読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

一田和樹「公開法廷 一億人の陪審員」 

公開法廷 一億人の陪審員公開法廷 一億人の陪審員
2017/10/23
一田 和樹

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★★★★☆



 【内容紹介】

 国民総陪審員制。ネットにアクセスして国民が重大事件の審判を下すという。世界でも類を見ない制度を日本は採用した。しかしその裏で、とんでもない事態が進行していた。サイバーミステリの名手が描く「近未来」サスペンス!




 国民が全員参加する陪審員制度を描いたミステリで、作者の作品の中でも比較的本格ミステリ度の高い作品です。 
 インターネットを介して被告人の有罪・無罪を決定するシステムで、完全にフィクションの世界なのですが、そこに描かれているのは、配信生主であったり、ニコニコ動画ようなコメント機能であったり、TwitterなどのSNSであったりと、我々インターネットユーザーがよく目にするものばかりです。2017年現在の日本で「公開法廷」というシステムは影も形もありませんが、道具立ては既に揃っていて、フィクションとは言え我々の世界と地続きの世界が描かれているのです。これから起こりうる世界という意味で、なんだかリアルなシミュレーションとして楽しめます。
 第一章 芸術大学超可能殺人事件 で、さっそく公開法廷によって真犯人が決定されるのですが、被告人3人に対して、それぞれ弁護人役と検事役が付き、検事役は被告人が何故犯人であるのか推理を披露します。それぞれの検事が考える犯人が異なっているのだから、弁護人役だけでなく、自身以外の2人の検事役も敵となりうる特殊な構造が、リーガルミステリーとして大変斬新です。また、当然ひとつの殺人事件に対して3人が被告人として吊るし上げられているため、それに付随する推理も自動的に3つ存在するわけです。そのため多重推理的な構造となり、本格ミステリとして贅沢な展開が続きます。
 この第一章だけでも本格ミステリとして読み応え抜群で、ここだけで一本長編行けるのではないかと思ったのですが、本書の主眼はそこには無いようです。公開法廷を繰り返すごとに化け物のように広がりを見せ、虚構と現実を曖昧にしてしまうシステムは、論理的謎解きによって犯人を唯一人に絞り込む「本格ミステリ」というジャンルに対して自己言及的になっていきます。実行犯の向こうに存在する何の繋がりもないメタ犯人の存在、ポスト真実によって感化された国民が多数決で決定してしまう犯人など、気づいてみれば、まるでこれは全く新しいアンチミステリではありませんか。
 あとがきによると、アメリカ大統領選挙の際には、実際にツイッター上で実際にフェイクニュースが拡散されたようですし、我々のすぐ近くにこのような新しいミステリのかたちが存在しうることに驚きました。作中では「汎戦争時代」という言葉で、今現在が戦時下であることが強調されています。笠井潔氏の「大量死論」を持ち出すまでもありませんが、歴史的事実として探偵小説の発展は戦争と共にあります。それを考えると「汎戦争時代」の果てに生まれ落ちたのが本書『公開法廷 一億人の陪審員』であるのならば、本書はまごうことなき「探偵小説 第四の波」に先鞭をつける本格ミステリと言って良いのではないでしょうか。

[ 2017/11/02 02:10 ] 一田和樹 | TB(0) | CM(0)

一田和樹「御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック」 

御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック
2017/6/22
一田 和樹

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★★★★☆



 【内容紹介】

 エンタメ企業ソニカのオンラインゲーム顧客データから個人情報が盗まれ、ネットで公開されてしまう。犯人はツイッターで犯行声明を出し、忽然と姿を消した。調査を依頼された82歳のセキュリティ・コンサルタント、吹鳴寺籐子が、「社内の」ネットワークを走査すると…「アンチウイルスソフトを買わせ金を奪う詐欺」「顧客データが暗号化される悲劇」等々、いま会社員が直面する危機と解決法を描き出したIT連作ミステリ。




