細野豪志
富士市の高卒初任給は平均で15万4900円。1日8時間で20日間バイトすれば時給1000円なら月収16万円。社会保障負担を考えると正社員よりバイトの方が実入りがいい。若者の経済状況は相当に深刻だ。 細野豪志議員のツィートです。
でもこれ「バブル並」と言う事です。
今は「非正規」「派遣」と言うのは、悲惨と貧困の極みのように言われていますが、しかし正社員にならず非正規労働者でいる人達が生まれてのはバブル期でした。
バブル期は超好景気で、人出不足が深刻化して「人出不足倒産」なる物まで起きました。
仕事を受注したのに、その仕事をこなす為の従業員がいなくなって、倒産してしてしまう会社が出たのです。
当然、その瀬戸際に立たされた会社は、出せる限りの高賃金で従業員を募集します。 但し異常な高賃金で長期に雇用することはできないので、臨時、非正規と言う形で募集します。
労働者の側からすれば、臨時でも非正規でも、こういう雇用が幾らでもあれば、こういう非正規の仕事を渡り歩いた方が、正社員として働くよりも、賃金も高く、しかも仕事内容は簡単で責任もなく、職場で面倒な人間関係に悩む事もありません。
だから正社員の求人が幾らでもあるのに、敢えて正社員にはならずに非正規職を渡り歩くのを選ぶ若者達が出てきました。
当時、そういう人達を「フリーター」と呼びました。
そういう事をしていたら、キャリアが積めないし、何より不況になって割の良いバイトがなくなったら悲惨な事になります。
でも考えてみれば、バブル期に高校や大学を卒業したばかりの若者達は、物心つくころからずうっと好景気で人出不足の日本しか見た事がなかったわけです。
好景気で人出不足の日本しか知らずに育った若者達にすれば、不景気で低賃金のバイトを探すにも苦労するような社会なんて想像できるわけがなかったのです。
でも不景気で低賃金のバイトを探すにも苦労する社会は、その後間もなく現実になりました。
バブルがはじけると直ぐに到来したのが就職氷河期です。
若者の失業率は10%代に達して、大学生はひたすら就職活動に追われるようになりました。
そして「派遣」「非正規」は悲惨と貧困の象徴になりました。
ワタシは高齢者特権で、こういう時代の変遷を覚えているので、細野豪志議員のツィートを読むと、若者の貧しさよりもむしろ「おお、漸くバブル期並になってきた。」と感動してしまいます。
実際アベノミックス以降、失業率は2%台になり、新卒者の就職内定率はバブル期並が続いているのです。
だから若者は大学や高校を卒業したら、とりあえず正社員に就職できるのです。
しかしこれもバブル期前から同じですが、高卒公務員の手取りって、最低賃金の時給で
フルタイム労働をした金額に少し色を付けた程度です。
そしてこれは実は生活保護費も同様です。
生活保護費は自治体により少し違いますが、どこでも総額で最低賃金でフルタイムをした場合の金額程度が支給されています。
但し公務員は残業もあるし、ボーナスもあるので、それらを加えると生活保護費より大分マシになります。
そして後々昇給するし、何より公務員は失業するリスクが殆どないので、就職氷河期以降大人気でした。
それどころか一時は「公務員」と言うのが羨まれ、妬まれる程になっていました。
で、その公務員の給料を引き合いに出して「若者の経済状態は深刻だ」と言うようになったのですから、これはもうアベノミクスの成果の凄さを実感します。
それでも今一この成果の実感がないのは、現在ちゃんと職業のある人、そして定年退職して悠々自適の人達は、失業と言うモノに実感がないからでしょう。
でも若者のあの就職氷河期とそれに続く第二次安倍政権成立までの悲惨さを思えば、新卒者が就職できる社会がどれほど素晴らしいかを実感せざるを得ません。
だから政府は何としてもこの状態を維持するように最大限努力するべきなのです。
因みにワタシは個人的に今の若者が「貧しい」とは思っていません。
特に去年、引っ越しの前に実感しました。
ワタシは去年、20年来住んでいた借家を出なければならなくなり、引っ越し先を探しました。
その時、20年前と比べて家賃水準が総じて安くなっている事、にも拘らず借家の質が非常に高くなっている事に驚きました。
例えば20年前なら札幌で3万円以下の借家なら、ホントのオンボロで風呂がないとかでした。
でも今は3万円以下でも風呂やキッチンもきちんとついた小綺麗な部屋です。
20年前にはあった木賃アパートは完全になくなったようです。
また部屋も前の住人が出たら直ぐに専門の清掃業者を入れて掃除をするのが普通になったらしく、どこのアパートを見ても一瞬新築?と思える程綺麗でした。
それに比べるとリフォーム前の中古マンションの方が汚かったです。
リフォーム前の中古マンションも、売り手もちゃんと掃除をしたのでしょうが、それでも清掃業者のようなわけにはいかないのか、生活臭芬々になっていたのです。
つまり今はもう薄汚れたオンボロアパートなど借りる人はいないという事でしょう。
但しそれは言い換えれば、もう若者達はオンボロアパートに暮らす事には耐えられなくなったという事です。
だから一定の部屋代は絶対に必要です。
衣類など生活必需品もバブル期に比べると異常に安くなっています。
だから貧しくなったはずの日本で衣類の廃棄が増えているのです。
しかし部屋代のような固定費が絶対に必要になってしまうと、自由に使えるお金はその分減りますから「貧しい」と感じるようになってしまいます。
その意味では「若者は貧しくなった」のです。