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公開:2013-11/08
更新:2018-03/08 部分的に加筆・修正
関連:発音 / 音変化 / ディクテーション - 脳内ディクテ / シャドウイング / リピーティング / ICレコーダー
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1. ディクテーションとは?
ディクテーションは「聞き取れない原因診断ツール」
ディクテーションというのは、英文スクリプトを見ずに、音声だけを聞いて、その英文を紙に書き取る or タイピングするトレーニングです。音声がすべてきちんと聞き取れれば、ディクテーションですべて書き取ることができます。もし書き取れない箇所があったら、そこはきちんと聞き取れていない箇所ということになります。
つまり、ディクテーションをやると、自分が聞き取れない箇所と、その原因を明確にできるようになります。
特に、
など原因となる箇所がよく分かります。
診断をせずに薬を処方する医者はいない
「リスニングを向上させるのにはシャドウイングがいい」「リピーティングがおすすめ」など、いろんな勉強法が勧められていますよね。
ですが結局、自分が聞き取れない原因を特定し、しかもそれを解決してくれるトレーニングをしなければ、効果は薄いです。
お医者さんは、診断せずにいきなり薬を出したり、手術したりしないですよね。
もし頭痛で病院に行って、「頭痛?頭痛ならこの頭痛薬がお勧めだよ!僕、これで治ったんだ」と、ロクに診断もせず、頭痛の原因も特定せずに、自分の体験談だけで薬を勧めてくるお医者さんなんてイヤじゃないですか(笑)
でも、英語やってる人って(僕も含めてですが)、「自分に効果があったことを、相手のレベルや状況も鑑みずに、闇雲に勧めてしまいがち」だなと(笑)
頭痛の原因ほど多くはないと思いますが、聞き取れない原因も、人によって違う可能性があります。
なので、まずはディクテーションで自分が聞き取れない原因を明確にすることが大事だと考えています。そういう意味で、ディクテーションは「聞き取れない原因診断ツール」だと言えます。
同時通訳者も言語学者も勧めている
同時通訳者の関谷英里子さんも、著書でディクテーションを推奨されています。英語学習で一番効果があると私が思うのはディクテーションです。……ディクテーションを続けると英語力全体が高まっていきます。
イギリスの小学校にいたとき、授業でディクテーションの時間がありました。先生が教科書を読み、みんなでそれを書き取るのです。スペリングが合ってるか、前置詞がちゃんとわかっているかといったチェックをされました。
ネイティブスピーカーであっても、子供たちはスペリングや前置詞の使い方は学習する必要があります。ディクテーションをすると、その子が英語を正しく理解できているかどうかがわかります。そして間違いをチェックされることで、さまざまな単語のスペリングや前置詞をはじめとする語法を、英語圏の子供たちも学んでいくのです。
これを読んだとき、驚きました。ネイティブがやっているのなら、第二言語を学んでいる人にも効果があるはずです。
ネイティブスピーカーではない私たちにとっても、ディクテーションは大きな効果があるのです。特に文法力の向上と、リスニングの強化に有効です。
ディクテーションをすると、英語のどこが聴き取れないのか、リスニングの弱点が明確になります。聴き取れているつもりでも聴き取れていなかった言葉、苦手な言葉を自覚することによって、意識してリスニングの練習ができます。(P.129~131)
また、第二言語習得を研究されている応用言語学者の白井恭弘教授も、著書でディクテーションを勧めておられます。
「音の変化」に慣れる方法としておすすめしたいのがディクテーションです。
……さらに、同じ材料を使って、音読や、シャドウイングをするとより効果的でしょう。これをさまざまな音声材料で繰り返していけば、音の変化に慣れてきます。(P. 150~151)
「ディクテーションはやらなくていい」のか?
「ディクテーションはやらなくていい」というアドバイスを聞かれたこともあると思います。確かに、ディクテーションはけっこう時間のかかる作業なので、一見、非効率で遠回りな学習法に見えると思います。それに、オーバーラッピングやシャドウイングをやってるほうが"勉強してる感じ"がしますしね。
ですが、少し考えていただきたいのです。
自分がどの発音が聞き取れていて、どの発音が聞き取れていないのかがよく分からないまま闇雲にトレーニングするのと、聞き取れない発音をディクテーションで明確にした上でトレーニングするのと、どちらが効果的か?
