The Cribs |
いきなり結論ですが、The Cribsの5枚目のアルバム「In The Belly of The Brazen Bull」が素晴らしい。
とにかくエモーションが爆発している。青すぎるメロディーに、胸を締め付けるようなシャウト交じりのボーカル/分厚いコーラス/歪みまくったギター/ドシャメシャなバースト・ドラム/テンポチェンジやひねくれた展開を見せるアレンジ。このアルバムが持っている、かくも魅力的な要素のひとつひとつは、かつてウィーザーが96年のセカンド「ピンカートン」でみせたロック的なダイナミズムや文系ナードな繊細さと非常に似た感触がある。
ここまで書いておいて白状すると、彼らのこれまでのアルバムは実は聴いたことがない。というのも、まだデビューしたての2004年にサマーソニックでライブを観た際に、「ものすごく演奏がヘタ」という印象を持ってしまい、その後もボーカルのライアン・ジャーマンの前髪パッツンな髪型やヘソ出しのピタピタTシャツ姿などを見て、「ものすごくダサいバンド」という認識のまま聴かず嫌いしていたのだ。
2008年にザ・スミスのギタリスト、ジョニー・マーが加入した際にも、頭の中はクエスチョン・マークだらけだった。「なぜあんなバンドに?」そしてマー先生が正式加入して制作されたアルバム「Ignore The Ignorant」にも自分の食指はピクリとも動かずにスルー。
そんな自分であったけど、今回のアルバム「In The Belly of The Brazen Bull」で初めて彼らのアルバムを聴いてみようという気にさせたのは、他でもないプロデューサー陣だった。本作のプロデューサーはスティーヴ・アルビニ(ニルヴァーナ、PJハーヴェイ、ピクシーズ、クラウド・ナッシングスなど)とデイヴ・フリッドマン(フレーミング・リップス、モグワイ、マーキュリー・レヴ、ネオン・インディアンなど)という、硬質で骨太なロックサウンドを得意とする2人。自分にとっては、「信頼できる音に仕上げるプロデューサー」として1位2位を争う2人だ。特にデイヴ・フリッドマンについては、彼のスタジオワークがいかに素晴らしいかというテキストを長々と書いている記事があるので、時間があればぜひ読んでみてください。
プロデューサーが2人と言ってもアルビニとフリッドマンが共同作業したというわけではなく、曲ごとに担当が異なるのだけど、このアクの強い2人の手掛けたサウンドは不思議と見事に調和している(ただしAbbey Road Studioで録音された最後の4曲だけは少し音の質感が異なり、浮いているように感じられた)。音的にはアルビニ色はそこまで強くなく、そのかわり誰でもすぐにフリッドマンの手によるものとわかる破裂系のスネアドラムの音や割れ気味のシンバル音が特徴的。そんな爆裂ドラムサウンドで包まれた本作の魅力の数々は、冒頭にも書いた通りである。
個人的には、組曲調になったラストの4曲(「Stalagmites」~「Arena Rock Encore with Full Cast」)はボーナストラック的に考えたい。ということで勝手に本編を10曲ということにしてしまうけど、そう考えると本当にウィーザーのピンカートンに似ているのだ。
まず1曲目「Glitters Like Gold」のイントロでライドシンバルを4カウントする部分。これはピンカートン1曲目の「Tired of Sex」のイントロにそっくりだ。また「Jaded Youth」における、間奏でスローダウンする部分はウィーザー「The Good Life」や「Pink Triangle」のそれと似ている。全編にわたってギターのフィードバックから始まりフィードバックで終わる曲が多いのもピンカートン的だ。さらに10曲目「I Should Have Helped」で突如見せるアコースティックな曲調は、ピンカートンのラスト曲「Butterfly」を彷彿とさせる。
"Glitters Like Gold" by The Cribs
思えば、ピンカートンはウィーザーのセルフプロデュースながらミキシング・エンジニアはデイヴ・フリッドマンが担当していた。彼らがピンカートンのような音を目指し、フリッドマンを起用したのではと勘繰りたくもなるけど、あながち間違っていないんじゃないだろうか。僕にとっては「人生で最も再生回数の多いアルバム」であるウィーザーの「ピンカートン」。The Cribsの5枚目のアルバムもまた、長きにわたって何度も聴き続けるアルバムになりそうだ。そして本作を機に、過去のアルバムも聴いてみようと思う。
