy mix(full)- remixed: GUNTER SCHULZ (KMFDM)
4. Schiz・o幻想 -the spiderman mix- remixed: DANIEL ASH (LOVE AND ROCKETS)
5. 月世界
6. My baby Japanese
7. 無知の涙 HOT remix #001 for B-T
8. BRAN-NEW LOVER
9. DOWN
10. ASYLUM GARDEN
11. ミウ
12. パラダイス
13. BRAN-NEW LOVER-CUSTOM-


移籍に伴いレコード会社との契約上仕方なくリリースされた、マーキュリー時代の音源を集めた2枚組コンピレーション。メンバーは制作に一切関わっていないだけあって、ジャケットデザインのやっつけ感も酷いしディスクの分け方も雑。DISC-1はシングル「ヒロイン」とアルバム『SEXY STREAM LINER』がそのまま入っていて、つまり「ヒロイン」がバージョン違いとはいえ1曲目と5曲目に入っているし、アルバムとして一度完結している構成をぶち壊してしまっている。DISC-2は「囁き」「月世界」「BRAND-NEW LOVER」「ミウ」のシングル&カップリング集。それなら「ヒロイン」のシングルもこっちに入れれば良かったのに。

が、このコンピレーション・アルバムは結構な必携アイテムだ。特に「月世界」以降のシングル3枚は全てオリジナル・アルバム未収録なうえにカップリングも含め名曲揃いで、これらだけのために手に入れる価値はあると思う。「ミウ」は星野英彦作曲の中でも特に人気が高く、個人的には「JUPITER」と1、2位を争うほどの名曲だと思っている。同時期に櫻井敦司と今井寿がPIGやKMFDMのメンバーと結成したプロジェクトSCHWEINにも通じるインダストリアル・ロックな「My baby Japanese」「DOWN」も非常に音がかっこよく、ダンサブルな四つ打ちの「パラダイス」も近年の作品に収められていても違和感のない、以降のB-Tの「踊れる曲」の雛型とも言えそう。

移籍の都合でこの時代のシングル曲を収録したオリジナル・アルバムは制作されなかったが、もし制作されていたらかなりの名盤が生まれていたに違いない。



『CATALOGUE 2005』 (2005)
BUCK-TICK CATALOGUE 2005

DISC-1
1. HURRY UP MODE
2. SEXUAL×××××!
3. PHYSICAL NEUROSE
4. JUST ONE MORE KISS
5. スピード
6. さくら
7. JUPITER
8. ANGELIC CONVERSATION
9. ICONOCLASM
10. 悪の華
11. ドレス
12. 鼓動
13. 唄
14. キャンディ
15. COSMOS
16. MY FUCKIN' VALENTINE
17. ミウ

DISC-2
1. GLAMOROUS
2. Baby, I want you.
3. RHAPSODY
4. FLAME
5. 疾風のブレードランナー
6. 21st Cherry Boy
7. 極東より愛を込めて
8. Long Distance Call
9. 残骸
10. GIRL
11. Mona Lisa
12. 幻想の花
13. ノクターン-Rain Song-
14. 夢魔-The Nightmare
15. ROMANCE
16. DIABOLO


B-Tのベスト・アルバムはいくつかリリースされているけど、最も入門編として相応しいと思うのがこれ。自分が最初に手を付けたのもこれだ。ベスト・アルバムとしては、95年の『CATALOGUE 1987-1995』や『BT』は初期の曲しか収録されていないし、2012年の『CATALOGUE VICTOR→MERCURY 87-99』と『CATALOGUE ARIOLA 00-10』は所属レコード会社によって2枚に分かれているので両方手に入れる必要がある。2017年の『CATALOGUE 1987-2016』はファン投票を元にしているのでマニアックな選曲だし3枚組はなかなかのヴォリューム。なので2枚組で2005年までの代表曲をコンパクトに収録した本作がちょうどよいのではと思う。

最も注目すべきはアルバム未収録となっているシングル「幻想の花」とそのカップリング曲「ノクターン-Rain Song-」がともに収録されている点。前者は星野英彦によるアコースティックな美メロバラードで、後者は『十三階は月光』に入っていてもおかしくない、妖しく美しいアコースティック・エレクトロニカ。間奏でゴシックなヘヴィー・ロックに展開するところが鳥肌モノで非常にかっこいい。



■ぼくのかんがえたさいきょうのBUCK-TICKセットリスト

最後に、個人的に理想だと思うライブのセットリストを考えてみた。激しめの曲が好みなので、実際にこの通りプレイしたらB-Tの皆さんヘトヘトになっちゃいそうだけど…いや、でもいつもこれくらいエネルギッシュなセトリでやってるか。

1. ICONOCLASM
2. ナカユビ
3. 獣たちの夜
4. GUSTAVE
5. Baby, I want you.
6. BOY septem peccata mortalia
7. 光の帝国
8. 変身 [REBORN]
9. 限りなく鼠
10. 残骸
11. くちづけ
12. DOLL
13. 極東より愛を込めて
14. BABEL
15. 愛の葬列

<アンコール1>
16. キラメキの中で…
17. TO SEARCH
18. ミウ

<アンコール2>
19. 真っ赤な夜 -Bloody-
20. CLIMAX TOGETHER
21. MY EYES & YOUR EYES
22. 地下室のメロディー


「ICONOCLASM」~「ナカユビ」、そして「GUSTAVE」~「Baby, I want you.」はそれぞれBPMが近いので、シームレスに繋いで演奏されるイメージ。「光の帝国」はあっちゃんが顔の前でピースを横に流すパフォーマンスが観たい(笑)。「残骸」はTOKYO DOME CITY HALLでの「FISH TANKer's ONLY 2013」のように雨を降らせる演出がどうしても観たい。「くちづけ」のアウトロから間髪入れずの「DOLL」も良い繋がりになりそう。序盤は四つ打ちの踊れる曲が中心、中盤以降はヘヴィーに、本編最後は「BABEL」で魔王降臨した後、「愛の葬列」でどよーんと締めます。

アンコールはライブアレンジがいつもかっこいい「キラメキの中で…」で始まり、インディーズ時代の楽曲「TO SEARCH」を経て「ミウ」で神聖な気持ちのまま終了。ダブルアンコールでは序盤からフルスロットルで飛ばして真っ赤に染まり、宇宙の果てまでイキ、初期の名曲「MY EYES & YOUR EYES」で盛り上がった後は「地下室のメロディー」でさらに加速、最後の一音で花火と紙吹雪ブチ上げて終わったら最高ですね。あ、あと衣装は<前編>で紹介した漫画でも描かれているけど、あっちゃん(54歳・男性)のガーターベルトが観たいです。最高にカッコいいです。


以上、BUCK-TICKにどハマりした人がため込んだ思いを長々と吐き出させていただきました。とりあえず今は、8月にリリースされる39枚目のシングル「MOONLIGHT ESCAPE」と、夏以降にリリースされる予定のニューアルバムが楽しみ。ライブもできるだけあちこち参加したいと思っている。特に年末の武道館は絶対に参加したい。いろいろ困難に直面してはいるが、B-Tメンバーもファンも思いは同じ。とにかく(祈り 希い)するのみ



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