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初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.40(2012年10月)

10月に買った&借りたアルバムの「いちばん最初に聴いたとき」の感想まとめです。下半期になってからあまりピンと来る新譜に巡り合えず、7月から9月までで5つ星を獲得した新譜がPassion Pitのみだったり、「Album of The Month」も旧譜からの選出が続いていましたが、ようやく新譜にもいい波が来たようです。

<★の解説>----------------------
★★★★★年間ベストアルバム20位以内確実
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆標準レベルの良作
★★☆☆☆若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
----------------------------

ではさっそく10月の「Album of The Month」の発表です。



【Album of The Month - Ellie Goulding / Halcyon】
★★★★★
ellie-goulding-halcyon-album-cover

2010年リリースのデビュー作でBBCのSound of 2010とBRIT AwardsのCritics' Choiceを受賞し、2011年にリリースされたシングル「Lights」が今年に入ってからUSチャートで大躍進(2012年10月31日現在14位。最高位は2位で、44週にわたってロング・チャートイン中)。そんな絶好のタイミングでリリースされた待望のセカンド作は、ファーストの成功からくるプレッシャーや媚びを全く感じさせない、ひたすらストイックに彼女の魅力を突き詰めた作品となった。

オープニング・ナンバー「Don't Say A Word」で、彼女が歌い始めてからの10秒を聴いただけで、表現力が前作から格段にアップしているのがわかる。深いリヴァーブに包まれたエリーのボーカルは、よりエモーショナルで神秘性を増しており、先行シングル「Anything Could Happen」におけるシャウトや「Atlantis」におけるファルセットなどにおいてもその成長ぶりは顕著にあらわれている。

トラックに関しては、SSW然としたアコースティックな感触は前作と比べてやや後退。いわゆるエレクトロ・ポップにカテゴライズされるものの、レディ・ガガやケイティ・ペリーのようなポップ・アイコンたちによるそれとはベクトルが異なり、そこに享楽性や過剰な自己主張のようなものは感じられない。その代わり、キラキラとまばゆいシンセと、ピアノ/ストリングス/ハープなどによるチェンバーポップ調のアレンジが施され、重厚で深みのあるウォール・オブ・サウンドに仕上がっており、彼女の声との相性も抜群にいい。また、彼女と交際していたSkrillex(つい先日離別した模様)からの影響を感じさせる作風になるのではと密かに予想していたが、確かにブロー・ステップ風のアレンジは数曲で見られるものの、あくまでビートのみの引用に留めることで彼女らしさをしっかりと残している。とりわけ、ブロー・ステップにドラムンベースをミックスしたような「Figure 8」が白眉。

Ellie Goulding - "Figure 8"


アルバムのフルストリームが上がってました。そのうち消されるかもしれませんが…。






The Raveonettes / Observator
★★★★★
ここ最近はダーク路線が続いていて、先行曲「Observations」「She Owns The Streets」、あるいはモノトーンのアートワークからして同路線を続けるのかと思いきや、全体を通して聴いてみるといつになくポップでキラキラした曲が多い印象。それでいて最初の2作(「Chain Gang of Love」、「Pretty In Black」)ともまた違ったキャッチーさがあり、新鮮な驚きを与えてくれる。

The Raveonettes - "Downtown"






James Iha / Look To The Sky
★★★★★
何年経っても色褪せない、素晴らしい名曲が詰まった前作「Let It Come Down」から14年、あまりに長いインターバルに、いつしか新作がリリースされることさえも諦めかけていた中、ついにリリース(日本盤は3月に先行リリース)されたセカンド。それだけでもうれしいのだけど、今回はシンセなども大々的に取り入れているということで不安と期待が入り混じっていた。しかし瑞々しいメロディーと素朴で優しい歌声は14年という歳月を感じさせないほどに不変で、シンセが加わったことでキラキラ度が増し、期待を大きく上回る仕上がりに。

