アーティスト別ベスト |
ひとつのアーティストの作品をじっくりと振り返り、個人的ベストソングを考えながら再評価を高めていくための不定期企画。今回のテーマは「テクノ・モーツァルト」、「エクスタシーを通過したブライアン・イーノ」とも称される天才、と同時に変態でもあるエイフェックス・ツインです。
ヘン顔・グロ顔のアー写が多いですが、実はイケメンだったり。
※ヤバいお姿の方は「Aphex Twin」で画像検索してみてね!
ヘン顔・グロ顔のアー写が多いですが、実はイケメンだったり。
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エイフェックス・ツインとは、イギリスはコーンウォール出身のリチャード・D・ジェームス(Richard David James)の数多い名義のうちのひとつ。一応テクノに大別されますが、時代ごとにアンビエントだったりインダストリアルだったりアシッドテクノだったり、はたまた「ドリルンベース」と呼ばれる超高速のスラッシュ・ブレイクビーツだったり、プリペアド・ピアノを用いた現代音楽風だったり…。90年代は多作で、いくつもの名義で曲を大量生産したかと思いきや、2000年代以降エイフェックス・ツイン名義としては01年に2枚組のアルバムを出したきり。おまけに彼の発言はというと、「戦車を買った」「楽器はすべて自分で作っている」「今までクラシック以外のレコードを聴いたことがない」「(新作は)自分が死ぬまで待て」「すでにアルバム6枚分のストックがある」など、どれも真偽が疑わしいものばかりなため、彼は虚言癖があるとメディアから揶揄される始末。しかし本人はそんなことをまったく気にしていない様子で、むしろそんな状況を楽しんでいるような気さえします。
そんなワケで、十数年ぶりとなる新作がいつ出るのか?どんなサウンドなのか?どれだけのストックがあるのか?ファンならずとも非常に興味深いところであり、彼の次の一手を長らく待っています(ちなみに、2000年代以降もAFX名義ではいくつかの作品をリリースしていますが)。
今回のランキングではAFX、Polygon Window、Caustic Windowなどの名義で発表した曲は除外しました(全てを追えていないので)。一般的には「テクノ」「ドリルンベース」という認識が強いですが、わりとクラシックやアンビエントの要素が強い曲が上位に多くランクインする結果となりました。まさに、これらの美しい曲と狂気まじりの暴力的な曲のバランスが彼の変態性と天才性を物語っていると思います。上位10曲のみYouTube試聴を貼りましたが、これだけ聴いても彼の類稀な才能をうかがい知ることができるでしょう。
■Aphex Twinのマイ・フェイバリット・ソングBEST20
※カッコ内は収録作品
No.20 "Tassels" (2)
No.19 "Fingerbib" (5)
No.18 "Vordhosbn" (9)
No.17 "Kesson Dalef" (9)
No.16 "Tha" (1)
No.15 "Bucephalus Bouncing Ball" (7)
No.14 "Windowlicker" (8)
No.13 "Iz-Us" (7)
No.12 "Rhubarb" (2)
No.11 "Tamphex (Hedphuq Mix)" (3)
No.10 "Pulsewidth" (1)
No.9 "Polynomial-C" (3)
No.8 "Goon Gumpas" (5)
No.7 "Blue Calx" (2)
No.6 "Nanou" (8)
No.5 "Girl / Boy Song" (5)
No.4 "Come To Daddy (Pappy Mix)" (7)
No.3 "Xtal" (1)
No.2 "Avril 14th" (9)
No.1 "Flim" (7)
(1) 「Selected Ambient Works 85-92」 (1992年)
(2) 「Selected Ambient Works Volume II」 (1994年)
(3) 「Classics」 (1994年)
(4) 「I Care Because You Do」 (1995年)※本作からはランクインなし
(5) 「Richard D. James Album」 (1996年)
(6) 「51/13 Singles Collection」 (1996年)
(7) 「Come To Daddy EP」 (1997年)
(8) 「Windowlicker (single)」 (1999年)
(9) 「drukqs」 (2001年)
1位から10位まで紹介します。
"Flim"
