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JUDY AND MARYのベスト・ソング30

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JUDY AND MARY(以下、ジュディマリ)が東京ドームで解散ライブ2Daysを行い、その最終日である2001年3月8日をもって約8年に及ぶ活動に終止符を打ってから20年の歳月が経った。今回は、今なお色褪せない名曲たちを独自基準(つまり個人的な好み)によるランキング形式で振り返り、あらためてジュディマリの何が素晴らしかったかを考えてみたいと思う。





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ところで、いろんなメディアで「再結成してほしいバンド」といったアンケートがたまに行われるが、ジュディマリはだいたいいつも上位にランクインされる。が、自分にとっては「絶対に再結成してほしくないバンド」だ。それはYUKIをはじめ各メンバーがそれぞれのキャリアを着実に築いていることはもちろんだが、ジュディマリが「時代に愛されたバンド」だと思うから。


言うまでもなく、ジュディマリの楽曲は非常にメロディアスで親しみやすく、ポップとロックのちょうどいいところを取った普遍的なバンド・サウンドで、今聴いても古さは感じられない。しかし当時の日本の音楽の流行だったり、カラオケ文化や音楽番組やCD産業、「ロリータ」や「パンク」に代表されるファッション・カルチャー、さらには女性のもつアイデンティティの変化など、あの90年代半ば~2000年代前半だったからこそ最大限に輝くことができたと言えるのではないだろうか。逆に言えば、そういったムーブメントやカルチャーや価値観が2000年代に入り変化してきたからこそ、2001年というタイミングでのジュディマリの解散は必然だった、とまで思えるのだ。


彼らがデビューした1993年頃はバンド・ブームが落ち着いてきた頃であったが、ネオアコやヒップホップ、R&Bなど洋楽由来のサウンドを取り入れたいわゆる渋谷系が隆盛するなか、ジュディマリがRamonesやSex Pistolsのようなコテコテのパンク・マナーにREBECCAやGO-BANG'S、Jitterin' Jinnといった80年代バンド・ブームの中で登場した女性ボーカルバンドの方法論を取り入れたのは、ある意味オールド・スクール的とも言えた。


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▲インディーズ・デビューアルバム『BE AMBITIOUS』のジャケット。後に「JUDY IS A T∀NK GIRL」となる「JUDY IS A PUNK ROCKER」なんて、タイトルから曲調からモロにRamonesオマージュ


しかし、歌詞に頻出する「あたし~だわ」「~のよ」に象徴されるように、「気が強いお転婆娘」をカリカチュアしたイメージ戦略はどこか新しかった。なぜなら、破れたストッキングを履き、意図的にパンチラをし、真っ赤なリップでウィンクしてみせるYUKIの奔放な姿は、"自由"そのものに映ったからだ。女性アーティストが「おしとやかさ」「清純さ」を求められた前時代の反動で「力強さ」を見せるようになったのは、男性中心主義へのアンチからであった。しかしYUKIは、「男に対抗すること」ではなく、ただ純粋に「自分らしくあること」「自分をさらけ出すこと」を表現した。「女であり過ぎること」を恐れず、むしろそれを逆手に取ったのだ。


このキャラクターが多くの共感を生み、彼らの「個性」になるとともに「わかりやすさ」や「親しみやすさ」の源にもなった。煽情的なキャラクターの女性シンガーは以前からも存在はしていたが、YUKI以上に「女性にとってのファッション・アイコン」と「男性にとっての憧れ(いわゆる「かわいい」と思うこと)の対象」を両立できた女性アーティストは、当時ほかに存在しなかったと思う。


彼らは「パンク」をルーツのひとつに持っているし、曲によってはかなりノイジーな部分もある(さらっと聴く分にはそれをあまり感じさせないポップさもまた凄いのだが)ので、必ずしも当時の40代や50代など幅広い世代に受け入れられたわけではないだろう。しかし、「もっと刺激的なものが聴きたい、でもまだ難しい音楽はよくわからない」という中高生には刺さりまくった。だからこそ、ジュディマリが存在していた時代に中学生から大学生までを過ごした自分にとっては「青春のバンド」であるし、自分と同世代のキッズたちは男女問わず夢中になった。髪を金髪にして尖らせたり、赤いメッシュを入れたり、スタッズの付いたリストバンドを付けたり、ジョージ・コックスの白いラバーソールを履いたり、MILK BOYの軍服ジャケットを羽織ったり、うるさい音楽を聴いたり。これらは「世間一般の良識あるオトナたち」からは険しい顔をされるものだったが、そういったオトナへのささやかな反発と、ジュディマリに夢中になったことは決して無関係ではない。──「オトナにはこれの良さがわからないでしょう?だってこれは私たちキッズの特権なのだから」。


