メルクマール

要領よく世の中を渡っている人はいますが、周囲からは結構、見透かされちゃうものです。くるみもそんな感じで、クラスの仲間から悪く言われることもあるようで。やっかみもあるでしょうけど。

爽子はピュアなので、そういうネガティブな面には鈍感なのだけれど、逆にポジティブな面には鋭さを見せます。くるみが語った、「こんなふうに打ち明けたの、爽子ちゃんだけなの」という言葉だけは、少なくとも真実だと悟り、その一点でも彼女とは同志だ、と考えたのですね。

同じ人を好きになって、同じ人を見てきたのだから、きっと分かり合える、という爽子の真っ直ぐな考え方は、くるみの心を動かしたでしょう。

「知ってるよ。風早が私のこと好きじゃないことくらい、知ってる。ずっと、ずっと見てきたんだから！」

めっちゃ切ない。くるみらしくない弱気な言葉ですが、これは相手が爽子だから言えたはず。くるみは爽子を同志だと認めつつあるのでしょう。

一方でこれは、「それでも私は風早が好きだから、多少のことではあきらめない」という、意思表明だとも言えます。千鶴やあやねに囲まれ、追い詰められても、一歩も引かない彼女は凛々しくさえありました。

くるみはこれから、どうするのでしょうか。「私のこと好きじゃない」が分かっていたので、告白はせず、まずは友達として接近してアピールする作戦だったはず。そこに爽子が現れたので、排除を試みたけれどうまくいかない。　彼女に残された手は多くありません。

前回の記事で、くるみはピカレスク（愛すべき悪役）だと書きました。ピカレスクの結末は、たいていは破滅です。悪いことをした報いは、受けなければならないので。くるみがいかに華麗に散るか、というドラマになるのかもしれません。

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