「Come To Daddy EP」に収録された曲。EPとはいっても佳曲が全8曲収録されており、先日当ブログで発表した「年代別・アルバム推定再生回数ランキング(1990年代編)」でも12位にランクイン。粒子の細かいブレイクビーツと、深いリヴァーヴに包まれたピアノの美しいメロディーによる絶妙なコントラストが、彼の音楽性を如実に表しています。アメリカのジャズ・トリオ、The Bad Plusによるカバー(YouTube試聴)も秀逸。
"Avril 14th"
哀愁を感じさせる秀逸なメロディーを持つ、ピアノのみによるシンプルな曲。カニエ・ウェストの2010年作「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」収録の「Blame Game」にてサンプリングされました。
"Xtal"
彼のファースト・フルレングス作「Selected Ambient Works 85–92」の1曲目であり、テクノの歴史的にみても画期的な曲。というのもテクノに分類される曲の中で、四つ打ちバスドラに深いリヴァーブをかけたのはこの曲が初めてだったから。石野卓球氏は野田努氏との共著「テクノボン」の中で、彼のサウンドをこう評しています。「ダンスのようでダンスでなく、アンビエントのようでアンビエントでない。少なくともそれまでのダンス・ミュージックではない。だいたい、それまでのハウスだったら、バス・ドラムにリヴァーブはかけない。バス・ドラムにリヴァーブをかけたら、クラブで踊れないよ」
"Come To Daddy (Pappy Mix)" music video
「映像界のクリカン」(←勝手に命名)ことクリス・カニンガムが監督を務めた衝撃ビデオ。リチャードの顔をした子供が無邪気に走り回り…。名作ビデオなので、未見の方はぜひどうぞ。曲の方は、1位~3位の曲と打ってかわってスラッシュメタル×ドラムンベースな凶暴トラック。
"Girl / Boy Song"
「Richard D. James Album」収録曲は基本的にこの路線。子供向け番組にでも使われそうな牧歌的なメロディーに、ストリングスと高速ブレイクビーツが絡みます。そんな中でも真骨頂と言えるのがこの曲。
"Nanou"
シングル「Windowlicker」のB面曲。オルゴールが奏でる少しオリエンタル風なメロディーに、オルゴールのネジを回した時のようなカチャカチャした音をビートにしたエレクトロニカ。リン・ラムジー監督の映画「モーヴァン」(原題:MORVERN CALLAR)サントラにも収録されています。
"Blue Calx"
「85-92」よりも一層アンビエント性を強めた「Selected Ambient Works Volume II」より。ビートらしいビートがない代わりにメトロノームのような音が深いエコーの中で響き、哀愁漂うメロディーが揺らめく曲。聴いていると心が無になります。
"Goon Gumpas"
こちらも映画「モーヴァン」サントラでピックアップされた曲。ピチカート・ストリングス主体のビートレスな短い曲で、ひたすら牧歌的。
"Polynomial-C"
アシッド・トランス・ブレイクビーツと呼べそうなハードなテクノナンバー。スリリングなストリングスの音がいい味出しています。
"Pulsewidth"
元レベッカ・Nokkoの「7 Ways To Love」(YouTube試聴)でサンプリングされた曲。ミニマルでポップ、フロア向けだけどベッドルームっぽさもあり、ここ数年のチルウェイヴにも通じるものがあると思います。
そんなワケで、十数年ぶりとなる新作がいつ出るのか?どんなサウンドなのか?どれだけのストックがあるのか?ファンならずとも非常に興味深いところであり、彼の次の一手を長らく待っています(ちなみに、2000年代以降もAFX名義ではいくつかの作品をリリースしていますが)。
今回のランキングではAFX、Polygon Window、Caustic Windowなどの名義で発表した曲は除外しました(全てを追えていないので)。一般的には「テクノ」「ドリルンベース」という認識が強いですが、わりとクラシックやアンビエントの要素が強い曲が上位に多くランクインする結果となりました。まさに、これらの美しい曲と狂気まじりの暴力的な曲のバランスが彼の変態性と天才性を物語っていると思います。上位10曲のみYouTube試聴を貼りましたが、これだけ聴いても彼の類稀な才能をうかがい知ることができるでしょう。
■Aphex Twinのマイ・フェイバリット・ソングBEST20
※カッコ内は収録作品
No.20 "Tassels" (2)
No.19 "Fingerbib" (5)
No.18 "Vordhosbn" (9)
No.17 "Kesson Dalef" (9)
No.16 "Tha" (1)
No.15 "Bucephalus Bouncing Ball" (7)
No.14 "Windowlicker" (8)
No.13 "Iz-Us" (7)
No.12 "Rhubarb" (2)
