多聴多読を200万語やったので効果をまとめてみた

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対象:TOEIC 800点・英検準1級~  
読了:約11分(6448字) 
公開:2018-03/30 
更新:2018-08/24 タイトル変更 
関連:多聴多読 - 効果 - 注意点 - NHK WORLD TV - ニュース&読み物サイト

英語「超」上級者は例外なく多読していた件」でお伝えしたように、英語上級者をめざすのであれば、多聴多読は必須だなと。

ですが、「多聴多読を200万語やったので注意点をまとめてみた」でもお伝えしたように、初級者にはお勧めではありません。

多聴多読の効果は、英語力に比例すると感じています。鬼の「金棒」みたいな。

とは言え、数千万語の多聴多読をされている方々からすると、僕のレベルはまだまだ下っ端です。アリアハンを抜けて、ようやくロマリアに着いた感じ?

多聴多読だけだと275万語。TOEICや英検で勉強したものを含めると、トータルで341万語になります。

そんなわけで、多聴多読の主な効果と、第二言語習得関連の本から学んだことも踏まえてまとめてみました。
 

多聴多読 5つの効果

(1) 語彙を定着・維持できる

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ある程度英語力が身についてくると、語彙というのは「いかにして覚えるか?」よりも「いかにして忘れずに維持できるか?」が重要になってきますよね。

そこで「市販の単語集をやりまくる」という選択肢もあるのですが、僕はどうも合わないんです。

ただ、ネイティブ並みの語彙力をお持ちのyukoさん、英語好きさん、Siobhanさんはオリジナルの単語リストは作っても、市販の単語集を使った勉強は特にされていないようなので、僕もこのままいこうと思っています。

【参考】準ネイティブレベルへの到達には数千万語の多聴多読が必要かも


先日、第二言語習得について調べていたら、英検のサイトで興味深い研究結果を見つけました。


ある語が定着するのに5~16回あまり間隔を空けずに出会わなければならないが(Nation, 1990),教科書の中で1度出てきた語と再び出会う率が低いので(Schmitt, 2000),教科書以外の教材を使った流暢さのトレーニングで量を稼ぐことが重要となる。

量を保証することにより知識が定着し,さらにそれが自動化した技能として習得されれば,日本語を介さずに英語をそのまま使うことができるようになる。(P. 186)

【出典】第二言語習得を加速させる流暢さのトレーニング(PDF)


「ある語が定着するのに5~16回あまり間隔を空けずに出会わなければならない」というのが非常に重要だと感じています。

英語の勉強をしていると、「あ、この単語、最近あのテキストで出会ったヤツだ!」みたいなデジャブを味わうときがあるじゃないですか?

多聴多読をしていると、単純に1日に出会う単語数が増えるので、1日に何度もそのデジャブを味わえるようになります。

つまり、精聴精読のみのときと比べると、多聴多読をやることで、1日に出会う語彙量が大幅に増える → 語彙の定着速度が向上するというわけです。

例えば、2016年頃から「天皇陛下の生前退位」に関する英語ニュースをよく見かけたので、英検1級レベルの語彙である「abdicate」は自然と覚えてきました。


意味のない学習をより意味のあるものにする方法はいくつもあります。

……単語を、文脈の中で覚えるようにするのも、そのひとつです。この場合も、知らない単語以外のコンテクストがサポートとなり、単語の意味がある程度推測できるので、その単語の意味を思い出しやすくなります。(P. 171)




【注意】多読では未知語は身につくい

上述したように、「すでに知っている単語」や「うろ覚え状態の単語」については、多聴多読でより深く定着していくと感じています。

ですが、「未知語」については多読では身につきにくいようです。


新しい語を獲得する方法としては,多読は非常に効率が悪いことがわかってきている(Hill & Laufer, 2003; Waring, 2003b)。

多読の語彙習得への効果はむしろ,知っている語を確認したり,コロケ ーションなどの語の知識を深めたり,未知語を推測する力をつけさせたりすることに期待したほうがよさそうである。(P. 187)

【出典】第二言語習得を加速させる流暢さのトレーニング


実際、114万語読んでみた感じでは、「多読"のみ"」で未知語が身についている感覚は薄いんですよね。

他の勉強で学んだ単語が、多読中にも出てきて定着していく」というのは感じていますが、自分の経験でも「多読"のみ"」では語彙は増えにくいと感じています。


(2) 連語力が向上する


連語(コロケーション)というのは、複数の単語からなるが、まとまった形で単語と同様に用いられる言語表現(Wikipedia)のことです。

コーパス言語学的には、「Thank you.」「as a kid(子供の頃)」「if I'm not mistaken(私の間違いでなければ)」もコロケーションと言えるかもしれません。

そして、1個1個の「単語単位」で処理するよりも、この「コロケーション単位」で聞き取れる&読めるものが増えるほど、より速い英語が聞き取れるようになり、より速く読めるようになります。この場合、「チャンク単位」とも言えますね。


