初聴きディスクレポート |
2013年11月に初聴きした音源の感想まとめです。そろそろ年間ベストを意識して、ずっとお気に入りリストに入れっぱなしだったタイトルもガシガシ購入し始めました。購入保留してた理由は価格だけで、内容に関しては試聴と熟考を重ねているのでどれも保証済み。よって5つ星が結構多くなりました。
<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした
*今年リリース作ではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
----------------------------
では11月の「Album of The Month」から。
<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした
*今年リリース作ではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
----------------------------
では11月の「Album of The Month」から。
■■■■■Album of The Month■■■■■
The 1975 / The 1975 -Deluxe Edition- (2013)
★★★★★
「デビューアルバムが期待される新人」として、このブログでも何度か取り上げてきた彼ら。全曲試聴段階からすでに確信を得ていた通りのクオリティだった。全16曲と曲数は多いものの曲順の流れもよく、曲調もファンク・ポップから四つ打ちのダンストラック、疾走するギター・ロック、そして随所に挿みこまれたチルでアンビエントなインタールード的トラックなどバラエティに富んでいて、ヴォリューム過多な感じはしなかった。デビューアルバムにして恐ろしいまでの完成度だと思う。
しかしさらに驚かされたのはデラックス・エディションに付属の、4枚のEPをまとめたボーナスディスク。「Sex EP」以外は初めて聴いた(そういえばその頃はJimmy Eat Worldを引き合いに出していたものだ)のだけど、まだ洗練されていない「The City」初期バージョンが収録されていて、後のバージョンと比べると彼らの成長度合いがよくわかる。彼らは「Facedown EP」の頃はまだ稚拙なところもあり、とりわけ目立つ存在でもないインディー・バンドに過ぎなかったと思う。それが作品を重ねていくにつれ、この1年足らずの間にアート性と大衆性が見事に結実した現在のサウンドを確立させていったと思う。短期間でこれだけの成長を遂げることができたのは、結成から既に10年以上経過している彼らがこれまでに吸収して培ってきた様々な音楽的素養があってこそだろう。引き出しの多さと、それらをまとめ上げて自分たち独自の音として鳴らすことができる技量、そしてさらなる進化を遂げていきそうな伸びしろもまだ秘めていそうで今後がとても楽しみ。
一つだけ不満を。ボーナスディスクの方、元のEPに入ってる長い無音部分までそのまま収録しないでくれ。
The 1975 - "Girls"
The Psychic Paramount / Ⅱ (2011)
★★★★★
昨年のGodspeed You! Black Emperorのアルバム「Allelujah! Don't Bend! Ascend!」は、このブログでも2012年の年間ベストアルバムの3位に選んだほどに圧巻だった。あのアルバムが持っていた、クライマックスに向けてジワジワと高まっていくスリルと緊張感のようなもの、それを約40分ものあいだ最初から最後まで放出させっぱなしにしたようなアルバムがこれ。ガレージともシューゲイザーともつかないギターのディストーション、硬く張ったスネアとけたたましく打ち鳴らされるシンバル。それらの硬質な音の塊がスリリングに展開していく彼らのサウンドは、カオティック・ハードコア・インプロヴィゼーションとでも呼びたい。
2012年のコーチェラフェスのストリーミングで彼らのパフォーマンスを観た時、あまりのかっこよさにぶっ飛んだので、ぜひ来日も実現してほしいバンド(Aliveでリクエストしよう!)。
The Psychic Paramount - "Intro / SP"
Justin Timberlake / 20/20 Experience 2/2 (2013)
★★★★★
