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ライブレポート

ライブレポート:神聖かまってちゃん@EBISU LIQUIDROOM

5月26日、神聖かまってちゃんのフリーライブ全国ツアーに行ってきました。彼らのライブを観るのは初。今回のフリーライブは抽選だったのですが、当選してしまったんですね。まさか当たるとは(笑)。まあ、観たかったんですけど。

skc


開園時間ギリギリに会場に滑り込むと、ちょうど前説(?)の人が何やら説明と、始まりの号令をかけているところだった。僕が入場して1分もしないうちにメンバー登場。元々グダグダなMCが話題の彼ら。2009年のサマソニでは、30分の持ち時間をほとんどグダグダトークに費やし、1曲(しかも高速)で去っていったという逸話があるだけに、そういう気持ちで臨んだのだけど、意外とすんなり演奏は始まり、その後も曲をどんどん繰り出していく。確かにMCはグダグダで、1曲終わるごとに3分はしゃべっていたが(笑)。


演奏は、正直かなり拙い。音のバランスも悪い。ギターとボーカルの音量がデカくて、ドラムはあんまり聞こえない。なんでも、ボーカル・の子のテンションがリハと全く違っていて、この日のライブはかなりテンションが高かったようだ。まあ、の子は躁鬱が激しいから、躁状態の時はいつもこんな感じなんだろうが、まず何を言ってるのか半分は聞きとれない。グダグダトークはの子だけではなく、ちばぎん・mono・みさこもかなり自分本位にしゃべりまくる。まるで学生バンドの部室ノリ。オーディエンスが何か言葉を投げかけるたびに、全員がその一つ一つに反応して好き勝手にしゃべるのだから、もう収拾がつかない。そんなわけで、誰も「次の曲行きます」と言わないので延々と支離滅裂なトーク。でも、あんまり聞き取れないながらもこのトークがかなり面白いのだ。ちなみに、メンバーからもツッコまれていたが、の子よりも滑舌の悪いmonoは、何を言ってるか8割わからなかった。


そんな中でも、の子は1曲終わるごとにセットリストの紙を見ながら曲を次々と繰り出す。時々、美人なバイオリニストをサポートに加えての演奏。「天使じゃ地上じゃちっそく死」「さわやかな朝」など絶叫ナンバーでは、の子は頭を激しく振り乱し、何かが憑依したように「イッた」目で虚空を凝視しながら歌い、パフォーマンスとしてはかなり激しい。「タイト」とは真逆の、ズレまくりの演奏でも、このバンドは何かとてつもないネネルギーを持っていて、それが人々が彼らに引き寄せられる理由の一つなのだろう。僕は、の子の鬼気迫る感じ、なにか危険な犯罪の現場でも目撃してしまっているかのような光景に、かつてブランキーがもっともトガっていた時期のベンジーの姿を重ねた。この、どこかのバランスが崩れた時に、すべてが終わっちゃうんじゃないか?ヘタすると、人の命も奪われるんじゃないか?というあたり、そんな気持ちを抱いた。それなのに曲が終わると、の子はヘラヘラ笑いながらみそ汁(最近お気に入りのステージドリンク。ノドの調子が良くなるらしい笑)を飲み、おどけながらノドを潤していた。


途中、キーボードのmonoが「ごめんちょっとトイレに行きたい」と言いだした。普通のアーティストのライブならあり得ないだろう。途中でトイレに行くにしても、演出として途中でステージ袖にはけて、その間に行くのに、思いつきのようにトイレに行くのだ。「あるてぃめっとレイザーしてくるわ」「これ(ペットボトル)にすれば」「パンパースが必要だな」みたいな感じでほんとにmonoはトイレに行くと、その間に残りのメンバーは勝手に「笛吹き花ちゃん」をプレイ。トイレから戻ってきたmonoは慌てて演奏に加わるというグダグダっぷり。でも、オーディエンスはみんな笑顔に包まれていた。


途中、印象的なMCがあった。「テレビ出たいね」「電通を味方につければ出れるよ」「電通ソング作る?」「でんつー♪でんつー♪」アイロニーたっぷりに言っていたが、彼らはテレビに出れるようなバンドではない(NHKに出たことあるけど)。しかも、電通にコビ売って耳あたりのいいポップソングを作るわけもないだろう。もしあるとすれば、皮肉でしかないだろう。


「本編はあと15分だって」「アンコールってなんでわざわざ一回引っ込むんだよ」
「アジカンをぶっつぶす」(その後アジカンの「リライト」のモノマネ)
そんなMCで会場を笑いの渦に巻き込みつつ終盤、ギターを置いたの子がインカムマイクをセットしてキーボードの位置につく。


「夜空の虫とどこまでも」(?ちょっとアレンジされていたか、似てる別の曲?)
「黒いたまご」
ノーウェーヴ/チルウェーヴのマナーを図らずも踏襲してしまった、この2つのダンスナンバーが立て続けに放たれた本編終盤は白眉だった。それまではまだ、個性的ながらも日本のロックバンドという範疇に収まったフォームだった彼ら。この2曲では、背後からの赤いライトにメンバーのシルエットが浮かび、時折フラッシュがたかれる中、ダンスビートとアンビエントなシンセ、シャーマニックなボーカルは唯一無二のサウンドで、決してUKやUSのインディロックアーティストと比べても遜色ないクオリティだった。


違う日のライブだけど、「夜空の虫とどこまでも」のライブ映像を。



時間が押してるはずだけどもう1曲演奏。何の曲をやったかは忘れてしまったが、の子はもう完全にタガが外れてしまったようにギターを振り回し、マイクを投げ暴れまわった挙句、キーボード椅子の上に立つとそのままギターを振り上げ、キーボードにギターを振り下ろす。会場が騒然とする中メンバーがステージ袖にはけた後、アンコールで再登場。「ちりとり」「ロックンロールは鳴り止まないっ」「夕方のピアノ」ラスト「学校に行きたくない」をプレイした。特に最終曲では、の子は客席にダイブし、何を言ってるかよくわからないけどトランス状態でまくし立て、お礼など述べた後に自分の靴を客席に投げ終了。この投げた靴が天井に当たって、全然飛ばなかったのに笑いも起こる中、ライブは終了した。


実に2時間半に及ぶ渾身のライブだった。思うに人々がこの、演奏スキルも未熟でルックスも垢抜けない異型なバンドに惹かれる理由は、彼らが「カッコよくないから」だと思う。もう、メンバー全員が平均ちょい上のルックスで、あたり障りないラブソングを、美声に乗せて歌うだけの「良家のお坊っちゃまバンド」には飽き飽きしてるのだ。未完成でほころびだらけのバンドが、カッコつけには無意識な天然キャラの姿でいるところに惹かれているんだと思う。僕たちは皆、決して完全な人間じゃないし無力で悩み多き人間だけど、単純に「共感」や「感情の投影」を求めているのでははなく、この先どうなるのかわからないミステリアスな部分を持った存在のこのバンドを見守っていきたい感情なんだと思う。まるで、無人で暴走する車があちこちにぶつかって壊れながらも走っていく姿から、誰もが眼も離せないように。でも単純な好奇心だけじゃなく、そこに「退廃の美学」「未完成の美学」「非・洗練の美学」みたいなものもそこに感じているのだと思う。


この辺の、「彼らの魅力や存在感」についての話は、話したいことがたくさんあるのでまた日を改めて記事にしたいと思います。


昨年リリースのアルバム2枚。





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