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7月17日に行われたBUCK-TICKの配信ライブ「魅世物小屋が暮れてから~SHOW AFTER DARK~」を観たのだが、「配信ライブ、かくあるべき」みたいな感じでとても素晴らしかった。全国各地のコンサート会場をツアーで周る生ライブでは決して味わえないような、工夫を凝らした舞台セットや演出の数々(曲によってモノクロのシネマスコープに変わったりとか)は、ミュージカル映画でも観ているような感じで引き込まれたし、徹底的に作りこまれた「魅世物小屋」というコンセプトは、異世界への没入感も凄まじかった。配信ライブであるからこそ「普段のツアーではできないことをやる」「音楽とヴィジュアル両面でトータル・エンタテイメントとして完成させる」という彼らのアーティスト性や美意識の高さがまたしても立証されてしまった感がある。
元はグランジ・ナンバーである「唄」が、ジャジーなホーン・セクションに彩られたシャッフル・リズムの曲に大胆に様変わりするという、冒頭から度肝を抜かれたセットリストだったが、第二部で披露された「JUST ONE MORE KISS」のリアレンジ・ヴァージョンも素晴らしかった。この曲はもともと1988年にリリースされた彼らのファースト・シングルで、当時のビート・ロックの影響も色濃い曲調だったが、この配信ライブにおけるアレンジはなんと昭和アイドル歌謡風。「聖子ちゃんが歌ってそう」なんてコメントも相次いだ。普通のバンドなら80年代の曲なんて古臭くて、リアレンジするとなれば現代にも通用する最新サウンド(笑)にアップデートするのに、B-Tの場合は時代を少し戻すとは…。
といっても原曲だって今聴いてもそこまで古臭さはないし、今回のアレンジだって単にレトロにしたわけではなく、あくまでサウンドは現代風、情緒はアイドル歌謡のノスタルジックさと煌びやかさを備えるという、もはやB-T独自のセンスとしか言えないもので、「なんてイイ曲なんだ…」とあらためて思ってしまった。9月にリリースされるというニューシングル「Go-Go B-T Train」(これもまた、もはやBUCK-TICKにしか許されない凄いタイトルだ)のカップリングとして「唄」と「JUST ONE MORE KISS」のニュー・ヴァージョンが収録されるということで、これまた非常に楽しみ。
というわけで2021年7月に初聴きした音源まとめです。
まずは新譜から。
おはようツインテール / 綺羅星 (2021)
★★★★☆
さよポニの制作メンバーが関わっているという謎のスペシャル・プロジェクトの1stアルバム。AORサウンドとさよポニ直系の抑揚のないヴォーカルの相性は意外に良い。「また恋におち」はちょっとミスチルの「しるし」に聞こえてしまった。
おはようツインテール - "ラブシック・ジェラート"
The Goon Sax / Mirror II (2021)
★★★★☆
The Go-BetweensのVo.&Gtr.、Robert Forsterの息子が在籍するバンドの3作目。「In the Stone」を聴いた限りでは初期のThe xxっぽい印象を抱いたけど全体的にはそんなことはなく、ニューウェイヴ風な「Psychic」、The Vaselinesっぽい男女混声脱力ローファイ「Tag」、ローファイ・シューゲイザーな「Desire」などヴァラエティに富んでて面白い。しかし「Temples」や「Carpetty」「Caterpillars」といったローファイ・ポップな曲はあまりにヘロヘロで歌ヘタすぎて笑ってしまった。なお、ローファイにおいて「歌ヘタすぎ」は誉め言葉。
The Goon Sax - "Desire"
Fatima Al Qadiri / Medieval Femme (2021)
★★★☆☆
「ダカールの日」で有名(なのか?)なセネガルの首都ダカール出身のDJ/プロデューサーによる3作目。2014年の前々作『Asiatisch』はアジアン・テイストも散りばめていたけど、今回はアラビア風でエキゾチック。ビート感がもう少しあっても良かった。
Fatima Al Qadiri - "Malaak"
もう1ヶ月切ってるけど、フジロック本当に開催できるのかな。一応チケットは取っているし、宿も押さえてあるけど…ということでフジロック出演アーティストをいくつか。
4s4ki / Castle in Madness (2021)
★★★★☆
昨年リリースのデビューアルバム『おまえのドリームランド』や『超怒猫仔/Hyper Angry Cat』で注目を集めたフィメール・ラップ・シンガー/ソングライター4s4ki(アサキ)のメジャーデビュー・アルバム。フジロックで観るつもりでいたが、最優先案件である平沢進の真ウラとは…。
「ALICE feat. Smrtdeath」でブレイクビーツを部分的に取り入れていたけど、全体的にもっとこういうハードコアな要素(トランスやレイヴ、ガバ、ドラムンベースなど)を加えて100 gecsみたくゴッタ煮にしても良かったかな。にしても「OBON」のフレーズ「すけすけすけすけべの犬ポチ」はつい声に出して歌いたくなる。
