真のバイリンガルは努力家だった件

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対象:ラクして英語を身につけたい/バイリンガルや帰国子女が羨ましい/子供をバイリンガルにしたい方 
読了:約8分(4717字) 
公開:2017-09/05 
更新:2017-09/25 部分的に加筆・修正 

バイリンガルの人、帰国子女の人って、何となく簡単に2つの言語を身につけているイメージってないですか?

僕はありました。日本語も英語もペラペラでいいなーみたいな。

ですが、バイリンガルに関する本を読んだり、Web記事を読んできたことで、バイリンガルに関するいろんなことが分かってきたので、まとめておくことにしました。
 

真のバイリンガルは少ない

会話言語能力と学習言語能力

バイリンガルの話に入る前に、まず「会話言語能力」と「学習言語能力」という言葉について知っておいたほうがいいので、『英語の害毒』というすごいタイトルの新書から引用しておきます。


会話言語能力とは、その言語で日常会話ができる能力のことをいう。

あいさつするとか、買い物するとか、道案内するとか、友達と昨日見たテレビの話をするなど、我々が普段生活するうえで行う、ありきたりなやりとりができる能力だ。

一方、学習言語能力というのは、その言語で高度に抽象的な内容を伝達・理解できる能力のことだ。

政治・経済問題について議論するとか、本や新聞記事や論文を読んだり書いたりするとか、自分の主張を論理的にまとめて発表するなど、知的・論理的に言語を使いこなす能力だ。

……おおざっぱにまとめると、学習言語の方が会話言語よりも複雑だということだ。(P. 55~56)




日本国内で英語をマスターするのは大変ですが、ネイティブレベル並みの正確さ(自然さ)を求めなければ、「会話言語能力」を身につけるのはそこまで難しくないと感じています。

TOEICや英検の勉強ノウハウは本屋さんやWeb上にたくさん転がってますし、Language Exchangeや【 オンライン英会話 】などを利用すれば、毎日英語を話す環境を作ることは可能です。

環境は整ってきている。あとはやる気だけ(笑)

なので、「会話言語能力」に関しては何とかなると思うんですよ。

ただ、「学習言語能力」については、毎日数時間を数年、英語に費やさないと厳しいというのが、毎日4~5時間、英語を学んでいる者の実感です。

【参考】準ネイティブレベルの英語力に到達するのに必要な勉強時間


バイリンガルには3種類ある

バイリンガルって大きく分けると3種類あります。日本語と英語のバイリンガルを例に説明していきますね。

1つめは、プロフィシェント・バイリンガル(proficient bilingual)で、日本語も英語も「学習言語」のレベルで使える人を指します。「proficient」は「熟達した」という意味です。


2つめは、パーシャル・バイリンガル(partial bilingual)で、日本語は「学習言語」レベルで使えるけど、英語は「会話言語能力」レベルでしか使えない人です。もしくは英語は「学習言語」で、日本語が「会話言語」の人。「partial」は「部分的な」。

3つめは、セミ・リンガル(semi lingual)で、日本語も英語も「会話言語」のレベルでしか使えない人です。

ウィキペディアでは、「二言語の環境で育ち、その両言語において年齢に応じたレベルに達していない者」と定義されています。ダブルリミテッドとも言います。


セミリンガルの恐怖

「セミリンガルなんてホントにいるの?」って思ってしまいますが、『アメリカで育つ日本の子どもたち』という書籍によると、「アメリカにいる日本の子供のうち、5~10%はセミリンガル」だそうです。

また、シンガポールは、小学校から英語でも授業を受けるので、「バイリンガルが多い」というイメージがありますが、実際はセミリンガルが一番多いそうです。


プレジデントオンラインで、セミリンガル(ダブル・リミテッド)の危険性に関する「ペラペラな親ほど早期英語教育に“冷淡”」という記事がありました。


子どもに日本語と英語というふたつの言語をバランスよく習得させるためには、教える側にも技術や根気が求められる。

どの言語でも、意思の疎通ができるだけの言語ネットワークを形成するためには、それなりの時間が必要だ。周囲と同じ発達スピードで2つの言語を習得させようとすれば、単純に考えて2倍の労力が必要になる。

その重みを深く考えず、バランスを誤った過度な外国語教育を受けさせることは、子どもにとって大きなストレスになる。最悪なケースでは、どちらの言語の発達も一定レベル以下の言語力しかない“ダブルリミテッド”の状態になってしまうのだ。