7年ぶりに音楽活動を再開しただけでなく、今年2枚目となるアルバムまで出してしまうとは!そしてこの「今年2作目」が、今年1作目を上回る出来なのも驚異的。歌のうまさ、ビートの面白さはもちろんのこと、EDM全盛の時代を葬り去るかのごとく軽やかなサウンドで「次の時代に求められる音」をしっかり提示している。
何よりも曲がよく書けている。特にラストを飾る「Not A Bad Thing」と、ジャスティンがアコギを弾くシークレット・トラック「Pair of Wings」は、彼のソングライティング能力の高さがよく表れている美メロ曲。
Justin Timberlake - "Not A Bad Thing"
M.I.A. / Matangi (2013)
★★★★★
本当にこれがレコード会社から「大衆的すぎる」としてリリースを見送られていたアルバムなの?と思ってしまうくらいにフリーキーにぶっ飛んでいると思った。とにかく彼女のやりたい放題にゴッタ煮にされたこの「無国籍闇鍋」は、刺激の強さから消化不良を起こす人もいそうなくらい。しかしポップスにおける標準的な構成やビートやメロディーから解き放たれて、刺激的で神秘的な音にどっぷり浸かるには今年最適な作品なのでは。
M.I.A. - "Only 1 U"
Siouxsie And The Banshees / Juju (1981)
★★★★★
先に聴いた彼女たちのデビュー作「The Scream」(後述)はまずまずの良盤という感じだったけど、こちらは1曲目からぶっ飛んだ。3年でここまで完成されてしまうもの?とにかくギターの音、ドラムの音、そしてスージー・スーの歌い方や声、メロディーに至るまで「The Scream」とはまるで別物で、クオリティが格段に上がっている。代表曲の一つでもある冒頭の「Spellbound」から、7分を超える圧巻のラスト「Voodoo Dolly」まで捨て曲なし。16分音符で刻まれるギター&ベースとパワフルなドラミングが超絶かっこいい「Monitor」など随所に聴き所も多かった。
Siouxsie And The Banshees - "Spellbound"
Diana / Perpetual Surrender (2013)
★★★★★
ちょっとレトロでAOR風な雰囲気もある、サイケでファンキーなシンセポップ。テンションの低いクールな女性ボーカルがかっこいい。アートワークの色遣いも素晴らしい。
Diana - "Born Again"
N-qia / Fringe Popcical (2013)
★★★★★
Serphとしても活動するTakmaが女性ボーカルNozomiと組んだユニットということで、あのメルヘンチックなキラキラサウンドと女性ウィスパーボーカルとの相性は抜群。深いリヴァーブのかかったハイトーンなボーカルと粒子の細かいエレクトロビート、そしてストリングスやピアノやアコギといったオーガニックな音が散りばめられたサウンドは、ヒンヤリしているようで温もりも感じられる。
N-qia - "Tree"
Luscious Jackson / Magic Hour (2013)
★★★★☆
再結成後初となる14年振りの新作。全10曲の中で一つとして似たような曲がなく、ガレージ・ロックやヒップホップ、ダブ、ハウス、90年代のメインストリーム・ポップスなどをゴッタ煮にしたサウンドはまさに人種のるつぼ、NY仕込み。Beastie Boys、Beck、The Breeders、JSBX、Cibo Matto、Sean Lennon、Ben Leeといった90年代オルタナ・シーン(グランド・ロイヤルを中心とする)をもう一度再評価したくなる作品で、The Ting Tingsのセカンド「Sounds from Nowheresville」にも近いノリかも。
90年代初期から活動しているだけあってさすがに見た目はオバチャンになったけど、音だけ聴いたら若手バンドかと思ってしまうくらいにキュートなフレッシュさがある。
Cut Copy / Free Your Mind (2013)
★★★★☆
これまでは80sエレポップ寄りなサウンドを軸にしていたと思うけど、今回は80s末~90s初期のアシッド・ハウス・ムーブメントにどっぷり浸ったようなサウンド。とりわけPrimal Screamの「Screamadelica」を連想させずにはいられない、パーカッションやピアノ、サイレン、サンプリング・ボイスを多用したサイケデリックで酩酊感溢れるトラックが並ぶ。特に「Let Me Show You Love」の歌い方は完全にこの頃のボビー・ギレスピーを意識しているのでは?
