現職のUNRWA保険局長・清田明宏氏の著書です。
2015年 戦争しか知らないこどもたち
2019年 ガザの声を聞け! 天井のない監獄
「戦争しか知らないこどもたち」は、絵本と言うか写真集と言うか、大型本ですが55ページしかなく、全編が殆ど写真だけで、文章はごくわずかです。
だから直ぐに読み終わりました。
ワタシは読む前に「戦争しか知らないこどもたち」と言う題名を非常に奇妙に思いました。 だって第四次中東戦争が終わったのは1973年です。 当時ワタシは20歳のうら若い乙女でしたが、この2月に古希を迎えました。
だったら第四次中東戦争を知っている子供達だって、50前後の中年・初老でしょう?
それなのに何で2015年に戦争しか知らない子供達が存在るのでしょうか?
しかし本を読むとわかりますが、UNRWA保険局長・清田明宏氏の言う戦争とは、2006年から繰り返されたハマスのテロと、それに対するイスラエルの報復でした。
本の中身はこの「戦争」によるガザの惨状、瓦礫と化した街と、瓦礫を背景に悲しむガザの人々、とりわけ子供の写真が殆どです。
そして奇妙な事に、この「戦争」の原因や経過は一切書かれていません。 ただ「2006年、2008~2009年、2012年そして2014年。」と年代だけが書かれているのです。
ガザを瓦礫にしたのはどの国の軍隊なのかも書かれていません。
だからワタシもわけがわかりませんでした。 それで年代とガザで検索した所、これは結局、ハマスとファタハの内戦、そしてハマスがイスラエルを攻撃した事によるイスラエル側の反撃とわかりました。
前記のようにこの本は絵本のような形式をとっているので、読者は小学校高学年かせいぜい中学生までを想定しているのではないかと思います。
しかしこの年代の子供達では、そもそもこの戦争が何の戦争か、全くわからないでしょう?
パレスチナ問題に基礎知識のない子供達を想定した本なのに、何でこんな奇妙は書き方をするのかわかりません。
勿論、国連の人道支援組織であるUNRWA保険局長・清田明宏氏の立場では、この「戦争」の是非を語る事はできないでしょう。 そしてこの経緯や交戦国を書けば、結局この「戦争」の是非を考え笊を得ません。
だから彼は戦争の年代しか書かなかったのでしょうか?
しかしワタシはやはりこの本が中立的とも思えません。 だって全編、瓦礫となった街と悲しむ人々の写真だけを見せられたら、「街を瓦礫にするなんて酷い!!」「街を瓦礫にした奴は大悪党だ!!」になるでしょう?
例えば原爆祈念館の焼けただれた街や黒焦げになった人の写真だけを見せられたら、誰でも原爆を落とした国が悪いと思うでしょう。
だからそれを避けるために、こういう場所では「原爆を落とされたのは、日本が侵略戦争をしたからだ。」と言う説明を執拗に繰り返しているんじゃないですか?
しかしこの本はその説明を一切しないで、ただ「街がこんな風に破壊されて、人々は家を喪った。 大勢の人々が空襲に巻き込まれて死んだ。 ガザカワイソウ!!」とだけ言い続けるのです。
けれどもこれがUNRWA保険局長・清田明宏氏のスタンスなのです。
これだと結局、反イスラエル・親ハマスになりませんか?
