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公開:2020-11/14
2022-07/05 タイトル変更、全体的に加筆・修正
関連:発音 / 音変化 / ディクテーション / シャドウイング / リピーティング / ICレコーダー
今まで1万5千時間を英語に費やしてきたのですが、最も後悔していることの1つが、「学習初期からリピーティングを取り入れておけばよかった」なと。
シャドウイングはわりと初期からやっていたのですが、リピーティングは特に意識してやっていなかったんですね。僕が当時参考にした英語勉強法指南書では、リピーティングの効果がイマイチ分からなかったんです。
もし当時、リピーティングの効果がもっと分かりやすく説明されてあれば、素直に始められていたかもしれない、TOEICリスニング満点にももっと早く到達できていたかもしれないなと。そんなわけでまとめてみました(・∀・)b
リピーティングとは?
そもそも「リピーティング?何それ美味しいの?」という方もおられるかと。
リピーティングは、主にリスニングのトレーニングの1つになります。
英語の1センテンスが発話されたら、いったん音声を止めて、その聞こえてきたセンテンスを復唱します。上記動画の1分20秒からリピーティングが始まります。
また、リピーティングは、音声を止めてやるので「自分のペースで発話できる」という点ではシャドウイングよりもやさしいかもしれないですが、英文音声を記憶して言えるようにしないといけないという点では、シャドウイングよりも難しいと言えるかなと。
【参考】シャドウイングとオーバーラッピングの違い、効果的な学習方法と注意点
リピーティングの大きな2つの効果
(1) より早く音を覚えられる
2020年08月から毎朝ウォーキングしているんですが、そのときに首からぶら下げたICレコーダーを使って洋楽を歌いながら歩いているんですね(変人)。
それで、うまく歌えない箇所が見つかったら、ICレコーダーの「3秒前に戻るボタン」を使って何度か音を聞いて、その後音声を止めて、思い出してリピーティングするようにしています。
すると、「ただ何度も繰り返し歌うだけ」よりも、いったん曲を止めて、思い出してリピーティングしたほうが、音を覚えるスピード、スムーズに歌えるようになるスピードが明らかに早いなと。
脳科学者の篠原菊紀教授が、著書で「思い出す」ことの重要性について触れておられたのでご紹介しておきます。
ルール1:覚えようとするな、直後に思い出せ
「覚える」ために必要なのは、「思い出す」こと。覚えた直後に思い出すと、よりよく記憶できます。「覚える⇔覚えておく⇔思い出す」は一方通行ではなく双方向のつながり。覚えた直後に思い出すことが、このつながりを強化し長く覚えておくコツになります。(P. 12)
記憶に深く関係する海馬は、思い出したり、使ったりすると、それが自分にとって大事なことだと判断するらしく、しっかり覚えようとしてくれるのです。入力より出力。インプットよりアウトプット。(P. 15~16)
思い出すトレーニングのことを、実験心理学の世界では「検索練習(テスト効果)」というそうです。
英語の勉強を再開した頃に、1年くらいシャドウイングをやったのにあまり伸びなかった経験があるんですよ(笑)。
今から考えると、その大きな原因の1つは、闇雲に何度も繰り返していただけだったからだと気づきました。
もしそのシャドウイングの際に、聞き取れなかった箇所や、うまく発音できなかった箇所をリピーティングしていたら、リスニングの上達は早かっただろうなと。
【参考】脳科学者「思い出す&使うことで記憶は強化されるよ」
(2) スピーキングもより向上しやすい
音声を止めて、”英文スクリプトを見ずに”、リピーティングすれば、それはもう立派な「暗唱」です。「思い出して英語を発する」ということは、英語で独り言と同じです。その点でシャドウイングのみよりも、シャドウイングとリピーティング両方をやったほうがスピーキングも上達しやすいと感じています。
感情を込めてリピーティングや暗唱をし続けていれば、英会話でも出てくるようになります。
第二言語習得を研究されている廣森友人教授が著書で「Read and Look-up」の効果について説明されているんですが、これはリピーティング(Listen and Look-up)にも当てはまると考えています。
リード・アンド・ルックアップ (Read and Look-up) はテキストの英文を見て(読ん)一瞬だけ覚え、顔を上げて、今度はテキストを見ずにその英文を繰り返すとった活動である。
この活動は言語知識の自動化だけでなく、短期記憶の発達を促す効果も期待できる。(P. 42)
リピーティングのやり方
リピーティングのやり方、というよりは、リスニング全般のトレーニングの流れをまとめておきます。
Step 0: 問題を解く(TOEIC・英検)
