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公開:2012-02
更新:2022-08/05 部分的に加筆・修正
関連:発音 / 音変化 / ディクテーション / シャドウイング - 伸び悩み / リピーティング / ICレコーダー
今まで1万時間勉強してきたのですが、音読・オーバーラッピングとシャドウイングは1000時間くらいは費やしていると思います。
また、2022年現在はリピーティングが占める割合もかなり増えてきてまして、「シャドウイング:リピーティング」の比率は「7:3」くらいあるかもしれません。
その当たりも踏まえて、効果・やり方をまとめていきたいと思います。
オーバーラッピングとシャドウイングの違い
オーバーラッピングとは?
2:00から「オーバーラッピング」の実演が始まります。
オーバーラッピングというのは、「over(上方に)+lap(重なる・包む)」で、一般的には、英文スクリプトを見ながら、英語の音声と同時に、発話するトレーニングです。
イメージとしては次のような感じ。
自分:The balder one gets, the bolder one becomes.
シャドウイングとは?
一方、シャドウイングというのは、英文スクリプトを見ずに、英語音声に少し遅れて発話するトレーニングになります。
以下はシャドウイングのイメージ。上の高杉尚孝先生のシャドウイング動画が分かりやすいです。
自分: The balder one gets, the bolder one becomes.
オーバーラッピングは効果が薄い
オーバーラッピングは決してムダなトレーニングではないのですが、シャドウイングと比べると時間対効果は低いなと。試しにオーバーラッピングでスラスラ言えるようになった音声を、英文スクリプトを見ないシャドウイングでやってみて下さい。途端に難しくなりませんか?
これはなぜかというと、オーバーラッピングは英文スクリプトという文字情報に依存して発話しているからです。
つまり、オーバーラッピングでスラスラ言えても、シャドウイングでスラスラ言えないのであれば、その音声はまだマスターしたとは言えない状態です。
英文スクリプト(文字情報)を一切参照できない、音声情報のみを聴き、シャドウイングでスラスラ言えて始めて、マスターしたと言えるんですよね。
僕は最近このことに気づいてきたんですよね(˜∀˜;)
2010年頃に気づいてたら、リスニング力はもっと早く上がってただろうなと悔しく思います。
シャドウイング 4つの効果
(1) 聞き取れる音が増える
「音声知覚の運動理論」と「脳内処理研究」というのがあるのですが、その2つから「リスニングで聞き取れない音 ≒ 自分が発音し慣れていない音」ということが言えると考えています。【関連】科学研究「リスニングで聞き取れない音 ≒ 自分が発音し慣れていない音」
その逆も然りで、正確に発音できるようになった音は聞き取れることになります。
メカニズムとしては次のような感じです。
自分の発音がネイティブに近づけば近づくほど、瞬時に処理できる音のデータベースも増えるため、リスニングはラクになってきます。
(2) 記憶に残りやすい
脳科学者の篠原菊紀教授によると、シャドウイングをやると記憶に残りやすくなるそうです。人の脳には、ブローカ野といって発話、つまり、ことばをしゃべるための中枢があります。またウェルニッケ野といって、ことばを理解するための中枢があります。
……そして、このブローカ野とウェルニッケ野の連動、弓状束と呼ばれる神経の束による連動が、ワーキングメモリの音韻ループ、音による記憶を支えています。
……シャドーイングはまさに、ブローカ野、ウェルニッケ野、弓状束のネットワーク賦活(ふかつ)、音韻ループを「直後」に賦活させることで、記憶の定着率を高める方法なのです。(P. 35~37)
僕は学習初期の頃にシャドウイングを1年くらいやっても伸びない時期があったんですね。
【関連】TOEICリスニング満点の僕が2年勉強しても10点しか上がらなかった頃の話
今から考えると、シャドウイングのやり方が悪かったのが原因なのですが、そのトラウマでしばらくシャドウイングをやっていませんでした(笑)。
これが僕のリスニングがなかなか伸びにくかった理由の1つだと考えています。これでおそらく数百時間は損してます。
今は上述したように、「リスニングで聞き取れない音 ≒ 自分が発音し慣れていない音」だと気づいたので、シャドウイングはメイントレーニングの1つになっています。
