00年代ベストアルバム |
自分が洋楽ロックを本格的に聴き始めてから初めてリアルタイムでフル体験したディケイド、2000年から2009年までの「00年代」の名盤を1年ごとに振り返る企画です。いよいよ今回で最終回となる第10回目、テーマは「2009年」です。毎度お決まりの文句ですが、あくまで主観的な判断に基づいたセレクトになっております。
2009年の名盤 Best11
2009年の名盤 Best11
01 Emmy The Great - First Love
02 Lily Allen - It's Not Me, It's You
03 Animal Collective - Merriweather Post Pavilion
04 The Horrors - Primary Colours
05 The XX - XX
06 The Prodigy - Invaders Must Die
07 The Pains of Being Pure At Heart - The Pains of Being Pure At Heart
08 Yeah Yeah Yeahs - It's Blitz!
09 Passion Pit - Manners
10 Phoenix - Wolfgang Amadeus Phoenix
11 A Red Season Shade - Interiors
2009年当時記録していた私的年間ベストを元に決定しました。2009年リリース作品のみを対象にしています。
これまでよりも国内インディーロックメディアの影響が色濃く出た結果と言えるかもしれません。確かにsnoozerやWONDERKIND、Hard To Explainなどの媒体から熱心に情報収集していた時期ですし。アニコレ、The Horrors、Yeah Yeah Yeahs、Phoenix、The XXは海外のインディーロックメディアから非常に高い評価を得ただけでなく、英米のメインストリームシーン、ファッション業界などからも注目を集めました。そういう意味では、2009年は自分史上最もミーハーな年だったかもしれません。
そんな中でも1位・2位は、音楽性は違えど共にキュートでガーリィ、そして毒っ気もちょっと効かせた女性シンガーが並びました。まず1位となったのはイギリスのフォーク・シーンから登場したEmmy The Great。この年の朝霧JAM出演のタイミングでBS朝日のTV番組「ベストヒットUSA」にてピックアップ。それまで名前だけは知っていたものの曲を聴いたことはなかったのですが、彼女のインタビューを聞き、レナード・コーエンの「Hallelujah」を引用した「First Love」のミュージックビデオを観て一瞬でハマりました。「First Love」はアンニュイな歌い出しから徐々に緊張感を帯びて加速していき、最後にぷつりと糸が切れるようなフォーク・バラッドでしたが、アルバムの中には「We Almost Had A Baby」のようにキラキラしたメロディのチェンバーポップ、そして「Dylan」のように疾走感に溢れたリズミックなナンバーまで、シンプルな演奏でありながら実にバラエティ豊かな楽曲が並びます。本人がWeezerやAshを敬愛していることからもわかる通り、ソングライティングセンスにかけてはここ数年の女性シンガーの中でもピカイチだと思うし、歌詞の深さ、ユニークさなども目を見張るものがあります。あと前述の「We Almost Had A Baby」のミュージックビデオ、かわいすぎるうえにすごくホンワカさせられて大好きです。
Emmy The Great - "We Almost Had A Baby"
一方2位のLily Allenは、実はこの時まだファースト「Alright, Still」は未聴でしたが、セカンドとなる本作でグレッグ・カースティン(The Bird And The Bee)がプロデュースということで興味を持ち、試聴したら即ハマりました。何といっても超絶キュートなメロディに「Fuck You」なんて歌詞を載せて歌ってしまうんですから。エレクトロ風味の強いビートと、アコギやバンジョーやストリングスなどの生楽器との絶妙なミックス具合も、いかにもグレッグ仕事という感じ。その後すぐファーストも買いましたが、こちらもカリプソ、スカ、ヒップホップなどのビートをゴッタ煮にしたハイセンスなトラック、そしてそんなアクの強いトラックに決して見劣りしないキュートでちょっと生意気な感じの歌声に完全ノックアウトされました。この年はフジロックにも出演、ステージに腰掛けて「Littlest Things」をアンニュイに歌いあげたり、ポータブル・テルミン(?)をいじり倒しながらブリトニーの「Womanizer」のカバーでグリーンステージをダンスフロアに変えたりという魅力的なライブパフォーマンスにより、その年のフジロックにおける私的ベスト・アクトにもなりました。音楽センスも声もライブパフォーマンスもファッションもさることながら、とりあえず顔が好きです。かわいすぎる。
Lily Allen - "Fuck You"
4位にマークしたのはThe Horrorsのその後の方向性を決定付けたセカンド。ファーストがリリースされた時は、ルックスばかりが話題になるような単なるゴス・バンドという認識しかなく、2007年のサマソニで観た時も音楽的にはなんだかなあ、という印象しかなかったのですが…。ポーティスヘッドのジェフ・バーロウがプロデュース、そしてシューゲイザーやクラウト・ロックを取り入れたという宣伝文句によって試聴したら、これまで抱いていたイメージとの違いにぶっ飛びました。甲高いシンセのリフ、浮遊系の電子音、ノイジーに歪ませた粗暴なギターなど、魅力的な要素に満ちているだけでなく、メロディーもキャッチー。アートワークも含めフィルム・ノワール的な世界観が確立されており、トータル的に見てもかなり完成度の高い作品だと思います。