そしてこれは彼のもう一冊の著書「ガザの声を聞け! 天井のない監獄」では、もっと露骨になります。
と言うか、この本を読むとUNRWAと言う組織の存在こそが、パレスチナ問題の所謂「報復の連鎖」の元凶だとわかります。
この本の中に「難民の子孫は「難民」ではないのか?」と言う章があります。
現在UNRWAがパレスチナ難民として保護している人達は、第一次中東戦争の難民です。
第一次中東戦争は1948年5月に勃発し、1949年2月に終わりました。
この直前までパレスチナはイギリスの信託委任統治地でした。 このイギリスの統治が終わる直前、国連はパレスチナ分割案を提出し、現在のイスラエル領に相当する地域をパレスチナ人とユダヤ人とで分割し、パレスチナ人の国とユダヤ人の国を作る事を提唱しました。
この分割案はパレスチナ人の方が人口が多いのに、土地の55%がユダヤ人に割り当てられたので不公平だと言う説があります。 しかし当時のこの分割の対象になった地域に住むパレスチナ人の人口は33万人、ユダヤ人は55万人でした。 残りのパレスチナ人はヨルダン領に住んでいたのです。
またユダヤ人が得た地域にはネゲブ砂漠など広大な荒蕪地が含まれていました。 またパレスチナで最大の問題になるエルサレムはパレスチナ側に含まれていました。
しかしイスラエルはこの案を了承し、イギリスの信託委任統治が終わると即座に独立を宣言しました。
一方アラブ諸国はこの誕生したばかりのイスラエルに襲いかかったのです。
この時、パレスチナ分割案でイスラエル領になった所に住んでいたアラブ人達の多くが、アラブ側の呼びかけに応じて避難し、「パレスチナ難民」になりました。
イスラエル領内に住んでいても避難しなかった人達もいます。 この人達は現在、イスラエル国籍のアラブ人としてイスラエルに居住しています。
この第一次中東戦争で避難した人達を、難民として保護する為に設立されたのがUNRWAです。
このUNRWAは「難民の子孫は難民」と定義して保護するとともに、難民に「帰還権」を認めたのです。
となるとパレスチナ「難民」は、子々孫々・未来永劫、国連のパレスチナ分割案でイスラエル領となった地域に帰還する権利を持つのです。
パレスチナ分割案は当時ユダヤ人が多い地域はイスラエル、アラブ人が多い地域はパレスチナとしての分割ですから、イスラエル領に割り当てられていた地域にまでパレスチナ人の帰還権が認められるとなると、これはそのままイスラエルの消滅になります。
しかもその権利が子々孫々・未来永劫世襲されるのです。
そして「難民」は帰還するまで「難民」として、UNRWAが衣食住・医療・教育の面倒を見る事になっているのです。
UNRWAの手厚い保護のお陰で、「難民」は世界有数の高い出生率にもかかわらず乳児死亡率は低く保たれたので、第一次中東戦争時は70万人だった「難民」が、現在は550万人にまで増えています。
これだと「難民」達は子々孫々・未来永劫、衣食住の心配なくイスラエル殲滅の為にテロやゲリラ戦を繰り返す事ができます。 それで多少の戦死者が出ようともいずれ人口でイスラエルを圧倒できます。
実際、UNRWA保険局長・清田明宏氏は、この著書の中でUNREAの基本方針に、この「難民」達の帰還権を支持しています。
「自分達は祖父の暮らした故郷を忘れた事がない」「自分達は難民として生まれたから難民なのだ」と言うガザ住民の言葉を紹介して、「難民の帰還権は何としても守られねばならぬ」と主張しているのです。
また2018年に行われた「グレート マーチ」を紹介し、これを阻止しようとしたイスラエルを非難しています。
この「グレート マーチ」とは、ガザの「難民」達が、イスラエルの設置したフェンスを越えて、自分達の「故郷」に「帰還」しようと行進した事件です。 イスラム教徒の祭日である金曜日事に繰り返されました。
UNRWA保険局長・清田明宏氏によればイスラエル軍はフェンスに近づいた「難民」達を銃撃し、その都度数百人の死傷者が出たと言います。
この死傷者への対応で、アル・シファ病院など幾つもの病院が医療崩壊に陥ったと言います。
確かに死傷者が出たのは悲惨です。
しかし彼等は結局、膨大な人数でフェンスを破壊し、イスラエル領に乱入して、そこを占拠しようとしたのです。 これはイスラエル側から見たら、明らかな侵略行為です。
イスラエル側からすればこれは完全な自衛権の行使ではありませんか?
