初聴きディスクレポート |
2013年1月に入手した音源の初聴き感想まとめです。これから注目新譜のリリースラッシュですが、1月はとりあえず抑えめ。
<★の解説>----------------------
★★★★★年間ベストアルバム20位以内確実
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆標準レベルの良作
★★☆☆☆若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
----------------------------
それでは1月の「Album of The Month」の発表です。
<★の解説>----------------------
★★★★★年間ベストアルバム20位以内確実
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆標準レベルの良作
★★☆☆☆若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
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それでは1月の「Album of The Month」の発表です。
【Album of The Month - Esben And The Witch /
Wash The Sins Not Only The Face (2013)】
★★★★★
まずこのバンドはライブが素晴らしい。2011年にサマソニ東京で観た時は、深夜3時過ぎの出演ながらこの年のサマソニのベストアクトに挙げたほど。しかしデビューアルバム「Violet Cries」はというと、実はそこまで気に入らなかった。ウィッチハウスとシューゲイザーとポストロックのいいとこ取りという感じではあったものの、展開やメロディーが地味で一本調子な印象だったせいか、約44分のランタイムが60分くらいに感じられたりも。
しかしセカンドとなる本作では、前作を踏襲しつつも楽曲の幅が広がると共にスリリングな展開が増強されてビートは攻撃性を帯び、メロディーはキャッチーさとメランコリック度が増して、よりメリハリの効いたものに。とは言っても従来のダークなイメージは健在。WarpaintやThe xx、The Knife、Daughterなどが好きな人にもオススメ。
Esben And The Witch - "Deathwaltz"
Sleeper Agent / Celabrasion (2011)
★★★★★
昨年末に届いて聴いていたけど、12月の「初聴きディスクレポート」に間に合わなかったので。すでに2012年の「下半期ベストアルバム(2012年リリース作品を除く)」でも3位に選出済み。Fun.やCage The Elephantとツアーを回った経験もある米ケンタッキー出身の5人組による2011年(日本盤は2012年)リリースのデビューアルバム。キャッチーなメロディーと元気いっぱいの男女の掛け合いボーカルが魅力で、パンキッシュでラウドにしたGrouploveといった感じ。
Sleeper Agent - "Force A Smile"
Zomby / Dedication (2011)
★★★★☆
2011年リリース。ダブステップ以降、ウィッチハウス以降を感じさせるダークでアンビエントな作品。すべての文字情報を表面に記し、裏面はいっさいの文字情報を(バーコードさえも)排除するという挑戦的なアートワークからも、彼の反体制的な精神が感じられる。ダークではあるが、チップチューン調の「Black Orchid」をはじめどの曲もキャッチーでコンパクト(1、2分程度の曲が多い)なので非常に聴きやすい。
Christopher Owens / Lysandre (2013)
★★★★☆
クリストファーがフランスのフェスで出会ったスタッフの女性、リサンドレに思いを馳せたコンセプト・アルバム。そのストーリーに沿って、前半は楽しげで華やいだ雰囲気の曲が並ぶ。飛行機のジェット音を挟んで、後半は遠く離れたリサンドレを思い浮かべるかのように内省的で哀愁漂うナンバーが並ぶ構成と、同じフレーズを何度かリフレインさせる点も含めてベタではあるが、わかりやすくて良い。本作から感じられたのは、リサンドレに対する「好きだ、また君に会いたい」ではなく「あの時は楽しかったね、元気にしてる?」という思いであり、きっとこれは単純な恋物語とは違うのだと思う。
Burial / Truant (2012)
★★★★☆
「ダブステップのその先」を感じさせる2曲入りEP。2曲のみとはいえ、それぞれ11分と14分で聴き応えはフルアルバム級。モクモクと黒い霧が立ち込める中でぼんやりと光が照らしているような「Truant」は、異なるビートによって4つほどのセクションに分けられた構成も見事。
Canopies and Drapes /
"Violet Lilly Rose Daisy (2011)",
"And Putting Love Away (2012)",
"Stray Sheep’s Delight (2012)"
★★★★☆