James Iha - "To Who Knows Where"






Matt And Kim / Lightning
★★★★★
前作「Sidewalks」でサウンド的にも大きな飛躍を見せた男女デュオの4作目。前回ほどの驚きはないものの、カラフルなシンセの音色やリズミカルなビート面がさらに強化されたものになり、「Now」をはじめとした性急なパンクナンバーなど聴きどころ満載。聴く人をポジティブにさせるようなキャッチーなメロディーと相変わらずの爽やかなボーカルが素晴らしい。

Matt And Kim - "Now"






Brittle Stars / Occasional Appearance
★★★★☆
2001年に解散したUSインディー・ギターポップ・バンドの99年作。2011年にボートラを加えて日本盤がリリースされており、「なぜこのタイミングで?」と思ったけど音を聴いて妙に納得。Slowdiveを思わせる、フェイザーのかかったシンセ音や、けだるく美しいウィスパーボイスの女性ボーカルにより、シューゲイザー好きの琴線に触れるサウンドであるもののリヴァーブや轟音ギターはほとんどなく、サウンド的にはギターポップやドリームポップに位置付けられると思う。同シーン隆盛の今こそ正当に評価されるべきバンド。




Operation Space Opera / Songs From The Black Hole
★★★★☆
お蔵入りになったWeezerの幻のセカンドアルバム「Songs From The Black Hole」を、リヴァースのソロアルバム収録曲やネット上に散見できるデモを元にファンが再現・再構築したアルバム。全27曲で、Operation Space OperaのBandcampからフリーダウンロード可。

もちろんWeezer自身による演奏ではなくカバーという形ではあるものの、オリジナルが音質の粗いデモだということもあって、本家よりこちらの方が全体的にクオリティが高い。随所にリプライズを絡めた彼らなりのアレンジもオリジナリティがあって面白い。こうしてあらためて「スペース・ロック・オペラ」というコンセプトに基づいた独特な展開(多くはメドレー形式だったりする)をみせる各楽曲を聴くと、リヴァースのソングライティング能力や編集能力の高さに驚かされる。Weezerがこのアルバムをお蔵入りにしたことが非常に悔やまれるとともに、この作品に刺激されて彼らが再レコーディング・正式リリースしてくれないかと願わずにはいられない。
Operation Space Opera



The Jon Spencer Blues Explosion / Meat + Bone
★★★★☆
彼らの最新のアーティスト写真を見ると正直、ただのくたびれたオッサン(失礼)に見えるし、もう全盛期はとっくに過ぎたバンドと、大して期待もしていなかった。各メディアが本作について「Orange」の頃を思わせると書いているのを見ても、ハイプだろうとタカをくくっていたのだけど、先行曲「Black Mold」を聴いてあまりのカッコよさにぶっ飛んだ。最近はドリーミーでユルユルした音楽をよく聴いていた反動で、こういうパンキッシュでストレートなロックンロールには久々にゾクゾクする感覚を覚えたし、アルバム全体を通して確かに「Orange」期を彷彿とさせる若さやエネルギッシュさに満ちている。ジョンのトレードマークとも言える「ウッ!」「オーラ゛ィ!」「イェ゛ー!」みたいなシャウトが健在なのもうれしい。




MIKA / The Origin of Love
★★★★☆
最初の2曲を聴いた段階では、ずいぶん大人しくこぎれいにまとまってしまったなあという印象。しかし3曲目以降は徐々にMIKAらしさが現れ、8曲目「Love You When I'm Drunk」なんかはMIKAらしいマジカル・ポップ・サウンドが全開。映画「Kick-Ass」の主題歌だったRedOneとの共作曲「Kick Ass」から予見できたようにエレクトロ・ポップに振り切れているものの、決してMIKAらしさを失うことなく大衆性とアーティスティックな感性がバランスよくミックスされている。




