メルクマール

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「黒幕は上層部だった」という結末は、かなりアリガチではあるのですが、この作品は単純にそういう話では無いのですよね。　ヒロインはシビュラシステムが現時点で無くせないことは理解しています。　また、槙島を裁かないのは裏切りですが、シビュラシステムの原理を考えると、そうすることには合理性があります。

「心を機械で読み取って数値化する」のがシビュラシステムですが、「心の秘密」は実はまだ解明されておらず、コンピュータだけで解析することはできないのでしょう。そこで、生の脳が必要になるわけです。　例えば「とても攻撃的な脳」と「とても温和な脳」があり、それぞれを計測対照と同じ環境に（疑似的に）置いて、その能波パターン（サイマティックスキャン）を取ります。そして、計測対照の脳をスキャンしたデータと比較することで、「その２つの間のどのあたりに位置するか」ということが数値化できます。これがサイコパスの原理でしょう。　実際には、心の動きはそれだけではないので、評価軸は多次元でしょう。

つまり、心とは何なのかはわからないままに、現物合わせで、それらしい数値を出しているわけです　完全とは言えませんが、シビュラシステムにたくさんのパターンの脳を用意して、計測対称がその内側にうまくマッピングできるのであれば、十分に実用的になりそうです。

当然、そのパターンの内側に収まらない脳もあるわけです。　槙島のようにですね。　であれば、槙島をシビュラシステムに取りこむことで、さらに「正しく計測できる守備範囲」が広がることになります。　なるほど、シビュラシステムが槙島を欲しがるのは当然です。

これの問題点は、「犯罪係数を測るためには、犯罪者の脳が必要」ってことですね。　正常な市民の脳も必要だけれど、それ以上に、正常から外れた異常な脳のサンプルも多数必要で、そうでないとシステムが成り立ちません。　そしてその犯罪者たちが、市民を裁いている。　原理はわかりますが、「それってどうなの？」と感情では納得できないシステムでしょう。

「主人公たちに立ちはだかる敵」としては、とてもよく考えられた設定だと言えます。　「独りよがりの理由で世界を滅ぼそうとしている敵」とかではなく、敵側にも裏切り行為をする合理的な理由があり、絶対悪ではない。　でもそれだけに、スッキリした結末にはならないのですよね。　

設定は前回まででほとんど分かっていたので、最終回の見どころは、朱の成長っぷりでした。　リアリストな女たちと、ロマンチストな男たちという対比も面白かった。　いろいろ決着を先送りにはしていますが、よい最終回だったと思えます。　ぜひぜひ、続きも見たいですね。

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