そんなバンドが解散から20年以上経て再結成したとしても、「特別なもの」はもう生まれないだろう。それはバンドにとっても、「かつてキッズだった私たち」にとっても、だ。もちろん、YUKIもTAKUYAも恩ちゃんもコータさんも、今も現役ミュージシャンとして輝き続けている。でも、あの時と同じバンド・マジックは二度と生まれないのだ。ジュディマリ再結成を望む人たちの中で、かつてのジュディマリとはテイストの違う新曲や、それら中心のコンサートを期待する人は一体どれくらいいるのだろうか?いや、そんな人はほとんど存在しない。大半の人が「懐かしい曲を、当時のままで」を望んでいるのだろうが、もしジュディマリが再結成したとしても残念ながら失望することになると思う。仕舞いには「劣化した」だの「あの頃の輝きはもうない」などと勝手なことを言い始めるのではないか。


JUDY AND MARYというバンド名は、「快活でポジティヴな女のコ"ジュディ"と、すこしひねくれ者のネガティヴな女のコ"マリー"」が由来になっていて、それはYUKIのキャラクターでもありバンドのトータル・コンセプトでもあった。でも人は歳を重ね成熟するとともに「快活さ」は「落ち着き」に代わり、「ひねくれ」もだんだんと丸くなってくるものだ。成熟したアーティストが当時のままのキャラクターを演じるのは非常に難しい。


これが、再結成してほしくないと思う理由。ジュディマリは、あの時代にあのサウンドを奏でること自体に意味があった。そして、自分の10代半ば~20代前半がジュディマリの音楽とともにあったことはとても幸せだったと思う。再結成なんかしたら、パンチをして泣いてやる。


・・・また前置きが長くなってしまった。ジュディマリに関する思い出なども書きたいが後ほど書くとして、ベスト・ソング30曲いってみましょう。





No.30 "彼女の大切なもの"
1stアルバム『J・A・M』収録


No.29 "手紙を書くよ"
17thシングル/5thアルバム『POP LIFE』収録


No.28 "BLUE TEARS"
2ndシングル/1stアルバム『J・A・M』収録


No.27 "DAYDREAM"
3rdシングル/1stアルバム『J・A・M』収録


No.26 "Hello! Orange Sunshine"
4thシングル/2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』収録


No.25 "ミュージック ファイター"
15thシングル/5thアルバム『POP LIFE』収録


No.24 "ステレオ全開"
3rdアルバム『MIRACLE DIVING』収録


No.23 "ドキドキ"
8thシングル/3rdアルバム『MIRACLE DIVING』収録


No.22 "あなたは生きている"
3rdアルバム『MIRACLE DIVING』収録


No.21 "そばかす"
9thシングル/4thアルバム『THE POWER SOURCE』収録


No.20 "カメレオンルミィ"
6thアルバム『WARP』収録


No.19 "エゴイスト…?"
7thシングルカップリング/ベスト・アルバム『The Great Escape -COMPLETE BEST-』収録


No.18 "自転車"
6thシングル/2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』収録


No.17 "Cheese ''PIZZA'' "
5thシングル/2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』収録


