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『裏長屋騒動記 山田洋次監督独占インタビュー』
【山田洋次監督独占インタビュー】
2018年9月20日
『裏長屋騒動記』稽古後、前進座稽古場にて
インタビュー 柳生啓介
(柳生) 監督、お疲れのところありがとうざいます。昨年の国立劇場の『裏長屋騒動記』の初演から約一年経つわけですけれど、今日久しぶりに稽古をご覧になっていかがでしたか?
(山田監督) そうですね。キャスティングが少し変わって新鮮で面白いですね。別な味になってくるというのかな。俳優さんが変わると微妙に色合いも変わってくるのが観ててとても面白い。そして、それぞれの俳優さん達の演技が、こなれてきて深くなっているから、初演の時よりもっともっと笑いにあふれた舞台になると思いますよ。
(柳生) その初演の舞台ですが、私も国立劇場には何度も出演していますけれど、あの国立劇場であんなに客席が笑いにつつまれた光景を見たのは初めてでした。
(監督) そうですか。僕もどこかの団体の組合の貸切の日の回を観たんだけど、お客さんが本当に楽しそうに大笑いしてましたねぇ。
(柳生) その評判が拡がって今回早くも関西公演が実現することになりました。大阪ではいよいよ来月4日から国立文楽劇場で、来年1月は京都劇場で初春公演の幕があがります。
(監督) 僕は大阪の豊中の出身ですからね、関西でこの芝居が上演されることをとても嬉しく思います。
(柳生) 大阪、京都のお客様に期待することはありますか?
(監督) そうですね。今、映画館もそうなんだけど、映画を楽しみに来てるのに「静粛にしなさい」「私語は交わさないでください」みたいに注意されて…実際今の観客もおとなしい。大笑いしたり騒いだりしない。僕はそれがとても不満なんです。寅さんを創ってる頃は本当に観客はよく笑ったし、「ええぞ、寅」「寅、いてまえ」みたいなことを色々叫んでいましたよ。僕はね、この芝居が、関西でもそんなふうにみんなに楽しんでもらえればいいなと思いますね。ガヤガヤお互いにしゃべりながら一緒に笑って、そして一つの舞台に大勢の人たちが一緒に笑うことが、楽しさ可笑しさを共感すること自体が、こんなにも楽しいんだという体験をしてもらえるような、そんな舞台になるといいなと心から思います。
(柳生) 今日は稽古前に、今月13日に87歳になられた山田監督に出演者一同で唄を歌ってバースデーケーキをお渡しするといサプライズがありましたが…
(監督) そうでした。あれは驚いたなぁ。とても嬉しかったですね。
(柳生) 改めて、お誕生日おめでとうございます。監督は前進座と同い年なんですね。
(監督) 前進座とは本当に長い長いおつきあいですね。初めて吉祥寺の前進座に来てからもう60年以上経つんじゃないのかな。僕のうんと若い頃からのおつきあいで、僕は長年前進座のファンだし、後援者ですからね。だから今こうして前進座の皆さんと一緒に仕事が出来ることが僕はとても嬉しいんです。
(柳生) 今前進座に一番望まれることはなんでしょうか?
(監督) 去年国立劇場でね、二階の席で観てた時なんだけど、かなり年配の女性、おばあさんと言っていい人が二階の片隅の席で楽しそうに観てて、そして休憩時間になると食堂なんか行かないで持ってきたお弁当を一人でもぐもぐと食べて、休憩が終わるとまたじっと観て、時々笑い声をあげて、そして満足そうに一人で劇場を出て、多分バスでお帰りになると思うんだけど…あぁ、こういう人が長い年月ずっと前進座を愛してきたんだろうな、こういうお客さんに支持されている劇団なんだなぁってことをしみじみと思ったもんですよ。だから、そういうファンがいつまでもいてほしいし、増えてほしいし、そういう人たちの幸せのために前進座がもっともっと力強く羽ばたく劇団であってほしいと心から思います。
(柳生) 今回の『裏長屋騒動記』は劇団の若い俳優がいっぱい抜擢されています。前進座の俳優達へのメッセージもお願いします。
(監督) 喜劇とは何かということを僕なりに分かりやすく言えば、登場人物の欠点と、その役を演じる俳優自身の、自分が持っている欠点とをうまく重ね合わせると良いと思いますね。どんな人間だって欠点はあるわけだから、その欠点を自分で探しだしていく、あるいは演出家に掴まえてもらう、それをうまく役と結びつける時、笑いがきっと起きるんじゃないかと思います。そんな努力の中で前回よりもっともっと面白い舞台を創ってください。よろしくお願いします。
(柳生) ありがとうございます。
最後に熱烈なる山田洋次ファンの一人としておうかがいしますが、遂にと言いますか、いよいよ『男はつらいよ』の新作が創られるとうかがいました。その構想などを少しお話しいただけませんか?
