Albums of the Month |
6月から始めた、手持ちのCD音源をすべてデータ化するプロジェクトがついに完了。データで聴くのが当たり前になってからは、棚からCD取り出して…っていうのが億劫になってしまい、「久々にアレ聴きたいなー」と思っても未取り込みのものは結局聴かないみたいなことも多かったけど、これからは手持ち音源すべてがいつでも気軽に再生できる!3月以降ずっとリモートワークで音楽を聴く時間が以前と比べ1日あたり8時間ほど増えたことだし、この機会に未聴の音源や、久しく聴いていない音源も聴いていこうかなと。買った当初はあまり気に入らなかったけど、20年ぶりに聴いたらめっちゃいい…みたいなこともあるかも。
そんで、気になっていた「音源データ、全部でどれくらいになる?」の結果はこんな感じ。
曲数:約43,400曲
アーティスト数:約2,800組
アルバム数:約3,600枚
HDDがぶっ壊れないうちにこまめにバックアップ取っておこうね…(データ吹っ飛び経験者)。というわけで9月に初聴きした音源まとめ。今月はめちゃくちゃ楽しみにしていた新譜のリリースが2つありました。
そう、まずは昨年末の『THE DAY IN QUESTION』でアナウンスされて以来ずーっと待ち焦がれていたBUCK-TICKのニューアルバム!
BUCK-TICK / ABRACADABRA (2020)
★★★★★
去年B-Tにハマって以来、初のアルバムリリースということで、やっぱり後追いで聴くのとは全然異なるカタルシスが得られますね。雑誌・ラジオ・WEBニュース・配信などで制作エピソードや作品に込められた思いを見聞きしたり、発売当日に行われた無観客生配信ライブを観たり(すでに10回はアーカイブを観ている)するとより深く作品を楽しめるし、再生するごとに新たな気付きがあって楽しい。
過去記事:BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<前編>
過去記事:BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<後編>
先日こんな↑記事でも書いたように、最近はそれこそ人生でこんなに一つのアーティストに夢中になったことないというレベルでB-Tを追いかけている。ライブ映像を観るたびに10代女子のように(※当方40代男)キャッキャし「か、かっこいい~!!」と悶絶しているし、10月と12月に参加予定のフィルムコンサートもとても楽しみにしている。そんな彼らの新譜だから期待しないわけがない。しかし期待値が高すぎるあまり、肩透かし食らったらどうしようという恐怖感もあった。だって彼らはここ数年、『アトム未来派 No.9』『No.0』と立て続けに凄まじい作品を作り上げているのだから。
事前に公開されたトラックリストを見たとき、実は少し嫌な予感がした。「舞夢マイム」「ダンス天国」「URAHARA-JUKU」といったいかにもB-Tらしい言葉遊び風なタイトルの並びから、これはもしかして『アトム未来派 No.9』や『No.0』のような重厚でダークでシリアスな流れにひと区切りつけ、『RAZZLE DAZZLE』っぽい「軽め」なポップ路線になるのでは?という不安を覚えたからだ。『RAZZLE DAZZLE』は今でこそ気に入っているが、B-T作品の中ではハマる(というか受け入れられる)までに最も時間がかかった作品だったので。
しかし本作がついにリリースされひとたび聴いてみれば、全くそんな心配は杞憂であった。やはり『アトム~』や『No.0』とは異なる感触を持っているが、それどころか『RAZZLE DAZZLE』含めこれまでにリリースされた作品のいずれからも逸脱していて、デビュー33年目・22作目を迎えながらまた新たなフェーズに突入したことが一聴してわかる作品だ。と同時に、「アフター・コロナ」というタームにおいても非常に重要な意味を持つ作品でもある。特に緊急事態宣言以降に作られたという13曲目「ユリイカ」は、心揺さぶられるものがあった。
アルバムのタイトルにもなっている、疫病退散を意味する呪文「アブラカダブラ」はこの曲の歌詞から採られているが、デビュー初期(つまり30年以上前)の彼らを思わせるアッパーな8ビートは逆に新鮮ですらあるし、サビに登場する歌詞は「LOVE!」「YEAH!」「PEACE!」の3単語のみという明快さ。あまりに突き抜けているが、かといって単に現状から目を逸らしているわけではない。「僕たちにできるのはこんなことぐらいしかない」──メンバー自身がそう語っていたけど、少なくともこの曲のそっと寄り添ってくれるポジティブさやシンプルなメッセージによって、とても前向きな気持ちになれたのは確かだ。いくら時勢を反映しての応援ソングと言ったって、感動・感謝の押し売りみたいな厚かましい曲は苦手なので。
