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『切られお富』だより

演出後記

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この「切られお富」の初演は、元治元年(1864年)です。 
その前年には新撰組が結成され、イギリスと薩摩による薩英戦争などがありました。
1864年という年は、京都では池田屋事件、禁門の変が起きた年です。
ちょうどこの二年間の間に、長州はイギリスやフランスなどと二回にわたって武力衝突しており、
これを機に長州藩は討幕へと動き出します。
そして、3年後の1867年には大政奉還、坂本竜馬の暗殺、翌年、江戸城無血開城となります。
このように、非常に変革の動きに満ちた世の中で、
一体、江戸の庶民は、この「切られお富」を、どのように楽しんでいたのだろうかと考えました。
「切られお富」の第1幕は、色恋とお金など欲にまみれています。
登場人物の皆々がそれぞれの欲望に執着する場面に溢れています。
人間の本能とでもいうか、自己目的のための欲望の世界です。
それが第2幕では、お家だとか親だとか、お主のためだとか、
他人と自分の為の目的を果たすための欲望にみちた世界に変わります。
1幕と2幕で内容が違いますが、出てくる一人一人の人間が、
それぞれ目的を果たすために、あらゆる手段を使って生きる姿。
人を想う気持ちや、いかに生きるかなど、
「生」に対する執着は非常に強いものがあります。
あの時代、武士階級が、幕府だ朝廷だなどと叫んでいても、
庶民にとっては、どっちでも良かったのではないか。
毎日が平和で、ご飯を食べる事が出来、人生を楽しめれば良い。
そう思っていたのではないか。そしてその感覚は、
現代社会に生きる我々にも共通するものがあるように思います。

千秋楽まで、わざわざ国立劇場まで足を運んで観劇に来て下さり、
ありがとうございました。
また来年、京都の南座でさらに練り上げた公演になるよう、
これから半年間精進して参りたいと思います。


記・中橋耕史
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