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『さんしょう太夫』だより

この記事で最終回

今回の「さんしょう太夫だより」はこれでおしまいです。
というわけで、私芳三郎の“さんしょう太夫の思い出”で、
締め括らせていただきます。

『さんしょう太夫』で初めてやらせて頂いた役は、
人買い船の船頭、‘宮崎の三郎’です。
あんじゅとづし王を、さんしょう太夫に売りつける役です。
船そのものは舞台上に登場しないので、
船を漕ぐ所作が重要です。
うまく表現できると、
実際には船はなくても、船があるようにお客様に感じてもらえます。
私は父・六代目芳三郎より、体を十分に使って櫓を漕ぐことと、
漕ぎながら舞台を一回りするときに、腰を決めて、頭の位置が上下しないようにと、
厳しく言われました。

次に演じたのは‘づし王’です。
演出の香川良成さんから、づし王の成長の過程をしっかり見せるようにと。
序盤は、なにも分からない少年。
中盤は、理不尽さに怒りを覚える青年。
終盤は、すべてを受け入れることのできる大人、同時に老いた母親の保護者。
そして全体に、国司の総領として生まれ持った気品を携えて。
以上のことを台本に大きな字で書き残しました。

そして現在、さんしょう太夫の倅、‘二郎’を演じています。
P1010032_convert_20120802005454.jpg
この役が一番難しいと思っています。
二郎は心優しいので、
あんじゅとづし王のことも、なんとか庇ってやろうとするのですが、
いざとなると助けられない。
父親のさんしょう太夫の言うことは絶対で、決して逆らえないからです。
もう一つ付け加えると、二郎というのはさんしょう太夫が奴隷の女性に生ませた子なのです。
自分の母親が奴隷だったからこそ、奴隷たちに優しく接する。
しかしそのことは、芝居のなかでは語られません。
観客は、あんじゅとづし王をなんとか救ってほしいと願います。
それをしてくれるのは二郎しかいないのですが、
結局は救うことができない。

二郎の中の、激しい葛藤を言葉に出さず、リアクションだけで表現しなければならない。
これが最も難しく感じました。
しかし、難しいからこそやりがいのある役です。

さて、『さんしょう太夫』の旅は終わりました。
前進座の財産演目であり、1000回公演が間近の作品。
12月には国立劇場公演も控えています。
たくさんの方に観て頂きたいです。

おしまいに、これまで私の記事を読んでくださいまして、
ありがとうございます。
また、お会いしましょう。

嵐芳三郎
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