BUCK-TICK |
たまに、最近BUCK-TICKに興味・関心を持ち始めたという人の話を耳にすることがある。かくいう自分も、90年代初頭にBUCK-TICKに出会っていながら本格的に聴き始めたのは去年からで、それまで聴いてみたいと思いつつなかなか手が付けられないでいたのはたくさん作品があってどれから聴いたらいいかわからなかったためだし、ハマってからも次はどれを聴くべきかファンの個人ブログなども参考にしたので、そういった経験も踏まえて「どれから聴いたらいいのかわからない」という人のためのガイドをおこがましくも書いてみたいと思う。
【過去記事】BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<前編>
【過去記事】BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<後編>
何しろオリジナル・アルバムだけでも22枚あり、作品ごとに作風やコンセプトを変えるような人たちなので、たまたま手にした最初の一枚だけで「へー、BUCK-TICKってこんな感じなんだな」と満足しそれ以上聴かなかったりするのはあまりにもったいない。また、聴く人の趣味嗜好によって最適な順序は1つではないため、いくつかのパターンを考えてみた。とはいえ、人の趣味嗜好はたった数パターンでカバーできるものではないし、ジャケットが気に入ったからとか、たまたま中古屋で見つけたからなどきっかけは何でもアリだと思うので、あくまで参考程度に捉えていただければと思う。
■まず最初に聴くのにオススメな作品
『CATALOGUE 2005』(2005)
▲初回限定スリーブケースのアートワーク
▲通常盤アートワーク
2005年リリースの2枚組ベスト盤。いやそこは最新アルバム薦めるべきじゃないのかよ!と思うかもしれないが、彼らの魅力の一つとして「時代ごとにいろいろなことをやっている」というのがあると思う。「現在の、最新の姿」だけを知ってもらうよりも、まずは「これまでのいろいろな姿」を知ってもらうことで、いろいろな角度から魅力を知ってもらうのが入り口として適正なのではないかという考えだ。
ちなみにベスト盤は他にもいくつか出ているが、初期のベスト『CATALOGUE 1987-1995』(1995)、『BT』(1999)は80年代~90年代の音源しか入っていないので、彼らの多様性を知るには物足りない。『CATALOGUE VICTOR→MERCURY 87-99』『CATALOGUE ARIOLA 00-10』(ともに2012)は時期で2枚に分かれているため両方入手する必要があるのと、ベスト盤というよりはシングル集に近い位置付け。『CATALOGUE 1987-2016』(2017)は現時点での最新ベストで30年分のディスコグラフィからチョイスされているけど、ファン投票を元にしているため選曲が若干マニアックで時期にバラつきがあり、どちらかと言えば既存ファン向けかと。
『CATALOGUE 2005』はシングル曲とアルバムの人気曲がバランスよく2枚組全33曲にまとめられており、そういった理由から入門編としてチョイスした(自分もこれが入り口で、見事にハマった)が、ここである問題に気付いた。「とりあえず何か1枚聴いてみよう」という人はサブスクを使うことが多いのでは…?しかし『CATALOGUE 2005』はSpotifyにないし、Apple Musicにも選抜の5曲しかない。他のベスト盤も初期の2つ以外は基本的にサブスク未解禁らしい。ぐぬぬ。まあ、Amazonのマケプレやメルカリで『CATALOGUE 2005』は1,000円ちょっとで買えると思うので、サブスク派の人は一旦無視することにする。
『CATALOGUE 2005』にはいろいろなタイプの曲がありリリース順に収録されているので、もし気に入っていただけた場合に次に何を聴くのが良いかは、傾向に応じていくつかのパターンを提案したい。
①『CATALOGUE 2005』良かった!でも最近のBUCK-TICKも聴いてみたい
→『アトム 未来派 No.9』(2016)
②『CATALOGUE 2005』良かった!特にDisc1が良かった
→『狂った太陽』(1991)
③『CATALOGUE 2005』良かった!特にDisc2が良かった
→『ONE LIFE, ONE DEATH』(2000)もしくは『十三階は月光』(2005)
サブスクの人は、最近の人気作を聴きたい場合は①、ファンの間で最も人気のある代表作を聴きたい場合は②でいいと思う。では、パターンごとに解説していきます。
①『CATALOGUE 2005』良かった!でも最近のBUCK-TICKも聴いてみたい
→『アトム 未来派 No.9』(2016)
『CATALOGUE 2005』は2005年までなので、ここ15年間の作品も知りたいという人は多いだろうと思う。しかしそこで最新作『ABRACADABRA』でも大傑作『No.0』でもないんかい!というのも、個人的には90年代後半以降の彼らはさまざまな実験や進化を繰り返しつつ一つの集大成として『アトム 未来派 No.9』に行きついたと思っている。彼らの魅力と言えばダークで耽美、ヘヴィでポップ、昭和歌謡のような哀愁メロディ、バンド・サウンドとエレクトロの緻密な融合…といったものが挙げられるが、それらの要素を見事なバランスで組み上げたのが本作である。そしてその集大成をさらに磨き上げて完成させたのが次作『No.0』なわけで、完成度としては『No.0』の方が高いと思うけど、ここはあえて先に『アトム 未来派 No.9』を聴いてから、その次に『No.0』という順序が良いかなと。
ちなみに目下最新作『ABRACADABRA』は、完成形を極めてしまった後にまた新たな方向に舵を切った作品と思っている。なので、いきなりここから入るのはあまりお勧めしない。順序としては『アトム 未来派 No.9』、そして『No.0』を聴いてからの方がより一層最新作を深く楽しめると思う。