Muse / The 2nd Law
★★★☆☆
既に賛否両論巻き起こっているけど、自分は「方向性としては支持、でもこうならもっと良かったのに」という惜しい作品。Museはいろいろな音楽的側面を持っているけど、中でも大きな二つの柱は「メタリック」と「シンフォニック」だと思う。本作ではド派手なギターリフや唾飛ばしまくり・ファルセットしまくりのアツ苦しいボーカルなどの「メタリック」な要素は影を潜め、その代り「シンフォニック」な要素がより一段と強調され、アルバムの中でメロウなパートの占める割合がこれまでより多く感じられる。彼らも既に6作目なので、これまでの方法論から脱却する必要性もあるし、そういった意味ではこの変化は必然だし、成功とも言える。

ただ、シンフォニックな作品を作るのであれば自ずとアルバム全体のメリハリや曲順が重要になってくると思う。そんな中でクリスがボーカルを担当した2曲は明らかに、「Museの完成形ここに極まれり」とも言うべきその他の楽曲に比べると平凡すぎるし、アルバム全体の統一感も失われてしまっているように思う。クリスの曲は決して悪くなく、むしろ彼の美声やメロディーセンスに驚かされたほど。クリスのソロ名義でリリースしたらこれはこれで結構気に入ったと思うのだけど、Museのアルバムとしてはこの2曲はない方がすっきりまとまったはず。あと欲を言えば、「The 2nd Law:Unsustainable」はオープニングに持ってきた方がカッコよかったと思う。




Apparat / Walls
★★★☆☆
2011年リリースの「The Devil's Walk」は当ブログの年間ベストでも8位にランクイン。本作はその前作にあたる2007年のアルバム。序盤は少し毛色の変わった曲があるけど、中盤以降は「The Devil's~」収録曲にも通じる美しくメロディックなアンビエント・エレクトロニカが続く。中でも「Head Up」などは珠玉の名曲と言えるし、確実に「The Devil's Walk」という傑作の布石になったと言える作品。




Tamaryn / Tender New Signs
★★★☆☆
前作にあたるデビュー作は、好きな曲もいくつかあるもののアルバム全体としてはダウナーでダルすぎ、飽きるのも早かった。本作ではリズム面が以前よりも強化されて躍動感があり、前作よりも長く聴けそう。アートワークも秀逸。




Dan Deacon / America
★★★☆☆
変態チック、チャイルディッシュ、パンキッシュな電子音ということでエイフェックス・ツインとの共通点も(サウンド的には全く異なるけど)感じさせる。メロディーはミニマルだけどキャッチーで、ブリーピーな電子音があちこちから聞こえてくるのも面白い。後半に収録された組曲「USA」Ⅰ~Ⅳが壮大で、シンフォニックなアレンジ含めて素晴らしいのは確かなのだけど、アルバム通して聴くとクライマックスっぽい雰囲気が20分近く続くのがちょっと冗長に感じられるかも。




Feist / Let It Die
★★★☆☆
カバー曲が半数を占めるだけあって、各楽曲のスタイルは見事にバラバラ。しかしファイストの歌によって不思議と(ひとつのバラエティ豊かな作品として)まとまりのようなものも感じられた。それにしても本作や昨年の「Metals」を聴くと、「The Reminder」(2007年作)がいかにポップに振り切れたアルバムだったかということがわかる。個人的には「The Reminder」路線支持だけど、これはこれであり。




The Wannadies / Bagsy Me
★★★☆☆
もう10年近く前からいつか買おうとしてたアルバムをようやくゲット。ギターポップ、パワーポップファンにはたまらない素敵なメロディーが詰まっていて、数回聴いただけでメロディーを口ずさんでしまうほどにキャッチー。こういう青春ソングは10代のうちに聴いておけばよかったと後悔。同時購入した「Be A Girl」はまだ未聴なのでこちらも楽しみ。




