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公開:2022-06/24
関連:検索練習 / 分散学習 / 反復練習 / 「速さ」よりも「正確さ」 - 速さ(wpm)
最初は「速度」を落とすべき3つの理由
(1) 理解度が下がる
第二言語習得などを専門にされている教育学博士で、TOEFL・TOEICともに満点の青谷正妥教授が著書で、リスニング時のスピードについて触れておられました。「意味重視のインプット」のところで説明しましたが、95から98%の単語が理解できて初めて意味処理の練習になります。スピードが速すぎたり、内容が難しすぎたりしてはいけないのです。(P. 52)
ノーマルスピードに進む前に、遅い物が十分に理解できているかどうかを、くれぐれもしっかりチェックしてください。
学習者がリーディングに比してリスニングに困難を覚える最大の理由は、往々にして単にそのスピードです(Zeng, 2007; Zhang, 2005)。リーディングのように、自分のペースで進めませんからね。(P. 55)
スピードが速いと、まず「音的に聞き取れない」ものが増えます。次に、音が聞き取れたとしても、スピードが速いと「意味的に理解できない」ものが出てきます。
そんなわけで、自分が理解できなかったマテリアルは、速度を落としてトレーニングし始めることが大事です。
【参考】言語学者「リスニングは7~9割分かるものをやらないと効果は薄いよ」
(2) 間違えて覚えると矯正が大変
音読やシャドウイングをするときに、発音や音変化を間違って覚えてしまうと、あとで気づいたときに、矯正するのが困難なんですよね。仕事の帰りに醤油を買って帰ろうと思ってたのに、忘れてそのまま帰ってしまった、とかあるあるだと思うんですよ(笑)。家に帰るまでのルートが脳の中で自動化してしまっている証拠。
一度習慣化したものは変えるのが困難なんですよね。
正確さは初期の段階ではとくに重要である。なぜなら、最初の何度かの繰り返しが将来の神経回路を確立するからだ。
神経学者はこれを「雪山のそり」と呼んでいる。最初の何度かの繰り返しは、新雪に残る最初の形跡になるからだ。その後の繰り返しでは、そりはそれまでの形跡にしたがう傾向がある。
「脳は形跡を残すのが得意だ」とUCLAの神経学者ジョージ・バートゾキス博士は語る。「しかし、形跡を消すのはそんなに得意ではない」
ハードスキル(正確に繰り返すスキル)を学ぶときは、正確に測定しながらゆっくりおこなおう。1回にひとつの単純な動作をおこない、繰り返しによって完璧に仕上げてから次に進もう。
とくに最初はミスを発見し、修正することを心がけよう。(P. 43)
なので、音読やシャドウイングや瞬間英作文などのトレーニングをするときは、まずゆっくりと正確にやるのが大切です。
【参考】TOEIC スコアもリスニング力も向上する勉強法 Part 1・2編 / Part 3・4編
(3) ミスに気づきやすくなる
例えば、ディクテーションでは、速度を落とすことで、ノーマルスピードでは聞き取れなかった音が聞き取れるようになるため、自分が聞き取れない原因により気づきやすくなります。また、シャドウイングでは、速度を落とすことで、より正確に発話できるようになるんですよね。
人々は正確さをおろそかにして、一時のスリルを追い求める傾向がある。だから意識的にペースを落とすことが重要なのだ。
超スローモーションの練習は拡大鏡のように作用する。つまり、ミスをはっきりと認識し、それによって修正することができるのだ。
ペースを落とした練習は、多くの才能開発所でハードスキル(正確に繰り返すスキル)を教えるためにおこなわれている。
たとえば、スパルタク・テニスクラブでは生徒が大変ゆっくりとラケットを降っていて、クラシックバレエのダンサーかと見まがうほどだ。
セプティエン現代音楽学校では、生徒は新しい曲を覚えるときに一つひとつの音符をゆっくりとていねいに歌う。
……練習のときは、次の格言を肝に銘じよう。
「大切なのは、どれだけ速くできるかではなく、どれだけゆっくりと正確にできるかだ」(P. 95)
【出典】才能を伸ばすシンプルな本
TOEICをガリ勉してリスニングで満点が取れたレベルだと、ネイティブの生の速い英語を聞き取るのはまだまだ困難です。
なので、基本的にICレコーダーで0.7~0.8倍速でスタートしています。あまりに速い箇所は0.4~0.6倍速にすることもあります。
正確さの重要性を再確認した夏の日の2022。
【参考】シャドウイングで伸びないと感じる人に試して欲しい6つの処方箋
速度を下げる方法
無料アプリ
最近の無料の音声再生アプリは、たいてい速度変更機能がついているので、それで十分だと思います。ICレコーダーやMP3ウォークマンは必ずしも必要ない。便利な時代だ。
個人的に使ってみて、良いと思ったものだけ載せておきます。
「語学プレーヤー」
個人的には、NHK出版の「語学プレーヤー」は悪くないなと。Play Storeの評価は3.7でちょっと低いですが、何が悪いんだろう。速度変更機能もありますし、「2秒戻る」「2秒進む」ボタンが大きめで押しやすいので、ディクテーションやシャドウイングがやりやすそうだなと。1曲リピート、区間(A-B)再生も押しやすい。
1つ気づいた難点は、速度変更で0.9倍速、0.6倍速、1.1倍速、1.3倍速、1.4倍速がない点ですね。
多くの人にとっては小さいことだと思いますが、僕はシャドウイングで毎日反復練習やる際、5日毎に0.1~0.2倍速ずつスピードを上げていくので、上記の倍速がないと困るんですよね。
「abceed」
一番有名なのは「abceed(エービーシード)」ですかね。インストールしてみたのですが、これって購入した音声しか流せないんですかね。自分で編集したオリジナルの音声とか再生できないのかな。それだと困るなぁ。
少し使ってみた感じでは、今使っているICレコーダーよりも、画面が見やすく、区間リピートや繰り返し再生がやりやすいのがいいなと思いました。
もし他にいい音声再生アプリがあったら教えて下さい(・∀・)/
ICレコーダー
カフェとかで勉強するなら、画面で確認しやすい音声再生アプリのほうが視認性が高くていいと思いますが、僕は
「歩きながらシャドウイングしたいので物理ボタンがあるほうが便利」
「スマホのバッテリー消費を減らしたい」
「スマホはいろいろと誘惑が多い(笑)」
という理由でICレコーダーを使っています。
10年以上SONYのMP3ウォークマンを使ってましたが、最新機種が残念なものになっていたので、2020年にICレコーダーに乗り換えました。興味のある方は次の記事をぜひ(`・ω・´)b
【参考】シャドウイングに超最適なICレコーダー SONY ICD-UX575F
Video Speak Controller(PC版Chrome)
パソコンでYouTubeやNetflixを見るときは、Chrome拡張機能「Video Speed Controller」を入れておくと、ボタン一発で速度を0.1倍速単位で変更できます。
「<」「ね」でスピードダウン、「>」「る」でスピードアップできるので重宝します。
YouTubeだと、オプション設定で、「Z」で2秒前に戻る(Rewind)、「X」で2秒後に進む(Advance)とか設定できるので、ディクテーションやシャドウイングがやりやすくなります。ただ、この機能だけNetflixでやるとエラーが出る(T-T)
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