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初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.87(2016年9月)

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2016年9月に初聴きした作品のディスクレポートです。新譜(今年リリース作)はすべてフリーDL作品となりました。…いや、いろいろまとめ買いしたけど、まだ届いていないのでそれらは来月以降に。



★★★★★ 年間ベスト20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリースでない場合、旧譜のみの年間ベスト20位以内クラス




9月のALBUM OF THE MONTHは…これがフリーでいいんですかね。


■ALBUM OF THE MONTH■
Francis and the Lights / Farewell, Starlite! (2016)
★★★★★
Francis and the Lights Releases Farewell, Starlite!

米オークランド出身のSSW、Francis Farewell Starliteによるプロジェクトのデビュー・アルバム。Kanye WestとBon Iverをフィーチャーした曲「Friends」がとても良かったので最近その動向が気になっていたのだが、数日前に「アルバム出ないのかな?」と思って調べてみるとwikiに今年リリース予定という情報があり、とても楽しみにしていた。しかしまさかその2日後にリリースされてしまうとは…!(しかもフリー)。公開直後はストリーミングのみだったが、翌日にフリーDLも可能に。

すでに各音楽メディアからは絶賛されており、おそらく今年の年間ベストのレースでも最有力候補となるだろう。でも、本作が2016年、あるいは2010年代の象徴的な作品となるかどうかは、正直どうでもいいと思う。渋さと瑞々しさを兼ね備えたソウルフルなヴォーカル、抑制の効いた、そしてちょいダサなシンセ音、そして歓喜とも悲哀ともとれる美しいメロディ。それらはいずれも普遍的な魅力を放っており、けっして「今聴くべき音楽」とか「今語られるべき音楽」として消費されるようなタイプの音楽ではない。むしろそういったタイプとは対角にあるように思う。

中でもお気に入りは本作中で最もアッパーなエレクトロ・ファンク「I Want You to Shake」だが、本記事で後ほど登場するPrinceのオマージュのようでもあり、あるいはThe 1975のようでもあって、最高に踊れる曲だと思う。

ストリーミングはこちらから可能(現在はDLリンクは消えています)。

Francis and the Lights - "See Her Out (Thats Just Life)"




Factory Floor / Talking on Cliffs (2009)
★★★★★
Factory Floor Talking on Cliffs

8月にニューアルバム『25 25』をリリースしたばかりのFactory Floorだが、そちらは購入せずに代わりに(?)この初期音源を購入。全7曲収録のEPで、フィジカルでは唯一日本のインディー・レーベルMAGNETIC RECORDSからリリースされたものが流通している。既に廃盤なのかAmazonマーケットプレイスでは5,000円くらいに値上がりしているし、iTunesやAmazon MP3などでデジタル販売もされておらず、前々から気になってはいたもののなかなか手が出なかったアイテム。新作リリースを機にあらためて調べてみると、ototoyでデジタル販売されていることがわかり即購入した。

最近の彼らはアシッド・テクノやミニマル・テクノの要素を強めているが、本作ではデビュー・アルバム以前のシングル群(2010年の「A Wooden Box」など)に見られるポストパンクの色合いが強く、冷たく攻撃的でインダストリアル・ノイズも散りばめられた作品となっている。自分がFactory Floorに求めている(ゆえに『25 25』を試聴した限りでは物足りなく感じた)、肉体的で硬質な地下パンクの香りがムンムン。

Factory Floor - "Taxidermist"




L'Arc~en~Ciel / AWAKE (2005)
★★★★★
LArcenCiel AWAKE

10作目。前作『SMILE』は活動休止後最初のアルバムということで、「過去との決別」や「新たな方向性」を提示した作品という印象が強かった。よってそこに違和感というか戸惑いも感じてしまったのだが、本作は彼らが2001年までに築き上げた「中世ヨーロッパ的美学」と、前作で提示した「USオルタナのJポップ流解釈」とがちょうどいい塩梅で融合した作風となっている。

「叙事詩」「TRUST」「My Dear」をはじめ、彼らにハマった最大の要因であるThe Cure的な「耽美さ」や「退廃的ムード」も復活。前作ではやり過ぎ感のあったギターのディストーションもだいぶ落ち着いて、かっこいい音になっていると思う。

それにしても、最もこれまでとの違いを感じるのはhydeの声というか歌い方。裏声や高めの声はやや控えめで、低音(地声?)で吐き捨てるような歌唱(「LOST HEAVEN」「Killing Me」「EXISTENCE」など)も目立つ。これはちょっとまだ慣れない部分ではあるけど、VAMPSの活動からの影響もあるのだろうか。今後聴いていく予定の『KISS』『BUTTERFLY』が若干先行き不安だが、そのうち慣れてくるのかもしれない。

余談ではあるが、「TRUST」のイントロはM83がプロデュースしたThe Killersの「Shot At The Night」に少し雰囲気が似ているし、歌がなければサビ以外はThe 1975っぽさも感じた。あと「自由への招待」はメロディラインがジュディマリっぽい(例えば「クリスマス」や「BLUE TEARS」みたいな)と思った。そんなところも本作を気に入った要因の一つである。



Mott the Hoople / All the Young Dudes
(すべての若き野郎ども) (1972)

★★★★☆
Mott the Hoople All the Young Dudes

デヴィッド・ボウイがプロデュースした作品。邦題からして今までガレージ・ロックやパンクっぽいイメージを持っていたけど、聴いてみるとまんまZiggy Stardust期のボウイだった。煌びやかで哀愁に満ちていて、美しくも儚いメロディ。