アルバム全体のサウンド・テクスチュアという面でいえば、コード展開やベースラインが非常にミニマルな曲が多いところは洋楽的であると感じた。ぶっといエレクトロ・サウンドを織り交ぜながらもリズム隊が安定した強靭なグルーヴを刻み、ギターの音色からは異国的かつサイケデリックな意匠も感じられる点は、個人的にはグルーヴ&サイケなUKバンドたちの作品群──Primal Screamの『More Light』や『Evil Heat』、Kasabian『Empire』、The Music『Welcome to the North』など──が想起された(曲調が似ているわけではない)。
また、本作で特に素晴らしいと思ったのは曲のバリエーションと曲順の良さだ。もっとも、曲のバリエーションの豊富さは今に始まったことではないけど、全13曲59分とそこそこのヴォリュームながら、体感では45分くらいに感じられる。一曲の中に過剰な展開や派手なサビを持ってくるのではなく、程よい反復(リフ)と程よい「逸脱」(異物感と置き換えることもできる)で構成することで、極力シンプルになるよう緻密に計算されているのがわかる。
アルバムは前述の「ユリイカ」をモチーフにした「PEACE」から静かに、そして荘厳に幕を開け、続く「ケセラセラ エレジー」はうねるベースラインと前述のUKバンドを思わせるビートがとてもかっこいい。「URAHARA-JUKU」はノイジーなエフェクトが歌詞に描かれたイーヴルな世界観を巧みに表現しているし、「SOPHIA DREAM」と「月の砂漠」の異国情緒漂う妖しさはB-Tの真骨頂と言ったところ。「Villain」は「悪党」の意味と「糜爛=ただれ)のダブルミーニングで、匿名で中傷する人々についての痛烈なメッセージが込められており、シンプルなコード展開ながら本作で最も狂気を感じさせるアグレッシヴ・ナンバー。「凍える Crystal CUBE ver.」はシングル収録Ver.とは異なるエレクトロニカな意匠が加えられ、近年の作品では必ず数曲収録されるようになった昭和歌謡テイスト枠の「舞夢マイム」は男女掛け合いの歌詞になっており、歌詞カードにも「♠」や「♥」が書かれていたりとユニーク。「ダンス天国」はその名の通りアッパーでダンサブルな曲だがダンス繋がりの「SURVIVAL DANCE」よりもややシリアスで、ジェンダー・フリーへの目配せも見られる。
そしてここからはシングル3連発。近年のポップス系アルバムはストリーミングでサクサク聴かれることを前提に前半にシングル曲を持ってくることが多いが、10曲目からシングルA面曲を固めてくるのはそれだけ全曲満遍なく自信があるということなのでは。GARIのYOW-ROWによってエレクトロ度がさらに増した「獣たちの夜 YOW-ROW ver.」「堕天使 YOW-ROW ver.」はいずれもシングルバージョンとは異なるかっこよさがある。「MOONLIGHT ESCAPE」はシングルバージョンと同じだが、終盤の12曲目に置かれることでより神聖さが増し、ある種の福音的な意味合いが感じられるようになった。そして先ほども触れた「ユリイカ」はアルバムのクライマックスに向け、ひたすら高揚感を煽っている。が、このアルバムを「完璧」たらしめているのはラストの「忘却」だ。思えばB-Tのアルバムはいつもラスト曲のチョイスが絶妙だった…。「KISS ME GOOD-BYE」、「太陽ニ殺サレタ」、「FLAME」、「夢見る宇宙 -cosmix-」、「形而上 流星 -metaform-」と枚挙に暇がないが、こういった哀愁感の強いエモーショナルな曲がラストだと作品としてグッと締まる。頭から終わりまで、見事な構成を持ったアルバムだと思う。
だからといって、本作が彼らの最高傑作であるとは現時点では考えていない。それぞれ異なる魅力を持った作品を比較するのは困難だからだ。ただ、『アトム~』そして『No.0』で極限まで完成されたあの路線をさらに推し進めたら、臨界を迎えてしまう(=どこかしら「やり過ぎ」な部分が出てくる)懸念もあったと思う。2010年代後半、一つの完成形を極めていった彼らが、2020年代に進む新たな道を提示したという意味で、本作は大歓迎したい傑作と言えるだろう。