東京発、元Nu Clear Classmateのchickによるソロプロジェクト。「ガーリィ」をテーマに、ミニマルなフレーズのリフレインを軸にしながらもメランコリックなメロディーと浮遊感のあるシンセ音によって彩られたエレポップ・サウンドは、チルウェイヴやシューゲイザーからの影響もそこかしこに見られ、単純に「エレクトロ・ポップ」という表現では語れないほど様々な音楽的バックグラウンドを感じさせる。エイフェックス・ツインとスヌーピーとゴダールが並列に登場する「Live In The Snow Globe」(「Violet~」収録)をはじめとしたユニークな歌詞も秀逸。この曲の他、「Solaris」「Dead End」などはビートも非常にユニークで、細かくてキレのいいハイハットの音が気持ちいい。ノイジーなギターやキラキラしたシンセなど多彩な音が鳴っていながらも、引き算がうまいのでトゥーマッチな感じがなく、程よく音の隙間を感じさせる。
N.W.A. / Straight Outta Compton (1988)
★★★★☆
ドクター・ドレーやアイス・キューブが在籍した伝説的ヒップホップグループの1988年作。「ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500」で47位に選ばれたという名盤なだけあって、クールで先鋭的なビートとファンキーなサンプリング、そして過激なリリック(もちろん言葉の断片からしか判断できないけど)がとてもかっこいい。
Miles Davis / "Bitches Blew (1969)",
"Agharta (1975)", "Pangaea (1975)"
★★★★☆
未知のジャンル開拓。ジャズと言えばまずはやはりマイルスからということで、ジャケットがかっこいいこの3枚から手を付けてみた。が、これは正直ジャズではなく、アフロ・ファンク・ロックとも言うべきだろう。突然大音量で鳴りだす電子音や激しいパーカッション、ファンキーなベース、エレクトリックギターだけでなく、まずドラムが極めてロック的なダイナミズムに溢れている。この時期の彼は「エレクトリック・マイルス期」と呼ばれているだけあって、前衛的なロックとR&Bとアフロ・ビートの融合によりカオティックでスリリングな演奏が満載。特に日本で行われた公演をそのままライブレコーディングした「Agharta」「Pangaea」はかなり衝撃的だった。それぞれの作品がCD2枚組で、1曲20分超はあたりまえ、40分超どころか60分に及ぶ長尺曲もあり、通して聴くにはそれなりの意気込みがいるけど今後も愛聴盤になりそう。
森田童子 / ぼくたちの失敗~森田童子ベストコレクション (2003)
★★★☆☆
1975年デビューの女性シンガーソングライター。今から20年前のTVドラマ「高校教師」の主題歌に「ぼくたちの失敗」が起用され大ヒットを記録。子供の頃にその曲を聴いた程度だったけど、突然あの曲の白昼夢のような儚いメロディーとリヴァーブのかかった舌足らずなボーカルを思い出し、ベスト盤を手にした。70年代のフォークだけど、つぶやきともささやきともとれるこの歌声を聴くとなぜかドリームポップやシューゲイザーを連想してしまう。どこかしらに「死」を感じさせたりもする歌詞も、言葉のチョイスが素敵で強く印象に残った。
N'夙川BOYS / 24HOUR DREAMERS ONLY! (2012)
★★☆☆☆
どこか懐かしさを感じるメランコリックなメロディー。リンダdada(女性ボーカル)の声がかわいらしくも力強くてとても好き。そのせいかマーヤLOVE(男性ボーカル)が余計に感じられてしまう曲もあり。もちろんこの、全くタイプの異なる2人のボーカルの掛け合いがこのバンドの最大の魅力だとは思うけど。The Vaselinesのオマージュが感じられる「Freedom」のスカスカ感がいい。
Wash The Sins Not Only The Face (2013)】
★★★★★
まずこのバンドはライブが素晴らしい。2011年にサマソニ東京で観た時は、深夜3時過ぎの出演ながらこの年のサマソニのベストアクトに挙げたほど。しかしデビューアルバム「Violet Cries」はというと、実はそこまで気に入らなかった。ウィッチハウスとシューゲイザーとポストロックのいいとこ取りという感じではあったものの、展開やメロディーが地味で一本調子な印象だったせいか、約44分のランタイムが60分くらいに感じられたりも。
しかしセカンドとなる本作では、前作を踏襲しつつも楽曲の幅が広がると共にスリリングな展開が増強されてビートは攻撃性を帯び、メロディーはキャッチーさとメランコリック度が増して、よりメリハリの効いたものに。とは言っても従来のダークなイメージは健在。WarpaintやThe xx、The Knife、Daughterなどが好きな人にもオススメ。
Esben And The Witch - "Deathwaltz"
Sleeper Agent / Celabrasion (2011)
★★★★★
昨年末に届いて聴いていたけど、12月の「初聴きディスクレポート」に間に合わなかったので。すでに2012年の「下半期ベストアルバム(2012年リリース作品を除く)」でも3位に選出済み。Fun.やCage The Elephantとツアーを回った経験もある米ケンタッキー出身の5人組による2011年(日本盤は2012年)リリースのデビューアルバム。キャッチーなメロディーと元気いっぱいの男女の掛け合いボーカルが魅力で、パンキッシュでラウドにしたGrouploveといった感じ。
Sleeper Agent - "Force A Smile"
Zomby / Dedication (2011)
★★★★☆
2011年リリース。ダブステップ以降、ウィッチハウス以降を感じさせるダークでアンビエントな作品。すべての文字情報を表面に記し、裏面はいっさいの文字情報を(バーコードさえも)排除するという挑戦的なアートワークからも、彼の反体制的な精神が感じられる。ダークではあるが、チップチューン調の「Black Orchid」をはじめどの曲もキャッチーでコンパクト(1、2分程度の曲が多い)なので非常に聴きやすい。