(監督) そうねぇ(笑)
『男はつらいよ』がクランクインしたのが今から50年前です。その第一作のおしまいに、さくらさんの子供が産まれて、その子がずっと成長していく姿をこの映画は28年間かけて撮(うつ)してきたんです。この子供、満男を演じたのが吉岡秀隆君です。この子が小学校から中学高校、大学を卒業して就職して恋をするまでをずっと撮しているわけです。もちろん同時にまわりの人たちはだんだん年を取ってくるわけだけど…あの映画が終わってからもう20数年経ってるんだけど、あの家族にもう一回会いたいという思いが実はみんなにある。僕にもある。今さくらと博の夫婦はどうしてるんだろう。そして今吉岡君は、満男はどんな家庭を持ってるのか、子供がいるのかいないのか、今何をしているのか、それをもう一回観客と一緒になって探ってみたい。と同時に寅さんによってみんなが、特に吉岡君の満男は、寅さんから沢山のことを学んで今日がある。いわば人生の教師です、寅さんというのはね。そういうことを思いながら今を生きている。この映画には回想がいっぱい出てくるわけですから、だからやっぱり主役は寅さんなんだなと思います。今寅さんに会えたなら、寅さんは僕たちに「いま、幸せかい?」と問いかけるに違いない。あぁ寅さんはなんて自由な人間なんだろう、今の時代に僕たちが、日本人が、まず自由でなきゃいけない。この映画を観ながら、寅さんを観ながら観客がそんなことを考えてくれるような、もっともっとのびやかに生きていけるように、自由に発言し自由にものを考えられるようになってもらえるような、そんな映画にしたいというのが今の思いです。
(柳生) 何だかお話を聞いているだけで胸がいっぱいになりました。早く観たいです。
『裏長屋騒動記』も寅さんのように、末永くお客様から愛されるような、前進座の財産演目だと皆さんから言ってもらえるような作品にしたいと思います。一生懸命に舞台を勤めます。
(監督) 公演の成功を祈っています。
(柳生) ありがとうございます。監督もお忙しいとは思いますが、お時間がありましたらどうか大阪にも京都にも、サプライズで私たちの舞台を観にいらしてください。監督、どうか前進座創立100年まで、今後ともよろしくお願いいたします。
(監督) 100歳までねぇ…(笑) はい、わかりました。
『裏長屋騒動記』
大阪日本橋国立・文楽劇場
2018年10月4日(木)〜10日(水)
詳しい日程は前進座HPで!
チケットのお申込みは…
☆前進座関西事務所
06-6212-9600
☆カンフェティでも発売しております!
カンフェティHPはこちら!
2018年9月20日
『裏長屋騒動記』稽古後、前進座稽古場にて
インタビュー 柳生啓介
(柳生) 監督、お疲れのところありがとうざいます。昨年の国立劇場の『裏長屋騒動記』の初演から約一年経つわけですけれど、今日久しぶりに稽古をご覧になっていかがでしたか?
(山田監督) そうですね。キャスティングが少し変わって新鮮で面白いですね。別な味になってくるというのかな。俳優さんが変わると微妙に色合いも変わってくるのが観ててとても面白い。そして、それぞれの俳優さん達の演技が、こなれてきて深くなっているから、初演の時よりもっともっと笑いにあふれた舞台になると思いますよ。
(柳生) その初演の舞台ですが、私も国立劇場には何度も出演していますけれど、あの国立劇場であんなに客席が笑いにつつまれた光景を見たのは初めてでした。
(監督) そうですか。僕もどこかの団体の組合の貸切の日の回を観たんだけど、お客さんが本当に楽しそうに大笑いしてましたねぇ。
(柳生) その評判が拡がって今回早くも関西公演が実現することになりました。大阪ではいよいよ来月4日から国立文楽劇場で、来年1月は京都劇場で初春公演の幕があがります。
(監督) 僕は大阪の豊中の出身ですからね、関西でこの芝居が上演されることをとても嬉しく思います。
(柳生) 大阪、京都のお客様に期待することはありますか?
(監督) そうですね。今、映画館もそうなんだけど、映画を楽しみに来てるのに「静粛にしなさい」「私語は交わさないでください」みたいに注意されて…実際今の観客もおとなしい。大笑いしたり騒いだりしない。僕はそれがとても不満なんです。寅さんを創ってる頃は本当に観客はよく笑ったし、「ええぞ、寅」「寅、いてまえ」みたいなことを色々叫んでいましたよ。僕はね、この芝居が、関西でもそんなふうにみんなに楽しんでもらえればいいなと思いますね。ガヤガヤお互いにしゃべりながら一緒に笑って、そして一つの舞台に大勢の人たちが一緒に笑うことが、楽しさ可笑しさを共感すること自体が、こんなにも楽しいんだという体験をしてもらえるような、そんな舞台になるといいなと心から思います。
(柳生) 今日は稽古前に、今月13日に87歳になられた山田監督に出演者一同で唄を歌ってバースデーケーキをお渡しするといサプライズがありましたが…
(監督) そうでした。あれは驚いたなぁ。とても嬉しかったですね。
(柳生) 改めて、お誕生日おめでとうございます。監督は前進座と同い年なんですね。
(監督) 前進座とは本当に長い長いおつきあいですね。初めて吉祥寺の前進座に来てからもう60年以上経つんじゃないのかな。僕のうんと若い頃からのおつきあいで、僕は長年前進座のファンだし、後援者ですからね。だから今こうして前進座の皆さんと一緒に仕事が出来ることが僕はとても嬉しいんです。
(柳生) 今前進座に一番望まれることはなんでしょうか?
