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公開:2020-10/17
関連:映画・ドラマ発音練習CD本 / リスニング難度A+ / MJ and Adam Show
普段Netflixも観るのですが、CD付きの本と違って、反復練習がしづらいんですよね。
なので、「ネイティブの手加減なしの生の英語が聴けるCD本ってないかなー」と思ってAmazonに潜り込んで見つけたのが本書「リスニング難度A+(Amazon)」です。
購入したのは2年前なんですけど、2020年08月からようやく本腰を入れてこの本に取り組み始め、とりあえず最後まで到達し、非常に良かったので、レビューしてみることにしました。
この本の概要
リスニング難度A+
街を行くアメリカ人の声(CD付)
Eve Rosenbloom
リント
2006-01/01
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主にアメリカのワシントン州シアトル近郊の路上や公園・飲食店で、未編集に近い状態で生録された、38人のインタビュー音声(音声は40本)です。
インタビューが全部で30本あるのですが、3つの難易度に分かれてまして、少し易しめな「難度B」、その次に難しい「難度A」、そして最難の「難度A+」となっています。
正直、難度Bでも難しいと感じるものもあれば、難度A+だけど意外と聞き取れるものもありました。感覚的には「難度A+」は早口の interviewee が多い印象でした。
また、インタビュー以外にジョークが10本収録されています。これもなかなか楽しいです。
ちなみに、2020年10月現在、品切れ状態のようで、新品の値段が爆上がりしてます。
中古が選択肢になるわけですが、自分の経験上、中古を買う場合は、どんなに安くても「可」は避けたほうが無難です。CDが付いていなかったり、書き込みがあるケースが多かったんですよね。なので「良い」、もしあれば「非常に良い」を選んだほうがいいです。
あと、最近取り組み始めた「New Yorkers' English (Amazon)」のほうが、interviewee の出自が分かり、語彙の解説も詳しいので、もしかしたら先にNew Yorkers' Englishをやったほうがいいかもしれません。
まだ最初のほうですが、これもすごくいいのでレビューするつもりですが、早くても2ヶ月後くらいになると思います(;´∀`)
Pros - メリット
ネイティブの手加減なしの生英語が聴ける
上述したように、「リスニング難度A+」は、路上などで出会ったアメリカ人に声をかけて録ったインタビュー音声なので、生の英語です。
TOEICや英検やNHKラジオ英会話のように、日本人の低い英語力に合わせてゆっくり、クリアに話してくれるナレーターの英語とは全然違うんですよね。騒音やノイズも少し入っています。
また、2017年頃から、カナダ人のAdamさんとアメリカ人のMJさんのポッドキャスト「MJ and Adam Show」を繰り返し聞いてきたのですが、やっぱり生の英語と洋画・ドラマの英語も異なるなと。
「リスニング難度A+」も、洋画やドラマのように練られた台詞ではないので、自然な英語を聞くことができるのがいいです。言い間違い、言い淀み、言い直しがたくさんあります。
シャドウイング・ディクテで反復練習しやすい
Netflixは英語学習者にとって画期的なサービスなのは間違いないですが、個人的にはシャドウイングやディクテーションなどの反復練習がしづらいなと感じています。デフォルトだと、10秒単位でしか巻き戻し・早送りができないし、再生スピードも変更できません。運営に直接フィードバックしたいのにその仕組みもない!