BUCK-TICK 『ABRACADABRA』全曲視聴トレーラー
BUCK-TICK / SWEET STRANGE LIVE (1998)
★★★★☆
同じくB-Tの過去作も。こちらは『SEXY STREAM LINER』期のライブ盤。バキバキの打ち込みだったためわりと無機質な感触だった『SEXY STREAM LINER』にフィジカルなバンド感が加わったという評判だったので購入したけど、想像していたほどの違いはないかな(無機質サウンドはむしろ好物だし)。あと、あんまり音が良くない気が。でも「キラメキの中で…」(本作では「CHAOS~キラメキの中で」とクレジット)のライブアレンジはいつもかっこいいので、この音源が手に入ったことはとても満足。
今月、BUCK-TICKと同様にとても期待していたもう一つの新譜がこちら。
あいみょん / おいしいパスタがあると聞いて (2020)
★★★★★
あいみょん / 風とリボン (2020)
★★★★★
あいみょんの3作目。『風とリボン』の方は弾き語りアルバムで『おいしいパスタがあると聞いて』の初回限定盤特典だけど、普通に1枚のアルバム分の価値はあるので分けて紹介。
前作『瞬間的シックスセンス』は2019年の当ブログ年間ベスト・アルバム3位でもあり、その後リリースされたシングル群も「真夏の夜の匂いがする」を筆頭にどれも好きだったのでかなり期待度は高かった。メジャーでの2作は田中ユウスケや関口シンゴ、トオミ ヨウ、會田茂一といったアレンジャーが名を連ねていて、あいみょんの書く普遍的なグッド・メロディとエッジの利いたアレンジの絶妙なバランス感が素晴らしかったのだけど、本作はそこから一歩抜け出して(陳腐な言い方をしてしまえば「大人になって」)、過剰なアレンジは加えずにソングライティングだけで勝負している。例えば「朝陽」みたいな少しオールドスクールなアレンジであっても、幅広い世代に受け入れられそうなポップ感があって、それでいて没個性的にならないのは、歌詞のユニークさ(想像力を掻き立てる「マシマロ」の歌詞は見事)と力強く飾らない歌声の魅力によるものだと思う。そういった面においてもスピッツ的な存在に感じられる。
そしてそういった思いは、シンプルなアコギ弾き語りの『風とリボン』を聴いてさらに強まった。過去曲や『おいしい~』収録曲、さらには未発表曲まで披露され、よりリラックスした歌を聴かせてくれる。
あいみょん - "マシマロ"
他、旧譜はCD音源のデータ化の中で、あまり深く考えず軽い気持ちでちょっと聴いてみようと思ったもので、奥さん所有のものや友人からもらった音源などをリリース年順に記録しておきます(枚数多いのでコメントは割愛)。
麗美 / 走るそよ風たちへ (1990)
★★★☆☆
裕木奈江 / a Leaf (1993)
★★★☆☆
V.A. / YELL Ⅲ (1993)
★★★☆☆
Limp Bizkit / Three Dollar Bill Y'All$ (1997)
★★☆☆☆
Chara / CHARA THE BEST BABY BABY BABY xxx (1995)
★★★★★
China Dalls / China More (2000)
★★☆☆☆
SHERBETS / Vietnam 1964 (2001)
★★★★☆
Quantic Soul Orchestra / Stampede (2003)
★★★★☆
クラムボン / てん、 (2005)
★★★☆☆
Nujabes / modal soul (2005)
★★★★☆
菊池成孔 / 南米のエリザベス・テイラー (2005)
★★★☆☆
岡村靖幸 / ÉTIQUETTE (パープルジャケット) (2011)
★★★☆☆
岡村靖幸 / ÉTIQUETTE (ピンクジャケット) (2011)
★★★☆☆
そんで、気になっていた「音源データ、全部でどれくらいになる?」の結果はこんな感じ。
曲数:約43,400曲
アーティスト数:約2,800組
アルバム数:約3,600枚
HDDがぶっ壊れないうちにこまめにバックアップ取っておこうね…(データ吹っ飛び経験者)。というわけで9月に初聴きした音源まとめ。今月はめちゃくちゃ楽しみにしていた新譜のリリースが2つありました。
そう、まずは昨年末の『THE DAY IN QUESTION』でアナウンスされて以来ずーっと待ち焦がれていたBUCK-TICKのニューアルバム!