No.11 "Tamphex (Hedphuq Mix)" (3)
No.10 "Pulsewidth" (1)
No.9 "Polynomial-C" (3)
No.8 "Goon Gumpas" (5)
No.7 "Blue Calx" (2)
No.6 "Nanou" (8)
No.5 "Girl / Boy Song" (5)
No.4 "Come To Daddy (Pappy Mix)" (7)
No.3 "Xtal" (1)
No.2 "Avril 14th" (9)
No.1 "Flim" (7)
(1) 「Selected Ambient Works 85-92」 (1992年)
(2) 「Selected Ambient Works Volume II」 (1994年)
(3) 「Classics」 (1994年)
(4) 「I Care Because You Do」 (1995年)※本作からはランクインなし
(5) 「Richard D. James Album」 (1996年)
(6) 「51/13 Singles Collection」 (1996年)
(7) 「Come To Daddy EP」 (1997年)
(8) 「Windowlicker (single)」 (1999年)
(9) 「drukqs」 (2001年)
1位から10位まで紹介します。
"Flim"
「Come To Daddy EP」に収録された曲。EPとはいっても佳曲が全8曲収録されており、先日当ブログで発表した「年代別・アルバム推定再生回数ランキング(1990年代編)」でも12位にランクイン。粒子の細かいブレイクビーツと、深いリヴァーヴに包まれたピアノの美しいメロディーによる絶妙なコントラストが、彼の音楽性を如実に表しています。アメリカのジャズ・トリオ、The Bad Plusによるカバー(YouTube試聴)も秀逸。
"Avril 14th"
哀愁を感じさせる秀逸なメロディーを持つ、ピアノのみによるシンプルな曲。カニエ・ウェストの2010年作「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」収録の「Blame Game」にてサンプリングされました。
"Xtal"
彼のファースト・フルレングス作「Selected Ambient Works 85–92」の1曲目であり、テクノの歴史的にみても画期的な曲。というのもテクノに分類される曲の中で、四つ打ちバスドラに深いリヴァーブをかけたのはこの曲が初めてだったから。石野卓球氏は野田努氏との共著「テクノボン」の中で、彼のサウンドをこう評しています。「ダンスのようでダンスでなく、アンビエントのようでアンビエントでない。少なくともそれまでのダンス・ミュージックではない。だいたい、それまでのハウスだったら、バス・ドラムにリヴァーブはかけない。バス・ドラムにリヴァーブをかけたら、クラブで踊れないよ」
"Come To Daddy (Pappy Mix)" music video
「映像界のクリカン」(←勝手に命名)ことクリス・カニンガムが監督を務めた衝撃ビデオ。リチャードの顔をした子供が無邪気に走り回り…。名作ビデオなので、未見の方はぜひどうぞ。曲の方は、1位~3位の曲と打ってかわってスラッシュメタル×ドラムンベースな凶暴トラック。
"Girl / Boy Song"
「Richard D. James Album」収録曲は基本的にこの路線。子供向け番組にでも使われそうな牧歌的なメロディーに、ストリングスと高速ブレイクビーツが絡みます。そんな中でも真骨頂と言えるのがこの曲。
"Nanou"
シングル「Windowlicker」のB面曲。オルゴールが奏でる少しオリエンタル風なメロディーに、オルゴールのネジを回した時のようなカチャカチャした音をビートにしたエレクトロニカ。リン・ラムジー監督の映画「モーヴァン」(原題:MORVERN CALLAR)サントラにも収録されています。
"Blue Calx"
「85-92」よりも一層アンビエント性を強めた「Selected Ambient Works Volume II」より。ビートらしいビートがない代わりにメトロノームのような音が深いエコーの中で響き、哀愁漂うメロディーが揺らめく曲。聴いていると心が無になります。
"Goon Gumpas"
こちらも映画「モーヴァン」サントラでピックアップされた曲。ピチカート・ストリングス主体のビートレスな短い曲で、ひたすら牧歌的。
"Polynomial-C"
アシッド・トランス・ブレイクビーツと呼べそうなハードなテクノナンバー。スリリングなストリングスの音がいい味出しています。
"Pulsewidth"
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