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L'Arc〜en〜Ciel

ラルク・アン・シエルに突然ハマった人の話

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この1ヶ月半ほどの間で、最も再生回数の多かったアーティスト。その名はラルク・アン・シエル(L'Arc~en~Ciel)。


通称ラルク。言わずと知れた、90年代以降のJ-POPを代表するバンドだ。6月の上旬以降、7枚のアルバムを聴いた。それも、何度も何度もヘビロテした。最近買ったJamie xxやBest Coastなんかそっちのけである。僕はつい最近でも、TM NETWORK再ブームとかB'z再ブームとか、ちょっとしたJ-POP懐古モードに陥ることがよくある。でも今回のラルクがそれらと異なるのは、過去にハマったことが一度もないという点だ。つまり、僕にとっては初めてのラルクブームなのである。




厳密に言うと、以前から好きなことは好きだった。中学生の時にアーティスト写真を見てかっこいいと思ったし、メジャーデビュー・シングル「Blurry Eyes」は当時TSUTAYAでレンタルした(後にバンドでコピーもした)。


でもそれきりだった。アルバムを聴いたことはなかったし、その後ラルクが大ブレイクしてシングル同時リリースやアルバム同時リリースなど破竹の勢いで頂点へと上りつめた時期も、どこかしらで曲を耳にすることはあっても曲名までは知らないし、ほとんど無関心だった。


それがなぜ、「Blurry Eyes」から21年経った今、急に目覚めたのか?きっかけはほんの些細な出来事だった。それまでもTwitter上に数人いるラルクファンのフォロワーさんたちの影響で、ちゃんとアルバムを聴いてみたいという思いはあったのだけど、6月のある日ひょんなことから職場でラルクの話題が出た(相手は音楽に全く詳しくない人)。その時にふと聴いてみたくなり、幸い僕の妻が数枚アルバムを持っていたことを思い出したので家に帰ってから探すと『heavenly』と『HEART』の2枚があった。リリース順は分からないのでとりあえず『HEART』から聴いてみた。

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すると1曲目「LORELEY」からいきなり引き込まれた。美しいメロディー、幽玄に揺らめくギター、ずっしりと重めのグルーヴ、全体を覆う耽美な世界観。これ、まるでThe Cureじゃん…!!アルバムをさらに聴き進め、「Singin' in the Rain」のジャズ風アレンジに驚かされたりしつつ聴き終えた後に感じたのは、1曲目だけでなくアルバム全体としてもThe Cureっぽいということだった。どの曲がどの曲に似ているということではなく、ロックバンドでありながら、ジャズやボサノヴァ、民族音楽など「非ロック」な音楽を取り入れていること。それでいて散漫になるのではなく、強烈な個性によって統一されたムードがあること。いくつかのシングル曲のみから抱いていた僕のラルク像は180度変わった。

The Cure - "Maybe Someday"




続いて聴いた『heavenly』はさらにラルクのイメージを変えた。スウィンギンなジプシー・パンク「Secret Signs」、広末涼子もびっくりのMajiでKoiするザ・J-POP「C'est La Vie」、山口百恵×オリジナル・ラヴなソウル歌謡「夏の憂鬱」など、完全にこれまで勝手に抱いていたイメージは消え去った。このアルバムで正統派の90'sビジュアル系ロック・マナーに則っているのは「Cureless」一曲だけである。あと「Vivid Colors」のアコギかき鳴らしてる感じ、The Cureの「In Between Days」を思い出さずにはいられない。<

The Cure - "In Between Days"




そんなわけで、完全に目の色が変わった僕はラルクのアルバムを買いに行った。買ったのは『Tierra』、『True』、『ark』、『ray』、『REAL』。これらがまた良かった。特に『Tierra』は例の「Blurry Eyes」が入っているという点でも想い出補正がかかっているけど、それを抜きにしてもU2っぽいギターと後期レッチリっぽいベースが素敵な「In the Air」、個人的に7枚のアルバム中のベスト・トラック「All Dead」、「Blurry Eyes」のシングルB面にリミックス・バージョンが収録されていたレゲエ・タッチの「Wind of Gold」、ボサノヴァから始まる「眠りによせて」、ベースラインが死ぬほどかっこいい「風の行方」、ピアノバラード「瞳に映るもの」など佳曲ばかりで、このブログでも「2015年上半期 旧譜ベストアルバム40」で3位を獲得したほど。hydeのハイトーンヴォーカルと耽美な世界観が好きな自分としては7作品の中でこれがベスト。

U2 - "Where The Streets Have No Name"