 IT系ミステリ連作短編集です。
 わたしはあんまり(というか全く)ネットセキュリティには詳しくないのですが、そういう人間が読んでも楽しめる作品集です。ミステリさえ好きであればIT系の知識はさほど多くなくても大丈夫なのが親切です。
 作中でも作者自身もあとがきで書いていますが、要はたとえ技術が進歩しても人間のあり方は変化しないのです。犯罪を起こすのも人間で、犯行トリックによって探偵を騙し、罠にかけるのも人間だからで、ミステリとして本作の根底を流れるものは、いわゆる「古典」と言われる探偵小説群のそれと何ら変わりません。ミスディレクション、見えない人、意外な犯人、いわゆる狂人の論理など、これらを最新のIT(?使い方多分違いますが、ひとまずこの言葉で逃げます)と噛み合わせているのが本格ミステリとしての大きな見どころです。涙香、乱歩の時代から今日までの我が国の探偵小説史を眺めてみても、この手の探偵小説は非常に珍しいと思います。ドローンやVRなど最新技術を利用したミステリの新作が矢継ぎ早に刊行されている昨今、本作もそういった作品のひとつと言えるでしょう。しかし、最新の技術が使用されているとは言え、今後年月が経っても意外と経年劣化は少ないと想像します。先にも書いたとおりコアの部分に人間の変わらない部分が据えられており、かつ、長年我々が愛している本格ミステリ特有の騙しが盛り込まれているからです。
 連作集のため、最終話で大きなサプライズが発動します。ここにおいて、主人公が老婆であることが実は「IT」×「年寄り」という絵的なミスマッチさを演出するだけでなく、ミステリとして物語として大変重要な布石であったことがわかります。さらにそれまで要所要所で顔を出していた彼女の相方が、これから何かしそうな、という「過程」ではなく、老婆と一緒に生活しているそれ自体が「結果」であった構図の逆転が鮮やかです。
 トリックはバラエティに富んでいますが、難を言うなら、個人情報が流出したという企業に赴き依頼を受けるという展開と謎が四編一様である点でしょうか。しかし、殺人が起こって探偵が現場に赴いて…というのがミステリの王道展開であったりするし、それを考えると、わたしが気にし過ぎなだけかもしれません。
[ 2017/07/22 00:14 ] 一田和樹 | TB(0) | CM(0)

一田和樹「原発サイバートラップ リアンクール・ランデブー」 

原発サイバートラップ リアンクール・ランデブー原発サイバートラップ リアンクール・ランデブー
2016/8/8
一田 和樹

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★★★★☆



 【内容紹介】

 韓国の原発がハッキングされ、放射性廃棄物をつり下げた気球が空に浮かんでいる。これが破壊されれば日本が最大の被害を受けることになる。が、日本は表向き手出しできない。ハッカー集団にアメリカ軍需企業も巻き込んで対応を急ぐのだが…「犯人」は、事件をどこへ着地させるつもりなのか。想定外の危機に日本は何ができるのか。セキュリティの陥穽を突くサイバーサスペンス!




 サイバーミステリならこの御方、福ミス作家の一田和樹さんの新作は原発をターゲットにしたミステリです。
 作者の持ち味が遺憾なく発揮された一作です。
 タイトルの「リアンクール」というのは、日本の竹島のことで、原発については日本のではなく韓国のものがターゲットにされます。韓国の原発、というと海の向こうのもので危機感が湧きにくいところですが、じつはその距離は意外と近く、先の東日本大震災でメルトダウンを起こした福島第一原発~東京間よりも日本から近いところにあるそうです。つまり韓国の原発(第二古里原発)が破壊されるともろに日本に被害を及ぼすのです。
 このような「対岸の火事」と思わせがちな微妙な距離、さらにコンピューターやインターネットといったリアルタイムで何が行われているのか把握しにくく、(わたしなんかにとっては)仕組みが理解し難いものを利用して“戦争”が行われるため、ミステリとしてのホワットダニット的興味がそのまま不安感や恐怖にもつながりサスペンスを盛り上げます。一方、目に見えて(わたしなんかにとっても)理解しやすい事象として描かれるのが、韓国側から日本へと行われる竹島の独立と承認であったり、第二古里原発上空に浮かぶ使用済み核燃料を吊るした大量のドローンなのです。ドローンのランプが光った!ネット民が突撃した!ツイッターで大量にリツイートされてる!といったキャッチーな出来事の数々に目を奪われているうちに、犯人の奸計に知らず知らずはまっていくのが面白いです。
 現代の戦争はヤリを持って行うものではない、というのがよく分かるミステリで、高度なカードゲームを見せられている印象をうけました。セキュリティホールの情報がどれほどまで重要な切り札となりうるのか描かれていて、いかに相手にその切り札を使わせ、自分のそれを温存するか、駆け引きのある戦略が楽しいです。クライマックスにおいて、誰もレイズしてこず、こちらもスリーカードあたりで勝てるかな、と思って手札をオープンした時、意外な人物の手にロイヤルストレートフラッシュが揃っているのが衝撃的です。