The Wake / Hear Comes Everybody
★★★☆☆
もちろん、現代のインディー系ドリーム・ポップ・バンドが彼らから影響を受けているんだということを理解した上で言うけど、85年リリースながら最近のバンドと言われても疑わないサウンド。エバーグリーンなメロディー、ポストパンク調のドラム、ネオアコなギター、そして何といっても浮遊感漂う美しいシンセが素晴らしい。ただ、このシンセの単音は確かに好きなんだけど、ほぼ全編で同じ感じで使われているのでアルバムとしてはやや単調になってしまっている一面も。




Slowdive / Pygmalion
★★★☆☆
90年代シューゲイザー代表バンドの3rdアルバム。2ndの「Souvlaki」が大好きな自分としては、難解でサイケデリックでミニマル、そして打ち込み中心な本作の作風に驚かされたけど、感情を極力抑えた無機質な電子音とゴシックなムードすら漂う幽玄なボーカルの妙は他の追随を許さないほどにオリジナリティーに溢れており、本作を彼らの最高傑作として挙げるファンが多いのも頷ける。よってレディオヘッドに例えると「Souvlaki」は「The Bends」、本作は「Kid A」と言ったところか(ただし本作はセールス的には不振だったそう)。このあと解散せずにいたらどんな作品を作っていたか非常に気になるところではある。




Prefab Sprout / 38 Carat Collection
★★★☆☆
82年デビューのUKバンドの2枚組ベスト盤。実は今まで全く聴いたことがなかったけど、いい評判をよく聞いていたので借りてみた。ベスト盤なこともあって曲調は実にさまざまで、38曲というヴォリュームなので1回聴いただけではまだ彼らの本質を捉えきれてはいない。とりあえず、ペット・ショップ・ボーイズが歌っていても違和感なさそうなエレポップ曲「If You Don't Love Me」がとてもよかった。




Death Grips / No Love Deep Web
★★★☆☆
ナニやら所属レコード会社とモメたらしく、突如フリーで配信されたセカンドアルバム。今年2作目ということで、活動が勢いにノッているということもあるのだろうけど、強烈にドープでイルなヒップホップ。それだけに聴くには気分を選ぶけど、嫌なことがあった時にはこれを聴いてスカッとしたい。
※諸事情によりアートワークは掲載自粛



Young Magic / 2012-09-06 Hopscotch Festival
★★★☆☆
2012年最も期待されるデビューアルバムとして当ブログの特集で挙げておきながら、実はアルバム「Melt」は買っていないので、代わりにフリーで配信されたこのライブ盤をDL。シューゲイザーとダブステップとウィッチハウスのいいとこ取りなサウンドではあるけど、最近の気分的にこういうモードではなくて…。聴いた限り、特にライブがすごいということもなさそう。
youngmagic2012-09-06-1



Larrikin Love / The Freedom Spark
★★☆☆☆
今まで全く聴いたことがない状態で、ミステリー・ジェッツの1stのような音を想像していたんだけどこれはまさにリバティーンズ、もしくはダーティ・プリティ・シングスにかなり近いと感じた。後半の少しレイドバックしたトラッドな雰囲気を感じさせる曲、特に日本盤ボーナストラックの「It Explodes」「A Little Peace In My Heart」「Dead, Long Dead」3曲などはとてもよかったものの、パンキッシュな曲は正直リバティーンズの二番煎じな印象が強かった。




Johnny Boy / Johnny Boy
★★☆☆☆
シアトリカルでキラキラしたポップな楽曲と言えば、自分にとってはどストライクな系統なはずなのだけど。メロディーや曲そのものよりもミックス/マスタリングの悪さが気になってしょうがなかった。ベースの音がやたらと響いていたり、音の配置が雑然として聞こえるし、例えばThe Go! TeamやBeckなどは同じようにたくさんの音を詰め込んでいてもそれらはバランスよく整理されていたり、その混沌さがミキシングの妙によって逆に大きな魅力にもなるのだけど…。

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