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公開:2019-03/19
関連:検索練習 / 分散学習 / 反復練習 / 「速さ」よりも「正確さ」 - 速さ(wpm)
TOEICスコアや英語の上達速度を上げるために最も効果的な方法は、英語の勉強時間を増やすことです。
「準ネイティブレベルの英語力に到達するのに必要な勉強時間」でもお伝えしましたが、英語力が高い人ほど、英語に費やしてきた時間、毎日英語に触れている時間が多いなと。
ですが、このブログでは、
「仕事や子育てで忙しい社会人が、限られた時間でいかにして効率的に英語を身につけるか?」
「早く英語上級者にたどり着くにはどう勉強するのがいいか?」
というのも探求テーマの1つになってまして。
そこで、「もしタイムマシーンで2007年に戻って、英語の勉強を初めたばかりの自分に会ったとき、どうアドバイスするか?」と自問すると、その1つに「音読の速さ(wpm)を意識すべし」を、是が非でも伝えたいなと。
なぜ速さ(wpm)の意識が大切なのか?
「wpm」とは何か?
まず「wpmって何やねん?」という方のために説明しておきますと、「Word Per Minute」の略で、1分間にいくつの単語を読める(話す)のかという速さの単位です。英会話(特に仕事)ではスピードが重要
普段、英会話をしている方は実感されていると思いますが、英会話ではレスポンスが重要ですよね。
質問されたり、相手の話に対して即座に応答する必要があります。
外国人相手に仕事をしていると、パッと答えられないと仕事にならないはずです。しかもネイティブの場合、議論中はかなり早口で話してきます。
2018年からMeetupを利用して、ネイティブが参加するイベントやパーティに行くようになりましたが、最初の頃は見事に撃沈していました(笑)
1対1であれば、聞き取れなかったとしても
もう一回言ってもらえる「Sorry?」「Could you say that again, please?」
ゆっくり話してもらう「Could you speak more slowly?」
といった時空魔法が使えるので、まだ何とかなるんですよ。
ですが、ネイティブ率の高いグループだと、会話の速度が"光速"になり、しかも自分だけが聞き取れていないとなると、例の時空魔法も使いづらいんですよね。
ネイティブ同士の会話は、速さや音のくずれ具合など、場合によっては、洋画やドラマよりも難しいかもしれないなと。
応用言語学者の白井恭弘教授も、著書でスピードの重要性について触れておられました。
実際に英語が使えない理由に、スピードの問題があります。
これは英語を聞くときでも、話すときでも、(また読むときでも、書くときにもある程度は)当てはまりますが、どんどん流れてくる単語の群れを即座に意味と結びつけて理解すること、自分の言いたいことをすぐに英語の単語にして組み合わせて話すこと、これはかなりの訓練を必要とします。
ですから、実際に聞けるようになる、話せるようになるには、それに対応できるスピードをつける必要があります。(P. 21)
では、実際にどれくらいのスピードを目標にすべきなのか。
300 wpmを聞き取れるようにする
Thomas Frankさんは、ネイティブの中でも早口で話すYouTuberだと思います。
この動画の長さは7分47秒で、語数を数えてみたら1847 wordsだったので、平均238 wpmということになります。途中、無音部分やゆっくり話している箇所も考慮すると、300 wpmくらいの速さの箇所もあると推測しています。
多くの洋画やドラマも、早口の人はThomas Frankさんくらいの速さです。
つまり、英語上級者をめざすのであれば、300 wpmくらいのスピードの英語を聞き取れるようにする必要があるなと。
まずは「200 wpmで音読できる」をめざす
ですが実際は、
(1) 150~200 wpmくらいで音読できるものが増やす
(2) 洋画・ドラマ・ネイティブYouTuberの動画などの生の素材で精聴と多聴
を続けていれば、聞き取るスピードは自然と上がってくると感じています。
僕の音読速度は150~200 wpmくらいですが、Netflixで「Friends」を見ていても、250~300 wpmでも聞き取れるものが少しずつ増えてきているんですよね。
音読速度と英語力は比例する説
もちろん、300 wpmを聞き取れるようにするのは一朝一夕にはいきません。歳月がかかります。英語に1万時間費やしてきましたが、300 wpmで聞き取れる割合はそう多くないです。それでも、普段から速さを意識して音読しているかどうかで、300 wpmが聞き取れるようになるまでの期間は大きく変わってくるのではないかと推測しています。
僕が「音読の速さ」を意識するようになったのは、2016年に『公式TOEIC L&R問題集』での速音読トレーニングをやるようになってからなんですよね。わりと最近。
特に、同時通訳者の横山カズさんの著書を読んで、やはり自分の音読の速さを上げることは大事だと確信しました。
ここ最近の私のタイムアタック音読は、1分あたり300~360語くらいです(P.81)
パワー音読では、スピードを強調したい。話すスピードが速ければ、ほかのすべての技能に余裕が生まれるからです。(P.96)
