ライブレポート |
Hostess Entertainmentが主催するイベント「Hostess Club Weekender」の記念すべき第一回目に、2日間行ってきました。今回はその1日目、2月18日のレポートをお届けします。
開場の13時を10分ほど過ぎた頃に会場入り。会場内は特に混雑している様子もなく、きれいで小洒落た空間に陽光が差し込み、結構リラックスできそうないい雰囲気。まずはグッズ売り場に並ぶ。並んでいる横でうどん屋のブースが出店していたが、しきりに呼び込みをしているもののしばらくお客さんが全く来ず、ちょっと心配になった(食べた人も結構いた模様)。グッズ売り場はそれなりに並んでいたので、お目当てのオフィシャルトートバッグを手にした時にちょうど14時を廻り、本日最初のアクトYouth Lagoonの時間になってしまった。急いで中へ入ると、おそらくちょうど今始まったばかりというところ。
で、まずはかなりびっくりした。CD音源では、ガラス細工のような儚いボーカルと、お世辞にもいいとは言えない音質のかなりローファイなトラックなのだが、これがライブだとまるで別物なのだ。ステージにはもじゃもじゃ頭のトレバー・パワーズがちょこんと座り、他にサポートのギタリストが一人。トレバー君のボーカルは力強くはっきりとした声で、ビートはキックの低音がドシッと響き、キーボードも感情豊かに強弱を付けながら、時に激しく鍵盤を叩くように弾いていた。
正直、自分が彼のアルバム「The Year of Hibernation」に、そのセンスや才能を感じながらももう一歩踏み込めなかったのはその「ローファイさ」ゆえだった。いや、自分は「ローファイ」な音楽はむしろ好きである。でもそれは、意図的ではなく必然としてローファイな音になってしまった時の、「青さ」や「ノスタルジア」が滲み出て輝きが増す場合だ。Youth Lagoonの場合は、本当はトレバー君の頭の中ではもっと壮大なサウンドスケープが鳴り響いているのに、機材環境によってそれを具現化しきれていない気がしてならなかったのだ。
そして彼にとって、その「頭の中で鳴っている音楽」を、CD音源よりも忠実に描けるのが「ライブという空間」であるような気がした。まさか、彼の音楽や歌声を「パワフル」という言葉で形容することになるとは思いもよらなかったし、かつて「極度の不安」を抱いていた繊細で大人しい青年だと思っていた彼に、まさかこっちが「何でみんなそんなに静かなの?」と言われてしまうとは!おそらく「The Year~」の高い評価によって得た資金面でのバックアップにより、次回作はフルバンドを携えて彼の頭の中を100%描ききった、壮大で美しい作品になることだろう。
■Youth Lagoon - setlist
The Hunt
Cannons
Bobby
Montana
Posters
17
Afternoon
July
さて、次はZulu Winter。タイトルは忘れてしまったが、以前1曲を一度聴いたのみで、その時すでに「かっこいいな」とは思っていたが、ライブを観たらその数倍もカッコよかった。
まずルックス。キーボードは長身で白いジャケットを着こんだカーリーヘア、ギターはサイケな感じのシャツの上から大きめのネックレスを垂らしたオシャレ君、ベースはKings of LeonのCaleb似のヒゲ+七三分けオールバック。そしてボーカルは、なんと若かりし頃のスティーヴ・ジョブズ!いまどきありえないグレーのハイネックニットに七三分けオールバックといういでたち。
しかしカッコいいのはルックスだけではない。ハイトーンでよく伸びるボーカルはアレックス・ターナー(Arctic Monkeys)やロブ・ハーヴェイ(The Music)を思い起こさせる部分もあり、「We Should Be Swimming」に顕著な、タイトでちょっとひねくれたドラムはBloc Partyのマット・トンのプレイを思わせた。そして浮遊感たっぷりのギターとキーボード。これらは自分の大好物な要素だし、さらにはキラリと光るメロディセンスもある。今春出る予定だというアルバムが楽しみでならない。
Zulu Winter - We Should Be Swimming
■Zulu Winter - setlist
Ket To My Heart
We Should Be Swimming
Bitter Moon
Moments Drift
Lets Move Back 2 Front
Never Leave
Small Pieces
You Deserve Better
Silver Tongue