TOEICや英検で勉強されている方は、まずは本試験さながらに、公式問題集や英検の過去問を解くことをお勧めします。なるべく本番に近い形で普段から練習しておくことで、本番で実力を発揮しやすくなります。
Step 1: ディクテーション
特にTOEICリスニング300点未満、英検2級未満の英語初心者の方は、音の連結・消失のストックがほとんどないので、まずはディクテーションをお勧めします。
ディクテーションをやることで自分が聞き取れない原因が明確になるので、ディクテをやってからシャドウイングやリピーティングをしたほうが時間対効果は確実に向上します。
【参考】聞き取れない原因が分かるディクテーション!やり方・効果
【警告】音声のスピードを落とすべし
ディクテーション・シャドウイング・リピーティングをやる際は、語学プレーヤーやICレコーダーなどで、再生速度を0.4~0.8倍速くらいに落とすことを強くお勧めします。僕がシャドウイングであまり上達しなかったもう1つの要因が、スピードを落とさずにオリジナルのスピートでいい加減にトレーニングしていたからです。
人々は正確さをおろそかにして、一時のスリルを追い求める傾向がある。
だから意識的にペースを落とすことが重要なのだ。……「(新しいスキルを身につけるときに)大切なのは、どれだけ速くできるかではなく、どれだけゆっくりと正確にできるかだ
シャドウイングもリピーティングも、まずはゆっくりと正確に発音できるようにすることが何よりも重要です。10年前に戻って、当時の僕を小一時間問い詰めたい。
【参考】科学研究「初めてやる練習は”速さ”よりも”正確さ”を重視しよう」
Step 2: 英文解釈、語彙のチェック
ディクテーションが終わったら、精読(英文解釈、語彙や発音のチェック)をしていきます。文構造や単語の意味がよく分からないままトレーニングするよりも、なるべく正確に理解した上でやったほうが効果は大きくなります。
【参考】TOEIC スコアもリスニング力も向上する勉強法 Part 3・4編
【参考】英検準1級に合格したのでリスニングの勉強法をまとめてみた
Step 3: シャドウイング(オーバーラッピング)
精読が終わったら、英文を見ずに音声に少し遅れて発話するシャドウイングに入ります。
英文スクリプトを見ずにやるシャドウイングが難しい場合は、スクリプトを見ながら同時発話するオーバーラッピングから初めても構わないです。
ただ、ずっと英文スクリプトを見ながらだと、耳から聞こえてくる音の情報よりも、目に入る文字情報に頼って音読することになるので、音を覚えるスピードは格段に遅くなります。
僕のリスニング力が伸びにくかった原因の1つがこれです。なので、口が回るようになってきたら、なるべくスクリプトを見ずに発話するシャドウイングの時間を増やしていきましょう。
また、初心者で「シャドウイングが難しすぎる」という方、オリジナルのスピードのままでやっていませんか?
僕は今でも「映画・ドラマ発音練習CD本」などの自分のレベルではちょっと速いなと感じた音声で練習するときは、0.7倍速から練習を始めます。
また、あまりにも速すぎて「ちょっと何言ってるか分かんない」という箇所は、0.5倍速まで下げることもあります。速さよりも「正確さ」!
【参考】シャドウイングで伸びないと感じる人に試して欲しい6つの処方箋
Step 4: 苦手な箇所をリピーティング
ディクテーションで”音的に”聞き取れなかった箇所や、シャドウイングでスラスラと発音できない箇所というのは、自分がまだ未習得の発音・音変化ということです。【参考】科学研究「リスニングで聞き取れない音 ≒ 自分が発音し慣れていない音」
そして最初に少し触れましたが、スラスラと言えない箇所がきたら、ICレコーダーの「3秒前に戻るボタン」を使い、何度か繰り返し聞いて音を覚えます。音声が速くてよく聞き取れない場合は、もちろん速度を落とします。
そして次に、音声を止めます。ここ重要。
そして英文スクリプトを見ずに(ここも重要)、
聞こえてきた音声を”思い出して”、その音声通りに発音します。
【補足】音的に聞き取れない vs 意味的に理解できない
また、”音的に”聞き取れなかった箇所は、そこだけリピーティング。5回連続チャレンジして、間違えたら1回目からやり直します。”意味的に”理解できなかった文は、その全文のリピーティングをお勧めします。これも5回連続チャレンジで。
そしてリピーティングの際は、会話の状況をイメージしてセンテンスを思い出して発話することで検索練習になるので長期記憶に残りやすくなります。
【参考】脳科学者「思い出す&使うことで記憶は強化されるんやで」検索練習
【補足】感情を込める
「意味的に理解できなかったフレーズや文」は、できるだけ感情を込めて、話者になったつもりで、登場人物になりきってリピーティングしましょう。感情を込めてやると記憶に残りやすくなることが脳科学の研究で分かっています。自分でもやってみると確かに印象に残りやすくなるなと。
【科学研究】リスニング・スピーキングで早く上達したいなら感情を込めてやろう
【補足】長い英文はどうする?