やさしい英語を読んで「連語力」をつける

新しい単語を覚えていくことだけが、語彙の学習ではありません。簡単な単語を組み合わせて、さまざまな表現ができるようになったり、単語を自然な順序で組み合わせられるようになったりすることも、英語学習において非常に重要なことです。

ですから、たとえ、すべて知ってる単語だけで書かれた本を読んだとしても、得られるものはあるのです。

……多読によって、このような自然な単語の組み合わせの知識が増えてきます。

そして、このような単語の組み合わせの知識=「連語力」がついてくると、文章を読むときでも、聴くときでも、次に出てくる単語や表現を、いくつかまのまとまりで予測しながら読む・聴くことができるようになり、より速く読めたり、より楽に聴けたりするようになるのです。(P. 71~72)




2017年から、比較的やさしい英語で構成された「英語ニュース&読み物サイト」での多読を始めて、114万語読んできました。

最近感じるのは、知ってる単語のみで構成された英文やコロケーションであっても、自分が今までに出会ったことがないパターンだとスラスラと読めないということです。

今の僕は、TOEICのリーディングパートは450点前後ですが、英語ニュース&読み物サイトの英文を読むスピードは、TOEICの英文を読むスピードよりも遅いです。

結局、英語ニュース&読み物サイトのトピックの範囲はTOEICよりも非常に広い = コロケーションの種類も非常に多いんだなと。だから、114万語読んだと言っても全然少ないんですよね。


(3) 処理速度が向上する

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当然ですが、連語(コロケーション)の処理速度が向上すると、当然ながら、聞き取るスピードと読むスピードも上がってきます

ネイティブの速い英語にもついていけるようになったり、TOEICだと聞きながら設問・選択肢に目を通すことができるようになったり、最後まで解けるようになってきます。


今の僕のリーディング力だと、「英語ニュース&読み物サイト」を読んでも、TOEICのリーディングパートへの効果は薄いと感じていますが、アカデミックな英文やニュースは読みやすくなってきつつあります。

このことから、読むジャンルによって身につく英語力は異なることが分かります。

トータル114万語でなので、目標の1000万語にはまだまだですが、このまま読む量を増やしていけば、より速く読めるようになる感じはしています。

少しでも上達を感じられる → 続けられる → 継続は力なり。

【参考】英語「超」上級者は例外なく多読していた件


【注意】「多聴多読だけ」で伸びるのは上級者


安河内哲也先生が「初級者はとにかく「精聴」、次に「多聴」」と仰ってますが、僕も同じように感じています。


北米ネイティブのAdamさんとMJさんの生の会話が楽しいポッドキャスト「Speak UP Radio」で多聴するようになって3ヶ月が経ちました。

最初の頃に比べると、聞き取るスピードは向上し、聞き取れる割合も増えてきましたが、このまま今まで通り「毎日ただ聴くだけ」では大幅に伸びない気がしています。

【参考】英語 リスニングが上達しない人によくある4パターンと改善策


多聴は、うろ覚えの語彙の処理速度や定着度を上げてくれるため、英語を英語のままで聞き取るリスニング力が向上します。

ですが、多聴のみで精聴していないと、自分が聞き取れない発音や音の変化は、ほぼ聞き取れないまま残るんですよね。

また、「NHK WORLD TV」での多聴は、映像がある = 未知語の理解を助けてくれるのである程度身につきますが、Speak UP Radioのようなポッドキャストの多聴は、未知語は獲得しにくいと感じています。


精読と多読についても似たようなことが言えます。

多聴多読中心で、TOEIC 980点を取った神戸の中1の女の子のニュースがありました。辞書は一切引かないそうです。


英語との出合いは3歳のころ。語学が好きな母親の純子さんに外国人が英語で保育をする教室に連れていってもらった。簡単な幼児レベルの英語はここで覚えた

……教室をやめてからも、忘れないようにとインターネット電話「スカイプ」で1日25分、フィリピン人の先生相手に英語を習い、聞く力も鍛えた

 英語の絵本にも夢中になり、初めは読み聞かせをしてもらっていたが、すぐに絵本は卒業し、小説にのめり込んでいった。自宅の本棚には「ハリーポッター」や「ウォリアーズ」など愛読書がずらりと並ぶ。


この子のように、

(1) 幼児レベルの簡単な英語で会話ができる(英語のままで理解できる)環境がある
(2) 絵本や児童書が楽しめる

のであれば、精聴精読はやらなくても、少しずつ語彙レベルを上げていく多聴多読で伸ばせると思います。

ですが、(1)のような環境を作れる大人はほとんどいないだろうなと。アメリカの小さい子がいる家庭にホームステイできたらいいのになーって強く思うんですけどね。

また、「なぜ2歳児は過去形が使えるのか?英語学習は「視覚」が大事」で触れましたが、絵を使ったほうが早く覚えられます。なので、絵本が楽しめる人はラッキー。

僕も数冊買って読んでみましたが、絵本は楽しめませんでした…orz
児童書も、語彙レベルが低いものは非常に読みやすいのですが楽しめず、ハリー・ポッターは面白いのですが難し過ぎて断念しました(笑)