「ただの焼き直しで、彼ららしさが何も付け加えられていない」という批判ももっともだと思う。でも当時のアシッド・ハウス・ムーブメントをリアルタイムで体験していない自分にとっては(後追いで聴いていたとしても)十分にクールで刺激的な音に感じられた。
Priscilla Ahn / This Is Where We Are (2013)
★★★★☆
これまでの彼女の作品を聴いたことがないのだけど、アコギ弾き語り系のSSWだったはず。しかしこのアルバムではシンセを使ったエレクトロ・ポップへとシフト。そしてこれは、第三者によってオーバープロデュースされたものではないことは明らか。もちろん従来のアコギ弾き語り曲もあるし、中盤以降はプログレ的な展開を持つアンビエント~ドリーム・ポップのような曲も。浮遊感のあるシンセサウンドと彼女の透き通るようなボーカルが重なり、壮大で美しいサウンドスケープを描き出している。
このアルバムはほぼ日本のみのリリースに近い(デジタル販売はあるし、輸入盤も一応存在するけどあまり流通はしていない様子)ようだけど、「2013年最もスルーされがちな重要アルバム」の一つに挙げたい。
Death Grips / Government Plates (2013)
★★★★☆
突如フリーDLでリリースされたアルバム。音源をフリーでリリースしてどうやって活動できるの?てなことはさておき、最初に1曲目「You might think he loves you for your money but…(長いので略)」を聴いた時は過去最強にヤバいの来たなと思った。でも最後まで聴き終えると不思議なことに、これまでのミックステープ含む作品の中でも最もポップな気がした。これはラストを飾る6分半超のトラック「Whatever I Want (Fuck Who's Watching)」に因るところが大きいかも。この曲はUnderworldをも彷彿させるようなシンセがチルな雰囲気を添える一方でキラキラとしたコズミック感さえ感じさせる四つ打ちのダンスナンバーで、彼らの中でもベスト・トラックだと思う。
Phil Collins / No Jacket Required (1985)
★★★★☆
The 1975のインタビューを読んでいて引き合いに出されていたのがきっかけで彼のアルバムを聴いてみようと思ったんだけど、これが思いのほかいい!本作はアメリカだけで1,200万枚、全世界だと1,700万枚というセールス記録を持っているだけあって、アッパーなダンスナンバー「Sussudio」をはじめとした「これぞ80sポップ」ともいうべきバブリーな楽曲と、「One More Night」のようなしっとりしたバラードも含め、全体的にメロディーやサウンドやもちろん彼のボーカルもとてもよかった。
この「One More Night」だけは以前から知っていた曲だけど、あらためて聴いてみるとThe Killersの「Be Still」のビートの元ネタであることに気付いたり、「Take Me Home」におけるシンセ音やビートに2010年代以降のチルウェイヴ/ドリームポップのルーツが垣間見えたりと、新たな発見も楽しめた。ちなみにThe 1975にはあんまり似ていない。
Jon Hopkins / Immunity (2013)
★★★★☆
グリッチ系のビートとアンビエント感のあるシンセが心地よい。ほぼピアノの美しい曲があるのもよかった。一つ残念だったのは、目当てだった「Breathe This Air」がPurity Ringのボーカルバージョンではなくインストバージョンでの収録だったこと。
Liz Phair / Whip-Smart (1994)
★★★★☆
つい最近まで何となくアコースティック色の強いフォーク系SSWだと思っていたのは、リリス・フェア(サラ・マクラクランの提唱した女性主導イベント)と名前が似ていたからか。しかしこちらはジュリアナ・ハットフィールドもしくは元Ashのシャーロット・ハザレイにも通じるひねくれオルタナ・ギター・ロック。それぞれの曲が個々に特徴があって、アルバム全体としてメリハリが出ており、メロディーも全曲最高だった。特にタイトル曲「Whip-Smart」がオールディーズをカバーしたスーパーカーみたいなサウンドで素晴らしかった。
Blondie / Eat To The Beat (1979)
★★★☆☆
大ヒットした「Parallel Lines」の次のアルバムということで、彼女たちのパンキッシュでポップでミクスチャーな魅力が凝縮された作品だと思う。シングル「Dreaming」「Accidents Never Happen」をはじめとして疾走感のある曲が多い一方で、「The Tide Is High」を彷彿させるレゲエナンバー「Die Young Stay Pretty」もある。だけどデビーがただむしゃらに叫んでいる「Victor」だけは謎。