No.16 "The Great Escape"
4thアルバム『THE POWER SOURCE』収録


No.15 "クリスマス"
5thシングル/2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』収録


No.14 "LOVER SOUL"
13thシングル/5thアルバム『POP LIFE』収録


No.13 "イロトリドリ ノ セカイ"
16thシングル/5thアルバム『POP LIFE』収録


No.12 "風に吹かれて"
4thアルバム『THE POWER SOURCE』収録


No.11 "ラブリーベイベー"
12thシングル/4thアルバム『THE POWER SOURCE』収録


No.10 "RADIO"
4thシングル/2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』収録


No.9 "小さな頃から"
6thシングル/2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』収録


No.8 "Sugar cane train"
6thアルバム『WARP』収録


No.7 "くじら12号"
11thシングル/4thアルバム『THE POWER SOURCE』収録


No.6 "mottö"
20thシングル/6thアルバム『WARP』収録


No.5 "アネモネの恋"
3rdアルバム『MIRACLE DIVING』収録


No.4 "Over Drive"
7thシングル/3rdアルバム『MIRACLE DIVING』収録


No.3 "クラシック"
10thシングル/4thアルバム『THE POWER SOURCE』収録


No.2 "ひとつだけ"
19thシングル/6thアルバム『WARP』収録


No.1 "KYOTO"
7thシングル/3rdアルバム『MIRACLE DIVING』収録





と、こんな結果でした。うーん30曲じゃとても足りない。だって「散歩道」も「Brand New Wave Upper Ground」も「ラッキープール」も「BATHROOM」も「グッバイ」も「ステキなうた」も「プラチナ」も入ってないわけで…。しかし40曲や50曲にしてしまうと、逆に選ばれていない曲はどうなのよってことになるので心苦しくも何とか30曲に絞った。メインのソングライターであるTAKUYAも恩ちゃんも本当に名曲製造工場だし、コータさんも「散歩道」書いてるし本当にすごいバンドだ。ちなみに30位にギリギリ入れた「彼女の大切なもの」は、ここ数週間だけで言ったら1位。これまでそんなに好きというわけでもなかったけど、あらためて聴くとめちゃくちゃいい曲だ。


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ここからは、ジュディマリに関する少し個人的なエピソードをいくつか。


高校入ってすぐ、僕は文化祭に出るためにクラスの友人とバンドを組んだ。何を演奏するかはまだ決まっていなかったけど、バンドを組んだことを聞きつけた同じクラスの女子(クラスで一番おしゃれで中心的な存在のコ)が、一緒にバンドをやりたい、ジュディマリのコピーがしたいと言ってきた。その結果、男子3人、女子4人という大所帯バンドとなったが、これはジュディマリに憧れてバンドをやりたくなった女子がたくさんいたからだ。ファッションや流行に敏感な女子たちが当時みんな聴いていたのがジュディマリだった。まあ、バンドは結局すぐに空中分解してしまい、最終的に男子4人でLUNA SEAやラルクのコピーを演ることにはなったんだけど。一瞬俺にもモテキがきたのかと思ったぜ!


高校の時は文化祭や陸上競技大会後の打ち上げで、よくクラスのみんなでカラオケに行っていたけど、ジュディマリを歌う女子は必ずいたし、ジュディマリをかわいく歌いこなすことができる女子はモテていた。いや、普段からモテている女子でないとうまく歌いこなせないといった方が近いか。


大学時代は軽音楽サークルに入ったけど、ジュディマリを歌いたいという理由で入部する女子がめちゃくちゃ多かった(そういう子はだいたいみんな個性的なファッションでオシャレだった)。しかし楽器をやることになる他のメンバーはかなり大変だった。ギターもベースもドラムもかなりテクニックを求められるからだ(「カメレオンルミィ」なんて並大抵のレベルでは演奏できない)。ジュディマリはメジャーな存在だったけど、メンバーそれぞれ個性的で演奏技術がかなり高く、大衆性とマニアックさのバランスが絶妙だった。最近でも聴いていると「うわ、ここのギターフレーズ凄いな」「この展開凄いな」「こんなフィル、よく思いつくな」といった新たな発見が結構ある。特にTAKUYAのギターが好きで、「mottö」「くじら12号」「そばかす」のギターはフリーキー過ぎて圧巻。全編ギターソロかってくらい。


メジャーな存在と言えば。大学の時の友人に、洋楽のオルタナやインディーロックにとても詳しいヤツがいた。彼もまた、そういうタイプにありがちなようにメジャーなJ-POPを見下していたけど、「ジュディマリだけは例外」と言っていて、アルバムも全部持っていたのを覚えている。


あと、高校生の頃はジュディマリのラジオ番組を毎週欠かさず聴いていたな。TOKYO FMの「Coke HYPER RADIO」という番組で、今でも「ドキドキ」を聴くとラジオの前でスタンバっていたあの頃のワクワク感が蘇ってくる(「ドキドキ」がオープニングに使われていた)。「ダメビーム被害報告」という投書のコーナーや、YUKIの奔放なトークが面白かったな。下ネタの放送禁止用語も言ったりしてた。現在はYUKIの夫であるYO-KING(倉持陽一)がゲスト出演して、YUKIがしきりに「かっこいい~~!!」と言って完全に恋する乙女状態になっていたのを覚えている。


もし、自分の学生時代にジュディマリが存在しておらず、この2021年に登場していたら。自分は正直そこまでハマれないのかもしれない。「若者の間ではこれが流行ってるのね」みたいに少し距離を置いてしまいそうな気がする。まあそれ以前に、メロディとかは今でも通用するけど、テイストとかキャラクターは今の時代にも合うのか、ちょっとギモンだけど。


最後にひとつだけ。前述の「髪を金髪にして尖らせたり~~~、うるさい音楽を聴いたり」のくだり、あれ全部当時の自分です。



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