BUCK-TICK / ABRACADABRA (2020)
★★★★★
去年B-Tにハマって以来、初のアルバムリリースということで、やっぱり後追いで聴くのとは全然異なるカタルシスが得られますね。雑誌・ラジオ・WEBニュース・配信などで制作エピソードや作品に込められた思いを見聞きしたり、発売当日に行われた無観客生配信ライブを観たり(すでに10回はアーカイブを観ている)するとより深く作品を楽しめるし、再生するごとに新たな気付きがあって楽しい。
過去記事:BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<前編>
過去記事:BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<後編>
先日こんな↑記事でも書いたように、最近はそれこそ人生でこんなに一つのアーティストに夢中になったことないというレベルでB-Tを追いかけている。ライブ映像を観るたびに10代女子のように(※当方40代男)キャッキャし「か、かっこいい~!!」と悶絶しているし、10月と12月に参加予定のフィルムコンサートもとても楽しみにしている。そんな彼らの新譜だから期待しないわけがない。しかし期待値が高すぎるあまり、肩透かし食らったらどうしようという恐怖感もあった。だって彼らはここ数年、『アトム未来派 No.9』『No.0』と立て続けに凄まじい作品を作り上げているのだから。
事前に公開されたトラックリストを見たとき、実は少し嫌な予感がした。「舞夢マイム」「ダンス天国」「URAHARA-JUKU」といったいかにもB-Tらしい言葉遊び風なタイトルの並びから、これはもしかして『アトム未来派 No.9』や『No.0』のような重厚でダークでシリアスな流れにひと区切りつけ、『RAZZLE DAZZLE』っぽい「軽め」なポップ路線になるのでは?という不安を覚えたからだ。『RAZZLE DAZZLE』は今でこそ気に入っているが、B-T作品の中ではハマる(というか受け入れられる)までに最も時間がかかった作品だったので。
しかし本作がついにリリースされひとたび聴いてみれば、全くそんな心配は杞憂であった。やはり『アトム~』や『No.0』とは異なる感触を持っているが、それどころか『RAZZLE DAZZLE』含めこれまでにリリースされた作品のいずれからも逸脱していて、デビュー33年目・22作目を迎えながらまた新たなフェーズに突入したことが一聴してわかる作品だ。と同時に、「アフター・コロナ」というタームにおいても非常に重要な意味を持つ作品でもある。特に緊急事態宣言以降に作られたという13曲目「ユリイカ」は、心揺さぶられるものがあった。
アルバムのタイトルにもなっている、疫病退散を意味する呪文「アブラカダブラ」はこの曲の歌詞から採られているが、デビュー初期(つまり30年以上前)の彼らを思わせるアッパーな8ビートは逆に新鮮ですらあるし、サビに登場する歌詞は「LOVE!」「YEAH!」「PEACE!」の3単語のみという明快さ。あまりに突き抜けているが、かといって単に現状から目を逸らしているわけではない。「僕たちにできるのはこんなことぐらいしかない」──メンバー自身がそう語っていたけど、少なくともこの曲のそっと寄り添ってくれるポジティブさやシンプルなメッセージによって、とても前向きな気持ちになれたのは確かだ。いくら時勢を反映しての応援ソングと言ったって、感動・感謝の押し売りみたいな厚かましい曲は苦手なので。
アルバム全体のサウンド・テクスチュアという面でいえば、コード展開やベースラインが非常にミニマルな曲が多いところは洋楽的であると感じた。ぶっといエレクトロ・サウンドを織り交ぜながらもリズム隊が安定した強靭なグルーヴを刻み、ギターの音色からは異国的かつサイケデリックな意匠も感じられる点は、個人的にはグルーヴ&サイケなUKバンドたちの作品群──Primal Screamの『More Light』や『Evil Heat』、Kasabian『Empire』、The Music『Welcome to the North』など──が想起された(曲調が似ているわけではない)。
また、本作で特に素晴らしいと思ったのは曲のバリエーションと曲順の良さだ。もっとも、曲のバリエーションの豊富さは今に始まったことではないけど、全13曲59分とそこそこのヴォリュームながら、体感では45分くらいに感じられる。一曲の中に過剰な展開や派手なサビを持ってくるのではなく、程よい反復(リフ)と程よい「逸脱」(異物感と置き換えることもできる)で構成することで、極力シンプルになるよう緻密に計算されているのがわかる。