続いてのWu Lyfは、昨年のフジロックではタイムスケジュールの都合でやむなく断念しただけに、今回は非常に楽しみにしていた。実はネット試聴段階でそこまでハマれず、アルバムを聴いていなかったのだが、彼らの魅力はそのエモーションを爆発させるライブ・パフォーマンスに尽きるのだと感じた。サウンドチェック段階からけたたましく荒々しい声と、ドカドカしたドラムが鳴り響いていて「これはヤバい」と思ってはいたのだが、果たして予想以上だった。オルガンの音が荘厳で神聖な雰囲気も醸し出すものの、演奏はまさにパンクの衝動に満ち溢れていた。ギターの人の腕に巻かれた黄色い腕章に、何やら漢字のようなものが書いてあったのが気になったが・・・(「浅草」と書いてあるように見えた)。
■Wu Lyf - setlist
Cave Song
Summas Buss
Such A Sad Poppy Dog
Spitting Blood
Dirt
Krusty
Concrete Gold
14 Crowns
We Bros
Heavy Pop
ここでドリンクタイム。初めてお会いするTwitterのフォロワーさんとも歓談しつつ、次のOwen Pallettに臨む。ヴァイオリンの人で、ライブがすごくて、以前は「Final Fantasy」の名前で活動、とかその程度の知識しかなかったのでドキドキだった。ステージにはドラムセットやアンプが置いてあるものの、現れたのはオーウェン一人。あのドラムセットやらはもしかしてこの次のThe Horrorsのもの?とか思っていると、さっそくヴァイオリンを弾き出したのだがこれが何ともユニーク。ボディを叩いてパーカッション風の音を出したり、弓で弦を叩きその反動をまるでディレイの効果のように使ったりと、伝統的な楽器であるヴァイオリンを全く新しい楽器のように弾き、さらにそれをリアルタイム・サンプリング。音のレイヤーを次々と重ね、さらに歌も加えて一人きりで見事な楽曲を組み立てる様は、天才的というよりむしろ変態的。
3曲目からはマルチインストゥルメントとドラムが加わった三人編成になったが、独特の風貌のドラマーがまた変態的だった。縦横無尽に高速ビートを繰り出し、たった3人なのに10人分くらいの音の塊をぶつけてきて、観る者を圧倒。しかしオーウェン・パレットはさすがの貴公子キャラ、汗をかいたり息を切らしたりというそぶりを全く見せないまま、笑顔で手を振りステージを去っていった。
■Owen Pallet - setlist
This Lamb Sells Condos
Odessa
Midnight Directives
Tryst With Mephistopheles
Soldiers Rock
Sky Behind The Flag
Man With No Ankles
This Is The Dream of Win And Regine
Infernal Fantasy
Lewis Takes Off His Shirt
The Great Elsewhere
いよいよ本日のトリ、The Horrors。ギターのサウンドチェック時に何だかとてつもなくカオスな音が聴こえてきて、まさかこの音をライブ中に出すの?と考えたりしているうちに前方のオーディエンスの数が急激に増えてきた。メンバーがステージに登場するなり、熱狂的なファンが最前列で何か書いたボードを掲げ、しきりに歓声を送る。ボーカルのファリスはTシャツの袖をなぜか片方だけ捲り上げて登場。ギターのジョシュアはダルダルなグレーのシャツを着こみ髪がかなり伸びていて、初期とはまた違った独特のオーラを放っていた。今も初期のゴスな雰囲気を最も残しているシンセのトムは、七三分け・アイライン・そして極細身の黒いスーツ姿で、狂気の博士みたいな感じで好きだ。
やはり2nd、3rdからの選曲だったが、ジョシュアのギターがかなり暴れていて、おとなし目だった3rdの曲も2nd期のようなノイジーな音に感じられた。アンコールもあり、個人的にラストを希望していた「Moving Farther Away」でフィニッシュ。この曲は10分以上に及び、ファリスがマイクスタンドを抱えてアンプの前でぐるぐる回し、ジョシュアのギターとともにカオティックなノイズ・インプロヴィゼーションを聴かせてくれた。そして最後にはファリスはオーディエンスの中に飛び込みクラウドサーフィン!トリに相応しい、圧巻のパフォーマンスだった。
■The Horrors - setlist
Endless Blue
I Can See Through You
Who can say
Mirrors Image
Scarlet Fields
Dive In
Sea Within A Sea
Still Life
Changing the Rain
Three Decades
Moving Further Away
次回は2日目の模様もセットリストとともにレポートします。お楽しみに。
