季節アルバム |
つい先月「冬に聴きたいアルバム10選」をやったばかりですが、あっという間に春めいてきて、関東では桜も散りつつある今日この頃。うかうかしているとすぐに梅雨入りしてしまうので、(スパン短いですが)「春に聴きたいアルバム10選」を特集します。春と言えばやっぱり爽やかなギタポ~ネオアコ~ソフトロック系が聴きたくなりますね。ポカポカ陽気のなかでまどろむような、ちょいサイケ風味もいいです。
※春のイメージ。木漏れ日と、草原でゴロン。
出展:(上)Roger Nichols And The Small Circle of Friends、(下)Allo Darlin'
※春のイメージ。木漏れ日と、草原でゴロン。
出展:(上)Roger Nichols And The Small Circle of Friends、(下)Allo Darlin'
Beach House / Teen Dream (2010)
"Used To Be" by Beach House
まずは最近のインディーロックから。「春眠暁を覚えず」という言葉の通り、春って心地よい陽気によって頭がポ~ッとしてどこか夢遊的になりますよね(自分だけ?笑)。そんなドリーミーな気分にピッタリなのがこのアルバム。例えば「Zebra」「Used To Be」はどこか温もりを感じさせるような牧歌的な雰囲気があるし、「Norway」「10 Mile Stereo」は深々と雪が降るような冷たさも感じられ、まさに「三寒四温」なアルバム。アートワークの淡いピンクのゼブラ柄も春らしいです。このアルバムは当ブログの2010年 年間ベストアートワークでも1位を獲得しました。
Allo Darlin' / Allo Darlin' (2010)
"The Polaroid Song" by Allo Darlin'
キュートで舌っ足らずな女子ボーカルを擁するロンドン出身の4人組。タンバリン、ハンドクラップ、男女ツインボーカル、ピアノ、ホーンといった、良質ネオアコ/ギターポップに必要不可欠な魅力がぎっしり詰まっています。The Drums meets The Vaselinesな雰囲気の疾走感あるサーフ調ナンバー「Dreaming」から、シンディ・ローパーの有名曲「Girls Just Wanna Have Fun」をサンプリングした「My Heart Is a Drummer」まで、いろんな角度から「ポップ」を追求していて、全編が春らしいハッピーなヴァイヴに満ち溢れた一枚。
Dream Diary / You Are The Beat (2011)
"Something Tells Her" by Dream Diary
ブルックリンのスリーピース・ギタポバンド。C86の流れを汲む流麗なギターによって、80'sのネオアコサウンドを忠実に現代に蘇らせています。スネアのオモテ四つ打ちビートが乗るリズミカルな曲もいくつか収録され、爽快感と高揚感溢れるグッド・メロディーのオンパレード。なお、国内盤ボーナストラックにはThe Vaselines「Sun of A Gun」のカバーを収録。
My Bloody Valentine / Ecstasy & Wine (1989)
"Never Say Goodbye" by My Bloody Valentine
ここからは時代を20年ほど遡ります。マイブラの中で最もマストな作品と言えば、一番目は「Loveless」なのは揺るぎないとして、2番目は「You Made Me Realise EP」、そしてその次はこの作品だと思います(あくまで個人的に、ですが)。つまりファーストアルバム「Isn't Anything」よりも重要度が高いとさえ思うのです。厳密にはこれはアルバムではなく、2枚のEPを合わせてLazy Recordsがバンドに無許可でリリースしたものなのですが、とにかく全編が瑞々しく甘酸っぱい美メロとギターノイズと疾走感に貫かれていて、出会いの季節でもある春のドキドキ感を見事に体現してる気がします。The Pains of Being Pure At Heartのデビューアルバムを初めて聴いたとき、真っ先に思い浮かんだのがこの作品でした。
Primal Scream / Sonic Flower Groove (1987)
"Silent Spring" by Primal Scream
プライマル・スクリームのファーストは、その後の音楽性からは想像できないくらいに美メロのネオアコ・サウンド。けだるさを感じさせつつも清涼感溢れるボビーのボーカルは、00年代の彼らような殺伐感はなくてむしろ和み系。最近のプライマルしか知らない人、Smith Westerns「Dye It Blonde」が好きな人は必聴です(声と歌い方がそっくり)!