リスニングを向上させるためには、自分がうまく聞き取れなかったところや、滑らかに発音できないところを何度も聞いたり、リピーティングしたりする必要があるわけじゃないですか。Netflixではそれがやりにくいんですよね。
その点、「リスニング難度A+」のように本とCDというマテリアルは非常にトレーニングしやすいなとあらためて思いました。
僕はスマホの電池を消費したくないので、SONYのMP3ウォークマンを使っています。
ウォークマンは、スマホと違って物理ボタンがあるんです。つまり、慣れてくると画面を見ずにボタンを押して操作ができるようになるわけですよ。
カーソルの上ボタンを押すと、一発で3秒前に戻れる「クイックバック」ができるのですが、この機能のお陰で、ディクテーション・シャドウイング・リピーティングがやりやすいんですね。
で、僕は出先では常に英語を聴いていたいので、ネックストラップ式のイヤホン(Amazon)で首からウォークマンをぶら下げています。
物理ボタンのお陰で、スマホのように画面を見なくても、手の感覚だけで「クイックバック」のボタンが押せるのでウォーキングしながら、シャドウイング中に苦手なところを何度も繰り返し聴けるわけです。すごくありがたい。
余談ですが、YouTubeもPCで視聴する場合、キーボードの矢印の左ボタン・右ボタンで、それぞれ5秒前・5秒後に瞬時に移動できる機能があるんですけど、反復練習したい言語学習者にとって5秒って長い。3秒がちょうどええねん。
毎日勉強・トレーニングしやすい
1つのインタビューがだいたい1~2分くらいなんですよ。だから1日1つずつ毎日コンスタントに勉強・トレーニングしていくことができます。オーバーラッピングやシャドウイングもやりやすい。この毎日同じリズムで勉強できるマテリアルってすごく大事だと感じています。
1日の分量が決まっていると、勉強にかかる時間も予想しやすくなりますし、勉強・トレーニングを習慣化しやすくなるんですよね。
忠実な日本語訳・語句の解説が助かる
Netflixの最大の不満の1つに、日本語訳が意訳され過ぎていたり、省略されていたりして、台詞の意味を正確につかみにくいというのがありますよね。ですが、「リスニング難度A+」はCD本なので、忠実に訳された日本語訳があるお陰で、1つ1つの文の意味をきちんと把握することができます。ありがたや。
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しかも、このRosenbloomさんの訳し方がすごくいいなと。なるべく英語の語順で前から訳すことを心がけて下さっているので、日本語訳を見ながらのコンテンツシャドウイングが比較的やりやすかったです。
さらに、「この英語のフレーズ、日本語でこういう訳し方もできるんだ」みたいな発見が多く、単語やフレーズをより正確に理解するのに役立ちました。
また、語注やキーワードとなる語彙の解説もついているので、とても勉強になります。語注があると、辞書で調べる回数を減らせるので助かるんですよね。
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ただ、語注やキーワードについては、上述した「New Yorkers' English (Amazon)」のほうがより一層丁寧です。
アメリカ人の考え方・価値観を学べる
※タップすると別画面で開き拡大できます
上述した「MJ and Adam Show」やNHK WORLD TVの「COOL JAPAN」もそうですが、僕はいろんな国の人の考え方や価値観が知るのが好きなんですよね。
この「リスニング難度A+」は、30人のアメリカ人にいろんな質問をして答えてもらっているのですが、質問自体とても興味深いものが多く、「自分だったらどう答えるだろうか?」とかけっこう考えさせられます。
また、ゲイの人が出てきたり、ある宗教に入信して最終的に抜け出した人が出てきたり、途中で夢を諦めたお母さんとか、ホントいろんなバックグランドを持つ人が出てきて、「これがアメリカか~!」と楽しみながら勉強できました。
自分の考えを述べるフレーズの宝庫
インタビューではそれぞれのアメリカ人が自分の考えや意見を述べているので、オンライン英会話のフリートークやディスカッションなどで、自分の考えや意見を述べるときに使えるフレーズがテンコ盛りです。オンライン英会話でディスカッションが好きな人なら、確実に楽しめる本だと思います。
ジョークやユーモアが楽しい
洋画やドラマに出てくるジョークと違って、ちょっとストーリーのあるジョークが10本収録されています。これが意外と面白いんですよね。正直、一周目はほとんど理解できないことのほうが多いので、ユーモアを理解できなくて歯がゆい思いをしていました(˜∀˜;)
Cons - デメリット
CDのMP3化が面倒くさい
NetflixやYouTubeやNHK WORLDなどで勉強するようになると、もうCDをMP3する作業が面倒くさいなと。もし続編が出るなら(今んところなさそうだけど)、ぜひMP3ダウンロードにしていただきたい。
発音の解説は一切ない
「リスニング難度A+」は発音を学ぶための本なのですが、発音の解説自体は一切ないんですよね。以前ご紹介した、森田勝之先生の映画・ドラマCD本は、けっこう丁寧な発音の解説があります。
また、森田勝之本はプロのナレーターのスタジオ録音なので、TOEICや英検のリスニングパートよりは難易度が上がるものの、「リスニング難度A+」よりも全体的に聞き取りやすいです。
なので、順番としては森田勝之本を1冊徹底的にやってネイティブの発音に慣れてから、New Yorkers' Englishや本書に入ったほうがいいかなと。
【参考】「映画・海外ドラマを字幕なしで」への第一歩に最適な本
ちなみに、New Yorkers' English (Amazon)には若干、カタカナによる発音解説があります。カタカナかい!