『True』も、打ち込みの四つ打ちキックが意外な「Caress of Venus」、スカパラが参加しホーンセクションてんこ盛りの「the Fourth Avenue Café」、すかんちの「もしも毎日がクリスマスだったら」を連想させるクリスマス曲「I Wish」など、こりゃビジュアル系に括られてメンバーが怒るのも無理はない。彼らの音楽は、80年代のイギリスで「ニューウェーヴ」と呼ばれていたバンドの、音楽性というよりも精神性を最もピュアに受け継いだJ-POPバンドなのだと思うほどに、様々なロック・ミュージックと非ロック・ミュージックを掛け合わせ、独自の美意識の中でその耽美な世界観を確立させているのだと思った。


『ark』、『ray』はシングル曲以外はあまり印象に残らず、正直これまでのアルバムと比べると劣る。2枚同時発売ということもあってちょっと急いで作ったんだろうか?でも、yukihiroによるUnderworldみたいな打ち込みのインスト「Larva」といった新機軸もあって面白かった。ただ、この頃からサウンドはオルタナ以降のオーソドックスなJロック寄りになってきて、hydeも低い声で歌うようになってきており、自分の好きなラルクの時代は『HEART』までかな、とも思った。

Underworld - "Push Upstairs"




そんなわけで『REAL』はあまり期待していなかったのだけど、これが意外にも良かった。シングル「NEO UNIVERSE」と「STAY AWAY」はさすがに知っていたし結構好きだったけど、それ以外にもかっこいい曲がたくさん。まずオープニングの「get out from the shell」はDepeche Modeを思わせるイントロから始まり、低音とダミ声を効かせたヴォーカルはまるでSOFT BALLET。なんでも、作曲したyukihiro自信が「SOFT BALLETのパクリ」と認めているらしい。音は荒削りだけどメロディー的には何となく『heavenly』あたりに入っていそうなポップ・ナンバー「bravery」、The Cureっぽいメロディーがまた戻ってきた「finale」など、全体的にJロック感・オルタナ感は増しているけど単純にいい曲が多かった。


Depeche Mode - "Behind the Wheel"




ここまで、ラルクの楽曲の影響源になっていそうな音楽を挙げてきたけど、別にパクリだと言うつもりはない。というか彼らにあからさまなパクリの曲はないと思う。yukihiroが「パクリだ」と公言している「get out from the shell」でさえ、雰囲気的にSOFT BALLETっぽさはあってもリフやメロディーやフレーズをパクったりはしていない。実際にhydeはThe Cureのファンを公言しているが、そういった個人個人の嗜好が自然と楽曲に滲み出ている感じがする。


ラルクの楽曲に出会ってからすでに21年、30代後半にして初めてラルクにハマったことに自分でもいささか驚いてはいるけど、20代の頃にアルバムを聴いていたとしてもハマった気はしない。まさに今がジャストなタイミングなのだと思う。というのも、ラルクにハマった最大の要因が「The Cureからの影響を感じさせる」ということだったからだ。The Cureは2年前のフジロックに出演が決まったことをきっかけに好きになったバンドであり、この2年の間にオリジナル・アルバム13枚を集めた。それぞれのアルバムを聴く中で自分の中のThe Cureのイメージは幾度となく大きく変わったけど、そんなところが彼らの最大の魅力だと気付かされた。


ラルクもThe Cureと同様のスタイルであることが最大の魅力だと思っているし、The Cureを聴かずにいたらラルクの良さもわからないままだったと思う。ちなみに、記事にあるU2やDepeche Modeも、ここ2年ほどの間で初めてオリジナル・アルバムを聴いたアーティストだ。ただのJ-POP、Jロックだと思っていた楽曲が、影響源となった他の音楽を聴くことで本当の魅力がわかり、深みが増す。これは音楽に限ったことではなく映画や絵画など芸術作品全般に言えることだけど、7月にローンチされたApple Musicなんかでも「○○に影響を与えたであろう音楽」というプレイリストが多数存在するようだ。いまいち魅力がよくわからなかったアーティストがいたら、そういった影響源の音楽を通ってから再び聴いてみるというのも面白いと思う。






[あとがき]
ラルクにハマってから、「音楽だいすきクラブ」というブログでラルクファン歴の長い人たちによる対談記事を読みました。僕のような新参のニワカファンにもわかりやすく「なぜラルクは尊いのか」ということにスポットを当てた面白い記事だったので興味のある方はこちらもぜひ。

音楽だいすきクラブ:ラルトーク#1 なぜラルクは尊いのか

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