Laura Nyro / Gonna Take a Miracle (1971)
★★★★☆
Laura Nyro Gonna Take a Miracle

米ブロンクス出身のSSWによる5作目で、Marvin Gaye、Curtis Mayfield、Smokey Robinsonといったリズム&ブルーズの名曲カバー集。元々ジャズやソウル、リズム&ブルーズからの影響が強いシンガーではあったが、本作では女性コーラス・トリオのLabelleが全面的にバックアップ。より本場のソウル感が強く出た、モータウンっぽい作風となっている。



UNICORN / SPRINGMAN (1993)
★★★★☆
UNICORN SPRINGMAN

最初の活動期(87年~93年)におけるラスト・アルバムで、この中では唯一リアルタイムで聴かなかったアルバム。なぜ聴かなかったかというと前作『ヒゲとボイン』をあまり気に入らなかったからだけど、あれから23年を経てようやく聴いてみると想像以上に良くて、これまで聴かなかったことを悔やんだ。

「メンバーそれぞれの個性が反映された、ユルくてヘンな曲が多い」というのは彼らの定番であり魅力だが、『ヒゲとボイン』ではそれがやや行き過ぎではあったし、肝心のメロディが二の次になっていたように思う(もちろん表題曲や「車も電話もないけれど」などは名曲だとは思うが)。対してこちらは、変わらず個性的でユルくヘンな曲が多いのに曲(メロディ)がどれも素晴らしく、特に「月のワーグナー」なんかはUNICORNの中でも屈指の美メロバラードだと思う。あと、ところどころにELOからの影響が感じられるところも良かった。



Daryl Hall & John Oates / Big Bam Boom (1984)
★★★★☆
Daryl Hall John Oates Big Bam Boom

大ヒットした『Private Eyes』と『H2O』(7月に初聴き)に続く12作目。

前作でのブルーアイド・ソウル~ファンク色はやや薄れた印象で、代わっていかにも80'sなエレクトロ・ポップな音がふんだんに盛り込まれた作風に。とてもダサくもあるんだけど、そこが不思議と大きな魅力になっていると思う。サンプリング・ヴォイスやリズム・マシンが多用され、初期のTM NETWORKにも通じるものがあり、個人的には『Private Eyes』と『H2O』よりも好み。



V.A. / Young Folks in Metropolis (2016)
★★★★☆
Young Folks in Metropolis

東京発の次世代シティポップ・プロジェクト、Poor Vacation主催のコンピレーション・アルバム。『都会派SF』がテーマになっているようだが、いずれのアーティストもそのテーマをしっかり意識して制作したのか統一感があり、アーバンでフューチャリスティックなムードが漂っている。コンセプチュアルなコンピレーションとしては大成功だと思う。

ダウンロードはこちらから



Prince / 1999 (1982)
★★★★☆
prince1999.jpeg

プリンスの5作目。代表作の一つで、世界的ブレイク作でもある。

6分以上の曲が半数以上を占め、トータル70分という長尺さ。Princeといえば「Purple Rain」のようなバラードのイメージも強いのでこれは中だるみがキツイ作品なのではと思ったけど、実際聴いてみるとほとんどの曲がアッパーで全くダレることがなかった。徹頭徹尾セクシーなエレクトロ・ファンク。



TOTO / TOTO IV (聖なる剣) (1982)
★★★★☆
TOTO TOTO IV

「Rosanna」と「Africa」という、TOTOの代表曲が2曲とも収録された4作目。グラミーでもレコード・オブ・ザ・イヤーやアルバム・オブ・ザ・イヤーなど6部門を受賞。卓越した演奏力と澄みきったサウンドは、人によっては滅菌処理され過ぎていてつまらないと感じるのかもしれないけど、そんな人にはM83『Junk』以降の耳で聞くことをオススメしたい。



Jam City / Trouble (2016)
★★★☆☆
Jam City Trouble

UKのDJ/プロデューサーJack Lathamによるプロジェクトがフリーで発表したミックステープ。

数年前にフジロックで観た時はサイケでゆらゆらしたサウンドという印象だったが、ここでは音圧高めなビートをぶちかましている。2曲目「COWBOY」などはサイケにしたRustieみたいで良かったけど、それ以外は先鋭的なビート・ミュージックというわけでもなければ踊らせることに特化したダンス・ミュージックというわけでもなく、少しインパクトが弱かった。



【再購入したもの】 ※評価は付けません

David Bowie / Low (1977)
David Bowie Low

いわゆる「ベルリン三部作」と言われる11作目。Brian Enoとともに制作され、B面にあたる後半の4曲はすべてインスト。プログレやアンビエント、ジャーマン・ロックからの影響を強く感じさせるとともに、まだ壁があった頃のベルリンの空気感や時代性を感じさせてくれる。



【今後の予定】 ※購入or予約済みでまだ聴けていないタイトル
Aphex Twin / Cheetah EP (2016)
Viola Beach / Viola Beach (2016)
AlunaGeorge / I Remember (2016)
M.I.A. / AIM (2016)
Nick Cave & The Bad Seeds / Skeleton Tree (2016)
American Football / American Football (2016)
Crystal Castles / Amnesty (I) (2016)
Danny Brown / Atrocity Exhibition (2016)
Jenny Hval / Blood Bitch (2016)
Esben and the Witch / Older Terrors (2016)
Hope Sandoval & The Warm Inventions / Until The Hunter (2016)
The Smashing Pumpkins / Adore [Super Deluxe Edition] (2014)
中森明菜 / オールタイム・ベスト -オリジナル- (2014)
L'Arc~en~Ciel / BUTTERFLY (2012)
L'Arc~en~Ciel / KISS (2007)
David Bowie / Scary Monsters (And Super Creeps) (1980)
David Bowie / Lodger (1979)
David Bowie / ”Heroes" (1977) *再購入
Laura Nyro / Smile (1976)
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