②『CATALOGUE 2005』良かった!特にDisc1が良かった
→『狂った太陽』(1991)
Disc1はいわゆる「全盛期のBUCK-TICK」が詰まっている。いや今も全盛期だろうと言いたい気持ちはわかるけど、バンドの成熟度とか作品の完成度ではなく、世間的な全盛期という意味。レコード大賞の新人賞獲ったり、オリコン・チャート1位だったりという「記録面」での全盛期だ。
91年リリースの本作はファンの間でも最も人気が高く、自分もBUCK-TICKの中で最も好きなアルバム。音は91年らしい粗削りさがあるけどそこが逆にいいし、とにかく曲がいい!ダークな世界観がいい!ときおりハスキーになる歌声がいい!全曲素晴らしく、曲順の構成も最高。
このアルバムを気に入ったら次は『殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits』(1992)→『惡の華』(1990)→『darker than darkness -style 93-』(1993)→『TABOO』(1989)とニューウェイヴ/ポストパンク期の作品を一挙に聴いて地固めしていくのがオススメ。『殺シノ調べ ~』はオリジナル・アルバムでもベスト盤でもなく、ベストな選曲のリメイク・アルバムで、この時期の集大成と言える。また、『惡の華』を聴くならぜひ2015 ミックス版をチョイスしてほしい。ミックスの違いでこんなに変わるんだ!ってくらい全然かっこよさが違うので。
③『CATALOGUE 2005』良かった!特にDisc2が良かった
→『ONE LIFE, ONE DEATH』(2000)もしくは『十三階は月光』(2005)
Disc2はメロディアスで打ち込みとバンド・サウンドをミックスさせた曲がメインになっているので、次はポップでメロディアスな曲の多い『ONE LIFE, ONE DEATH』を聴いておけば間違いない。ただ、Disc2の中でも特に最後の4曲(「ノクターン-Rain Song-」~「DIABOLO」が気に入ったというゴシック/ダーク路線好きな人なら、『十三階は月光』にハマること必至(※注:ただし「ノクターン-Rain Song-」は『十三階は月光』に入ってません)。ちなみに自分はこのアルバム、『狂った太陽』の次に好きだ。
『ONE LIFE, ONE DEATH』もしくは『十三階は月光』を聴いて、どちらも良かったー、もっと聴きたいー、という人はその後は①と同様、『アトム 未来派 No.9』→『No.0』→『ABRACADABRA』の流れが良いと思う。
以上の各ルートを聴いたあとで「もっと聴きたい」となったら、あとはもうどういう流れで聴いても大丈夫だと思う(たぶんすっかりハマっているということなので)。そして、そういう状態になったらできるだけ早く『Six/Nine』(1995)を聴いてみることをオススメする。他の作品を聴いた後の方が本作のヤバさというか異常さがよくわかるので最初に聴くべきではない作品とも言えるし、一発目から大きな衝撃を与えるという意味では最初に聴くべき作品とも言える。いい意味で賛否や好き嫌いの分かれる作品であり、日本のロック史における名盤でもある。どこだー!!誰か―!!
また番外編として、もし普段Aphex TwinやAutechreといったテクノ/クラブ・ミュージックを好んで聞く人であれば、リミックス・アルバム『シェイプレス』から入るのもアリだと思う。実際この2組がリミキサーとして参加してもいるし、他の曲もいわゆるIDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)が好きな人ならきっと気に入るような曲ばかりだ。
最後に、あくまで目安ではあるが各オリジナル・アルバムを大雑把にいくつかのタームに分類してみた。普段どういった音楽を聴いているかによって、親和性のありそうな時期から集中的に攻めてみるのもアリだろう。
【ビート・ロック期】(1987~1988)
HURRY UP MODE
SEXUAL×××××!
ROMANESQUE
SEVENTH HEAVEN
【ニューウェイヴ/ポストパンク期】(1989~1993)
TABOO
悪の華
狂った太陽
darker than darkness -style 93-
【オルタナティヴ・ロック期】(1995~1996)
Six/Nine
COSMOS
【打ち込み+ロック期】(1997~2003)※「デジロック」とは言いたくない
SEXY STREAM LINER
ONE LIFE,ONE DEATH
極東 I LOVE YOU
Mona Lisa OVERDRIVE
【いろいろ実験期】(2005~2010)
十三階は月光 ※ゴシックをテーマにしたコンセプト作
天使のリボルバー ※ロックンロールやグラム・ロックなどバンド・サウンド中心
memento mori ※ギターロック+α
RAZZLE DAZZLE ※2000年代以降の総括的内容
【デカダンス期】(2012~2018)
夢見る宇宙
或いはアナーキー
アトム 未来派 No.9 ※集大成
No.0 ※集大成の完成形
【???期】(2019~)
ABRACADABRA ※以前のモードとは明らかに違う路線ながら、この作品だけではまだ○○期と定義づけるのは難しい
BUCK-TICKは作品の数が多いだけでなく、作品を聴き進めるごとに新しい発見があったり、そことあそこが繋がったり、とにかく一度ハマるとなかなか抜け出せない不思議な魅力を持ったバンドだと思う。それでいて曲は至ってポップなので、余計な知識がなくても、難しいことを考えなくても「なんかかっこいい」だけでも楽しめる。それでは、ありとあらゆる愛ヌラリ、お楽しみあれ。
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