それで、ただ音読するだけよりも、やはりシャドウイングもやったほうが記憶に残りやすいなと。スピーキング時もリスニング時も、シャドウイングで覚えた音が脳内で再生される感覚があります。
脳研究者の池谷裕二教授も「見るよりも聞いたほうが記憶に残りやすい」と仰ってるのですが、間違いないなと。
(3) スピーキング力の向上
例えば、洋画やドラマの音声、TOEICや英検のリスニングパートの会話音声でシャドウイングで繰り返しやると、口が台詞を覚えてくれるようになります。そして、口が覚えた英語は、英会話で出てきやすくなるなと。
ただ、スピーキング向上により効果的なのは「暗唱(例文暗記)」だなと。思い出して発話しないといけないので、確実にシャドウイングよりも負荷が高いです。ですが、その分効果も高いなと。
【参考】言語学者「英語学習の暗唱(例文暗記)には3つの効果があるよ」
(4) 発音の向上
応用言語学者の中田達也教授によると、上級者の方がシャドウイングをやると発音も向上するそうです。シャドウイング (shadowing) はリスニング力向上に効果的ですが (Hamada, 2018; Kodata, 2019)、上級者であれば、発音向上にも寄与することがわかっているので (Foote & McDonough, 2017)、上級者を目指す方は挑戦してみましょう。(P. 61)
英語学習の科学
中田 達也・鈴木 祐一・他9名
研究社
2022-04/25
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個人的には初級~中級者でも、シャドウイングをやることで発音はある程度は伸びるような気がしています。
トレーニングの進め方と注意点
この項目では、シャドウイングでよくある失敗と、効果的なトレーニングのやり方をまとめていきます。
【参考】TOEIC スコアもリスニング力も向上する勉強法 Part 1・2編 / Part 3・4編
【参考】英検準1級に合格したのでリスニングの勉強法をまとめてみた
Step 1:音声を聴く
まず、英文スクリプトは一切見ずに、音声をノーマルスピードで2~3回聴いてみて、だいたい何の話をしているのかをつかめるように頑張ります。Step 2:ディクテーション
英語初心者の方や、リスニングが苦手な中級者の方は、ディクテーションを強くお勧めします。
ディクテーションをやると、自分が聞き取れなかった箇所が明確になります。
→ 聞き取れなかった発音・音の変化(音の連結・消失)が明確になる
→ その箇所を重点的に音読・オーバーラッピンク・シャドウイングでトレーニングする
→ 音を覚えてくる
→ 聞き取れる割合が増える。
詳しくは「聞き取れない原因が分かるディクテーション!やり方・効果」をお読み下さい。
Step 3:発音・アクセントのチェック
ディクテーションが終わったら、発音・アクセント・イントネーションをチェックしていきます。発音やアクセントについては次のサイトで必ずチェックして下さい。
上述したように、自分が正確に発音できる音が増えれば増えるほど、聞き取れる割合も増えてくるからです。
僕は次のサイトで発音とアクセントをチェックしています。
● weblio英和和英辞典:US発音のみだが、発音が聞ける単語数がOxfordよりも多い。
● YouGlish:YouTube上の会話・トーク中におけるネイティブの生の発音が聴ける。
● Forvo:投稿型発音サイト。生の発音が聞けるがYouGlishのほうがより自然。
● Google 翻訳:機械音声だが網羅性は一番高い・固有名詞の発音も聞ける。
Step 4:精読(語彙・文法・文構造のチェック)
単語や熟語だけでなく、文法も『一億人の英文法/Forest』などの文法書と辞書を使ってチェックしていきましょう。
【参考】英語学習で重宝するオンライン辞書&便利サイトまとめ
特に、文法と文構造がイマイチよく分からないまま、ひたすらオーバーラッピング・シャドウイングをやっても効果は薄いです。
精聴精読は、農業でいうところの、畑を耕したり、肥料をやる作業に似ています。畑を耕す・肥料をやるという準備をきちんとせずに、ただひたすら水を撒いても、野菜は実りにくいからです。
精読のやり方に関しては、次の記事で詳しく説明しています。
● TOEICker:TOEIC スコアもリーディング力も向上するPart 7「精読」勉強法
● 英検er:英検準1級 読解で8~9割取るための対策と勉強法
Step 5:オーバーラッピング
精読が終わったら、オーバーラッピンクに入っていきます。
