準ネイティブレベルへの到達には数千万語の多聴多読が必要かも

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対象:英語上級者をめざしている  
読了:約4分(2240字) 
公開:2018-02/21 

数年、英語を勉強していると、よく出会う単語は身についてきたけど、めったに出ない単語はなかなか身につきにくいなーというのを感じるようになってきますよね。

最近、多読に関する本を読んでいて、興味深い分析を見つけたのでシェアしておきます。
 

準ネイティブレベルには数千万語の多聴多読が必要かも

精聴精読の効果と限界

英語講師の安河内哲也先生を始め多くの英語上級者の方々が仰るように、初級者は「精聴精読」をメインにしたほうがいいと僕も考えています。

精聴精読した上で反復すると、「よく出る単語」が身につきやすいからです。

公式問題集」をやり込めばTOEICによく出る単語が、英検の過去問をやり込めば英検によく出る単語が身についてきます。

【参考】TOEIC スコアもリーディング力も向上するPart 7「精読」勉強法
【参考】英検準1級 読解で8~9割取るための対策と勉強法


よく出る単語が身につく → 聞き取れる&読める範囲が増える → 上達が感じられる → 勉強を続けられる → 継続は力なり。

また国内で、初級者の頃から多聴多読を中心にして、上級レベルに到達できた人の話って、ゼロではないですが、あんまり聞かないんですよね。多くの人は途中で挫折するか、低い英語力で留まったままというイメージがあります。

なので、中級レベル(TOEIC 900点取得英検準1級合格)くらいまでは、「精聴精読&反復」をメインにしたほうが、挫折する確率が低いのではないかと考えています。
※これは「TOEICや英検に特化して勉強しないといけない」という意味ではないです。


マイナーな単語が身につきにくい

一方、「めったに出てこないマイナー単語」は、精聴精読だけだとなかなか定着しないんですよね。

10年も英語を勉強していると、「この単語、3年前のあのテキストに載ってたな…なんやったけ」「このフレーズ、以前は英会話で使えていたのに、完全に忘れてたな」という単語やフレーズに出会うことが増えてきました。

覚えた尻から忘れていく、たくさんの穴が空いたバケツで水をすくってるような感覚です。

この数年、「今のペースのままでやっていたら、いつまでマイナーな単語は定着しないな」というのをずっと感じていました。

そんな矢先に出会ったのが、次の本にあった分析です。


「relativity」に1回出会うのに平均63万語必要

次の表は、『英語多読法』のP.62で紹介されている表と、語彙習得に関する専門家のRob Waring教授のサイト「The inescapable case for extensive reading」から作成しました。


 語彙の出現順位  1回出会うのに必要な平均語数 
1位「the」17語
100位「hear」952語
1,000位「blood」8,533語
2,000位「stumble」23,103語
3,000位「sergeant」47,343語
5,000位「satellite」47,343語
10,000位「relativity」632,894語



「100位」の単語というのは、頻度順に並べた結果、100番目にきた単語という意味です。

この表では、100位「hear」は1回出会うのに必要な平均語数は952語ということになります。つまり、「hear」は、約952語の英語に触れて、ようやく1回出会うということになります。

10,000位「relativity(相対性)」だと、1回エンカウントするのに平均で632,894語必要になります。

TOEICと英検で例えると、TOEICの「公式L&R問題集」(テスト1回約9000語)なら、テスト約70回分をやってようやく1回出会うくらいの頻度数ということです。英検準1級の過去問(語彙・読解・リスニング合わせて約7000語)だと、テスト90回分。
※TOEICでは「relativity」という単語自体がまず出ない。英検は1級だと出るかも。


1万位の「relativity」で63万語ということは、英検1級に出てくる1万位前後の単語も、それくらいエンカウントしにくいと考えられます。


定着にはさらに多くのエンカウント単語数が必要

さらに厄介なことに、単語って1回出会っただけで覚えられるわけじゃないですよね。


ある語が定着するのに5~16回あまり間隔を空けずに出会わなければならないが(Nation, 1990),教科書の中で1度出てきた語と再び出会う率が低いので(Schmitt, 2000),教科書以外の教材を使った流暢さのトレーニングで量を稼ぐことが重要となる。

量を保証することにより知識が定着し,さらにそれが自動化した技能として習得されれば,日本語を介さずに英語をそのまま使うことができるようになる。

【出典】第二言語習得を加速させる流暢さのトレーニング(PDF)


ある人が、1万位の「relativity」が定着するのに10回出会う必要があるとした場合。

先ほどのRob Waring教授のサイトの表からすると、約633万の単語量が必要ということになります。

1万位で633万となると、ネイティブレベルの2~3万位の単語を定着させるためには、数千万語の英語に触れる必要がありそうです。

【参考】準ネイティブレベルの英語力に到達するのに必要な語彙力


実際、このブログでよくご紹介している、語彙力2万5千のyukoさんは5000万語以上の多聴多読をされてますし、英語上達完全マップの森沢洋介先生(語彙力2万5~7千語)も、著書を拝読していると、少なくとも3500万語は多読されていると推測されます。

そんなわけで、難易度の高いマイナーな単語を身につけるという観点からも、「多聴多読」は欠かせないと思うようになってきました。





 
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