The Horrors - "Who Can Say"
7位にはThe Pains of Being Pure At Heartのデビューアルバムが入りました。このバンドを知ったきっかけは、当時購入・閲覧履歴によって、やたらとAmazonから勧められていたから。ジャケがベルセバっぽかったので、それっぽい感じかなと思って聴いてみたら、「Come Saturday」なんかはまんまマイブラの「Strawberry Wine」みたいだし、これ本当に最近のバンド?80年代のグラスゴーのバンドじゃなくて?と思いつつ彼らについてもっと調べると、ブルックリンの出身ということで、少し前衛的なバンドが多いイメージがあったあの街もこんなにキャッチーで面白いバンドが登場するんだな…と驚いたものです。そんなわけで当ブログで昨年の年間ベストアルバム1位を獲得した彼らのセカンド「Belong」への布石となったのがこのデビューアルバム。エヴァーグリーンな青春回想録みたいなアルバムです。
The Pains of Being Pure At Heart - Come Saturday
もしかしたらこの11枚の中では最も知名度としては低いかもしれないのが、11位のA Red Season Shade。フランスの5人組バンドです。美麗なメロディと中世的ハイトーンボーカル、そしてタイトなアンサンブルはMewにも近い印象。
A Red Season Shade - "Ghosts & Clouds"
惜しくも圏外になった作品を見てみると、Alicia Keysのアルバム「The Element of Freedom」といったメジャー路線の作品の他、Girlsのデビューアルバムなど全体的に完全にインディーロックに染まっていた年でした。snoozer嫌いだったけど情報源として毎号立ちながら読んでましたからね。さすがにまだ3年ほど前のシーンなので、この年に出てきたバンドや好きになったバンドは、現在ではさらに音楽的表現力が増して高い評価を得ていたり、次回作がセレブからも待ち望まれていたりと現役感バリバリです。アニコレ、The XXは確実に次の音楽シーンを形成する重要な1枚を年内にリリースしてくれるだろうし、Passion Pitはよりポップに弾けたハッピーなサウンドを届けてくれるはず。Prodigyは本作で見せたベテランの貫録を、今後どのように見せてくれるのか、Lily Allenは本当に音楽シーンに復帰してくれるのか、今後の音楽シーンにおいても非常にその動向が楽しみなアーティストがたくさん活躍を見せていた2009年でした。
2000年代の名盤を一年ごとに振り返る企画は今回で終わりです。それ以降の年間ベストは別記事で紹介してますのでこちらもぜひ。
2010年年間ベスト
2011年年間ベスト
02 Lily Allen - It's Not Me, It's You
03 Animal Collective - Merriweather Post Pavilion
04 The Horrors - Primary Colours
05 The XX - XX
06 The Prodigy - Invaders Must Die
07 The Pains of Being Pure At Heart - The Pains of Being Pure At Heart
08 Yeah Yeah Yeahs - It's Blitz!
09 Passion Pit - Manners
10 Phoenix - Wolfgang Amadeus Phoenix
11 A Red Season Shade - Interiors
2009年当時記録していた私的年間ベストを元に決定しました。2009年リリース作品のみを対象にしています。
これまでよりも国内インディーロックメディアの影響が色濃く出た結果と言えるかもしれません。確かにsnoozerやWONDERKIND、Hard To Explainなどの媒体から熱心に情報収集していた時期ですし。アニコレ、The Horrors、Yeah Yeah Yeahs、Phoenix、The XXは海外のインディーロックメディアから非常に高い評価を得ただけでなく、英米のメインストリームシーン、ファッション業界などからも注目を集めました。そういう意味では、2009年は自分史上最もミーハーな年だったかもしれません。
そんな中でも1位・2位は、音楽性は違えど共にキュートでガーリィ、そして毒っ気もちょっと効かせた女性シンガーが並びました。まず1位となったのはイギリスのフォーク・シーンから登場したEmmy The Great。この年の朝霧JAM出演のタイミングでBS朝日のTV番組「ベストヒットUSA」にてピックアップ。それまで名前だけは知っていたものの曲を聴いたことはなかったのですが、彼女のインタビューを聞き、レナード・コーエンの「Hallelujah」を引用した「First Love」のミュージックビデオを観て一瞬でハマりました。「First Love」はアンニュイな歌い出しから徐々に緊張感を帯びて加速していき、最後にぷつりと糸が切れるようなフォーク・バラッドでしたが、アルバムの中には「We Almost Had A Baby」のようにキラキラしたメロディのチェンバーポップ、そして「Dylan」のように疾走感に溢れたリズミックなナンバーまで、シンプルな演奏でありながら実にバラエティ豊かな楽曲が並びます。本人がWeezerやAshを敬愛していることからもわかる通り、ソングライティングセンスにかけてはここ数年の女性シンガーの中でもピカイチだと思うし、歌詞の深さ、ユニークさなども目を見張るものがあります。あと前述の「We Almost Had A Baby」のミュージックビデオ、かわいすぎるうえにすごくホンワカさせられて大好きです。