少なくとも、今までのやり方でリスニングが上達しなかったのであれば、ディクテーションを試してみる価値はありますぜ(`・ω・´)b
また、ある程度聞き取れるようになってきた中級者の方は、【 脳内ディクテーション 】に切り替えれば、紙に書き取ったり、タイピングしなくていい分、時間を大幅に短縮できます。
2. 目的別ディクテーション用教材の選び方
教材選びで最も大切なことは、まず「自分が身につけたい英語力は何か?」を自問することだと考えています。目的に合った教材を選ばないとなかなか上達しない(=挫折しやすい)からです。
また、英語初心者の方は、短文、かつ、やさしい語彙で構成された教材から始めることをお勧めします。長文で、自分の知らない語彙があまりに多いと、これまた上達しにくくなるんですよね。
僕が英語の勉強を始めた頃は、こういったことがまったく分かっていなかったので、自分の目的に合ってない教材、自分の英語力を超えた教材をやっていた記憶があります。
しかもきちんとやり込まずに、教材ジプシー状態。だから上達が遅かったんだろうなと(ノдT)
「TOEICのスコアを伸ばしたい」
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TOEICを勉強されている方は、最初は『公式問題集や模試』などのTOEIC対策本のPart 1・2の音声を使ってディクテーションするのをオススメします。
特にPart 1・2の音声は、英文が短く、語彙も比較的やさしく、さまざまな文法や会話でよく使う表現に慣れることができるので、ディクテーションに最適です。
【参考】TOEIC スコアもリスニング力も向上する勉強法 Part 1・2編
「会話力を伸ばしたい」
【 オンライン英会話 】などをされていて、英会話におけるリスニングを伸ばしたい方は、英会話系のテキストでディクテーションすることをお勧めします。
1つめは、『文法項目別の瞬間英作文本』に付属しているCDを使う方法。
リスニングが苦手な方は、語彙もそうですが、文法も正確に聞き取れていないんです。疑問文が瞬時に聞き取れなかったり、過去形や否定文を聞き取れなかったり。
なので、『文法項目別の瞬間英作文本』でディクテーション&瞬間英作文をやることで、さまざまな文法を聴き取れるようになり、その文法を使って話せるようにもなるので一石二鳥になります。
さらに、瞬間英作文本は、基本的に短文で構成されているので、ディクテーションがやりやすいです。
2つめは、旺文社の『ダイアローグ1200』です。
『ダイアローグ1200』は、全部で171の会話が収録されてあり、ディスカッションが中心なので、特にオンライン英会話でフリートークや記事レッスンをする方のリスニング向上に最適だと思います。
【参考】オンライン英会話を1000回受けたので効果と注意点をまとめてみた
『DUO』をお持ちの方は、DUOでディクテーションしていってもいいのですが、DUOは書き言葉もわりと多いので、今の目標が会話力(ディスカッション力)向上なのであれば、すべてのチャプターが会話で構成された『ダイアローグ1200』のほうが実践的だと感じています。
「英語ニュースを聞き取れるようになりたい」
「英語ニュースを聞き取れるようになりたい」という方は、いきなり海外ニュースに入るよりは、「ニュースで英会話」の音声から始めることをオススメします。
確かに、「VOA Learning English」「BBC Learning English」などの比較的やさしい語彙で構成された海外ニュースサイトもあるのですが、これらは日本語訳がない(= 正確に理解するのが難しい)ので、英語初級者の方にはあまりお勧めではないなと。
「ニュースで英会話」には、個人的には5つのメリットがあると考えています。
(2) センテンスの1文1文に解説がある
(3) 複雑な英文には、文構造の解説がある
(4) ニュースの背景知識の説明まである
(5) オリジナル、ノーマル、スローの3種類の音声がある
「ニュースで英会話」の詳細や勉強のやり方については、次の記事を参考にしてみて下さい。
【参考】「ニュースで英会話」をお勧めする5つの理由と勉強のやり方