このカズさんが仰る「話すスピードが速ければ、ほかのすべての技能に余裕が生まれる」というのは、
というメカニズムではないかと経験上感じています。
「速く音読すること」の効果は、まず単純に口が速く回るようになることです。口が英文の形を覚えてしまうので、いざ「これを言おう」と思ったときに、スピーディーに英文が口から出てくるのです。
速く言えることはゆっくり言うこともできますから、限界速度で口を回せるようにしておくと、話すときにも余裕が生まれます。(P. 49)
これホントにそうだなと。
2015~2016年頃と比べると、自分がよく話すトピックは、けっこう余裕を持って話せるようになったと感じています。
英文をスラスラと音読できないレベルだと、脳内で英文を組み立てる作業だけでなく、英語を口で発話する作業にも脳のリソースをかなり消費するのではないかと。
ですが、
→ 脳の処理リソースに余裕が生まれてくる
→ そのリソースを他の処理にまわせる
→ 疲れることなく余裕を持って話せるようになってくる
ということかなと。
2013年に英会話を初めた頃は、25分のレッスン後ですらけっこう疲れていましたが、最近は50分話しても疲れなくなり、むしろ物足りないくらいになってきました。
【参考】オンライン英会話を1000回受けたので効果と注意点をまとめてみた
普段から「150~200wpmで言えるまで」を実践していると、当然ですが、英会話中のスピーキングも早くなってきます。
→ オンライン英会話1レッスン当たりのスピーキング量が増える
→ 会話のキャッチボール回数が増える
→ 25分でより充実した会話ができるようになる
→ 英語を話すことがより楽しくなる!
言うまでもなく、150~200 wpmで音読できる英文が増えてくる → 読むスピードも上がってくることになります。
また、150~200 wpmの速さの音声をスラスラとシャドウイングできるものが増えてくると、リスニング力も上がってきます。
僕がこのスピードを意識することの大切さに気づいたのは、2016年頃からなので、もっと早く気づいていれば……と悔やまれます…orz
音読の速さ(wpm)の目安
参考までに、100~250 wpmでの話す速さの目安になりそうな動画を見つけてきました。
ただ、話す速さを100%正確に測るというのは、実際はかなり難しいです。息継ぎや思考中など何も話さない時間がありますし、ゆっくり話すときもあれば速く話すときもあるからでです。
なので「だいたいこれくらいの速さ」というのが分かればいいかなと。
初心者 → 100 wpm
「学生時代、英語が苦手だった」「数十年ぶりに英語を勉強する」「現在TOEIC 600点未満」という方。英語の発音や音の連結・消失のストックがほぼゼロなので、まず100 wpmで、音声通りに丁寧に音読できるようになるまで反復するようにして下さい。
次の動画の先生の音読は、0分17秒から100 wpmでの読み上げが始まります。2分32秒から110 wpm、4分47秒から120 wpm。
次の方は、100 wpmを強く意識しておられせいか、読み上げ方はちょっとナチュラルではないですが参考にはなるかと。
また、「VOA Learning English」の各記事の冒頭にある「Direct Link」からダウンロードできるMP3音声が100 wpmくらいと言われています。
試しに「Fasting May Help Your Brain」にある音声を聞いてみて下さい。
実際に数えて計算してみたのですが、平均は80wpmくらいだったりします。ただ、VOAは空白の時間がわりと長いので、それを考慮すると100 wpmくらいになるのかなと。
初級者 → 150 wpm
「学生時代はそこそこ勉強していた」「現在TOEIC 600~900点未満」「現在英検準2級~2級」の方は、150 wpmを意識して下さい。英検界のカリスマである植田 一三先生の著書より。
150 wpm→英検準1級に合格するのに最低必要なスピード。
200 wpm→TOEIC 950点突破や英検1級に合格を狙うのに必要なスピード。(P.170)
次の動画は先程の女性の160 wpmバージョン。150 wpmのがなかったのでこれで勘弁して下せい、お代官様。
先程のお姉さんの140 wpmバージョンです。
また、
のPart 1がだいたい150 wpmくらいのスピードだと思います。Part 2~Part 4は主に150~200 wpmくらいかなと。
ちなみに、実際の公開テストでは、例のオーストラリア人とかが、200 wpm以上のすごい早口で話すフォームに当たるときもあります。
なので、リスニングで450~満点をめざすのであれば、SONYのMP3ウォークマンなどで1.2~1.5倍速で速聴して速さに慣れておくことをお勧めします。
あと、『公式TOEIC L&R問題集』をお持ちではない方は、公式サイトのサンプル問題でも聴けますよ。
中級者 → 200 wpm
TOEIC 900点を超えてきたり、英検準1級に合格したら、普段何か音読で反復しているものは200 wpmで音読できるまで反復することをお勧めします。僕はAnki瞬間英作文のときに、なるべく200 wpmで言えるまでやるようにしています。忘れがちですが(笑)