 本書の最後のページに査読された専門家の名前が記載されています。おそらく本書で描かれたテロ行為は条件が揃えば実行可能なのだろうな、という予感を嫌でも読者にさせる一ページで、フィクションがノンフィクションに片足を突っ込む恐怖が味わえます。


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[ 2016/08/17 00:02 ] 一田和樹 | TB(0) | CM(0)

一田和樹「キリストゲーム CIT内閣官房サイバーインテリジェンスチーム」 

キリストゲーム CIT内閣官房サイバーインテリジェンスチーム (講談社ノベルス)キリストゲーム CIT内閣官房サイバーインテリジェンスチーム (講談社ノベルス)
(2012/04/05)
一田 和樹

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★★★★☆

 「キリストゲーム」と呼ばれる奇妙なゲームが流行し毎日数十人が自殺するように。内閣官房下の諜報組織NIBはゲームの解明に動く!


 一田さんの講談社ノベルスデビュー作です。
 既刊の『檻の中の少女』『サイバーテロ 漂流少女』は現実に起こりうる事件としてリアリティーが追及されていましたが、あとがきを読むと今作は少々違うようで、思いっきり“ありえないこと”を混ぜているとのこと。だからといってファンタジーやSFに振れているかというとそうでもなく、ボクみたいな素人目線で見ると、意外と過去2作と大きな違いを感じませんでした。というのもボクにとって「無理だろう」と思えることがインターネットやコンピュータで出来てしまうからで、本書を読むと逆に、リアリティーを追求していながら「無理だろう」と思えることを描いてみせた過去2作の面白さが際立ちます。
 とは言っても本書の方も面白く、これとまったく同じことは現実に起きないのかもしれませんが、本書を読むと「インターネットの影響力、情報伝達のスピード・規模の大きさなどが悪用されると怖いな」と読者は現実と物語を照らし合わせることでしょう。そういう点ではしっかり地に足の着いたフィクションであると言え、白けてなく、楽しく読めました。
 過去作と比べて今作はアクションシーン10割増?ネットワークを介した攻防も描かれますが、それよりも印象的なのがCITメンバー(といってもそのうちの1人の女性)のバトルシーンです。特殊兵器を使って悪者をやっつけていきます。たいへんスピード感あふれるので、読んでいてスカッとします。キリスト・ゲームの“救い主”のえげつない精神攻撃に対してズバッとバシッと立ち向かいます。ネットワーク、コンピュータというとインドアなイメージを受けますが、そういうイメージとはまったく逆を行っており、精神攻撃、肉体攻撃、コンピュータを使ったトラップが仕掛けられたかと思えば、銃火器を使用した争いがあったりと、その攻防は千差万別。エンタメとしてなかなか面白かったです。
 道中だけでもたいへん面白いのですが、クライマックスでも盛り上げくれます。ここらへんはさすが福ミス作家。読者の予想を良い意味で裏切ってくれます。“言罠”によるマインドコントロール(キリスト・ゲーム)は壮大な伏線だったのです!キリストゲームそれ自体がが結末部分を示唆し、本物語全体が次作のプロローグになるという壮大な二重の計画は島田荘司御大の『ハリウッド・サーティフィケイト』を思い浮かべました。いや、構造的には越えているかも?これは次作が楽しみ。『ハリウッド・サーティフィケイト』の続編は何年待っても出ないけど、「CIT2」は早く読めるかな?一田さん書くの速いし!