セミリンガルの実態についてまとめられた「母語を奪うこと、セミリンガルにすることの残酷さ」「セミリンガルの分かれ道」を読むと、安易な早期英語教育は危険だと感じます。


プロフィシェント・バイリンガルは少ない


皆さんご存知、バイリンガールのChikaさん。

Chikaさんのように両方の言語を「学習言語」レベルで使えるプロフィシェント・バイリンガルの人は少数派になるみたいです。


バイリンガルはみんなプロフィシェント・バイリンガルだと思っている人が多いが、実際にはプロフィシェント・バイリンガルは非常にめずらしい

子供の時に何年か英語圏に住んだくらいでなれるものではない。

子供をプロフィシェント・バイリンガルにしようと思ったら、英語圏にいるときは英語とともに日本語の読み書きをみっちり学べせ、日本にいるときは日本語とともに英語の読み書きをしっかり勉強させるなど、親がよほど計画的に育てる必要がある。

実際に多いのは、パーシャル・バイリンガル(partial bilingual)だ。

一方の言語(優位言語)については平均的なモノリンガルと同等の学習言語能力をもっているが、もう一方の言語については会話言語能力のみで、学習言語能力はないか、または低い。

英語を話している帰国子女を見ると、英語を日本語と同じように使いこなせるものと思い込んでしまう人は多いだろう。でも実際には、英語は会話言語能力しかないことが多い。(P. 58~59)

【出典】英語の害毒


Chikaさんは小学校1年生から大学を卒業するまで、アメリカのシアトルに16年間住んでおられたそうですが、上述した動画によると、日本語を獲得&維持するために、


(1) 家では日本語を使うように厳しく躾けられた
(2) 毎週土曜日は往復4時間かけて日本人学校に嫌々通っていた
(3) 日本に帰国後は、社外の人とも積極的に交流した


そうです。

小さい頃「家で英語を使うと怒られた」と仰っておられるので、当時は「英語のほうが使いやすい」と感じていたとすると、(少なくとも当時は)Chikaさんの第一言語は英語ではないかと思うんですよ。

そして、日本に帰国した頃は「日本語は、正直、すごい下手でした」と仰っておられます。

つまり、「まだ流暢ではない第二言語である日本語で、日本人ばかりの飲み会に参加する」というのは、僕ら純ジャパの英語学習者がアメリカに行って、ネイティブだらけのホームパーティに参加するようなものですよ。

怖すぎて想像したくない(笑)

だから、それを実践されたChikaさんはスゴイなと。

Chikaさんが話しておられた「日本人学校」について調べていたら、DMM英会話ブログのニューヨークのバイリンガル教育に関する記事にたどり着きました。


日本語補習校は、日本の学校の1週間分の授業内容を1日で教えるので、子どももとても大変です。宿題も地元校の分と合わせると、まさに泣くほどの量になってしまいます。

想像してみてください。小学生が英単語のスペルを覚えながら英語でエッセイを書き、同時に漢字を覚えて作文も書かなければならないのです。加えて、親も自宅から離れた場所にある日本語補習校まで毎週送り迎えするわけですから、それはもう大変です。

親子でこれほどの苦労を長年つづけることで、やっと流暢な日英バイリンガルに育つのです。

【出典】逆に日本語教育が大変!? ニューヨーク流バイリンガル・キッズの育て方


ニューヨークの話なので、シアトルにおられたChikaさんが通っておられた日本人学校とは異なるかもしれないですが、Chikaさんが決してラクに日本語を習得されたわけではないことは想像できると思うんですよね。


LA育ちのバイリンガルのMelodee Moritaさんも、日本語の習得にかなり苦労されたそうです。




バイリンガルの親も努力している

イギリス人の女性と結婚された通訳者の川合亮平さんが、子供をバイリンガルに育てることの大変さについて語っておられました。


僕の3人の子ども達はそれぞれ、日本語を使えるのと同じくらい英語を使うことができます。

そして僕の妻は英国人です。「親が英語を母国語としているなら、子どもが英語を話せるのは当たり前じゃないか」と一般的には思われるかもしれませんが、実は、そうは思ってほしくない(笑)。