Kings of Leon / Mechanical Bull -Deluxe Edition-
(2013)
★★★☆☆
古き良きアメリカン・ロックと現代のロックが見事なバランスで融合されていると思う。中盤少し中だるみはしたけど後半は前作「Come Around Sundown」にも通じるレイドバックした雰囲気があって好き。デラックス盤収録のボーナストラックもメロディアスで良い。
Bibio / Silver Wilkinson (2013)
★★★☆☆
前半はややアンビエントな要素が強めで、中盤から少しダンサブルな要素も加わってくる構成。曲によって雰囲気が大きく異なり、正直「え、こんな曲もやるの?」と戸惑ってしまうような曲も。どの曲もよかったけど、出だしがゆったりした曲順は自分の理想とは違うかな。
Phil Collins / ...But Seriously (1989)
★★★☆☆
哀愁感漂う名バラード「Another Day In Paradise」目当て。アルバム全体としては割と「No Jacket Required」に近い印象で、ホーンセクションの入ったアップテンポな曲もバラードも良曲多し。それにしても本当に素晴らしい声の持ち主だと思う。
Siouxsie And The Banshees / The Scream (1978)
★★★☆☆
デビュー作であるこちらは、全編を通してゴスなムードが漂うパンキッシュなサウンド。しかしフリーキーな要素が強く、「Juju」のようにダークな中に光るポップなメロディーというのはまだ弱い。かなりメロディーを崩して歌っているのが少し微妙で、ビートルズ「Helter Skelter」のカバーは最初に聴いた時、ただの似ている曲だと思ってしまったほど。
Phil Collins / Hello, I Must Be Going! (1982)
★★★☆☆
有名なThe Supremes「You Can't Hurry Love」のカバー目当て。でも、非常に良かった「No Jacket Required」ほど楽曲のクオリティは高くない上に、曲の流れも悪い。特に4曲目「Do You Know, Do You Care?」から「You Can't Hurry Love」への流れとかは最悪。しかしそれでも彼のハイトーン・ボーカルは素晴らしいのだけど。2曲目「I Cannot Believe It's True」はどことなくマイケル・ジャクソン「Don't Stop 'Till You Get Enough」と同様に、ジャスティン・ティンバーレイクの「Take Back The Night」のベースとなっていそうなソウルフルな曲で非常にかっこいい。
Saves The Day / In Reverie (2003)
★★☆☆☆
エモのイメージがあったけど、ギターのディストーションやドラムサウンドがハードな割にメロディーが爽やかでむしろギターポップに近い感じ。ボーカルが軽くてちょっと拍子抜けしたので、もう少し力を入れて歌ってほしいところ。曲はどれもよく書けている。
The Cure / Three Imaginary Boys (1979)
★★☆☆☆
デビューアルバムである本作は、ダークでゴスなムードが非常にかっこいいのだけど、レコーディングやミキシングの時期が曲によって違うのか、音の質感にだいぶバラツキがあるように感じられる。結果的に、編集盤のようなまとまりのなさが出てしまっているのがもったいない。特に「10:15 Saturday Night」はシンバルの高音が耳にキツく、アルバム用に再録してほしかったところ。あと心臓止まりかける「Subway Song」やラストの「The Weedy Burton」はちょっと意味不明だった(笑)。
Everything But The Girl / The Language of Life
(1990)
★★☆☆☆
1年ちょっと前に聴いていたら気に入っていたと思うけど、洗練され過ぎているあまり聴き流してしまい耳に残らなかった。でも落ち着きたい時や夜寝る前に聴くにはとてもいいと思う。
Avicii / True (2013)
★★☆☆☆
シングル「Wake Me Up」が大ヒット中ということもあり、アルバムにはアコースティック・ギターによるカントリー調の音がフィーチャーされた曲がいくつか。アメリカっぽいメロディーで歌いあげるソウルフルなシンガーの起用はデヴィッド・ゲッタやカルヴィン・ハリスとの差別化を意図しているのだろうか。確かに「Wake Me Up」を初めて聴いた時は新鮮さも感じたものの、その手法を全面に押し進めた本作は今となっては特に新鮮さもなく、微妙なダサさのあるフレーズや曲展開の引き出しの少なさが目立ってしまっている。