3. ディクテーションのやり方
TOEICや英検で勉強されている方は、まずは問題を解いてから、ディクテーションに入って下さい。ヒロ前田先生の仰る「3回チャレンジ法」の2回目に相当します。
1日目
Step 1:音声を聞いて書き取る
CD音声を流して、紙に書き取って(or PCでタイプして)いきます。CDは何度聞いてもOKです。
TOEICで勉強されている場合、英語初心者の方にとっては、速く感じると思います。
その場合は再生速度を変更できるアプリや、ICレコーダーを使って、0.5~0.9倍速に落としてやるといいです。詳しくは後述します。
また、ディクテーションをやっていると、何度聞いても分からない箇所が、いくつか出てくるはずです。僕も2010年にディクテーションを始めた頃は「この部分、何を言っているのかサッパリ分からない」という箇所が大量にありました(^_^ゞ
何度聞いても分からないところは飛ばして、まずは聞き取れるところをすべて書き取ってみて下さい。
それが終わったら次のステップへ。
Step 2:英文スクリプトで確認する
英文スクリプトを見て、ご自身が書き取った英文が正しいかどうか、また、聞き取れなかった箇所はどういった英文だったのかをチェックして下さい。発音自体もそうですが、「check⌒it⌒out(チェケラウ)」「restauran
こういった音の連結・消失のパターンについては、次の記事に詳細をまとめてあるので、一読しておけば「なんでこんな発音になるねん!(# ゚Д゚)/ 彡□」と、テキストを放り投げる回数を減らせるはずです。
【参考】英語 リスニングのコツがつかめる7つの発音ルール
ちなみに、紙に書き取ってもいいですが、パソコンで「Google 翻訳」を開いてタイピングディクテーションする方法もあります。
タイピングディクテーションだと、すぐに修正できるので効率的ですし、英文タイピングが速くなるので、仕事で英語のメールを送る、英文を書くときに重宝します。
ただ、紙に書き取るディクテーションの場合、自分の間違った箇所を赤でチェックしていると、ディクテーションを続けていって、上達してくると、その赤字が減ってきて上達を感じることができるというメリットもあります。
Step 3:オーバーラッピング&リピーティング
ディクテーションだけで終わってしまうと、聞き取れなかった箇所の音を覚えることはできません。音が覚えられなければ、次にその音声が聞こえてきたときに聞き取れないですよね。なので、英文スクリプトを見ながら、音声に合わせて【 オーバーラッピング 】したり、慣れてきたら、音声をいったん止めて、英文スクリプトを見ずに、音声を再現して声に出す「リピーティング」を試してみて下さい。
オーバーラッピングは「聞こえてきた音と文字を一致させる」のに役立ち、リピーティングは「オーバーラッピングで文字と一致させた音を、聞いただけで理解できるようにする」のに役立ちます。
リスニングの目的は「聞いて理解できるなること」なので、リピーティングできる(音を再現できる)かどうかは、音を覚えているかどうかのリトマス試験紙になるんですよね。
【参考】リスニング上達速度を加速するリピーティングのコツ・効果・やり方
以上が、1日目の勉強の流れになります。
2日目以降は、リピーティングから
そして、2日目以降は、リピーティング(英文を見ずに、音を再現する)から入ることをお勧めします。上述したように、リピーティングは「音を覚えているかどうかのリトマス試験紙」です。リピーティングができなかった箇所や英文は、まだ未習得の箇所や英文になります。なので、英文スクリプトを見て音読したり、オーバーラッピング(英文を見ながら音読)してみて下さい。
おそらく、最初はリピーティングはほとんどできないと思います。僕も最初の頃はボロボロでした。
ですが、毎日リピーティング&オーバーラッピングをやり、自分の発音と音の連結・消失が、CD音声に近づけば近づくほど、音の聞き取りはより正確に、そして処理スピードもより速くなり、結果的にリスニング力が向上します。
15~30日間、毎日聞いて発音する