ただ、英語初心者の方は、TOEICや英検のリスニングパートの音声のノーマルスピードに合わせてオーバーラッピングするのは、かなり厳しいと思います。
そして、ノーマルスピードで無理してついていっても、効果はほとんどないです。僕はこれでかなり時間をムダしました(笑)
【注意】0.5~0.9倍から始める
ですので、再生速度が変更できるツールを使って、0.5~0.9倍速から始めることをお勧めします。(1) スマホの無料アプリ「語学プレーヤー(iPhone・Android)」
(2) Windows Media Playerの「再生速度変更機能」
(3) ICレコーダーの再生速度変更機能
楽器を習ったことがある方はご存知だと思いますが、ピアノやギターで速い曲を練習するとき、最初はテンポを落として練習しますよね。あの感じです。
人々は正確さをおろそかにして、一時のスリルを追い求める傾向がある。
だから意識的にペースを落とすことが重要なのだ。……「(新しいスキルを身につけるときに)大切なのは、どれだけ速くできるかではなく、どれだけゆっくりと正確にできるかだ
最初は、0.5~0.9倍速からトレーニングを始め、数日間かけて徐々にスピードを上げていく。
【科学研究】初めてやる練習は”速さ”よりも”正確さ”を重視しよう
ちなみに、語学プレーヤーやICレコーダーには「ボタン一発で2~3秒前に戻れる機能」があり、自分がスラスラと言えない箇所だけを集中して練習できるので、非常に効率的です。
【注意】音声よりも小さい声で
オーバーラッピング・シャドウイングする際は、できればヘッドホンをして、自分の声よりも、音声のほうが大きい状態でトレーニングすることです。音声よりも自分の声のほうが大きいと、音声を正確に聞き取れないんですよね。
→ 我流の発音をしてしまう
→ 正確な発音・アクセント・イントネーションが身につきにくい
ただ、上述したように、オーバーラッピングは効果が薄いです。
TOEICリスニング400点を超えてきてTOEIC 900点をめざす方や、英検2級を持っていて準1級をめざす方は、なるべくシャドウイングに多めに時間を注ぎましょう。
そのほうが上達が早くなります。
Step 6:シャドウイング
最初のほうでお伝えしたように、オーバーラッピングでスラスラ言えるようになると、その音声は何となくマスターしたように感じてきますが、それは気のせいです(笑)。これはどういうことかと言うと、
→ 視覚による文字情報に頼らないとスラスラ言えない
→ 聴覚による音声情報ではスラスラと言えない
→ 実はまだ正確に発音や音変化が聞き取れていない
→ 実はまだ正確に発音できるようになっていない(≒練習不足)
ということなんですよね。
スクリプトを”見ずに”スラスラと言えるシャドウイングができて始めて、音が聞き取れている証拠になるというわけです。
【科学研究】リスニングで聞き取れない音 ≒ 自分が発音し慣れていない音」
「NHK WORLD TV」や「MJ and Adam Show」を見ていて思うのですが、自分が完全にマスターしている音は、ストリーミング動画のような初見のものであっても、余裕でシャドウイングできるなと。それは完全に聞き取れているからなんですよね。
逆に、初見のものでシャドウイングができない場合、自分がまだ未習得の音があるという証拠。
【注意】音声と同時に発話はダメ、絶対
シャドウイングを何度も繰り返してると、発音し慣れてきますし、スクリプトも覚えてくるのですが、決して音声と同時に言わないように注意して下さい。「聞こえてきた英語に少し遅れて、正確に、再現する」というのがすっごく大切です。
シャドウイングは、あくまでも「shadow」(~の後をつける、尾行する)なのです。
【注意】苦手な箇所はリピーティング
シャドウイングをやっていると、スラスラと言えない箇所が必ず出てきます。
その場合は、上述した語学プレーヤーやICレコーダーなどの「ボタン一発で2~3秒前に戻れる機能」を使って、まずは何度か音声を繰り返し聴いて音を覚えます。
そして、”音声を止めて”、もちろんスクリプトも見ずに、音声を自分でもリピートします。
闇雲にただ何十回もシャドウイングだけをやるよりも、苦手な箇所はリピーティングもやるようにすることで、検索練習(思い出す練習)になるので、音を覚えるスピードは確実に速いです。
詳しいやり方は「リスニング上達速度を加速するリピーティングのコツ・効果・やり方」を参照して下さい。
ただ、スラスラと言えない箇所があまりにも多い場合は、「汝、速度を下げよ」という英語神からのお告げなので、自分が正確に発話できる速度まで落として下さい。速さよりも正確さ優先!