Kings of Leon / Only By The Night (2008)
★★☆☆☆
有名な「Sex on Fire」「Use Somebody」はそれなりに好きではあったけど、彼らに関してはこの次のアルバム「Come Around Sundown」が好き過ぎて、スタジアム感がより強いイメージのあった本作はこれまで避けてきていた。サウンド的には重い曲でもドラムの音が軽めなのと、後半少しダレるところがあるのが残念。それでもラストはしっとりといい感じで終わってくれたのだけど、国内盤ボーナストラックのCSSリミックスが全て台無しにしてしまっている。
Alphabeat / This Is Alphabeat (2008)
★★☆☆☆
当時「Fascination」好きだったなあ、でもこの曲以外知らないやということで聴いてみたのだけど、「Fascination」で抱いていた80sポップ感というかWHAM!みたいな感じが他の曲では全くなくて肩透かし気味。ボーカルの声質やサウンド、ビジュアル的にももっと80s感満載なのを期待していたのだけど…。先月のBlack Kidsと同様、2000年代後半のインディー系バンドはどれもリアルタイムではスルーしていた分思い入れもなく、後追いで聴いてみても今さらあまりハマれないのかも。
The 1975 / The 1975 -Deluxe Edition- (2013)
★★★★★
「デビューアルバムが期待される新人」として、このブログでも何度か取り上げてきた彼ら。全曲試聴段階からすでに確信を得ていた通りのクオリティだった。全16曲と曲数は多いものの曲順の流れもよく、曲調もファンク・ポップから四つ打ちのダンストラック、疾走するギター・ロック、そして随所に挿みこまれたチルでアンビエントなインタールード的トラックなどバラエティに富んでいて、ヴォリューム過多な感じはしなかった。デビューアルバムにして恐ろしいまでの完成度だと思う。
しかしさらに驚かされたのはデラックス・エディションに付属の、4枚のEPをまとめたボーナスディスク。「Sex EP」以外は初めて聴いた(そういえばその頃はJimmy Eat Worldを引き合いに出していたものだ)のだけど、まだ洗練されていない「The City」初期バージョンが収録されていて、後のバージョンと比べると彼らの成長度合いがよくわかる。彼らは「Facedown EP」の頃はまだ稚拙なところもあり、とりわけ目立つ存在でもないインディー・バンドに過ぎなかったと思う。それが作品を重ねていくにつれ、この1年足らずの間にアート性と大衆性が見事に結実した現在のサウンドを確立させていったと思う。短期間でこれだけの成長を遂げることができたのは、結成から既に10年以上経過している彼らがこれまでに吸収して培ってきた様々な音楽的素養があってこそだろう。引き出しの多さと、それらをまとめ上げて自分たち独自の音として鳴らすことができる技量、そしてさらなる進化を遂げていきそうな伸びしろもまだ秘めていそうで今後がとても楽しみ。
一つだけ不満を。ボーナスディスクの方、元のEPに入ってる長い無音部分までそのまま収録しないでくれ。
The 1975 - "Girls"
The Psychic Paramount / Ⅱ (2011)
★★★★★
昨年のGodspeed You! Black Emperorのアルバム「Allelujah! Don't Bend! Ascend!」は、このブログでも2012年の年間ベストアルバムの3位に選んだほどに圧巻だった。あのアルバムが持っていた、クライマックスに向けてジワジワと高まっていくスリルと緊張感のようなもの、それを約40分ものあいだ最初から最後まで放出させっぱなしにしたようなアルバムがこれ。ガレージともシューゲイザーともつかないギターのディストーション、硬く張ったスネアとけたたましく打ち鳴らされるシンバル。それらの硬質な音の塊がスリリングに展開していく彼らのサウンドは、カオティック・ハードコア・インプロヴィゼーションとでも呼びたい。
2012年のコーチェラフェスのストリーミングで彼らのパフォーマンスを観た時、あまりのかっこよさにぶっ飛んだので、ぜひ来日も実現してほしいバンド(Aliveでリクエストしよう!)。
The Psychic Paramount - "Intro / SP"
Justin Timberlake / 20/20 Experience 2/2 (2013)