はっぴいえんど / 風街ろまん (1971)
"風をあつめて" by はっぴいえんど
時代をさらに20年ほど遡ります。春と言えば春一番。南からの暖かい風を連想させます。このアルバムはアルバムタイトルからして「風」が入っているけど、曲名も「風をあつめて」「颱風」「花いちもんめ」、さらにはそのものずばりな「春らんまん」といったものがあり、春のイメージが強いです。松本隆と細野晴臣がもともといたバンドが「エイプリル・フール」なのも関係あるんでしょうか。それにしても40年前の作品とは思えないクオリティ。時代が一巡したからか、音の質感としては昨年の坂本慎太郎「幻とのつきあい方」にも通じるユルさと乾いた感じがあります。
Joni Mitchell / Blue (1971)
"Carey" by Joni Mitchell
最も好きな女性シンガーソングライターのひとりです。彼女は初期のフォーク路線から、やがてジャズ/フュージョン路線へと変遷しますが、やはり自分は初期のフォーク路線が好きです。特にこのアルバムは全曲捨て曲なしの名盤。シンプルな演奏と牧歌的なボーカル、親しみやすいメロディーによって、目を閉じて聴くとのどかな田園風景が浮かんでくるような作品です。
The Millennium / Begin (1968)
"The Island" by The Millennium
ここ5年くらいのインディーロック、例えばMGMTとかDeerhunter、Animal Collective、Girlsとかって、すごくこの時代のソフトロックを参照してると思いませんか?この曲なんかは1968年の楽曲ながら、一聴した感じでは最近のインディーロックバンドの音みたいに聞こえます。このアルバムにおけるソフトロック、ソフトサイケの表現技法や豊潤なハーモニーの方法論は、現在のインディーロック・シーンを深く知る上で非常に重要だと思うので、未聴の方はぜひ。ヒップホップのビート感覚すら感じさせる1曲目「Prelude」のイントロからヤラれること間違いなしです。
Roger Nichols And The Small Circle of Friends / S.T. (1968)
"Love So Fine" by Roger Nichols And The Small Circle of Friends
こちらもソフトロックの名盤。1曲目の「Don't Take Your Time」はコーネリアスの「Love Parade」(「First Question Award」収録)の元ネタとしても有名です。この「Love So Fine」はソフトな女性ボーカルに、ホーンの音が高らかに鳴らされるアップテンポなギタポナンバー。ボーカルのエコーのかけ方とか軽めのドラムの音など、こちらもやはり現在のインディー・ロックバンド(シューゲイザー系やネオアコ系)に通じるものがあります。
The Byrds / Mr. Tambourine Man (1965)
"Mr. Tambourine Man" by The Byrds
ボブ・ディランの名曲をフォークロック調にアレンジしたカバー。12弦ギターのキラキラとした美しい音色は、後のジョン・スクワイア(The Stone Roses)に受け継がれています。コーラスワークのハーモニーも美しく、暖かい春の日差しを感じさせます。草原で寝っ転がりながら聴きたいです。
だんだんと時代を遡りつつ、春の暖かい風や日差しを感じさせる爽やかなアルバムを10枚セレクトしてみましたが、時代は違えど何か共通するものが感じられたのではないでしょうか。それもそのはずで、現在のインディーロックバンドの多くは60年代~80年代の音楽から強い影響を受け、自分たちなりに再解釈・再構築しているのだと思います。
最近はインターネットを活用してどんどん新しいバンドが発掘・紹介されているし、それらを追うのだけでも大変なのは事実。しかしそんな中でも最近の音楽だけではなく過去の音楽にも触れることで、より一層現代の音楽が楽しめるようになると思います。ロックの魅力って、やはりその「自由さ」に尽きると思います。いろんなジャンルを取り込んで、まったく新しいものに昇華できる自由さ。だから、それらのアーティストが影響を受けた様々な時代・ジャンルの音楽を知ることは、インディーロックをより深く楽しむための最大の近道だと思うのです。