Christopher Owens / Lysandre (2013)
★★★★☆
クリストファーがフランスのフェスで出会ったスタッフの女性、リサンドレに思いを馳せたコンセプト・アルバム。そのストーリーに沿って、前半は楽しげで華やいだ雰囲気の曲が並ぶ。飛行機のジェット音を挟んで、後半は遠く離れたリサンドレを思い浮かべるかのように内省的で哀愁漂うナンバーが並ぶ構成と、同じフレーズを何度かリフレインさせる点も含めてベタではあるが、わかりやすくて良い。本作から感じられたのは、リサンドレに対する「好きだ、また君に会いたい」ではなく「あの時は楽しかったね、元気にしてる?」という思いであり、きっとこれは単純な恋物語とは違うのだと思う。
Burial / Truant (2012)
★★★★☆
「ダブステップのその先」を感じさせる2曲入りEP。2曲のみとはいえ、それぞれ11分と14分で聴き応えはフルアルバム級。モクモクと黒い霧が立ち込める中でぼんやりと光が照らしているような「Truant」は、異なるビートによって4つほどのセクションに分けられた構成も見事。
Canopies and Drapes /
"Violet Lilly Rose Daisy (2011)",
"And Putting Love Away (2012)",
"Stray Sheep’s Delight (2012)"
★★★★☆
東京発、元Nu Clear Classmateのchickによるソロプロジェクト。「ガーリィ」をテーマに、ミニマルなフレーズのリフレインを軸にしながらもメランコリックなメロディーと浮遊感のあるシンセ音によって彩られたエレポップ・サウンドは、チルウェイヴやシューゲイザーからの影響もそこかしこに見られ、単純に「エレクトロ・ポップ」という表現では語れないほど様々な音楽的バックグラウンドを感じさせる。エイフェックス・ツインとスヌーピーとゴダールが並列に登場する「Live In The Snow Globe」(「Violet~」収録)をはじめとしたユニークな歌詞も秀逸。この曲の他、「Solaris」「Dead End」などはビートも非常にユニークで、細かくてキレのいいハイハットの音が気持ちいい。ノイジーなギターやキラキラしたシンセなど多彩な音が鳴っていながらも、引き算がうまいのでトゥーマッチな感じがなく、程よく音の隙間を感じさせる。
N.W.A. / Straight Outta Compton (1988)
★★★★☆
ドクター・ドレーやアイス・キューブが在籍した伝説的ヒップホップグループの1988年作。「ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500」で47位に選ばれたという名盤なだけあって、クールで先鋭的なビートとファンキーなサンプリング、そして過激なリリック(もちろん言葉の断片からしか判断できないけど)がとてもかっこいい。
Miles Davis / "Bitches Blew (1969)",
"Agharta (1975)", "Pangaea (1975)"
★★★★☆
未知のジャンル開拓。ジャズと言えばまずはやはりマイルスからということで、ジャケットがかっこいいこの3枚から手を付けてみた。が、これは正直ジャズではなく、アフロ・ファンク・ロックとも言うべきだろう。突然大音量で鳴りだす電子音や激しいパーカッション、ファンキーなベース、エレクトリックギターだけでなく、まずドラムが極めてロック的なダイナミズムに溢れている。この時期の彼は「エレクトリック・マイルス期」と呼ばれているだけあって、前衛的なロックとR&Bとアフロ・ビートの融合によりカオティックでスリリングな演奏が満載。特に日本で行われた公演をそのままライブレコーディングした「Agharta」「Pangaea」はかなり衝撃的だった。それぞれの作品がCD2枚組で、1曲20分超はあたりまえ、40分超どころか60分に及ぶ長尺曲もあり、通して聴くにはそれなりの意気込みがいるけど今後も愛聴盤になりそう。
森田童子 / ぼくたちの失敗~森田童子ベストコレクション (2003)
★★★☆☆
1975年デビューの女性シンガーソングライター。今から20年前のTVドラマ「高校教師」の主題歌に「ぼくたちの失敗」が起用され大ヒットを記録。子供の頃にその曲を聴いた程度だったけど、突然あの曲の白昼夢のような儚いメロディーとリヴァーブのかかった舌足らずなボーカルを思い出し、ベスト盤を手にした。70年代のフォークだけど、つぶやきともささやきともとれるこの歌声を聴くとなぜかドリームポップやシューゲイザーを連想してしまう。どこかしらに「死」を感じさせたりもする歌詞も、言葉のチョイスが素敵で強く印象に残った。
N'夙川BOYS / 24HOUR DREAMERS ONLY! (2012)
★★☆☆☆
どこか懐かしさを感じるメランコリックなメロディー。リンダdada(女性ボーカル)の声がかわいらしくも力強くてとても好き。そのせいかマーヤLOVE(男性ボーカル)が余計に感じられてしまう曲もあり。もちろんこの、全くタイプの異なる2人のボーカルの掛け合いがこのバンドの最大の魅力だとは思うけど。The Vaselinesのオマージュが感じられる「Freedom」のスカスカ感がいい。
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