どんな状況にあったとしても、子どもを英語と日本語両方話せるバイリンガルにするのは簡単なことではないと感じているからです。

【出典】国際結婚でも大変…「英語子育て」のリアル事情


川合さんの一家は日本に住んでおられるらしく、奥様(イギリス人)が「家で使う言語はすべて英語」というルールを作られたそうです。

先ほどお話したChikaさんとはちょうど逆のパターンですね。

日本にいると、日本語は身につけやすいけど、英語を身につけるのは難しい。というわけで「家で使う言語はすべて英語」という掟ができたのでしょう。


■テレビ番組は英語のもののみに限定
■妻がより積極的に長男に関わるようにする(英語のアクティビティーブック、読み書きの練習を、ほぼ毎日一緒にする)
■兄弟で遊ぶ時、英語を使うよう指導する
■国際結婚の家庭を持つ妻の英国人仲間で、自らの子ども達のために「英語読み書き教室」を定期開催。英国の教員免許を持っている講師を招いて、簡易英国小学校クラスを運営する
■できるだけ英国に滞在し、英国の家族と交流するようにする

【出典】国際結婚でも大変…「英語子育て」のリアル事情


厳しいっすね……

「テレビ番組は英語のもののみに限定」ということは、昆虫が好きでも、日本語で放送されている「香川照之の昆虫すごいぜ!」は見ることができないわけですよ。これはツラい!

他にも「国際結婚した家庭でも難しい!子供がバイリンガルに育たない理由とは?」を読むと、2つの言語で「学習言語」レベルのバイリンガルになるのがいかに難しいかが大変かが分かります。


となると、どうすれば「学習言語」レベルの英語を身につけられるのか?が気になってきますよね。



「学習言語能力」をどうやって身につけるか?

帰国子女の英語力もまちまち

けっこうブログのあちこちでご紹介している内容ですが、同時通訳者の関谷英里子さんの著書に、「学習言語」レベルの英語を身につけるためのヒントがあります。


私の周りには帰国子女がたくさんいます。しかし、その英語力にはかなりのばらつきがあります。

帰国子女といっても英語に触れた時間もその質も異なりますから英語力に差が出て当然なのですが、生まれてから12、3歳まで英語圏で暮らしたほぼ同じ条件下であっても、

大人になった現在でもネイティブスピーカーと遜色ないほどに英語ができる人、残念ながら子供っぽい表現のままの人、英語がぎこちなくなってしまって通じなくなった人と、その英語力にはけっこう大きな差があるのです。

……では、この差はどこから生まれるのか。

これは読書量の差なのです。

英語でも日本語でも言語能力が高い人、バイリンガルで英語を仕事でどんどん使っている人は、例外なくたくさん本を読んでいます。日本語でも英語でも、どちらでも多くの本を読んでいます。(旧版P. 114~116)




というわけで、結局は読むしかないという、身も蓋もない「英語あるある」にたどり着いてしまうわけです(笑)

【参考】英語「超」上級者は例外なく多読していた件


英語で読書する = 英語「で」学ぶ

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僕は高卒なので学はなく、しかも20代の頃はフリーターで過ごしたため、ホントにおバカだったと思います(笑)

ただ、20代の後半頃から、読書が習慣になりました。なんか知識を吸収するのが面白くなってきたんです。

自己啓発書、ビジネス書、経営者の自伝、いろんなノウハウに関する本などトータルで500冊以上読み、Web記事も大量に読み、学んだことを仕事で少しずつ実践してきました。

もし読書の習慣がなかったら、今よりもさらにひどかったと思いますし(笑)、ましてや文章を書いて生計を立てるブロガーなんていう仕事はできていなかったと思うんですよね。あ、所得税も住民税も個人事業税もきちんと納めてますよ!

そんなわけで、学はなかった僕ですが、読書のお陰で日本語の語彙力を伸ばすことができたのは間違いないです。また、語彙力というのは、それ単独で身につくものではなく、知識や知恵と結びついていると感じています。

そして、日本語でそうなんですから、英語も同じだと思うわけですよ。

英語を通して学べば学ぶほど、理解できる語彙は増え、アウトプットできる語彙も増え、新たな知識が身につき、実践することで知恵に変わっていくだろうなと。

なので、英語で「学習言語」のレベル(≒仕事で使えるレベル)に到達したければ、英語「で」大量に学び、実践する必要があると感じています。



 
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