"Used To Be" by Beach House
まずは最近のインディーロックから。「春眠暁を覚えず」という言葉の通り、春って心地よい陽気によって頭がポ~ッとしてどこか夢遊的になりますよね(自分だけ?笑)。そんなドリーミーな気分にピッタリなのがこのアルバム。例えば「Zebra」「Used To Be」はどこか温もりを感じさせるような牧歌的な雰囲気があるし、「Norway」「10 Mile Stereo」は深々と雪が降るような冷たさも感じられ、まさに「三寒四温」なアルバム。アートワークの淡いピンクのゼブラ柄も春らしいです。このアルバムは当ブログの2010年 年間ベストアートワークでも1位を獲得しました。
Allo Darlin' / Allo Darlin' (2010)
"The Polaroid Song" by Allo Darlin'
キュートで舌っ足らずな女子ボーカルを擁するロンドン出身の4人組。タンバリン、ハンドクラップ、男女ツインボーカル、ピアノ、ホーンといった、良質ネオアコ/ギターポップに必要不可欠な魅力がぎっしり詰まっています。The Drums meets The Vaselinesな雰囲気の疾走感あるサーフ調ナンバー「Dreaming」から、シンディ・ローパーの有名曲「Girls Just Wanna Have Fun」をサンプリングした「My Heart Is a Drummer」まで、いろんな角度から「ポップ」を追求していて、全編が春らしいハッピーなヴァイヴに満ち溢れた一枚。
Dream Diary / You Are The Beat (2011)
"Something Tells Her" by Dream Diary
ブルックリンのスリーピース・ギタポバンド。C86の流れを汲む流麗なギターによって、80'sのネオアコサウンドを忠実に現代に蘇らせています。スネアのオモテ四つ打ちビートが乗るリズミカルな曲もいくつか収録され、爽快感と高揚感溢れるグッド・メロディーのオンパレード。なお、国内盤ボーナストラックにはThe Vaselines「Sun of A Gun」のカバーを収録。
My Bloody Valentine / Ecstasy & Wine (1989)
"Never Say Goodbye" by My Bloody Valentine
ここからは時代を20年ほど遡ります。マイブラの中で最もマストな作品と言えば、一番目は「Loveless」なのは揺るぎないとして、2番目は「You Made Me Realise EP」、そしてその次はこの作品だと思います(あくまで個人的に、ですが)。つまりファーストアルバム「Isn't Anything」よりも重要度が高いとさえ思うのです。厳密にはこれはアルバムではなく、2枚のEPを合わせてLazy Recordsがバンドに無許可でリリースしたものなのですが、とにかく全編が瑞々しく甘酸っぱい美メロとギターノイズと疾走感に貫かれていて、出会いの季節でもある春のドキドキ感を見事に体現してる気がします。The Pains of Being Pure At Heartのデビューアルバムを初めて聴いたとき、真っ先に思い浮かんだのがこの作品でした。
Primal Scream / Sonic Flower Groove (1987)
"Silent Spring" by Primal Scream
プライマル・スクリームのファーストは、その後の音楽性からは想像できないくらいに美メロのネオアコ・サウンド。けだるさを感じさせつつも清涼感溢れるボビーのボーカルは、00年代の彼らような殺伐感はなくてむしろ和み系。最近のプライマルしか知らない人、Smith Westerns「Dye It Blonde」が好きな人は必聴です(声と歌い方がそっくり)!