Step 7: 感情を込めてシャドウイング
シャドウイングでスラスラ言えるようになってきたら、感情を込めて、登場人物になりきってシャドウイングしていきましょう。感情を込めてやると記憶に残りやすくなることが脳科学の研究で分かっています。
【科学研究】リスニング・スピーキングで早く上達したいなら感情を込めてやろう
僕はできるだけ大げさにやってます。そのほうが記憶に残りやすくなる感覚があります(当者比)。
昔TOEIC講師のヒロ前田先生がセミナーで、「Part 3・4でシャドウイングするときは、話者になりきって、話者が自分に憑依(ひょうい)したつもりでやる。”憑依んぐ”です。」と仰ってました(笑)。
Step 8:1.1~1.3倍速シャドウイング
TOEIC 900点や英検準1級以上や上級者をめざす方は、オリジナルスピードでの発話に慣れてきたら、1.1~1.3倍速でシャドウイングを超絶お勧めします。(1) 練習時間を短縮できる
(2) 速度を上げると苦手な発音・音変化が浮き彫りになる
(3) リスニング時の処理速度が速くなる→速い英語についていける
(4) 長期的にスピーキングスピードも上がってくる
【科学研究】プラトー(伸び悩み・停滞・飽き)を感じたら◯◯するといいよ
また、TOEICや英検のナレーターが話す速度のレンジってだいたい160~200 wpmくらいなんですよね。
でも、ネイティブの生の会話が聴ける「MJ and Adam Show」や「Hololive EN」で話す速度のレンジを測ってみると、多くのネイティブは200~250 wpmくらいで話していることが多いなと。
そこで、TOEICや英検のレンジ160~200 wpmを1.3倍にすると、208~260wpmになります。
TOEICや英検で1.3倍でシャドウイングしておけば、いずれTOEICや英検を卒業してネイティブの生の速い英語に触れたときに感じるギャップを少しは埋められるかなと。
シャドウイングの注意点
シャドウイングは万能薬ではなかった件
「シャドウイングは必須」「ディクテーションよりもシャドウイングのほうが効率的」「シャドウイングでリスニングもスピーキングも伸びる」と仰る方はけっこう多いですが、皆さん上級者なんですよね。個人的にシャドウイングでリスニング・スピーキングともに大幅に上達し始めるのは中級~上級者に到達してからだと感じています。
先日、英検のサイトで、僕が初心者の頃、シャドウイングをしても伸び悩みを感じていた理由の裏付けになりそうな研究を見つけたので紹介しておきます。
染谷(1996)によると,プロソディー(発音・アクセント・イントネーションなど)は自然なコミュニケーションにおける意味伝達のおよそ30~40%を担っているとされるが,
これを逆の視点からとらえれば,たとえシャドーイングにより英語のプロソディーが完全に獲得できたとしても,それは英語リスニング能力向上への必要条件を100%満たすわけではなく,その内の30~40%の貢献度にすぎないことを意味する。
……玉井(2002)も「シャドーイング技術=リスニング力」という等式は成り立たないと実験結果から導き出しており、その二者間の相関が低い理由として,シャドーイングによる音韻分析段階のプロダクトと,リスニングテストによる意味処理までなされた最終的なプロダクトを比較していたためと指摘している。
話を理解するということは,音声の表層構造をとらえるといった技術的な音声処理だけではなく,背景知識を使った top-down 的な認知処理も必要となる。
その両者を併せ持って,初めてリスニング能力向上へとつながる。
【出典】逐次通訳メソッドによるアウトプット練習が英語コミュニケーション能力に与える影響
専門用語や難しい単語が多くてちょっと分かりにくいと思いますが(笑)、要はシャドウイングで伸ばせるリスニング力は全体の3~4割という主張です。
初級者がシャドウイングで伸ばせるのは主にプロソディ
シャドウイングには、プロソディ・シャドウイングとコンテンツ・シャドウイングの2つがあります。昔の僕の英語力でシャドウイングをやると、どうしても発音に意識がいってしまう(=プロソディ・シャドウイングになってしまう)ため、コンテンツ・シャドウイングにならなかったんですね。
意味をつかむためのトレーニングも必要
上記のことから、初~中級者にはコンテンツ・シャドウイングは難しい = シャドウイングだけで意味がつかめるようになる可能性は低いと考えています。これは決して、シャドウイングを軽視しているわけではないです。
僕が発音や音変化のデータベースを増やせたのは、シャドウイング(&ディクテーション)のお陰です。
ただ、初~中級者は、シャドウイングだけで、リスニングで完全に聞き取れるようになる可能性は低いという点。
そこで、意味をつかむためのトレーニングとして、暗唱をお勧めします。
【参考】TOEIC Part 3・4が聞き取れない→「暗唱」で道は開ける!
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