メルクマール

ええ、泣かされましたよ、クソッ。　特に父親が「あいつは16年しか生きてないんだぞ！」というシーンで。僕も父親なので、感情移入するに決まってるじゃないですか。

この作品は、正直言って第1話が一番好きで、その後は右肩下がりという印象です。第1話が素晴らしすぎるんですよね。テンポのいいコメディで、ネタも面白く、それを盛り上げる凝った演出に目を見張りました。「これは凄い楽しみな作品になる！」と思ったのですが、その後は大人しめのテンションになり、ストーリーも日常コメディというよりは、”日常に潜む非日常”を燻り出すような、不思議なテイストになっていきました。

ヨークさんのような原作ファンの方に言わせれば、それが本来の『それ町』のテイストであって、むしろ1話はそれ町らしく無いのだそうです。ならば、僕は”それ町らしくない”ところを好きになってしまったのかも。

でも今回は、卑怯だと思いつつも、確かに心を動かされました。このエピソードが作れたのは、これまでの不思議系のエピソードの積み重ねがあってこそなので、あれにも意味があったのでしょう。

10話の感想でもちらっと書いたのですが、この作者は、世の中を俯瞰する視点を持っているんですよね。　幽霊、宇宙人、タイムトラベラーなど、人智を超える存在が無造作に登場します。見えている世界だけではない、より上位の世界があって、そこには超越的な存在がいて、高みから町の人々の営みを見守っている。ちょっとした不思議な出来事が起きて、それに気付く人もいるけれど、それでも何事も無かったかのように、町は廻っている。そんな世界観です。死生観と言ってもいいかもしれない。それが色濃く反映された、最終回でした。

人智を超える存在や、あの世について描いても、宗教じみた話にはなりません。そういう世界はあるかもしれないが、この世においては、周囲の人々と、助け合ったり、迷惑をかけたり、笑い合ったりするべきだというメッセージでしょう。それが生きるということだから。

最初に期待したものとは違いましたが、これはこれで味のある作品だったと思えます。メイドさんが登場する萌えアニメは沢山あるので、毛色の違った、こういう作品があるのは良いことなのでしょう。

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