ライブレポート |
2月21日に代官山UNITで行われた、Neon Indian初来日公演に行ってきました。そのライブの模様をレポートします。
※写真はこの日のライブのものではありません
まずはサポートアクトとしてLA出身のビート・メイカー、Devonwhoが登場。LAのビート・シーンと言えばFlying Lotusが最も有名だが、彼もその系譜に連なるサウンドと言っていいかもしれない。アンビエントを通過したようなアトモスフェリックなシンセ音が幾重にも重なるトラックの上を、粒子の細かい音の破片がビキビキ、プチプチとあちこちの壁に乱反射するかのごとく鳴り響くトラック群。特に1曲目などはさながらチルウェイヴ・ミーツ・ドリルンベース(死語?)な印象も受けた。残念ながら自分はこれまで彼の曲を聴いたことがなかったのだが、ヒップホップやダブをルーツにしつつもダブステップやチルウェイヴとも共振したサウンドは非常に洗練されたインテリジェント・ダンス・ミュージックだった。
Devonwhoのパフォーマンスにより徐々にフロアも熱気を帯びてきたところで、アラン・パロモ率いるNeon Indianが登場。もしかしたらアランのソロ・ユニットと思っている人もいるかもしれないので説明しておくと、当初はソロ・ユニットだったが現在では(Wikiによれば)4人体制のバンドとなっている。ただし今回のライブは5人編成で、アラン・パロモ以外のメンバーは誰が正式メンバーで誰がサポートなのか詳細不明だが、ドラムの男性、ギター兼ベースの男性、シンセ/サンプラーなどマルチにこなす男性、そしてシンセ担当で曲によってはシンセベースも弾く女性という布陣。この紅一点のメンバーはリアン(Leanne Macomber)という名前だそうだが、かなり魅力的だった。オレンジのギンガムチェックにサスペンダーという服装、真っ赤な口紅とパープルヘアのショートおかっぱ(ちょうど映画の「アメリ」みたいな髪の長さ)というコケティッシュなルックス。リアンがメロディラインのシンセパートを担当し、アラン・パロモはどちらかというとアナログ・シンセのつまみをいじくってピコピコとした「あの音」(音源聞いてる人ならなんとなくイメージできるはず)を担当していた。
会場の入りとしては、決して少なくはないかもしれないが混んでいるというほどではなく、比較的容易に移動ができるレベルで、チルウェイヴ四天王(自分はこのキャッチコピーは好きではないが)と言われた彼の初の来日公演、しかも一夜限りということを考えるとやはり寂しくも感じられた。
そんな印象も持ちつつライブは「Era Extrana」のオープニングトラック「Heart: Attack」のイントロを思わせるような、アナログ・シンセのノイズでスタート。このピコピコした電子ノイズは彼らのトレードマークでもあるため、フロアいっぱいにこの音が鳴り響くだけでオーディエンスも雄たけびを上げ興奮度MAXに。そしてファースト収録の「Local Joke」が始まった。ゆるゆるとしたテンポながら、浮遊感のあるシンセと裏打ちのベースのグルーヴが、心地よい陶酔感を煽るナンバーだ。
2曲目には個人的に最も好きなトラック「Hex Girlfriend」、そして4曲目に早くも「Era Extrana」からのリードシングル「Polish Girl」を投下。オーディエンスも「えっもうこれやるの?」と驚きと歓喜が入り混じる。序盤からグイグイと人気曲で引っ張る構成、そしてMCの時以外は曲間で音を途切れさせることなく、ひたすらシンセのつまみをいじって電子ノイズを出して繋いでいたのは、オーディエンスの熱気を保つために功を奏したと思う。
アンコールのラストは「Era Extrana」の中でも最もシューゲイザー色の強い「The Blindside Kiss」。アラン・パロモによると、レコーディング中にはマイブラやジーザス・アンド・メリー・チェインをよく聴いていたという。ノイジーでありながらも甘いメロディを持つこれらのバンドと、Neon Indianとの共通項を見出すことは容易にできる。
実は自分は彼らのファースト「Psychic Chasms」を未聴でセカンド「Era Extrana」のみを予習して行ったのだが、蓋を開けてみればファーストから8曲、最新アルバムから4曲という構成。どの曲もメロディ、サウンドともにセカンドに引けを取らなかったので、これはなる早で手に入れたいところ。
気になった点としては音響面で、特にドラムの音は残念だった。打ち込みドラムであるCD音源に比べ、生ドラムなのでどうしても音のアタックやディケイがしょぼくなってしまっている感は否めない。それでも、彼らが打ち込みユニットではなくバンドにこだわっているのは、ライブならではの躍動感に満ち溢れたパフォーマンスをしたいという願いからなのだろう。アラン・パロモは軽快にステップを踏み、マイクを両手で力強く握りしめ、歌いながらときおりグッと膝を曲げたりと、挙動はかなり80年代のロックスター風情だ。そういえば、ギター兼ベースの男性が演奏していた(たまにリアン嬢も演奏していた)RolandのG-77という白いシンセベースがレトロフューチャーなデザインで非常に魅力的だったのだけど、リアン嬢のファッションやアラン・パロモの動き、そしてヴィンテージ感あふれるアナログ・シンセまで、あらゆるところに80'sからの影響が散りばめられていた。しかし彼らの音は単純に80'sリバイバル(エレポップやニューウェイヴなど)とは異なる次元にある。普遍的なポップ・センスを備えた彼らは、今後より多くのライブ活動をこなしていくことで、次はもっとバンドとしてのアンサンブルを強固にしたライブ感の強いアルバムを届けてくれるに違いない。
Neon Indian - Polish Girl(live)
■2012/2/21 代官山UNIT set list
Local Joke
Hex Girlfriend
Terminally Chill
Polish Girl
Mind Drips
6669
Fallout