10語以上の長いセンテンスは、「チャンク(フレーズ)単位で分ける」か「主部と述部(動詞+目的語or補語)で分ける」ようにして、リピーティングすればOKです。ただ、もしTOEIC Part 3・4や英検リスニングで、「この会話(トーク・説明文)、何の話かサッパリ分からなかった」という場合は、未習得の発音やフレーズが大量あるということなので、コピーイング(暗唱)して丸ごとごっそり覚えたていったほうが効率的でお得ですぜ(`・ω・´)b
Step 5: スピードを少しずつ上げて練習
スロー(0.5~0.8倍速)でシャドウイングできるようになってきたら、徐々に速度を上げていきます。とは言え、僕は最初の5日間くらいはスローでトレーニングしています。上述したようにまずは”ゆっくりと正確にできる”ようにならないと正確なリスニング力が身につかないからです。
特に、英語初心者の方は、10~20日間くらいかけて徐々にスピードを上げていったほうがいいかなと。
初心者の方はオリジナルのスピードまで、TOEIC 900点や英検準1級をめざす方は、オリジナル音声よりも速い1.2倍速でできるようになるまでトレーニングすることをお勧めします。
特に最近のTOEIC公開テストのナレーターは速く話す人が多いんですよね。また、普段から高地トレーニングしておけば、本番のリスニングテストの時に余裕が生まれます(・∀・)b
【参考】[英語]音読の効果を爆上げしたいなら速さ(wpm)を意識するべし
Step 6: 3週間毎日トレーニング
僕は2~3週間くらい毎日同じ音声をトレーニングしています。一定期間やり続けることで、音が長期記憶に定着していくんですよね。心理学では「分散学習」と呼ばれています。
一気に集中して勉強するのと、勉強時間を「分散」するのとでは、覚える量は同じでも、脳にとどまる時間がずっと長くなるのだ。(P. 97)
ある研究グループは、小学校3年生に足し算を教える時間を毎日1回設けることを10日間続けるほうが、毎日2回設けて5日間続けるよりもはるかに効率的だと実証した。
別のグループは、細胞、有糸分裂、染色体といった生物の定義を中学生が学ぶ場合、1回の授業で学ぶよりも、間隔をあけて複数回に分けて学んだほうが記憶に残りやすいことを実証した。(P. 109)
何日続けるべきかは悩ましいところですが、自分の1万5千時間近く勉強してきた経験では、20日間くらいはやったほうがいいなと。
30日やってもいいですが、時間対効果はそんなに高くない気がするんですよね。
ただ、10日と20日の時間対効果の差は大きいので、20日はやったほうがいいと思います。
【参考】言語学者「勉強スケジュールは分散したほうが効果的やで」分散学習
リピーティングQ&A
「リピーティング用の教材を使うべき?」
使わなくても大丈夫です。僕は使ったことありません。そもそもリピーティング用に細切れに区切られた教材ってほとんどなさそうですしね(˜∀˜;)森沢さんのくらい?
僕は普通の公式TOEIC L&R問題集や英検過去問リスニングの音声、森田勝之先生の映画・ドラマCDなどを使っています。
ご自身の目的に合ったマテリアルを使うことが大事です。ジャンルによって学べる文法・構文・フレーズはけっこう異なるからです。
「英語で雑談やディスカッションができるようになりたい」のならNHKラジオ英会話や英検リスニングがお勧めですが、「ビジネス英会話ができるようになりたい」「英語圏に行く予定」のならTOEICリスニングのほうが実用的だと思います。
「英文スクリプトを見ながらやっちゃダメ?」
YouTubeで「リピーティング」で検索すると、たいていは英文スクリプトを見ながらリピーティングをされています。慣れるまでの最初の数回は見てもOKです。ただ、スクリプト(視覚)を介すると、我流の、間違った発音が脳内で再生されることが懸念されます。
上述したように、視覚を介さず、「聴覚のみ」が理想です。
音声を何度も聴いて、その音声を思い出して発話することで、検索練習(テスト効果)になり、音を覚えるスピードが圧倒的に早くなるからです。
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