先程のお姉さんの200 wpmバージョンです。ちょっと気持ち遅いような気もします。
次の動画でSharlaさんが最初の1分間のうちのに話した単語数を数えたら、192 wordsでした。
平均速度は192 wpmということになりますが、実際には空白の部分やゆっくり話している箇所もあるので、200 wpmを超えている箇所は多いと思います。
上級者 → 250 wpm
参考までに250 wpmも貼っておきます。Ellenさんが、1分12秒~1分21秒(9秒間)に発した単語数は38 words。つまり、38÷9×60になるので、速さは253 wpmになります。
この動画では、Guraが32秒~37秒(6秒間)に発した単語数は27 words。27÷6×60なので、速さは270 wpmになります。めっちゃ速い。
超上級者? → 300 wpm以上
Hololive ENのAmeの配信で、300 wpmを超えている箇所があったので参考までに貼っておきます。01時間01分20秒からの13秒間です。13秒間で82語なので、82÷13×60=378 wpmの速さ!こんなん絶対シャドウイングでけへんわ。
速さ(wpm)や音読秒数を求める式
単語数と速さが分かれば、そのスピーカーの話すスピードを求めることができます。
速さ(wpm)の求め方
ある英文の語数がN語あり、それを読むのにかかった秒数がS秒だとすると、読む速さW(wpm)は次の式で導けます。もし英文の語数が270語で、音読に180秒かかったとしたら、
270 ÷ 180 × 60 = 90
なので、読む速さは90 wpmだったことになります。
音読秒数の求め方
英文の全語数Nが分かっていて、特定の速さW(wpm)で読めるようにしたい場合、音読秒数Sは次の式で求められます。例えば英文の語数が180語で、200wpmで読めるようにしたい場合は、
180 ÷ 200 x 60 = 54
なので、54秒で読めば、その英文は200 wpmで読めることになります。
TOEICのリーディングパートで最後まで解けないという方は、公式問題集(青)のTest 1のリーディングパートの全英文の語数を数えたので、ぜひ速音読トレーニングに挑戦してみて下さい。
【参考】速音読トレーニングの効果・やり方
【参考】TOEIC リーディングで時間が足りない!対策と勉強法 Part 5・6編 / Part 7編
注意点
最初はゆっくりと正確に音読
最初は丁寧にゆっくりと正確にやるようにして下さい。「脳は形跡を残すのが得意だ」とUCLAの神経学者ジョージ・バートゾキス博士は語る。「しかし、形跡を消すのはそんなに得意ではない」
ハードスキル(正確に繰り返すスキル)を学ぶときは、正確に測定しながらゆっくりおこなおう。1回にひとつの単純な動作をおこない、繰り返しによって完璧に仕上げてから次に進もう。
とくに最初はミスを発見し、修正することを心がけよう。(P. 43)
最初から速さを意識すると、いい加減な発音が身についてしまう危険性が高いです。
いい加減な発音だと相手に通じません。しかも、一度身についてしまった発音は矯正するのはすごく困難です(ノД`)←経験者は語る
【参考】科学研究「初めてやる練習は”速さ”よりも”正確さ”を重視しよう」 |
上級者をめざす→発音練習は必須
日本人的な発音でも、150 wpmくらいまでは何とかなると思いますが、200 wpm辺りになると厳しいと思うんですよ。
発音以上に、音の連結・消失が特に。
よしんば200 wpmで音読できたとしても、果たしてその発音はネイティブ相手に通じるのかどうか。
個人的には、話す中身のほうがはるかに大事と考えていますが、ネイティブによっては、こちらの英語がよく聞き取れなかったときに、「I don't understand you.」と平気で言ってきます。例えばこんな感じ。
Trump tells a Japanese reporter "say hello to Shinzo," then continues the snarks with: "I'm sure he's happy about tariffs on his cars." He then tells the reporter, who has an accent, "I can't understand you."
— Amee Vanderpool (@girlsreallyrule) 2018年11月7日
I had to close my eyes for 10 seconds with a deep sigh on this one. pic.twitter.com/6rYdcPy0Gh
日本人アクセントが強すぎると、このように相手に聞き返されることが多く、こちらも聞き間違えることも多く、自分にとっても相手にとってもムダな時間が多くなると感じています。
最終的にネイティブともスムーズにやりとりできるスピーキング力を身に着けたいのであれば、完璧はめざさなくてもいいので、ある程度の発音練習はやっておくのは、おもてなしだと思うようになってきました。僕もエラソーなことは言えないので頑張ります(^_^ゞ
【参考】やらない人は損してる!発音を学ぶことで得られる4つの効果
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