開場の13時を10分ほど過ぎた頃に会場入り。会場内は特に混雑している様子もなく、きれいで小洒落た空間に陽光が差し込み、結構リラックスできそうないい雰囲気。まずはグッズ売り場に並ぶ。並んでいる横でうどん屋のブースが出店していたが、しきりに呼び込みをしているもののしばらくお客さんが全く来ず、ちょっと心配になった(食べた人も結構いた模様)。グッズ売り場はそれなりに並んでいたので、お目当てのオフィシャルトートバッグを手にした時にちょうど14時を廻り、本日最初のアクトYouth Lagoonの時間になってしまった。急いで中へ入ると、おそらくちょうど今始まったばかりというところ。
で、まずはかなりびっくりした。CD音源では、ガラス細工のような儚いボーカルと、お世辞にもいいとは言えない音質のかなりローファイなトラックなのだが、これがライブだとまるで別物なのだ。ステージにはもじゃもじゃ頭のトレバー・パワーズがちょこんと座り、他にサポートのギタリストが一人。トレバー君のボーカルは力強くはっきりとした声で、ビートはキックの低音がドシッと響き、キーボードも感情豊かに強弱を付けながら、時に激しく鍵盤を叩くように弾いていた。
正直、自分が彼のアルバム「The Year of Hibernation」に、そのセンスや才能を感じながらももう一歩踏み込めなかったのはその「ローファイさ」ゆえだった。いや、自分は「ローファイ」な音楽はむしろ好きである。でもそれは、意図的ではなく必然としてローファイな音になってしまった時の、「青さ」や「ノスタルジア」が滲み出て輝きが増す場合だ。Youth Lagoonの場合は、本当はトレバー君の頭の中ではもっと壮大なサウンドスケープが鳴り響いているのに、機材環境によってそれを具現化しきれていない気がしてならなかったのだ。
そして彼にとって、その「頭の中で鳴っている音楽」を、CD音源よりも忠実に描けるのが「ライブという空間」であるような気がした。まさか、彼の音楽や歌声を「パワフル」という言葉で形容することになるとは思いもよらなかったし、かつて「極度の不安」を抱いていた繊細で大人しい青年だと思っていた彼に、まさかこっちが「何でみんなそんなに静かなの?」と言われてしまうとは!おそらく「The Year~」の高い評価によって得た資金面でのバックアップにより、次回作はフルバンドを携えて彼の頭の中を100%描ききった、壮大で美しい作品になることだろう。
■Youth Lagoon - setlist
The Hunt
Cannons
Bobby
Montana
Posters
17
Afternoon
July
さて、次はZulu Winter。タイトルは忘れてしまったが、以前1曲を一度聴いたのみで、その時すでに「かっこいいな」とは思っていたが、ライブを観たらその数倍もカッコよかった。
まずルックス。キーボードは長身で白いジャケットを着こんだカーリーヘア、ギターはサイケな感じのシャツの上から大きめのネックレスを垂らしたオシャレ君、ベースはKings of LeonのCaleb似のヒゲ+七三分けオールバック。そしてボーカルは、なんと若かりし頃のスティーヴ・ジョブズ!いまどきありえないグレーのハイネックニットに七三分けオールバックといういでたち。
しかしカッコいいのはルックスだけではない。ハイトーンでよく伸びるボーカルはアレックス・ターナー(Arctic Monkeys)やロブ・ハーヴェイ(The Music)を思い起こさせる部分もあり、「We Should Be Swimming」に顕著な、タイトでちょっとひねくれたドラムはBloc Partyのマット・トンのプレイを思わせた。そして浮遊感たっぷりのギターとキーボード。これらは自分の大好物な要素だし、さらにはキラリと光るメロディセンスもある。今春出る予定だというアルバムが楽しみでならない。
Zulu Winter - We Should Be Swimming
■Zulu Winter - setlist
Ket To My Heart
We Should Be Swimming
Bitter Moon
Moments Drift
Lets Move Back 2 Front
Never Leave
Small Pieces
You Deserve Better
Silver Tongue
続いてのWu Lyfは、昨年のフジロックではタイムスケジュールの都合でやむなく断念しただけに、今回は非常に楽しみにしていた。実はネット試聴段階でそこまでハマれず、アルバムを聴いていなかったのだが、彼らの魅力はそのエモーションを爆発させるライブ・パフォーマンスに尽きるのだと感じた。サウンドチェック段階からけたたましく荒々しい声と、ドカドカしたドラムが鳴り響いていて「これはヤバい」と思ってはいたのだが、果たして予想以上だった。オルガンの音が荘厳で神聖な雰囲気も醸し出すものの、演奏はまさにパンクの衝動に満ち溢れていた。ギターの人の腕に巻かれた黄色い腕章に、何やら漢字のようなものが書いてあったのが気になったが・・・(「浅草」と書いてあるように見えた)。