★★★★★
7年ぶりに音楽活動を再開しただけでなく、今年2枚目となるアルバムまで出してしまうとは!そしてこの「今年2作目」が、今年1作目を上回る出来なのも驚異的。歌のうまさ、ビートの面白さはもちろんのこと、EDM全盛の時代を葬り去るかのごとく軽やかなサウンドで「次の時代に求められる音」をしっかり提示している。
何よりも曲がよく書けている。特にラストを飾る「Not A Bad Thing」と、ジャスティンがアコギを弾くシークレット・トラック「Pair of Wings」は、彼のソングライティング能力の高さがよく表れている美メロ曲。
Justin Timberlake - "Not A Bad Thing"
M.I.A. / Matangi (2013)
★★★★★
本当にこれがレコード会社から「大衆的すぎる」としてリリースを見送られていたアルバムなの?と思ってしまうくらいにフリーキーにぶっ飛んでいると思った。とにかく彼女のやりたい放題にゴッタ煮にされたこの「無国籍闇鍋」は、刺激の強さから消化不良を起こす人もいそうなくらい。しかしポップスにおける標準的な構成やビートやメロディーから解き放たれて、刺激的で神秘的な音にどっぷり浸かるには今年最適な作品なのでは。
M.I.A. - "Only 1 U"
Siouxsie And The Banshees / Juju (1981)
★★★★★
先に聴いた彼女たちのデビュー作「The Scream」(後述)はまずまずの良盤という感じだったけど、こちらは1曲目からぶっ飛んだ。3年でここまで完成されてしまうもの?とにかくギターの音、ドラムの音、そしてスージー・スーの歌い方や声、メロディーに至るまで「The Scream」とはまるで別物で、クオリティが格段に上がっている。代表曲の一つでもある冒頭の「Spellbound」から、7分を超える圧巻のラスト「Voodoo Dolly」まで捨て曲なし。16分音符で刻まれるギター&ベースとパワフルなドラミングが超絶かっこいい「Monitor」など随所に聴き所も多かった。
Siouxsie And The Banshees - "Spellbound"
Diana / Perpetual Surrender (2013)
★★★★★
ちょっとレトロでAOR風な雰囲気もある、サイケでファンキーなシンセポップ。テンションの低いクールな女性ボーカルがかっこいい。アートワークの色遣いも素晴らしい。
Diana - "Born Again"
N-qia / Fringe Popcical (2013)
★★★★★
Serphとしても活動するTakmaが女性ボーカルNozomiと組んだユニットということで、あのメルヘンチックなキラキラサウンドと女性ウィスパーボーカルとの相性は抜群。深いリヴァーブのかかったハイトーンなボーカルと粒子の細かいエレクトロビート、そしてストリングスやピアノやアコギといったオーガニックな音が散りばめられたサウンドは、ヒンヤリしているようで温もりも感じられる。
N-qia - "Tree"
Luscious Jackson / Magic Hour (2013)
★★★★☆
再結成後初となる14年振りの新作。全10曲の中で一つとして似たような曲がなく、ガレージ・ロックやヒップホップ、ダブ、ハウス、90年代のメインストリーム・ポップスなどをゴッタ煮にしたサウンドはまさに人種のるつぼ、NY仕込み。Beastie Boys、Beck、The Breeders、JSBX、Cibo Matto、Sean Lennon、Ben Leeといった90年代オルタナ・シーン(グランド・ロイヤルを中心とする)をもう一度再評価したくなる作品で、The Ting Tingsのセカンド「Sounds from Nowheresville」にも近いノリかも。
90年代初期から活動しているだけあってさすがに見た目はオバチャンになったけど、音だけ聴いたら若手バンドかと思ってしまうくらいにキュートなフレッシュさがある。
Cut Copy / Free Your Mind (2013)
★★★★☆
これまでは80sエレポップ寄りなサウンドを軸にしていたと思うけど、今回は80s末~90s初期のアシッド・ハウス・ムーブメントにどっぷり浸ったようなサウンド。とりわけPrimal Screamの「Screamadelica」を連想させずにはいられない、パーカッションやピアノ、サイレン、サンプリング・ボイスを多用したサイケデリックで酩酊感溢れるトラックが並ぶ。特に「Let Me Show You Love」の歌い方は完全にこの頃のボビー・ギレスピーを意識しているのでは?