特にお気に入りな2曲。
"Chi-Town" by The Cribs
この曲はアルビニ担当。
"Pure O" by The Cribs
ここまで書いておいて白状すると、彼らのこれまでのアルバムは実は聴いたことがない。というのも、まだデビューしたての2004年にサマーソニックでライブを観た際に、「ものすごく演奏がヘタ」という印象を持ってしまい、その後もボーカルのライアン・ジャーマンの前髪パッツンな髪型やヘソ出しのピタピタTシャツ姿などを見て、「ものすごくダサいバンド」という認識のまま聴かず嫌いしていたのだ。
2008年にザ・スミスのギタリスト、ジョニー・マーが加入した際にも、頭の中はクエスチョン・マークだらけだった。「なぜあんなバンドに?」そしてマー先生が正式加入して制作されたアルバム「Ignore The Ignorant」にも自分の食指はピクリとも動かずにスルー。
そんな自分であったけど、今回のアルバム「In The Belly of The Brazen Bull」で初めて彼らのアルバムを聴いてみようという気にさせたのは、他でもないプロデューサー陣だった。本作のプロデューサーはスティーヴ・アルビニ(ニルヴァーナ、PJハーヴェイ、ピクシーズ、クラウド・ナッシングスなど)とデイヴ・フリッドマン(フレーミング・リップス、モグワイ、マーキュリー・レヴ、ネオン・インディアンなど)という、硬質で骨太なロックサウンドを得意とする2人。自分にとっては、「信頼できる音に仕上げるプロデューサー」として1位2位を争う2人だ。特にデイヴ・フリッドマンについては、彼のスタジオワークがいかに素晴らしいかというテキストを長々と書いている記事があるので、時間があればぜひ読んでみてください。
プロデューサーが2人と言ってもアルビニとフリッドマンが共同作業したというわけではなく、曲ごとに担当が異なるのだけど、このアクの強い2人の手掛けたサウンドは不思議と見事に調和している(ただしAbbey Road Studioで録音された最後の4曲だけは少し音の質感が異なり、浮いているように感じられた)。音的にはアルビニ色はそこまで強くなく、そのかわり誰でもすぐにフリッドマンの手によるものとわかる破裂系のスネアドラムの音や割れ気味のシンバル音が特徴的。そんな爆裂ドラムサウンドで包まれた本作の魅力の数々は、冒頭にも書いた通りである。
個人的には、組曲調になったラストの4曲(「Stalagmites」~「Arena Rock Encore with Full Cast」)はボーナストラック的に考えたい。ということで勝手に本編を10曲ということにしてしまうけど、そう考えると本当にウィーザーのピンカートンに似ているのだ。
まず1曲目「Glitters Like Gold」のイントロでライドシンバルを4カウントする部分。これはピンカートン1曲目の「Tired of Sex」のイントロにそっくりだ。また「Jaded Youth」における、間奏でスローダウンする部分はウィーザー「The Good Life」や「Pink Triangle」のそれと似ている。全編にわたってギターのフィードバックから始まりフィードバックで終わる曲が多いのもピンカートン的だ。さらに10曲目「I Should Have Helped」で突如見せるアコースティックな曲調は、ピンカートンのラスト曲「Butterfly」を彷彿とさせる。
"Glitters Like Gold" by The Cribs
思えば、ピンカートンはウィーザーのセルフプロデュースながらミキシング・エンジニアはデイヴ・フリッドマンが担当していた。彼らがピンカートンのような音を目指し、フリッドマンを起用したのではと勘繰りたくもなるけど、あながち間違っていないんじゃないだろうか。僕にとっては「人生で最も再生回数の多いアルバム」であるウィーザーの「ピンカートン」。The Cribsの5枚目のアルバムもまた、長きにわたって何度も聴き続けるアルバムになりそうだ。そして本作を機に、過去のアルバムも聴いてみようと思う。
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