4s4ki - "ALICE feat. Smrtdeath"
カネコアヤノ / よすが (2021)
★★★★☆
カネコアヤノ、11月に武道館でワンマンですってよ。いつの間にかすごいビッグになったなー。でもサウンドも歌声も、やはり変わらず素朴で力強く、可憐でわびさびが効いている。
カネコアヤノ - "抱擁"
milet / eyes (2020)
★★★★☆
miletが以前着用していたスマパンの「メロンコリー」Tシャツ、実は自分も持っていたりする。さて昨年リリースされたこのアルバムは、気になってはいたけど何となくスルーしてしまっていて、今回フジロック予習も兼ねてようやくゲット。
ヴォーカルに関して言えば、オリコンで1位を獲るような邦楽シンガーとしてはこれまであまりいなかったタイプだと思う。雑に言うならば「洋楽歌唱」で、伸びやかな高音とハスキーな低音の使い分けが上手く、ブレスのしかたや高音で伸ばした後のヒーカップ歌唱が特徴的…と書いた後でwikiみたら近いことが書いてあった。
miletのダークで深みのある歌声の魅力も指摘されており、ローやミドルの音域をしっかりと響かせ、高音域では息声も効果的に使うことで、日本のJ-POPシーンにはあまり見当たらない独特のメランコリックなムードや優美な暗闇を作り出している
出典:wikipedia「eyes (miletのアルバム)」
そうそう、それ!それが言いたかったんだよ(笑)。HalseyやOf Monsters And MenのNannaに近いと言えるかも。
ただ、全18曲はちょっと詰め込み過ぎでは。1曲がほぼ3分台とコンパクト(こういうところも洋楽っぽさが感じられる)なのは良いけど、曲数が多いと各曲の印象が薄まってしまうかも。そんな中でも「Wonderland」と、ワンオクのToruとの共作曲「The Love We've Made」が特に印象深かった。
milet - "Tell me"
続いて今月のV系。そういや先月はV系作品なかったな。
PIERROT / HEAVEN - THE CUSTOMIZED LANDSCAPE- (2002)
★★★★☆
LUNA SEA / STYLE (1996)
★★★★☆
PIERROTはこないだ聴いた1st『FINALE』が良かったので。本当は2ndを聴きたかったけど店に置いておらず、3作目をチョイス。
LUNA SEAは最初の4枚(『LUNA SEA』~『MOTHER』)とベスト盤しか持っていなくて、ねとらぼの「LUNA SEAオリジナルアルバム人気ランキング」では未聴アルバムの中で最も人気が高かったので。ジャケットは宗教色がなくなり、1曲目に「WITH LOVE」みたいなポップなミディアム曲を持ってくるあたり、これまでのイメージからの脱却が強く感じられる。ただ全11曲中5曲が5分台で、その他に8分の「SELVES」と10分半の「FOREVER & EVER」もあるのでちょっと全体的に長い気も。
LUNA SEA - "DESIRE"
MALICE MIZERが「V系様式美の完成形」ならば、LUNA SEAは「V系ロック・バンドの完成形」。
機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 COMPLETE BEST (2016)
★★★★★
『キル・ビル』を観ていないくせに栗山千明好きを公言するのもアレだけど、正直好きだ。何がいいって歌声がいい。2020年リリースの歌手デビュー曲(CHiAKi KURiYAMA名義)「流星のナミダ」は超名曲だと思う。長いことこの曲の音源を手に入れたかったけど、彼女の唯一のオリジナル・アルバム『CIRCUS』にも再発盤『CIRCUS Deluxe Edition』にも収録されていないのだから困った。
それならばコンピレーションがあるじゃないか、と今さら気付いたわけだが、そういえばTVアニメ「機動戦士ガンダムUC RE:0096」を観ていたときにOP・ED曲も結構好きだったから一石二鳥と思っていたら…。ナニ?2枚組限定盤にはライブ音源としてAimerの歌う「流星のナミダ」や「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を超えて~」(TM NETWORKのカバー)、Tielleの歌う「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」(森口博子のカバー)も収録されているだと?これはもう一石七鳥くらいあるんだが。好きなシンガーがカバーする好きな曲、そりゃあ最高だよ…。
SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle - "Into the Sky"
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