「ただの焼き直しで、彼ららしさが何も付け加えられていない」という批判ももっともだと思う。でも当時のアシッド・ハウス・ムーブメントをリアルタイムで体験していない自分にとっては(後追いで聴いていたとしても)十分にクールで刺激的な音に感じられた。
Priscilla Ahn / This Is Where We Are (2013)
★★★★☆
これまでの彼女の作品を聴いたことがないのだけど、アコギ弾き語り系のSSWだったはず。しかしこのアルバムではシンセを使ったエレクトロ・ポップへとシフト。そしてこれは、第三者によってオーバープロデュースされたものではないことは明らか。もちろん従来のアコギ弾き語り曲もあるし、中盤以降はプログレ的な展開を持つアンビエント~ドリーム・ポップのような曲も。浮遊感のあるシンセサウンドと彼女の透き通るようなボーカルが重なり、壮大で美しいサウンドスケープを描き出している。
このアルバムはほぼ日本のみのリリースに近い(デジタル販売はあるし、輸入盤も一応存在するけどあまり流通はしていない様子)ようだけど、「2013年最もスルーされがちな重要アルバム」の一つに挙げたい。
Death Grips / Government Plates (2013)
★★★★☆
突如フリーDLでリリースされたアルバム。音源をフリーでリリースしてどうやって活動できるの?てなことはさておき、最初に1曲目「You might think he loves you for your money but…(長いので略)」を聴いた時は過去最強にヤバいの来たなと思った。でも最後まで聴き終えると不思議なことに、これまでのミックステープ含む作品の中でも最もポップな気がした。これはラストを飾る6分半超のトラック「Whatever I Want (Fuck Who's Watching)」に因るところが大きいかも。この曲はUnderworldをも彷彿させるようなシンセがチルな雰囲気を添える一方でキラキラとしたコズミック感さえ感じさせる四つ打ちのダンスナンバーで、彼らの中でもベスト・トラックだと思う。
Phil Collins / No Jacket Required (1985)
★★★★☆
The 1975のインタビューを読んでいて引き合いに出されていたのがきっかけで彼のアルバムを聴いてみようと思ったんだけど、これが思いのほかいい!本作はアメリカだけで1,200万枚、全世界だと1,700万枚というセールス記録を持っているだけあって、アッパーなダンスナンバー「Sussudio」をはじめとした「これぞ80sポップ」ともいうべきバブリーな楽曲と、「One More Night」のようなしっとりしたバラードも含め、全体的にメロディーやサウンドやもちろん彼のボーカルもとてもよかった。
この「One More Night」だけは以前から知っていた曲だけど、あらためて聴いてみるとThe Killersの「Be Still」のビートの元ネタであることに気付いたり、「Take Me Home」におけるシンセ音やビートに2010年代以降のチルウェイヴ/ドリームポップのルーツが垣間見えたりと、新たな発見も楽しめた。ちなみにThe 1975にはあんまり似ていない。
Jon Hopkins / Immunity (2013)
★★★★☆
グリッチ系のビートとアンビエント感のあるシンセが心地よい。ほぼピアノの美しい曲があるのもよかった。一つ残念だったのは、目当てだった「Breathe This Air」がPurity Ringのボーカルバージョンではなくインストバージョンでの収録だったこと。
Liz Phair / Whip-Smart (1994)
★★★★☆
つい最近まで何となくアコースティック色の強いフォーク系SSWだと思っていたのは、リリス・フェア(サラ・マクラクランの提唱した女性主導イベント)と名前が似ていたからか。しかしこちらはジュリアナ・ハットフィールドもしくは元Ashのシャーロット・ハザレイにも通じるひねくれオルタナ・ギター・ロック。それぞれの曲が個々に特徴があって、アルバム全体としてメリハリが出ており、メロディーも全曲最高だった。特にタイトル曲「Whip-Smart」がオールディーズをカバーしたスーパーカーみたいなサウンドで素晴らしかった。
Blondie / Eat To The Beat (1979)
★★★☆☆
大ヒットした「Parallel Lines」の次のアルバムということで、彼女たちのパンキッシュでポップでミクスチャーな魅力が凝縮された作品だと思う。シングル「Dreaming」「Accidents Never Happen」をはじめとして疾走感のある曲が多い一方で、「The Tide Is High」を彷彿させるレゲエナンバー「Die Young Stay Pretty」もある。だけどデビーがただむしゃらに叫んでいる「Victor」だけは謎。
Kings of Leon / Mechanical Bull -Deluxe Edition-
(2013)
★★★☆☆
古き良きアメリカン・ロックと現代のロックが見事なバランスで融合されていると思う。中盤少し中だるみはしたけど後半は前作「Come Around Sundown」にも通じるレイドバックした雰囲気があって好き。デラックス盤収録のボーナストラックもメロディアスで良い。
Bibio / Silver Wilkinson (2013)
★★★☆☆