出身があると良かったかも
Interviewee の職業は記載されているのですが、出自が分からないんですよね。上述した「New Yorkers' English (Amazon)」のほうは、「イタリア系」とか「アフリカ系」とか書かれてあるんですよ。だから、「イタリア系はこういう発音をするのか」というのを知ることができるわけです。
アメリカは人種のるつぼじゃないですか?なので、バックグラウンドも知れたら良かったのになってすごく思います。
内容が若干古いかもしれない
そこまで大きなデメリットとは感じなかったのですが、2006年に出版された本なんですよね。イチローがまだマリナーズで活躍していました(笑)2010年前後のスマホの台頭で世の中は大きく変わったと思うので、アメリカ人の考え方や価値観も多少は変わっているんじゃないかなーと。
なのでできれば続編が欲しいんですよ。もし気に入った方は出版社「株式会社リント」に連絡してみませんか?
勉強していて感じたこと
ネイティブだってシドロモドロになる
ネイティブキャンプの5分間ディスカッションやデイリーニュースを使って毎日ディスカッションをやってまして。ときどき、「そんな質問考えたことないわ~」とうまく答えられないときがあるわけですよ。
英会話を始めた頃に比べたら、その割合は減りましたし、答えられないながらも何か言えるようにはなってきたので困ることはなくなりましたが、話すスピードがゆっくりになったり、「filler」が多くなったりするわけです。
ですが、この「リスニング難度A+」を聞いていると、アメリカ人でも、普段考えたことのないトピックだったり、哲学的な質問だったりするとシドロモドロになるんですよね。文法も崩れる崩れる。「That's a tough question.」という台詞が何度も出てきました。
なんか安心したんですよね。オンライン英会話をされている方は、フリートークやディスカッションですぐにサッと答えられなくても、落ち込まなくていいですよ。
もちろんそのままにしておくのはよくないので、自分説明書の作成&暗唱や復習して次回に備えることは大切です。
会話ではあまり言い換えはしない
TOEICや英検で育った人は、おそらく言い換えとかパラフレーズを意識すると思うんですよ。同じ単語やフレーズばかり使ってはいけない、みたいな。でも、上述した「MJ and Adam Show」を聞いていてもよく思うのですが、リアルの会話ではそんなにパラフレーズしていないなと。
相手の言ったことをそのまま言うことのほうが断然多い。
とは言え、使える類語やパラフレーズが多いほうが、表現力は確実に向上しますし、ライティングでも使えます。
また、人質交渉のエキスパートであるChris Vossさん曰く「会話においてより深く理解するのに、パラフレーズは有効だ」そうなので、鍛えておいて損はないなと。
発音されていないものが多い
TOEICや英検で勉強していた頃から、1つ1つの音声で、自分が内容をどれだけ理解できたかというのを「A~D」の4段階で評価するようにしているんですね。ほぼ理解できたら「A」、ほとんど理解できなかったら「D」みたいな感じで。
で、CとDばっかりでした(笑)
「it」「that」「would」「have」「had」や前置詞が聞こえないのはザラにありますが、「was」「were」「can」とかもまったく聞こえないことがけっこうあるんですよね。
でも結局、前後の文脈やコロケーション(よく一緒に使われる語彙の組み合わせ)から判断できるので、発音がいい加減でもネイティブたちは互いに理解し合えるんですよね。
こういうのって英語力が上がってきて、コロケーションのストックが増えれば、聞き取れなかった箇所は脳が自動的に情報を補ってくれるようになるのですが、そのストックが溜まるのに歳月がかかるわけですよ。
勉強・トレーニングのやり方
Step 1: まず普通に聞く
まず一発目は、普通に聞きましょう。各インタビューの冒頭には、内容理解のためのクイズが1つ付いているので、それをきちんと理解できるか挑戦してみましょう。とは言うものの、TOEICや英検を卒業して、始めてネイティブの生英語でのトレーニングに入ってこられた方は、ほとんど理解できないと思います。僕も部分的にしか聞き取れないインタビューのほうが断然多かったですし。