けれどもUNRWAは「難民の帰還権」を保障する立場ですから、イスラエルの自衛権など認められないのでしょう。
この「ガザの声を聞け! 天井のない監獄」も「戦争をしか知らないこどもたち」と同様、イスラエル側の自衛権には一切言及していません。
さらに言えばガザを支配したハマスの問題についても一切言及していません。
ただひたすら「ガザカワイソウ」「難民は故郷に帰還したいだけなのに。」と繰り返すのです。
だから読んでいて非常に内容が薄く、退屈でした。
しかしこの執拗な主張を読んでいくと、これって結局、ハマスと同じ、ハマス全面支持とだとしか思えません。
だって結局UNREA自体の難民の定義と支援の原則は、イスラエルの殲滅になるのです。
今、UNRWAとハマスの癒着が問題になり「UNRWAは国連の皮を被ったテロ支援組織」とまで言われるようになりました。
実際、ガザのUNRWA本部の地下にハマスの情報センターがあり、そのハマスの情報センターが使用する電気はUNRWA本部から供給されていたとか、UNRWAの運営する学校や病院から大量の武器が見つかったなど、UNRWAとハマスの癒着の証拠が次々と見つかっています。
またUNRWA職員の1割がハマスの戦闘員であり、半数の親族がハマスだったこともわかってきました。
そして現在、UNRWA職員12人が10月7日の大規模テロに参加し、イスラエルの非戦闘員を虐殺した事もわかっています。
実はUNRWAとハマスの癒着は、前々から言われていた事です。
但しUNRWAは、反イスラエル・イスラム原理主義テロ組織の中では比較的弱体と看做されていたので、イスラエル側も敢えてハマスを攻撃を控えていた経緯があるようです。 ハマスを殲滅する事で、他のもっと強力で過激なテロ組織が、ガザに入り込むのを恐れたのです。
しかしだからと言って、国連の人道支援組織であるUNRWAが、ハマスと癒着してよいはずはありません。
それにしても現場でUNRWA職員、特にUNRWAのパレスチナ人でもアラブ人でもないUNRWA幹部は、一体何をしてきたのでしょうか?
世界には独裁国家や武装組織の支配下にある地域が沢山あります。
そういう地域で苦しむ人を助けようと活動す場合、どんなに善意に満ちていても、その地域の支配者である武装組織や独裁者には逆らえません。
実はワタシは以前ペシャワール会の会員だったのですが、アフガニスタンの活動ではタリバンと良好な関係の維持が不可欠でした。 タリバンに限らず現地には沢山の武装組織と言うか、戦国時代の豪族のような連中が沢山いて、彼等と対抗できる武力がなければ、彼等と事を構えるわけにはいかないのです。
そしてこれはUNRWAも同様だとは思います。
しかしこのUNRWA保険局長・清田明宏氏の著書を読む限り、それだけの関係とは思えません。
なにしろUNRWAが「難民」に認めた帰還権は、結局ハマスと同じくイスラエルの殲滅に繋がります。 だから「グレート マーチ」のように「難民」の命とイスラエルの生存権に関わる活動でも、UNRWA保険局長・清田明宏氏は「難民カワイソウ!! イスラエル悪い!!」と主張するのです。
それをこの問題については第三者である日本で主張するのです。
こうなるとUNRWAは必然的にハマスを支持し、ハマスを支援する事になるのも当然ではないかと思わずにはいられません。
UNRWA保険局長・清田明宏氏の著書を読むと、日本政府はこんな団体には絶対に資金を出すべきではないとしか思えません。 むしろこんな団体に資金を出し続けてきた事を問題にするべきです。
最後にこのUNRWAの問題について質問した議員がいました。
外務省側は現在、高木議員に国連の調査を待つと共に、UNRWAの日本人職員への聞き取り調査も行っていると回答しています。
UNRWA保険局長・清田明宏氏は現在日本に滞在しているので、彼も外務省から聞き取り調査をされているのでしょうが、外務省がどのような結果を出すのでしょうか?