(監督) 去年国立劇場でね、二階の席で観てた時なんだけど、かなり年配の女性、おばあさんと言っていい人が二階の片隅の席で楽しそうに観てて、そして休憩時間になると食堂なんか行かないで持ってきたお弁当を一人でもぐもぐと食べて、休憩が終わるとまたじっと観て、時々笑い声をあげて、そして満足そうに一人で劇場を出て、多分バスでお帰りになると思うんだけど…あぁ、こういう人が長い年月ずっと前進座を愛してきたんだろうな、こういうお客さんに支持されている劇団なんだなぁってことをしみじみと思ったもんですよ。だから、そういうファンがいつまでもいてほしいし、増えてほしいし、そういう人たちの幸せのために前進座がもっともっと力強く羽ばたく劇団であってほしいと心から思います。
(柳生) 今回の『裏長屋騒動記』は劇団の若い俳優がいっぱい抜擢されています。前進座の俳優達へのメッセージもお願いします。
(監督) 喜劇とは何かということを僕なりに分かりやすく言えば、登場人物の欠点と、その役を演じる俳優自身の、自分が持っている欠点とをうまく重ね合わせると良いと思いますね。どんな人間だって欠点はあるわけだから、その欠点を自分で探しだしていく、あるいは演出家に掴まえてもらう、それをうまく役と結びつける時、笑いがきっと起きるんじゃないかと思います。そんな努力の中で前回よりもっともっと面白い舞台を創ってください。よろしくお願いします。
(柳生) ありがとうございます。
最後に熱烈なる山田洋次ファンの一人としておうかがいしますが、遂にと言いますか、いよいよ『男はつらいよ』の新作が創られるとうかがいました。その構想などを少しお話しいただけませんか?
(監督) そうねぇ(笑)
『男はつらいよ』がクランクインしたのが今から50年前です。その第一作のおしまいに、さくらさんの子供が産まれて、その子がずっと成長していく姿をこの映画は28年間かけて撮(うつ)してきたんです。この子供、満男を演じたのが吉岡秀隆君です。この子が小学校から中学高校、大学を卒業して就職して恋をするまでをずっと撮しているわけです。もちろん同時にまわりの人たちはだんだん年を取ってくるわけだけど…あの映画が終わってからもう20数年経ってるんだけど、あの家族にもう一回会いたいという思いが実はみんなにある。僕にもある。今さくらと博の夫婦はどうしてるんだろう。そして今吉岡君は、満男はどんな家庭を持ってるのか、子供がいるのかいないのか、今何をしているのか、それをもう一回観客と一緒になって探ってみたい。と同時に寅さんによってみんなが、特に吉岡君の満男は、寅さんから沢山のことを学んで今日がある。いわば人生の教師です、寅さんというのはね。そういうことを思いながら今を生きている。この映画には回想がいっぱい出てくるわけですから、だからやっぱり主役は寅さんなんだなと思います。今寅さんに会えたなら、寅さんは僕たちに「いま、幸せかい?」と問いかけるに違いない。あぁ寅さんはなんて自由な人間なんだろう、今の時代に僕たちが、日本人が、まず自由でなきゃいけない。この映画を観ながら、寅さんを観ながら観客がそんなことを考えてくれるような、もっともっとのびやかに生きていけるように、自由に発言し自由にものを考えられるようになってもらえるような、そんな映画にしたいというのが今の思いです。
(柳生) 何だかお話を聞いているだけで胸がいっぱいになりました。早く観たいです。
『裏長屋騒動記』も寅さんのように、末永くお客様から愛されるような、前進座の財産演目だと皆さんから言ってもらえるような作品にしたいと思います。一生懸命に舞台を勤めます。
(監督) 公演の成功を祈っています。
(柳生) ありがとうございます。監督もお忙しいとは思いますが、お時間がありましたらどうか大阪にも京都にも、サプライズで私たちの舞台を観にいらしてください。監督、どうか前進座創立100年まで、今後ともよろしくお願いいたします。
(監督) 100歳までねぇ…(笑) はい、わかりました。
『裏長屋騒動記』
大阪日本橋国立・文楽劇場
2018年10月4日(木)〜10日(水)
詳しい日程は前進座HPで!
チケットのお申込みは…
☆前進座関西事務所
06-6212-9600
☆カンフェティでも発売しております!
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- 2018-09-23
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