Emmy The Great - "We Almost Had A Baby"
一方2位のLily Allenは、実はこの時まだファースト「Alright, Still」は未聴でしたが、セカンドとなる本作でグレッグ・カースティン(The Bird And The Bee)がプロデュースということで興味を持ち、試聴したら即ハマりました。何といっても超絶キュートなメロディに「Fuck You」なんて歌詞を載せて歌ってしまうんですから。エレクトロ風味の強いビートと、アコギやバンジョーやストリングスなどの生楽器との絶妙なミックス具合も、いかにもグレッグ仕事という感じ。その後すぐファーストも買いましたが、こちらもカリプソ、スカ、ヒップホップなどのビートをゴッタ煮にしたハイセンスなトラック、そしてそんなアクの強いトラックに決して見劣りしないキュートでちょっと生意気な感じの歌声に完全ノックアウトされました。この年はフジロックにも出演、ステージに腰掛けて「Littlest Things」をアンニュイに歌いあげたり、ポータブル・テルミン(?)をいじり倒しながらブリトニーの「Womanizer」のカバーでグリーンステージをダンスフロアに変えたりという魅力的なライブパフォーマンスにより、その年のフジロックにおける私的ベスト・アクトにもなりました。音楽センスも声もライブパフォーマンスもファッションもさることながら、とりあえず顔が好きです。かわいすぎる。
Lily Allen - "Fuck You"
4位にマークしたのはThe Horrorsのその後の方向性を決定付けたセカンド。ファーストがリリースされた時は、ルックスばかりが話題になるような単なるゴス・バンドという認識しかなく、2007年のサマソニで観た時も音楽的にはなんだかなあ、という印象しかなかったのですが…。ポーティスヘッドのジェフ・バーロウがプロデュース、そしてシューゲイザーやクラウト・ロックを取り入れたという宣伝文句によって試聴したら、これまで抱いていたイメージとの違いにぶっ飛びました。甲高いシンセのリフ、浮遊系の電子音、ノイジーに歪ませた粗暴なギターなど、魅力的な要素に満ちているだけでなく、メロディーもキャッチー。アートワークも含めフィルム・ノワール的な世界観が確立されており、トータル的に見てもかなり完成度の高い作品だと思います。
The Horrors - "Who Can Say"
7位にはThe Pains of Being Pure At Heartのデビューアルバムが入りました。このバンドを知ったきっかけは、当時購入・閲覧履歴によって、やたらとAmazonから勧められていたから。ジャケがベルセバっぽかったので、それっぽい感じかなと思って聴いてみたら、「Come Saturday」なんかはまんまマイブラの「Strawberry Wine」みたいだし、これ本当に最近のバンド?80年代のグラスゴーのバンドじゃなくて?と思いつつ彼らについてもっと調べると、ブルックリンの出身ということで、少し前衛的なバンドが多いイメージがあったあの街もこんなにキャッチーで面白いバンドが登場するんだな…と驚いたものです。そんなわけで当ブログで昨年の年間ベストアルバム1位を獲得した彼らのセカンド「Belong」への布石となったのがこのデビューアルバム。エヴァーグリーンな青春回想録みたいなアルバムです。
The Pains of Being Pure At Heart - Come Saturday
もしかしたらこの11枚の中では最も知名度としては低いかもしれないのが、11位のA Red Season Shade。フランスの5人組バンドです。美麗なメロディと中世的ハイトーンボーカル、そしてタイトなアンサンブルはMewにも近い印象。
A Red Season Shade - "Ghosts & Clouds"
惜しくも圏外になった作品を見てみると、Alicia Keysのアルバム「The Element of Freedom」といったメジャー路線の作品の他、Girlsのデビューアルバムなど全体的に完全にインディーロックに染まっていた年でした。snoozer嫌いだったけど情報源として毎号立ちながら読んでましたからね。さすがにまだ3年ほど前のシーンなので、この年に出てきたバンドや好きになったバンドは、現在ではさらに音楽的表現力が増して高い評価を得ていたり、次回作がセレブからも待ち望まれていたりと現役感バリバリです。アニコレ、The XXは確実に次の音楽シーンを形成する重要な1枚を年内にリリースしてくれるだろうし、Passion Pitはよりポップに弾けたハッピーなサウンドを届けてくれるはず。Prodigyは本作で見せたベテランの貫録を、今後どのように見せてくれるのか、Lily Allenは本当に音楽シーンに復帰してくれるのか、今後の音楽シーンにおいても非常にその動向が楽しみなアーティストがたくさん活躍を見せていた2009年でした。
2000年代の名盤を一年ごとに振り返る企画は今回で終わりです。それ以降の年間ベストは別記事で紹介してますのでこちらもぜひ。
2010年年間ベスト
2011年年間ベスト
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