アルバムは前述の「ユリイカ」をモチーフにした「PEACE」から静かに、そして荘厳に幕を開け、続く「ケセラセラ エレジー」はうねるベースラインと前述のUKバンドを思わせるビートがとてもかっこいい。「URAHARA-JUKU」はノイジーなエフェクトが歌詞に描かれたイーヴルな世界観を巧みに表現しているし、「SOPHIA DREAM」と「月の砂漠」の異国情緒漂う妖しさはB-Tの真骨頂と言ったところ。「Villain」は「悪党」の意味と「糜爛=ただれ)のダブルミーニングで、匿名で中傷する人々についての痛烈なメッセージが込められており、シンプルなコード展開ながら本作で最も狂気を感じさせるアグレッシヴ・ナンバー。「凍える Crystal CUBE ver.」はシングル収録Ver.とは異なるエレクトロニカな意匠が加えられ、近年の作品では必ず数曲収録されるようになった昭和歌謡テイスト枠の「舞夢マイム」は男女掛け合いの歌詞になっており、歌詞カードにも「♠」や「♥」が書かれていたりとユニーク。「ダンス天国」はその名の通りアッパーでダンサブルな曲だがダンス繋がりの「SURVIVAL DANCE」よりもややシリアスで、ジェンダー・フリーへの目配せも見られる。
そしてここからはシングル3連発。近年のポップス系アルバムはストリーミングでサクサク聴かれることを前提に前半にシングル曲を持ってくることが多いが、10曲目からシングルA面曲を固めてくるのはそれだけ全曲満遍なく自信があるということなのでは。GARIのYOW-ROWによってエレクトロ度がさらに増した「獣たちの夜 YOW-ROW ver.」「堕天使 YOW-ROW ver.」はいずれもシングルバージョンとは異なるかっこよさがある。「MOONLIGHT ESCAPE」はシングルバージョンと同じだが、終盤の12曲目に置かれることでより神聖さが増し、ある種の福音的な意味合いが感じられるようになった。そして先ほども触れた「ユリイカ」はアルバムのクライマックスに向け、ひたすら高揚感を煽っている。が、このアルバムを「完璧」たらしめているのはラストの「忘却」だ。思えばB-Tのアルバムはいつもラスト曲のチョイスが絶妙だった…。「KISS ME GOOD-BYE」、「太陽ニ殺サレタ」、「FLAME」、「夢見る宇宙 -cosmix-」、「形而上 流星 -metaform-」と枚挙に暇がないが、こういった哀愁感の強いエモーショナルな曲がラストだと作品としてグッと締まる。頭から終わりまで、見事な構成を持ったアルバムだと思う。
だからといって、本作が彼らの最高傑作であるとは現時点では考えていない。それぞれ異なる魅力を持った作品を比較するのは困難だからだ。ただ、『アトム~』そして『No.0』で極限まで完成されたあの路線をさらに推し進めたら、臨界を迎えてしまう(=どこかしら「やり過ぎ」な部分が出てくる)懸念もあったと思う。2010年代後半、一つの完成形を極めていった彼らが、2020年代に進む新たな道を提示したという意味で、本作は大歓迎したい傑作と言えるだろう。
BUCK-TICK 『ABRACADABRA』全曲視聴トレーラー
BUCK-TICK / SWEET STRANGE LIVE (1998)
★★★★☆
同じくB-Tの過去作も。こちらは『SEXY STREAM LINER』期のライブ盤。バキバキの打ち込みだったためわりと無機質な感触だった『SEXY STREAM LINER』にフィジカルなバンド感が加わったという評判だったので購入したけど、想像していたほどの違いはないかな(無機質サウンドはむしろ好物だし)。あと、あんまり音が良くない気が。でも「キラメキの中で…」(本作では「CHAOS~キラメキの中で」とクレジット)のライブアレンジはいつもかっこいいので、この音源が手に入ったことはとても満足。
今月、BUCK-TICKと同様にとても期待していたもう一つの新譜がこちら。
あいみょん / おいしいパスタがあると聞いて (2020)
★★★★★
あいみょん / 風とリボン (2020)
★★★★★
あいみょんの3作目。『風とリボン』の方は弾き語りアルバムで『おいしいパスタがあると聞いて』の初回限定盤特典だけど、普通に1枚のアルバム分の価値はあるので分けて紹介。