前半はややアンビエントな要素が強めで、中盤から少しダンサブルな要素も加わってくる構成。曲によって雰囲気が大きく異なり、正直「え、こんな曲もやるの?」と戸惑ってしまうような曲も。どの曲もよかったけど、出だしがゆったりした曲順は自分の理想とは違うかな。
Phil Collins / ...But Seriously (1989)
★★★☆☆
哀愁感漂う名バラード「Another Day In Paradise」目当て。アルバム全体としては割と「No Jacket Required」に近い印象で、ホーンセクションの入ったアップテンポな曲もバラードも良曲多し。それにしても本当に素晴らしい声の持ち主だと思う。
Siouxsie And The Banshees / The Scream (1978)
★★★☆☆
デビュー作であるこちらは、全編を通してゴスなムードが漂うパンキッシュなサウンド。しかしフリーキーな要素が強く、「Juju」のようにダークな中に光るポップなメロディーというのはまだ弱い。かなりメロディーを崩して歌っているのが少し微妙で、ビートルズ「Helter Skelter」のカバーは最初に聴いた時、ただの似ている曲だと思ってしまったほど。
Phil Collins / Hello, I Must Be Going! (1982)
★★★☆☆
有名なThe Supremes「You Can't Hurry Love」のカバー目当て。でも、非常に良かった「No Jacket Required」ほど楽曲のクオリティは高くない上に、曲の流れも悪い。特に4曲目「Do You Know, Do You Care?」から「You Can't Hurry Love」への流れとかは最悪。しかしそれでも彼のハイトーン・ボーカルは素晴らしいのだけど。2曲目「I Cannot Believe It's True」はどことなくマイケル・ジャクソン「Don't Stop 'Till You Get Enough」と同様に、ジャスティン・ティンバーレイクの「Take Back The Night」のベースとなっていそうなソウルフルな曲で非常にかっこいい。
Saves The Day / In Reverie (2003)
★★☆☆☆
エモのイメージがあったけど、ギターのディストーションやドラムサウンドがハードな割にメロディーが爽やかでむしろギターポップに近い感じ。ボーカルが軽くてちょっと拍子抜けしたので、もう少し力を入れて歌ってほしいところ。曲はどれもよく書けている。
The Cure / Three Imaginary Boys (1979)
★★☆☆☆
デビューアルバムである本作は、ダークでゴスなムードが非常にかっこいいのだけど、レコーディングやミキシングの時期が曲によって違うのか、音の質感にだいぶバラツキがあるように感じられる。結果的に、編集盤のようなまとまりのなさが出てしまっているのがもったいない。特に「10:15 Saturday Night」はシンバルの高音が耳にキツく、アルバム用に再録してほしかったところ。あと心臓止まりかける「Subway Song」やラストの「The Weedy Burton」はちょっと意味不明だった(笑)。
Everything But The Girl / The Language of Life
(1990)
★★☆☆☆
1年ちょっと前に聴いていたら気に入っていたと思うけど、洗練され過ぎているあまり聴き流してしまい耳に残らなかった。でも落ち着きたい時や夜寝る前に聴くにはとてもいいと思う。
Avicii / True (2013)
★★☆☆☆
シングル「Wake Me Up」が大ヒット中ということもあり、アルバムにはアコースティック・ギターによるカントリー調の音がフィーチャーされた曲がいくつか。アメリカっぽいメロディーで歌いあげるソウルフルなシンガーの起用はデヴィッド・ゲッタやカルヴィン・ハリスとの差別化を意図しているのだろうか。確かに「Wake Me Up」を初めて聴いた時は新鮮さも感じたものの、その手法を全面に押し進めた本作は今となっては特に新鮮さもなく、微妙なダサさのあるフレーズや曲展開の引き出しの少なさが目立ってしまっている。
Kings of Leon / Only By The Night (2008)
★★☆☆☆
有名な「Sex on Fire」「Use Somebody」はそれなりに好きではあったけど、彼らに関してはこの次のアルバム「Come Around Sundown」が好き過ぎて、スタジアム感がより強いイメージのあった本作はこれまで避けてきていた。サウンド的には重い曲でもドラムの音が軽めなのと、後半少しダレるところがあるのが残念。それでもラストはしっとりといい感じで終わってくれたのだけど、国内盤ボーナストラックのCSSリミックスが全て台無しにしてしまっている。
Alphabeat / This Is Alphabeat (2008)
★★☆☆☆
当時「Fascination」好きだったなあ、でもこの曲以外知らないやということで聴いてみたのだけど、「Fascination」で抱いていた80sポップ感というかWHAM!みたいな感じが他の曲では全くなくて肩透かし気味。ボーカルの声質やサウンド、ビジュアル的にももっと80s感満載なのを期待していたのだけど…。先月のBlack Kidsと同様、2000年代後半のインディー系バンドはどれもリアルタイムではスルーしていた分思い入れもなく、後追いで聴いてみても今さらあまりハマれないのかも。
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