メルクマール

この作品の特徴は、1人のヒロインのエピソードを4話で区切って、1エピソードが終わると時系列をリセットするという方式です。ギャルゲーのフォーマットをそのまま持ち込んだと言えて、それなりに成功したと言えるでしょう。

でもやや物足りなかったのは、ヒロイン同士の絡みがあまり無いことで。　嫉妬したり、修羅場になったりというやつですね。あるヒロインのルートでは、他のヒロインはただのお友達で、主人公に特別な感情があるようには見えませんでした。なので、それぞれのエピソードがバラバラのものという印象が否めません。

でもこの25話で、ある意味、全ヒロインのルートを一気通貫にやったのですよね。裡沙が妨害するまでは、確かに各ヒロインのルートに乗っていて、いい感じになっていたのです。これにより、すべてのエピソードが一つの世界にあったことが印象付けられました。 バラバラだったエピソードをつなぎ合わせる、糊の役割をしたのです。

全ヒロインによる「振られシーン」の連発が、とてもいいですしね。数語の短いやりとりだけれど、そのヒロインの性格や、純一への想いがよく表れています。いや、この構成は素晴らしいアイデアでしょう。

素晴らしいだけに、やや駆け足だったのが惜しい。「付き合っていることを、誰にも知られたくない」というミステリーを、もっと引っ張っても良かったし、罪を告白して許されるところも、もっとタメが欲しかった。せめて2話使えればと思いますが、まぁ、1話でテンポ良くやるメリットもあるので、これはこれでいいのかもしれません。

裡沙が悪質なストーカーかと思わせるサスペンスもありました。結局、裡沙がああいう行動に至ったのは、利己心ではなく罪悪感からでした。2年前のクリスマスに、純一のために良かれと思ってやったことが、純一を傷つけてしまった。そのことで彼女自身も傷ついて、自分は悪役に徹してでも、純一のことを守ろうとして、ストーカーまがいの行動に走ったのでしょう。

この作品は、気軽に観られて、それなりのクオリティがあるということで、まぁ佳作という印象でしたが、25話で評価が大幅アップしました。実は画期的な作品だったのかもしれないなと。今後、このフォーマットのフォロワーが増えるのかもしれません。一見、簡単に真似できそうだし。でもこの構成のミソは25話であり、このアイデアは既に使われてしまったので、フォロワーはここをどうするかが見せどころでしょうね。

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