前作『瞬間的シックスセンス』は2019年の当ブログ年間ベスト・アルバム3位でもあり、その後リリースされたシングル群も「真夏の夜の匂いがする」を筆頭にどれも好きだったのでかなり期待度は高かった。メジャーでの2作は田中ユウスケや関口シンゴ、トオミ ヨウ、會田茂一といったアレンジャーが名を連ねていて、あいみょんの書く普遍的なグッド・メロディとエッジの利いたアレンジの絶妙なバランス感が素晴らしかったのだけど、本作はそこから一歩抜け出して(陳腐な言い方をしてしまえば「大人になって」)、過剰なアレンジは加えずにソングライティングだけで勝負している。例えば「朝陽」みたいな少しオールドスクールなアレンジであっても、幅広い世代に受け入れられそうなポップ感があって、それでいて没個性的にならないのは、歌詞のユニークさ(想像力を掻き立てる「マシマロ」の歌詞は見事)と力強く飾らない歌声の魅力によるものだと思う。そういった面においてもスピッツ的な存在に感じられる。
そしてそういった思いは、シンプルなアコギ弾き語りの『風とリボン』を聴いてさらに強まった。過去曲や『おいしい~』収録曲、さらには未発表曲まで披露され、よりリラックスした歌を聴かせてくれる。
あいみょん - "マシマロ"
他、旧譜はCD音源のデータ化の中で、あまり深く考えず軽い気持ちでちょっと聴いてみようと思ったもので、奥さん所有のものや友人からもらった音源などをリリース年順に記録しておきます(枚数多いのでコメントは割愛)。
麗美 / 走るそよ風たちへ (1990)
★★★☆☆
裕木奈江 / a Leaf (1993)
★★★☆☆
V.A. / YELL Ⅲ (1993)
★★★☆☆
Limp Bizkit / Three Dollar Bill Y'All$ (1997)
★★☆☆☆
Chara / CHARA THE BEST BABY BABY BABY xxx (1995)
★★★★★
China Dalls / China More (2000)
★★☆☆☆
SHERBETS / Vietnam 1964 (2001)
★★★★☆
Quantic Soul Orchestra / Stampede (2003)
★★★★☆
クラムボン / てん、 (2005)
★★★☆☆
Nujabes / modal soul (2005)
★★★★☆
菊池成孔 / 南米のエリザベス・テイラー (2005)
★★★☆☆
岡村靖幸 / ÉTIQUETTE (パープルジャケット) (2011)
★★★☆☆
岡村靖幸 / ÉTIQUETTE (ピンクジャケット) (2011)
★★★☆☆
- 関連記事
-
- Albums of the Month (2020年12月) 2020/12/17
- Albums of the Month (2020年11月) 2020/11/29
- Albums of the Month (2020年10月) 2020/10/31
- Albums of the Month (2020年9月) 2020/09/30
- Albums of the Month (2020年8月) 2020/08/30
- Albums of the Month (2020年7月) 2020/07/31
- Albums of the Month (2020年6月) 2020/06/30
次のページ |
新着 |
Hakoniwa Chart 2025/01/05
[PLAYLIST] K-POP MIX 2024
Exclusive Interview with moë - English Trans.
新譜リリース情報(2025年1月)
2024年 年間ベスト・アルバムTOP40
2024年 年間ベスト・ソングTOP100
2024年に観た映画 BEST10
Hakoniwa Chart's 2024 Best 100 Songs
2024年旧譜ベスト・アルバムTOP5
Interview : moë
[PLAYLIST] K-POP MIX 2024
Exclusive Interview with moë - English Trans.
新譜リリース情報(2025年1月)
2024年 年間ベスト・アルバムTOP40
2024年 年間ベスト・ソングTOP100
2024年に観た映画 BEST10
Hakoniwa Chart's 2024 Best 100 Songs
2024年旧譜ベスト・アルバムTOP5
Interview : moë
タグ |