Psychic Chasms
Deadbeat Summer
Ephemeral Artery
-encore-
Should Have Taken Acid With You
The Blindside Kiss
※写真はこの日のライブのものではありません
まずはサポートアクトとしてLA出身のビート・メイカー、Devonwhoが登場。LAのビート・シーンと言えばFlying Lotusが最も有名だが、彼もその系譜に連なるサウンドと言っていいかもしれない。アンビエントを通過したようなアトモスフェリックなシンセ音が幾重にも重なるトラックの上を、粒子の細かい音の破片がビキビキ、プチプチとあちこちの壁に乱反射するかのごとく鳴り響くトラック群。特に1曲目などはさながらチルウェイヴ・ミーツ・ドリルンベース(死語?)な印象も受けた。残念ながら自分はこれまで彼の曲を聴いたことがなかったのだが、ヒップホップやダブをルーツにしつつもダブステップやチルウェイヴとも共振したサウンドは非常に洗練されたインテリジェント・ダンス・ミュージックだった。
Devonwhoのパフォーマンスにより徐々にフロアも熱気を帯びてきたところで、アラン・パロモ率いるNeon Indianが登場。もしかしたらアランのソロ・ユニットと思っている人もいるかもしれないので説明しておくと、当初はソロ・ユニットだったが現在では(Wikiによれば)4人体制のバンドとなっている。ただし今回のライブは5人編成で、アラン・パロモ以外のメンバーは誰が正式メンバーで誰がサポートなのか詳細不明だが、ドラムの男性、ギター兼ベースの男性、シンセ/サンプラーなどマルチにこなす男性、そしてシンセ担当で曲によってはシンセベースも弾く女性という布陣。この紅一点のメンバーはリアン(Leanne Macomber)という名前だそうだが、かなり魅力的だった。オレンジのギンガムチェックにサスペンダーという服装、真っ赤な口紅とパープルヘアのショートおかっぱ(ちょうど映画の「アメリ」みたいな髪の長さ)というコケティッシュなルックス。リアンがメロディラインのシンセパートを担当し、アラン・パロモはどちらかというとアナログ・シンセのつまみをいじくってピコピコとした「あの音」(音源聞いてる人ならなんとなくイメージできるはず)を担当していた。
会場の入りとしては、決して少なくはないかもしれないが混んでいるというほどではなく、比較的容易に移動ができるレベルで、チルウェイヴ四天王(自分はこのキャッチコピーは好きではないが)と言われた彼の初の来日公演、しかも一夜限りということを考えるとやはり寂しくも感じられた。
そんな印象も持ちつつライブは「Era Extrana」のオープニングトラック「Heart: Attack」のイントロを思わせるような、アナログ・シンセのノイズでスタート。このピコピコした電子ノイズは彼らのトレードマークでもあるため、フロアいっぱいにこの音が鳴り響くだけでオーディエンスも雄たけびを上げ興奮度MAXに。そしてファースト収録の「Local Joke」が始まった。ゆるゆるとしたテンポながら、浮遊感のあるシンセと裏打ちのベースのグルーヴが、心地よい陶酔感を煽るナンバーだ。
2曲目には個人的に最も好きなトラック「Hex Girlfriend」、そして4曲目に早くも「Era Extrana」からのリードシングル「Polish Girl」を投下。オーディエンスも「えっもうこれやるの?」と驚きと歓喜が入り混じる。序盤からグイグイと人気曲で引っ張る構成、そしてMCの時以外は曲間で音を途切れさせることなく、ひたすらシンセのつまみをいじって電子ノイズを出して繋いでいたのは、オーディエンスの熱気を保つために功を奏したと思う。
アンコールのラストは「Era Extrana」の中でも最もシューゲイザー色の強い「The Blindside Kiss」。アラン・パロモによると、レコーディング中にはマイブラやジーザス・アンド・メリー・チェインをよく聴いていたという。ノイジーでありながらも甘いメロディを持つこれらのバンドと、Neon Indianとの共通項を見出すことは容易にできる。
実は自分は彼らのファースト「Psychic Chasms」を未聴でセカンド「Era Extrana」のみを予習して行ったのだが、蓋を開けてみればファーストから8曲、最新アルバムから4曲という構成。どの曲もメロディ、サウンドともにセカンドに引けを取らなかったので、これはなる早で手に入れたいところ。
気になった点としては音響面で、特にドラムの音は残念だった。打ち込みドラムであるCD音源に比べ、生ドラムなのでどうしても音のアタックやディケイがしょぼくなってしまっている感は否めない。それでも、彼らが打ち込みユニットではなくバンドにこだわっているのは、ライブならではの躍動感に満ち溢れたパフォーマンスをしたいという願いからなのだろう。アラン・パロモは軽快にステップを踏み、マイクを両手で力強く握りしめ、歌いながらときおりグッと膝を曲げたりと、挙動はかなり80年代のロックスター風情だ。そういえば、ギター兼ベースの男性が演奏していた(たまにリアン嬢も演奏していた)RolandのG-77という白いシンセベースがレトロフューチャーなデザインで非常に魅力的だったのだけど、リアン嬢のファッションやアラン・パロモの動き、そしてヴィンテージ感あふれるアナログ・シンセまで、あらゆるところに80'sからの影響が散りばめられていた。しかし彼らの音は単純に80'sリバイバル(エレポップやニューウェイヴなど)とは異なる次元にある。普遍的なポップ・センスを備えた彼らは、今後より多くのライブ活動をこなしていくことで、次はもっとバンドとしてのアンサンブルを強固にしたライブ感の強いアルバムを届けてくれるに違いない。
Neon Indian - Polish Girl(live)
■2012/2/21 代官山UNIT set list
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