はっぴいえんど / 風街ろまん (1971)
"風をあつめて" by はっぴいえんど
時代をさらに20年ほど遡ります。春と言えば春一番。南からの暖かい風を連想させます。このアルバムはアルバムタイトルからして「風」が入っているけど、曲名も「風をあつめて」「颱風」「花いちもんめ」、さらにはそのものずばりな「春らんまん」といったものがあり、春のイメージが強いです。松本隆と細野晴臣がもともといたバンドが「エイプリル・フール」なのも関係あるんでしょうか。それにしても40年前の作品とは思えないクオリティ。時代が一巡したからか、音の質感としては昨年の坂本慎太郎「幻とのつきあい方」にも通じるユルさと乾いた感じがあります。
Joni Mitchell / Blue (1971)
"Carey" by Joni Mitchell
最も好きな女性シンガーソングライターのひとりです。彼女は初期のフォーク路線から、やがてジャズ/フュージョン路線へと変遷しますが、やはり自分は初期のフォーク路線が好きです。特にこのアルバムは全曲捨て曲なしの名盤。シンプルな演奏と牧歌的なボーカル、親しみやすいメロディーによって、目を閉じて聴くとのどかな田園風景が浮かんでくるような作品です。
The Millennium / Begin (1968)
"The Island" by The Millennium
ここ5年くらいのインディーロック、例えばMGMTとかDeerhunter、Animal Collective、Girlsとかって、すごくこの時代のソフトロックを参照してると思いませんか?この曲なんかは1968年の楽曲ながら、一聴した感じでは最近のインディーロックバンドの音みたいに聞こえます。このアルバムにおけるソフトロック、ソフトサイケの表現技法や豊潤なハーモニーの方法論は、現在のインディーロック・シーンを深く知る上で非常に重要だと思うので、未聴の方はぜひ。ヒップホップのビート感覚すら感じさせる1曲目「Prelude」のイントロからヤラれること間違いなしです。
Roger Nichols And The Small Circle of Friends / S.T. (1968)
"Love So Fine" by Roger Nichols And The Small Circle of Friends
こちらもソフトロックの名盤。1曲目の「Don't Take Your Time」はコーネリアスの「Love Parade」(「First Question Award」収録)の元ネタとしても有名です。この「Love So Fine」はソフトな女性ボーカルに、ホーンの音が高らかに鳴らされるアップテンポなギタポナンバー。ボーカルのエコーのかけ方とか軽めのドラムの音など、こちらもやはり現在のインディー・ロックバンド(シューゲイザー系やネオアコ系)に通じるものがあります。
The Byrds / Mr. Tambourine Man (1965)
"Mr. Tambourine Man" by The Byrds
ボブ・ディランの名曲をフォークロック調にアレンジしたカバー。12弦ギターのキラキラとした美しい音色は、後のジョン・スクワイア(The Stone Roses)に受け継がれています。コーラスワークのハーモニーも美しく、暖かい春の日差しを感じさせます。草原で寝っ転がりながら聴きたいです。
だんだんと時代を遡りつつ、春の暖かい風や日差しを感じさせる爽やかなアルバムを10枚セレクトしてみましたが、時代は違えど何か共通するものが感じられたのではないでしょうか。それもそのはずで、現在のインディーロックバンドの多くは60年代~80年代の音楽から強い影響を受け、自分たちなりに再解釈・再構築しているのだと思います。
最近はインターネットを活用してどんどん新しいバンドが発掘・紹介されているし、それらを追うのだけでも大変なのは事実。しかしそんな中でも最近の音楽だけではなく過去の音楽にも触れることで、より一層現代の音楽が楽しめるようになると思います。ロックの魅力って、やはりその「自由さ」に尽きると思います。いろんなジャンルを取り込んで、まったく新しいものに昇華できる自由さ。だから、それらのアーティストが影響を受けた様々な時代・ジャンルの音楽を知ることは、インディーロックをより深く楽しむための最大の近道だと思うのです。
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