うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

私の鏡台

2017å¹´04月02æ—¥ | çœŸé¢ç›®ãªæ—¥è¨˜

最近、私が仕事から帰ると、

我が家のおじさんは、決まって猫達の様子を報告してくる。

 

「あやはね、もう4時くらいから、鳴き出すんだよ」

そうかそうか、食いしん坊だもんね。

 

「よねちゃんっったらね、あなたが帰ってくる足音で起きるんだよ」

寝てばっかりと思いきや、案外やるわね。

 

「それより、きくさんが、凄いんだよ。

あなたが帰ってくる、ずっと前から待ってるんだよ」

そうか・・・

 

おはようございます。

私の持ち物の中で、最も長く付き合ってきたのは、

3面鏡の鏡台だ。

二十歳の頃、母が持たせてくれた嫁入り道具だ。

当時、名古屋の嫁入りは派手な事で有名だった。

それを知っていた母は、娘が肩身の狭い思いをせぬようにと、

目一杯張り込んで、たくさんの道具を持たせてくれた。

 

あの日以来、私は毎日、鏡台の前に座り、

自分の顔を映していた。

寝起きの顔や、格好をつけた顔、

時には、ぶつくさ文句を言う顔や、

子供のように泣きじゃくる顔も、

鏡台の鏡は、ただありのままを映していた。

 

しばらく時が経ち、その鏡に映るのは、私だけでは無くなった。

ある日、一見大人しそうな長毛の猫が、我が家にやってきて、

あっという間に、鏡台の椅子の張り布をボロボロにした。

そんな時、鏡台の鏡は、

真剣な面持ちで爪とぎに励む猫を映していた。

 

3年程経ち、今度は恐ろしい黒い悪魔が、我が家にやってきた。

壁をバリバリ登るその様は、まるでゴキブリだったが、

実態は猫だ。

暴れ回る猫は、1年後、嘘のように大人しい猫に変身したが、

そんな時、鏡台の鏡は、

たった1年で魔物が荒れ狂った後のようになった無残な壁を

3面を生かして四方八方、映していた。

 

その数年後、私は鏡台の前に座り、母さんに電話をかけた。

「母さん、私ギブアップです。

離婚します。そっちに帰っていい?」と。

すると母さんは、

「いやっほれ、お前はもう少し、名古屋で部屋探して頑張れ。

今、こっちに帰って来ても、世間体がアレやから」

と、口を滑らせた。

母さん?もう少し、気の利いた断り方ってないの?

と、呆気にとられた。

そんな時、寝台の鏡は、

ハトが豆鉄砲を食らって、その豆が鼻の穴に詰まっちゃったような、

そんな私の顔を映していた。

 

その頃には、もう1匹猫が増えていて、

ついに満を持して、猫3匹と引っ越した。

物は何も持たず出たかったが、なぜか重くて大きな鏡台だけは、

置いてはいけなかった。

そんな時、アレを紐でくくり背負って、街を歩いていた私は、

このご時世だったら、誰かにスマホで写されていたかもしれない。

 

あの後、もう1匹増えて、もう1度、引っ越しをした訳だが、

さすがに鏡台を背負って歩ける距離ではなかったから、

鏡台は引っ越し屋のトラックの荷台に、

私と猫達は、手伝いに来てくれた姉の自動車に揺られながら旅をした。

出発してすぐ、喘息もちの姉が咳き込み始めた。

と同時に、最年長の猫が乗り物酔いでゲーゲー吐き始め、

酷く咳き込んでいようと、そこはさすがの、プロ姉ちゃんだ。

ドライビングテクニックが衰える事はなく、

引っ越し屋のトラックを図らずも巻いてしまった。

私は、助手席で、

「姉ちゃん、死なないで!うめさん、頑張って!

引っ越し屋さんは、どこなのー?」と、叫びっぱなしだった。

そんな時、もし鏡台の鏡で映してみたら、

さぞや必死な顔が見られた事だろう。

 

こうして、この家に住むようになり、猫が2匹増え、

鏡台の鏡に映る顔は、

また増えたり、時には減ったりと、

我が家のありのままを映し続けてきた。

 

そして今、鏡台の鏡は、

鏡台の前に座り、窓の外に私の姿が見えるまで

じっと待ち続ける、

きくの横顔を、毎日映している。

 

おおよそ4月生まれが多い、我が家の猫達、

推定年齢が、1つ上がりました。

きく、15歳。