 ちなみに本書では君島くんがちらっと登場します。しかも結構重要なことやって去っていきます。『檻の中の少女』や『サイバーテロ 漂流少女』を読まれた方は本書もオススメです。




ハリウッド・サーティフィケイト (角川文庫)ハリウッド・サーティフィケイト (角川文庫)
(2003/10)
島田 荘司

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[ 2012/04/10 22:04 ] 一田和樹 | TB(0) | CM(0)

一田和樹「サイバーテロ 漂流少女」 

サイバーテロ 漂流少女サイバーテロ 漂流少女
(2012/02/16)
一田和樹

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★★★★☆

 「彼らは核兵器に匹敵する武器を手にしたんです!」。金融取引停止、大規模停電、交通マヒ…二十四時間以内に日本の“システム”が止まる。これは“子どもたち”による復讐なのか!サイバーセキュリティのプロが描く“今そこにある脅威”。


 これは良作。
 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞者の一田和樹さんによる受賞後第一作です。大賞受賞者の長編2作目は一田さんが初になるのかな。本作も受賞作に負けず劣らずの良作で、『檻の中の少女』がハードボイルドタッチだったのに対して、本作はスケールが大きいのが特徴。子供たちがインターネットを利用してテロを企て、それを大人たちネットセキュリティのプロが迎え撃ちます。二者の対決の構図がミステリとして抜群に良くて、予告どおりに核兵器級の武器に姿を豹変させる場面や、全国規模で全力で守りに入るプロ集団の姿など中盤の展開は燃えます。

 インターネットやコンピュータを使った犯人側の攻撃を防ぎつつ、人間関係を洗い出して真犯人に迫る――この人と機械といった相反する二重螺旋のバランスがたいへん良く、リーダビリティー抜群。もうページをめくる手が止まりません。人がコンピュータを使っているのか、人がコンピュータに使われているのか、という問いはよく耳にしますが、本書では終盤のどんでん返しを登場人物の人間関係に依存させており、はたと気づいたときには人の物語になっているのも面白いところ。
 専門的なネットセキュリティの話を魅力的な人間と絡めて描くのは作者の大きな武器だと思います。この方面でここまでの専門性を持った作家はいないのでは?専門的な言葉が出てくるだけでなくて、話がやたら具体的。表面的な知識ではないという証拠。といっても難しくは無いので楽しく読めます。純粋に小説として楽しめるし、こんなことも起こりうるといったシミュレーションとしても楽しめ、この読者の虚実曖昧な立ち位置も楽しい。これからもじゃんじゃん書いていって、このジャンルの第一人者になってほしいです。


 ちなみに本作は広島県福山市が舞台になっています。
 スケールの大きさ、盛り上がりの良さ、キャラクター性などから映像(もっといえば映画)化向きだと思います。
 福ミス作品の映像化は『少女たちの羅針盤』で終わりにならない、といった感じのことを聞きましたが、やるなら本作でしょう。受賞作じゃないからダメ的な?それともお金が無い的な?アニメでも良いんだけどな。広島県竹原市なんか「たまゆら」でヒットしてるんだから、それに倣って今度はアニメ化の話を福山市側から持ち掛けるとか出来ないのかしら。島田荘司御大って士郎正宗さんとパイプがあるんでしょ?アニメ化もそのあたりのコネから……(*‘ω‘ *)



解説にも書かれてますが、福山駅ホームから福山城が臨めます。目と鼻の先。
地元なんでいまいちピンと来ませんが、このような立地は珍しいって聞いたことがあります。

[ 2012/02/24 22:55 ] 一田和樹 | TB(0) | CM(0)

一田和樹「檻の中の少女」 

檻の中の少女檻の中の少女
(2011/04/22)
一田和樹

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★★☆☆☆

 「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺されたんです」 サイバーセキュリティ・コンサルタントの君島のもとへ老夫婦が依頼にやってきた。自殺したとされる息子の死の真実を知りたいのだという。息子はミトラスに多額の金を振り込んでもいたらしい。 ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。 さまざまな情報を集め、やがて君島が「真相」を解き明かし、老夫婦の依頼に応えたとき、これまで隠されてきたほんとうの真実【エピローグ】が見え始める ──


 第三回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の受賞作です。
 わが街福山市の文学賞、ということでそれだけで★5つにしようと思ったけれど、もうやめた。あまりにあれなんで。本書を宣伝して福山の知名度アップしてもいいけれど、それするとボクの本格観を疑われかねないので。本書の場合特に。福ミスって本格ミステリの賞と言っているわけだし、素直に本格ミステリを書いている作家さんがたにも失礼だと思うので。