■Wu Lyf - setlist
Cave Song
Summas Buss
Such A Sad Poppy Dog
Spitting Blood
Dirt
Krusty
Concrete Gold
14 Crowns
We Bros
Heavy Pop
ここでドリンクタイム。初めてお会いするTwitterのフォロワーさんとも歓談しつつ、次のOwen Pallettに臨む。ヴァイオリンの人で、ライブがすごくて、以前は「Final Fantasy」の名前で活動、とかその程度の知識しかなかったのでドキドキだった。ステージにはドラムセットやアンプが置いてあるものの、現れたのはオーウェン一人。あのドラムセットやらはもしかしてこの次のThe Horrorsのもの?とか思っていると、さっそくヴァイオリンを弾き出したのだがこれが何ともユニーク。ボディを叩いてパーカッション風の音を出したり、弓で弦を叩きその反動をまるでディレイの効果のように使ったりと、伝統的な楽器であるヴァイオリンを全く新しい楽器のように弾き、さらにそれをリアルタイム・サンプリング。音のレイヤーを次々と重ね、さらに歌も加えて一人きりで見事な楽曲を組み立てる様は、天才的というよりむしろ変態的。
3曲目からはマルチインストゥルメントとドラムが加わった三人編成になったが、独特の風貌のドラマーがまた変態的だった。縦横無尽に高速ビートを繰り出し、たった3人なのに10人分くらいの音の塊をぶつけてきて、観る者を圧倒。しかしオーウェン・パレットはさすがの貴公子キャラ、汗をかいたり息を切らしたりというそぶりを全く見せないまま、笑顔で手を振りステージを去っていった。
■Owen Pallet - setlist
This Lamb Sells Condos
Odessa
Midnight Directives
Tryst With Mephistopheles
Soldiers Rock
Sky Behind The Flag
Man With No Ankles
This Is The Dream of Win And Regine
Infernal Fantasy
Lewis Takes Off His Shirt
The Great Elsewhere
いよいよ本日のトリ、The Horrors。ギターのサウンドチェック時に何だかとてつもなくカオスな音が聴こえてきて、まさかこの音をライブ中に出すの?と考えたりしているうちに前方のオーディエンスの数が急激に増えてきた。メンバーがステージに登場するなり、熱狂的なファンが最前列で何か書いたボードを掲げ、しきりに歓声を送る。ボーカルのファリスはTシャツの袖をなぜか片方だけ捲り上げて登場。ギターのジョシュアはダルダルなグレーのシャツを着こみ髪がかなり伸びていて、初期とはまた違った独特のオーラを放っていた。今も初期のゴスな雰囲気を最も残しているシンセのトムは、七三分け・アイライン・そして極細身の黒いスーツ姿で、狂気の博士みたいな感じで好きだ。
やはり2nd、3rdからの選曲だったが、ジョシュアのギターがかなり暴れていて、おとなし目だった3rdの曲も2nd期のようなノイジーな音に感じられた。アンコールもあり、個人的にラストを希望していた「Moving Farther Away」でフィニッシュ。この曲は10分以上に及び、ファリスがマイクスタンドを抱えてアンプの前でぐるぐる回し、ジョシュアのギターとともにカオティックなノイズ・インプロヴィゼーションを聴かせてくれた。そして最後にはファリスはオーディエンスの中に飛び込みクラウドサーフィン!トリに相応しい、圧巻のパフォーマンスだった。
■The Horrors - setlist
Endless Blue
I Can See Through You
Who can say
Mirrors Image
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Dive In
Sea Within A Sea
Still Life
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次回は2日目の模様もセットリストとともにレポートします。お楽しみに。
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