推奨:全レベル
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公開:2022-07/03
更新:2022-07/18 部分的に加筆・修正
関連:多聴多読 - 注意点 - 多聴700時間 - 多読中断
2017年頃から多聴多読を始めて、多読は270万語読んだのですが、いろいろ考えた末、いったん休止することにしました。
ちなみに、まったく読んでいないわけではないです。
オンライン英会話のDMM英会話デイリーニュースなどで読むこともありますし、トイレには今「Eat That Frog!」が置いてあり、大きいほうのときのみページが進みます(笑)。
多読を中断した3つの理由
【理由1】自分勝手な変な発音が身につく
英文を読んでいるとき、たとえ黙読中であっても、脳内では発音が再現されるそうです。最近のERP (Event Related Potential:事象関連電位)を使った研究で、どうも人間は黙読中でも頭の中では「静かに音読している」らしいことが分かりました(N. Savill, Lindell, Booth, West, & Thierry, 2011)。
独立した単語の音読の場合と同じく、単語の意味にアクセスする前に、まず第一段階としてその発音を脳内でイメージしているのです。(P. 129)
ということは、間違った発音(と音変化)で英文を読み続けたら、脳内でも間違った発音が再生され続け、それが蓄積されていくことになるはずです。
……(音声知覚の)運動理論によると、インプット音声を知覚する際には、聞き手は同じ音声を頭の中で発音し、その発音とインプット音声とを照合することで、知覚していると考えられています (Lieberman ほか, 1967)。
例えば、/səpɔ́:t/ (support)という音が聞こえてきた際に、聞き手は頭の中で /səpɔ́:t/ と発音し、それを聞こえてきた音声と照らし合わせているのです。
英語学習の科学
中田 達也・鈴木 祐一・他9名
研究社
2022-04/25
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先程の研究と組み合わせると、”間違った発音”で音読し続けた場合、脳内では”間違った発音”が再生されることになる。
当然、リスニング時に聞こえてくる”正しい”発音との照合作業に失敗することになります。結果、聞き取れない。
これが僕の「読めるけど聞き取れない」がまだまだたくさん残っている原因じゃないかと思ったんです。
【科学研究】リスニングで聞き取れない音 ≒ 自分が発音し慣れていない音
【理由2】会話で"文語体"が出てくる
2つめは、書籍は基本的に口語体ではなく文語体で書かれているという点です。
僕は読書が好きな人なのですが、今一番伸ばしたいのは英会話力(リスニングとスピーキング)なんですよね。「英語をきちんと聞けて、きちんと話せるようになる」ために英語を学んでいます。
それで普段、HiNativeやHelloTalkで、会話で使うために作った英文を添削してもらったり、エイゴックスでネイティブ講師に自分の英語を添削してもらっています。
それで一番指摘されることが、「Your sentence is grammatically correct, but it sounds a little too formal in speech.(文法的には正しいけど、会話で使うにはちょっと堅いね)」なんです。
2019年頃まで、僕の英語は主にTOEICと英検で構成されていました。
徐々に、ネイティブの英会話に触れるようにしてきた結果、TOEICと英検で出会う語彙や表現は、日常会話で使うには堅いものが実は多いことに気づいてきました。
「Output always equals input.(アウトプットは常にインプットに等しい)」という名言があります。
脳内に口語体のデータベースが少ない状態で、文語体(本)ばかりインプットしてしまうと、当然アウトプットも文語体が多くなってしまうわけです。
また、これは英検1級を先送りにすることにした理由にもなっています。
このネイティブの方も仰ってますが、1級の語彙問題と読解問題の英文は堅苦しいものが多過ぎるんですよね。
まずはカジュアルな会話力を身に着けたい自分としては、英検1級(の特に読解とライティング)は方向性が違うなと感じたんです。
ちなみに、「英訳されたマンガを読む」という選択肢があります。マンガなら基本的に口語体なので、その点は問題なさそうです。
ただ、英訳マンガは、普通の洋書を読むときに可能な「知らない単語を長押しして意味を調べる」ことができないんですよね。なかなか悩ましい……
【理由3】"読めるけど聞き取れない問題"が解決しない
「読むと分かるけど、聞き取れない」というのが初心者の頃からずっと悩みの種だったんです。
「多読でリスニングは伸びる」はどのレベルの学習者にも有効か?
「多読でリスニングも伸びる」みたいな話をたまに耳にするんですよね。教育学博士の青谷正妥教授が著書で「(リスニングとリーディング合わせて)毎年100万語が僕のお勧めする学習量です」と仰っていたんです。
それで、TOEIC 900点と英検準1級取得した後、2017年に1年かけて、ニュース記事を中心に100万語読みました。ちなみにリスニングは約180万語聞きました。
ニュース記事の多読によって、リーディング力は多少伸びたと思いますが、リスニング力が伸びた感じはしなかったんですよね。英語ニュースが前より聞き取れるようになった感じもない。
多読の失敗でよくある「難易度の高い記事を低い理解度で読んでいた」わけでもないです。「Newsela」などの自分のレベルに合った記事を読むようにしていました。
英文スクリプトのあるニュース記事を聞いてから読むと、「読むと分かるけど、聞き取れない」というケースが僕はまだまだ多いことに気づきました。
すでに高いリスニング力を持っている人であれば、おそらく読むことでもリスニング力は伸びると推測されます。
ですが、僕みたいにまだそんなにリスニング力が高くない人がリーディングをやっても、リスニングは伸びにくいのではないかというのが2022年現在の結論です。
赤ん坊はみんな多聴から入る
もう1つ気になることがあります。
(英語の)母語話者は小学校入学までに17,000時間以上の英語に触れ (Morley, 1991) (P. 2)
【出典】英語学習論―スピーキングと総合力―
母語話者が小学校入学までの17,000時間に触れる英語の9割以上はおそらく「リスニング」になるはずです。
つまり、母語話者は最初に徹底的にリスニングをやってから、リーディングに入っていくわけです。リーディングから入る赤ん坊はいない(笑)。
母語話者はまず初めに約17,000時間のリスニングを行い、脳内に”正しい発音と音変化”のデータベースが大量に蓄積された状態で、リーディングに臨む。
だから、母語話者はリーディングをやってもリスニングが伸びていくのではないか。
これも、僕がリーディングよりも先にリスニングに注力しようと思った理由の1つです。
とは言え、多読から入ってもいい
第二言語習得の研究を参考にしてはいますが、あくまでも僕の仮説に過ぎません。もしかしたら間違っている可能性もあります。
また、「いや、私は会話よりも洋書が好きだから、多読重視」「箔を付けたいから先に英検1級を取りたい」という方にとっては、それが正解だと思うんです。
次の動画で、MattさんとOriental Pearlさんが外国語の勉強法についてディベートしているのですが、
Pearlさんが「There's more than one way to make an omelette.(オムレツの作り方は1つじゃない)」と表現されていたのがいいなーと。
オムレツ同様、英語の勉強のやり方も人それぞれ。みんな英語を勉強する理由も、目標も、優先順位も、嗜好も、育ってきた環境も違う。
そんなわけで、この記事は「ネイティブの速い英語を正確に聞き取って、自分の考えや気持ちを十分表現できるようになること」を目標にしていて、現在リスニングで伸び悩みを感じていたり、多読に疑問を感じている方にとって、これらの考えは判断材料になるかもしれないと思って書くことにしました。
参考になれば幸いです。
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