 原書房さんのブログに掲載されている作者の言葉にもありますが、まさにその通り。作者はネット業界で仕事をされていたようで、リアリティは抜群です。ツイッターなど実際に存在するネットサービスの名前も出てきて実際に起こりえそうな事件です。というか、作者が「その気になれば実際に行えるものばかり」と言うからには実行可能なのでしょう。
 「リアルな設定と描写を心がけました。」とか「その気になれば実際に行える」とか「必要以上にリアルに書けたのではないかと自負しております。」とか、それはそれですごいことだと思うし、並みの作家では真似出来ないことだと思うけれど、本格ミステリとしては、そんな「日常的リアリティ」何の加点にもならないと思うのです。少なくともボクの「本格ものさし」にそんなバロメーターはないです。
 たとえばです、歌野晶午さんの『密室殺人ゲーム』と比べてみてください。あちらも「ネットを使っただましあい」を描いた作品です。本格ミステリ大賞の受賞作です。読まれた方なら分かると思いますが、リアリティはないと思うんです。ニコ生なんかで犯罪の生中継はごくごくたまに見かけたので、感覚的に起こりそうだなとは思うものの、設定は無理目だしトリックも無理目なものが多かったと記憶しています。しかし、謎解き、トリック、動機の意外性、そしてシリーズ第二作ではあの設定で犯人の意外性にもチャレンジしており、探偵小説としては成立しているのです。それもきわめて高いレベルで。「日常的リアリティ」なんかなくても探偵小説として本格ミステリとして成立しているのです。
 『檻の中の少女』は犯人の意外性はあるものの、論理的謎解きの果ての意外性でも、叙述トリックの結果としての意外性でもありません。書き方としては私立探偵小説(ハードボイルド)そのものだと思うのです。ハードボイルドの意匠をまとっていても本格ミステリは書けると思うけど、本作の場合は違うのです。
 地に足の着いたエンタメで、面白いのは事実。これはホントそう感じた。読みやすいし、ページをめくる手も止まりません。しかし、本格ミステリとしてどうなのか、と問われれば、ボクは絶賛はしたくない。なんか「リアリティリアリティ」言ってる作者が目指しているベクトルは、本格ミステリとは別の方向のような気がしてなりません。

 本格にこだわらなければ楽しめるし、買って損したということもないでしょう。何度も言うけど面白かった。しかし、福ミスは本格ミステリの賞なのです、本格にこだわってしまいます。
 本格観にかんしては人それぞれだと思うし、本作を本格ミステリの傑作という人もいると思います。でもボクは本格ミステリとして本作を推したくないです。
 本書を選出した島田荘司さんとサシで話し合いたい、そんな気分。今回は2作同時受賞しているだけに「他に無かったから」という理由では無いからね。

 まあとにかく、みなさんが読んで、みなさんで本格として良いのか悪いのかを判断してほしい!――というわけでこういうかたちで宣伝です。みなさん買って、福山市をもっと知ってちょ。
[ 2011/04/26 19:00 ] 一田和樹 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社
・上野東照宮
・波除稲荷神社
・富岡八幡宮

【神奈川】
・鶴岡八幡宮
・建長寺
・高徳院(鎌倉大仏殿)
・長谷寺

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・生國魂神社 干支(戌)
・生國魂神社 干支(亥)
・生國魂神社 干支(子)
・生國魂神社 干支(丑)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺
・多治速比売神社

【京都】
・鈴虫寺(その1)
・鈴虫寺(その2)
・鈴虫寺(その3)
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・清水寺(西国三十三所草創1300年記念)
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社
・梅宮大社
・錦天満宮
・藤森神社(あじさい祭り限定)
・智積院
・御香宮神社
・神護寺
・西明寺
・高山寺
・大豊神社
・三室戸寺
・吉祥院天満宮

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社
・般若寺

【和歌山】
・金剛峯寺
・金剛峯寺 六波羅蜜
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・高野山 徳川家霊台
・高野山 南院(波切不動尊)
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮
・滋賀縣護國神社

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)
・厳島神社
・大願寺
・千光寺
・艮神社

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

最新のつぶやき
2016年の水樹奈々さん
ハーイ!ハーイ! ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!