科学的に正しい・間違っている英語勉強法は存在するのか?

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対象:「科学的に正しい」「科学的根拠」という言葉に弱い
読了:約4分(2492字) 
公開:2021-01/26

最近、「科学的に正しい」とか「科学的根拠がない」とかよく聞きますよね。

僕もけっこう好きなので、第二言語習得(外国語の学び方を研究する学問)や脳科学や心理学などの科学研究を引用してきましたが、この数年いろいろ調べてきて、個人の体験談同様、科学研究も鵜呑みにしてはいけないという想いが強くなってきました。

そんなわけで、自戒の意味も込めて、僕が知り得た情報をまとめてシェアしておこうと思います。
 

第二言語習得で分かっていないことは多い


2012年にTOEIC 900点超えてから、他の学習者さんの参考になるかと思い、自分の勉強のやり方をこのブログでシェアしてきました。

ですが、読者さんとやりとりするうちに「自分の勉強法を、他の学習者がやってうまくとは限らない」と気づいてきました。

結果、自分の経験を絶対視するのは良くないなと思うように。生存者バイアス(成功者がただ運が良かっただけ)の可能性だってありますしね。

それ以降、「再現性の高い(誰がやっても一定の効果が見込める)勉強法」みたいなものを模索するようになりました。

そして、英検準1級の読解問題の勉強をしていたときに、「scientifically proven(科学的に証明された)」という言葉をよく見かけたんですよ。

その頃から、「科学的根拠」とか「科学的に正しい」とかいう言葉に惹かれるようになりました。第二言語習得(外国語の学び方を研究する学問)に興味を持ち始めたのも、だいたいその頃からです。一時期DaiGoさんのチャンネルにもハマりました。


その後、第二言語習得に関する本(7冊くらい)やWeb記事をいろいろ読んできて分かったことの1つは、第二言語習得の歴史はまだまだ浅く、分かっていないことのほうが圧倒的に多いということ。

人間の言語のバックグラウンドなんて千差万別なので、そう簡単に比較対照できないそうです。



将来、覆される研究もある


仮にもし「○○○という勉強法は効果がある/ない」という研究が出てきたとしても、鵜呑みにはできないんだなと思うようになってきました。

例えば「マシュマロ実験(マシュマロ・テスト)」や「ロサダの法則(ロサダ比)」のように、一時期はめちゃくちゃ信頼されて業界で広まったのに、後の追試で覆されてしまうケースは少なくありません。

また、IT Mediaの記事「「朝食は体にいい」は食品会社が作り出した迷信?」にあるように、「朝食にオートミールを食べればコレステロールが減少する」という研究に出資していたのが実はオートミールの会社!みたいなケースもあります。これも一種のマッチポンプ(自分で火をつけて自分で消す、偽善的な自作自演)な気がします。

なので、最近知ったのですが、出版バイアス(否定的な結果が出た研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくい)も覚えておいたほうがいい用語だと思いました。



「科学的に正しい」とは?


微表情研究の専門家である清水建二さんが、興味深い考察を書かれていたのでシェアしておきます。


インフルエンサーが、断言というものが科学の世界であり得ないことを知らないのか、論文を読んでいないので比較対象を知らないのか、読者にわかりやすく書こうとして比較対象を省略したのか、その理由はわかりませんが、科学的現象を言い切ったり・断言することは科学を正しく理解することを妨げる原因となります。

科学と絶対という言葉は水と油なのです。

……科学論文には必ず、どんな条件で導き出された結論なのかが書かれています。それを無視して、ある状況や条件下でしか有効ではない科学知見について、あたかもいつでもどこでも当てはまるような書き方をするのは、科学に対する冒涜です。

……自分の主張を権威付けしたいインフルエンサーは、「あの有名な大学が証明していることなんですよ」「この方法は、あの〇〇教授も提唱しているですから、間違いありません」とかいう文言をよく使います。科学の世界では大学名とか教授が有名とか関係ないです(全く関係ないと言うとウソになりますが、科学者も色々しがらみがあります)

【出典】「科学的・心理学的」という言葉を多用してもっともらしいことを言うインフルエンサーの不都合な真実<2> | ハーバー・ビジネス・オンライン


あーいろいろと耳が痛い(笑)

僕も出典があって読めそうなものは読んでますが、英語の論文ってメチャクチャ難しいですし、長文だと日本語でも厳しいですし、読んだとしても素人が本当に正しく読めているのかどうか。そんなレベルなので、自分では断言していないつもりですが、もししてたら改めます(˜∀˜;)

科学的に絶対正しい/間違った」みたいな表現は、それ自体もう科学とは言えないってことですね。


次に、京都大学理学研究科・理学部の天野彩さん(学生さん?)の話が、とても勉強になったのでご紹介。


昨秋、子宮頸がんワクチンを接種した思春期の女の子に重篤な副作用が出やすいという指摘に「科学的な根拠がない」と反論して一躍話題を集めた、医師免許を持つジャーナリスト○○さん(ツウ注:ここでは伏せておきます。それが主旨ではないので)の講演を聞きに行った。

彼女は接種の副作用とされる症状は元々その年代の少女によく見られるとしてワクチンの接種停止決定を批判した。科学的なデータに基づかない主張には逐一反論してくださいと聴衆の医師らに呼びかけ、講演を終えた。

主張には筋が通っていたが、「科学的に正しい」ことを重視しすぎると、科学の範疇ではない問題を軽視することになりかねないと不安になった。

「科学的な根拠がない」とは「今の科学には結論を出すことができない」という意味であり、「正しい」か「正しくない」かを科学には判断することはできず、その材料を与えるに過ぎない。科学的な根拠のない主張を認めないことは、絶対的ではないはずの暫定的な科学の見方を絶対視することになりかねない。

【出典】京都大学理学研究科・理学部


自分の、いち個人の体験談を絶対視するのもよろしくないですが、今証明されている科学研究を絶対視するのも良くないんだなと。

そんなわけで、第二言語習得や応用言語学を錦の御旗にして、何かを断言・全肯定・全否定するようなYouTuberやブロガーやインフルエンサーがいたら気をつけたほうがいいと思うようになりました。僕も気をつけていかないといけない(笑)


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