ですが、15~30日間、リピーティング(+オーバーラッピング)を続けてみて下さい。それくらいやると、口が音を覚えてくるんですよ。そして、口で覚えた音は脳に記憶されるので、次回、その音がリスニングで聞こえてきたときに、聞き取れるようになります。
特に、自分が間違えた箇所(=正確に聞き取れなかった箇所)は、ICレコーダーでスピードを落としてでも、きちんと発音できるようにしましょう。
自分がスラスラと発音できるようになった音は、サッと聞き取れるようになります。
15~30日間という日数は目安です。現在のリスニング力や、教材の難易度によっても変わってくるので、各自調整してみて下さい。
中級者は「脳内ディクテーション」で
「脳内ディクテーション」というのは、その名の通り、書き取ったり、タイピングしたりせず、頭の中でやるディクテーションです。TOEICリスニング400点以上・英検準1級以上の人がディクテーションをすると、9割以上書き取れると思うんですよ。そうなると、書き取る時間って非効率ですよね。
そこで、脳内でディクテーションすれば、時間をかけずに、自分がどこが聞き取れて、どこが聞き取れないかを明確にできます。
リスニングが苦手な中級者や、「読めるけど聞き取れないことが多い」と感じる方は、英文スクリプトを見ずに、英語音声を耳で聞いて理解する時間が少ない可能性があります。
以前の僕がそうだったんです。英文スクリプトを見ながら英語を聞く、つまり、オーバーラッピングの時間が多かったんです。
そのことに気づいた2016年から、脳内ディクテーションを始め、結果的に2017年05月のTOEICのリスニングで満点が取れました。
脳内ディクテーションの効果ややり方については、次の記事を参考にしてみて下さい。
【参考】TOEICリスニング満点を取るのに役立った「脳内ディクテーション」
4. ディクテーション Q&A
「音声が速すぎる!」
英語初心者の方は、おそらく「英語音声が速すぎてまったく聞き取れない(´・ω・`)」ということがよくあると思います。そういう場合は、音声の再生速度を落として、0.5~0.9倍速くらいから始めて下さい。それであれば聞き取れるはずです。僕も初心者の頃はそうしてました。
音声の再生速度を変更する方法は3つあります。
(1) スマホの無料アプリ「語学プレーヤー(iPhone・Android)」
(2) Windows Media Playerの「再生速度変更機能」
(3) ICレコーダーの再生速度変更機能
オーバーラッピングやシャドウイングでトレーニングするときもそうですが、「音声が速い」と感じたら、その速い音声のままいい加減にやるよりも、速度を落としてスロースピードから練習したほうが、はるかに効率的です。
「音は聞き取れたけど、意味がつかめなかった」
「音は聞き取れたけど、意味がつかめなかった」「何度か聞いてようやく意味がつかめた」という音声も出てくると思います。この「瞬時に意味がつかめなかった音声」は、短文なら【 フラッシュカード瞬間英作文 】で、長文なら【 暗唱 】でトレーニングすることで、意味的に聞き取れるようになっていきます。
なぜかと言うと、基本的に「自分で瞬時に作れる(言える)英文 = 瞬時に聞き取れる英文」になるからです。
ただ、これだけで100%完璧に理解できるレベルには到達しないと感じています。単語も文法も構文も、「違う文脈で出会う回数」を重ていくことで、少しずつ、正確さや聞き取って理解する速さが高まってくるからです。
「ディクテーションはいつまで続けるべき?」
photo credit: Dan walking via photopin (license)
紙に書き取るディクテーションは、7~8割くらい書き取れるようになってきたら、上述した【 脳内ディクテーション 】に切り替えると思います。
そして、【 瞬間英作文 】や【 暗唱 】の時間を増やし、聞き取った音から意味がつかめるトレーニングも並行してやっていったほうがリスニングは伸びます。
僕はTOEICや英検のリスニングパートで、瞬時に意味がつかめなかった箇所の英文と和訳を使って、【 フラッシュカード瞬間英作文 】をやっています。
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