もし「これは今の自分のレベルにはキツすぎる」という方は、いったん寝かせましょう。
それで、「MJ and Adam Show」を聞いてみたり、発音の解説が詳しい「森田勝之先生の映画・ドラマCD」から入ってみるといいと思います。
Step 2: 脳内ディクテーション
今度はウォークマンやスマホのアプリなどで、再生速度を0.7~0.9倍速に落として、すぐにスクリプトは見ずに、1文1文何度も繰り返し聞きながら進めていきます。これをやることで、自分が聞き取れない箇所(弱点)が明確になります。
【参考】TOEICリスニング満点を取るのに役立った「脳内ディクテーション」
Step 3: 発音・語彙などをチェック
脳内ディクテで自分が聞き取れなかった音の連結・消失をチェックしていきます。語注が充実しているのであまり調べることはないと思いますが、不明な語彙もチェックしていきましょう。
これらをやっておくと、あとにやるオーバーラッピング、そしてリピーティングやシャドウイングがやりやすくなります。
Step 4: オーバーラッピング
いきなりシャドウイングに入るよりは、まずスクリプトを見ながらのオーバーラッピングをやったほうがいいかなと。Step 5: シャドウイング・リピーティング
オーバーラッピングで何度か繰り返してスラスラと言えるようになってきたら、シャドウイングに入ります。スクリプトを見ずに、話者が憑依したかのようにスラスラと言えるまで反復。「憑依ング」です。
10~20日くらいは毎日トレーニング
と言っても、1日ではスラスラ言えるようにはならないので、10~20日間くらい繰り返したほうが良いと思います。特にシャドウイング(憑依ング)は数週間毎日やることで、次のようなメリットがあります。
(1) 耳が音を覚えてくれる(リスニング向上)
(2) 口が音を覚えてくれる(発音向上)
(3) ディスカッションで使える表現を口が覚えてくれる(スピーキングの表現力向上)
(4) 決まり文句が自動的に身につく(自然なスピーキング力の向上)
音は忘れにくいので、数日間やるだけでも(1)と(2)にはそこそこ効果があります。ですが、(3)と(4)のメリットを享受しようと思うと、数週間はやる必要があるなと。
数日間だけだと、長期記憶には残りづらく、アクティブ語彙(使える語彙)化しにくいと感じています。
翌日にやること
翌日になったら、前日の復習シャドウイングをやった上で、次のインタビューに進み、Step 1~Step 5をやります。さらに次の日は前々日、前日の復習シャドウイングをやってから次のインタビューをやる。こんな感じで毎日、今までやってきた音声の復習をやりつつ、新しいインタビューを1つやるようにすれば、飽きないですし、毎日コンスタントに勉強・トレーニングできるので勉強時間の予想を立てやすくなります。
全部で40本あるので、ご紹介したやり方だとおそらく2ヶ月くらいはかかると思います。
結局、すべての音の連結・消失を覚えていかないといけないですし、アメリカ人もいろいろ出自の人がいるので、この1冊だけで、アメリカ人の英語が完璧に聞き取れるということにはならないです。
ですが、シャドウイング(憑依ング)を丁寧にやっていけば、2ヶ月後には確実に聞き取れる割合は増えているはずです。
僕はこの数年、シャドウイングよりも、脳内ディクテーションと多聴を重視してきたんですね。
ですが英語ペラペラのVellさんの動画を見て、考えをあらためました。
リスニング力向上とネイティブらしい自然なスピーキング力を獲得するためには、シャドウイング(憑依ング)は毎日一定時間、絶対にやったほうがいいなと。
● 真のバイリンガルは努力家だった件
● 英語学習 継続のコツ
【 多聴多読 】
● 英語「超」上級者は例外なく多読していた件
└ 多聴多読の効果 / 注意点
【 リスニング 】
● 脳内ディクテーション
● NHK WORLD TV / 映画・海外ドラマCD本
● ネイティブYouTuber
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