大人で絵本や初級者向けの児童書を楽しんで読み続けられる人はそう多くはない気がしています。

絵本や児童書が楽しめない方は、TOEICや英検などを使って精読から入り、TOEIC 900点・準1級くらいになってから、多読の割合を増やしていくほうが再現性が高い(誰がやってもうまくいく確率が高い)と考えています。

【参考】多聴多読を200万語やったので注意点をまとめてみた


(4) 多聴はアクティブ語彙を増やしやすいかも

リスニングやリーディングでは理解できるけど、スピーキングやライティングでは使えていない語彙をパッシブ語彙、スピーキングやライティングでも使える語彙をアクティブ語彙と言います。

パッシブ語彙は「受動語彙・認識語彙」、アクティブ語彙は「能動語彙・運用語彙」と表現されることもあります。


「多読」においては、アクティブ語彙が増えている気があんまりしないのですが、「多聴」では増えている感覚があります。

最近は、

Speak UP Radio
NHK WORLD TV
Netflix

を中心に視聴しています。

自分がすでに聞き取れる単語やフレーズ(=パッシブ語彙)に関しては、異なる場面・シーンを通して何度も聴く機会があると、「なるほど、このフレーズはこういったシチュエーションで使うのか」みたいな感じで自動的に身についてくる(=アクティブ語彙化する)感覚があります。

【参考】なぜ2歳児は過去形が使えるのか?英語学習は「視覚」が大事


その結果、【 オンライン英会話 】でそういったシチュエーションになったときに自動的に出てくる(アクティブ化する)んですよね。


「第二言語習得(SLA」の分野では、聞くこと(インプット)が不可欠である、ということに異論をはさむ研究者はいません。

子供の母語の習得でも、まず、聞くことから始まります。そしてしばらく聞くことによって頭の中に言語の知識を蓄積していって、徐々に話すようになるのが普通です。

子供は、話し始める前から、すでにたくさんの言語知識がある、ということもわかっています。……聞くことによって、話すために必要な言語知識が身につく、ということです。(P. 18~19)



(カリフォルニア、1960年代)当時のスペイン語学習に関する例をあげれば、授業の70パーセントは聞く活動、20パーセントは話す活動、読み書きは10%にすぎなかったにもかかわらず、聞く、読む能力は口頭練習を中心としてオーディオリンガル教授法で学習した学生の三倍のスピードで習得され、話す力、書く力も劣らない、という結果が出ています。

つまり、リスニング能力が他の三技能(話す、読む、書く)にも転移する、ということが示されたわけです。




ただ、「多聴を通してアクティブ語彙を増やす」という方法は、かなり時間がかかると感じています。1日に2~3時間多聴できるならいいですが、僕みたいに1時間程度だと、少~しずつしか増えていかないんですよね。

アクティブ語彙を積極的に増やす方法については、次の記事にまとめてあるのでぜひ(・∀・)b

【参考】スピーキングが上達する!アクティブ語彙(運用語彙)の増やし方


(5) ライティング向上に効果

アウトプットという意味では、ライティングとスピーキングは同じです。ですから、基本的には「インプット理解により、ライティング力は身につく」と考えていいでしょう。

話すことができれば、書くこともできます。まずは話すように書けばいいのです。つまり言文一致ということです。

ただ、話し言葉と書き言葉の違いもあるので、ライティング力を伸ばすには、多読が有効です。自分が書きたいジャンルのものをたくさん読む。たとえば、英語の論文が書きたければ、たくさん英語論文を読む。

書かれたものというのは、個々のジャンルによって、わりと決まったスタイル(文体)があり、よく使う表現も決まっています。(P.171~172)



最初の300万語を読むくらいまでは、ただ漫然と読み進めるのではなく、きちんとした記録をとって、自分が今どの位置にいるのか、確認しながら読み進めることが重要です。

なお300万語を超えてから、語数やレベルはあまり気にする必要はありません。(P. 135~136)

ゼロから始めても、理解度7~9割で300万語の多読をすれば、基本語2000語が自在に使えるようになります。(P. 158)




ただ、114万語読んだものの、まだあまり効果を感じておらず、これが300万語になってもたいして変わらない気がしています(笑)

少なくとも、「多読のみ」ではライティングはほとんど伸びないだろうなと。

もし「多読のみ」でライティングが伸びるのであれば、多解き(≒多読)するだけのTOEICkerでもライティングができるようになるはずです。

でも実際はそれはちょっと考えにくいなと。

普段からスピーキングやライティングなどのアウトプットをやっていれば、多読することで「あ、なるほど、こういう風に表現する方法があるのか」という気づきは得られます。

ですが、早急にライティング力を伸ばしたいのであれば、そのジャンルの英文を読みつつ、実際に書いていくことだと思います。

仕事で英語を使う人なら、TOEICのPart 7の英文を参考にして書くとか。


というわけで、多聴多読の効果についてまとめてみました。今後300万語、500万語に到達したら、再度更新する予定です。




 
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